10.文句があるなら言いなさいよ!
案内された部屋は、丁寧に掃除が行き届いていて、ベッドが一つ用意してある。
よし、翔太は床で決定ね。
「ショウタは床に寝てね。私はこのベッドを使うから」
「.....」
翔太は難しい顔をして黙っている。
「何よ。文句があるなら言いなさいよ!」
「....」
翔太は何も言わない。
私がベッドを使うのが、そんなに気に食わないのかしら。
「ちょっとー!!聞いてよ??」
私は翔太の腕を思いっきり抓った。
「痛いわー!!何すんだよ!」
「やっと喋った。何が気に入らないのよ。はっきりしない男はモテないわよ。あとっ!!人の話を聞かない男もねっ!!」
「ああ、ごめんごめん。考え事してたんだよ。なんか、この家変だなと思って。ていうか声出なかったから、まだ、声が出ないままかと思ってたよ。」
「なんで、喋らなかったの??演技じゃないわよね?そういえば、あの女の子が魔法って言ってたわ」
「魔法....非科学的だけど、僕は信じるよ」
なんの根拠もないのに、魔法という非科学的な現象を翔太はすんなり受け入れた。
「貴方、正気なの?あったら素敵だけど、魔法なんて非科学的じゃない?」
「いや、君もこの家の不思議な出来事を見ただろう??」
「えっ??何が不思議なの?」
「えっ??」
翔太は驚いている。そして、いきなり吹き出した。
「ぷっ。いやぁ、天才でなんでも分かると思ってたけど、君って案外鈍感なんだね」
「ぶっ殺すわよ?」
ムカつくわ。なんていうか、分からないんだけど、こいつにだけは言われたく無い。うん。
「痛い痛い痛いから。ごめんなさい」
翔太の足を思いっきり踏んづけてやった。
ふぅ。スッキリした。
「....で?何が不思議なのよ」
「ああ、まず自動で扉が開いたり、物が動いたりするところかな。あと、暖炉の火も勝手についたよね?」
「全自動で動く最新型AI家電じゃないの??まさか見た事ないの??」
「いや、見たことあるけど、そんな最新の機能があるように見えなかっただろ??
扉は木の扉だし、椅子は木で出来てただろ?」
「まぁ、確かに普通の扉や椅子に見えるけど、やろうと思えば出来なくはないでしょ?」
「確かに、今の技術なら出来るね。けど、この家の間取りはどうかな?」
は??家の間取り??
翔太は背負っていたボロボロの黒いリュックサックの中からヨレヨレのノートとボロボロの筆箱を取り出した。