6.トカゲの目
「ぼ、僕の後ろに隠れるなよ!!」
「隠れる場所が無いんだからしかたないでしょ?」
「「ギャギャギャ」」
大トカゲがもう目の前まで来ている。
「僕を食べても美味しくないよ??」
「こんなの食べたら、お腹壊すわよ!!」
トカゲが男を頭から食べようとしている。
目を強く瞑り、死を覚悟した。
「「ギャギャ、ギュルル」」
「ひぇえええええ。」
食べられたかしら。
ああ、次は私が食べられるのかしら。
痛くないと良いんだけど.....
「あ、あれ??」
男が食べられた後、数分経っても、自分の番が来ない事に気がついた。
恐る恐る目を開けてみる。
男はトカゲの頭を撫でていた。
「この子達は僕たちを食べないみたいだよ。ほら!!」
「ギュルル!!」
私の顔にトカゲの顔が近づく。
「あら!?結構、可愛い顔してるわね。」
つぶらな瞳がチャーミングだ。
私もトカゲの頭を撫でてみる。
すると、トカゲは気持ちよさそうに目を閉じて喉を鳴らした。
トカゲはひんやりと冷たく、ツルツルした皮膚をしている。
トカゲを撫でながら、男に疑問に思った事を質問してみる。
「肉食の恐竜じゃないの??」
「うーん。この恐竜たちは、どうやら人に慣れているようなんだ。卵から生まれて初めて見た者を親と認識する習性が爬虫類にはあるから、それじゃないかな。」
「刷り込みってやつね。
それにしても、恐竜がこの時代に生きていたなんて。
誰かが秘密裏に復元したのかしら。」
「どうだろう。
何万年も前に絶滅した動物を復元する事が可能なのかな??たまたま生き残りがいたとか、イグアナとかワニとか、鳥とかのDNAを操作して近づけたんじゃないかな??」
「可能性としては有り得ない話ではないわね。それにしても....」
誰が何のために恐竜を復元したのか。
情報がなぜ漏れなかったのか。
これ程の事が、なぜ公表されなかったのか。
なぜ....
「そういえば、名前を教えてなかったね。
僕は日本人の、小鳥遊翔太。ファーストネームが翔太ね。
僕は大学で歴史学を専攻しているんだ。よろしく。」
「え?ええ。
そういえば、自己紹介が遅れたわね。
私はソフィア・スミス。
知ってると思うけど、ラボではタイムマシーンの研究をしていたわ。よろしく。」
「ああ!!知ってるよ。君は今、有名人だからね。
さっきは悪かったよ。僕もつい、カッとしてしまったよ。」
「私こそ、大事なものだったのに馬鹿にしてごめんなさい。」
「もう良いよ。僕も不注意だったし。それにしても、どうしようかなぁ。教授に殺されるかもしれないよ。」
「あれは何だったの。しかも、触った瞬間、ワープ出来るなんてどんな仕組みなの??」
「うーん。ワープの事はわからないんだけど、あれは、ペルーの壁画なんだ。
僕が1年前に、ペルーのクスコに行った時に街の人達から頂いたものでね。」
「ペルーの壁画??」
「マチュピチュとインカ帝国を調べているって現地の人に話したら、くれたんだ。」
「それで、その壁画から何か分かったの??」
「調べたんだけど、分からないんだ。
大学の教授と相談して、何時代のものか調べたかったから、一時的に国立研究所に預けられていたんだ。
....けど、国立研究所は何も教えてくれなくて、約束の期限を過ぎても返してくれなかったんだ。
調べたいことがあって、やっとの事で研究所から盗み.....取り返す事が出来たんだけど、壊してしまった.....。」
「あの研究所に忍び込んで、盗ってきちゃったの??」
「盗るなんて、人聞きが悪いなぁ。もともとは僕が貰ったものなんだ。取り返したと言ってくれないか。」
「呆れた....。あの研究所から盗むなんて、無茶を通り過ぎて無謀よ。じゃあ、何も分からなかったって事なのね。」
「いや。
実は、あの研究所に忍び込んだ時に、研究資料を読んでみたんだ。そしたら、ある事が分かったんだ。それは....」