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城塞サイド・幕間。適当な作戦会議。

 作戦は至極単純なものだった。

 屋上に向かう最中、適当な会話で決めたものだった。


「フォエニカル。てめぇは身を潜めて、どっかいいところでこれで一発入れろ」


「これは……血の剣ですか?」


「そうだ。このインカナ様が直々に自らの血で造った武器だ。それを刺したらてめぇの仕事は終わりだ。離れてろ。後はこのインカナ様がやってやる」


「……それが一番ですかね。吸血鬼相手の戦いに割って入るとか、あたしらには出来ませんし」


「ああ。無理だ。それにアルマは強ぇ。ルーレス程じゃないが、それに近いくらいだ」


「ルーレス様くらいですか……それはとてもじゃないですけど正攻法じゃあ無理ですね」


「だからよぉ、狙え。隙が出来た瞬間を。ちょっとした隙くれぇはこっちで作ってやるから、な? 頼むぞ」


「はいはい……ちなみにですけど、アインじゃあ駄目なんですかね? この役目は」


「あいつはてめぇほど隠れるのが上手くねぇ。あいつは真っ当なこのインカナ様の側付きだからな」


「まるであたしが真っ当じゃあないみたいな言い方ですねぇ」


「てめぇにも真っ当になる機会はあっただろ? このインカナ様に仕えてた時。あの時、このインカナ様の言う通りにしてりゃあてめぇも今よりもっと美しくなってたんだけどよぉ……」


「やめてくださいよ。思い出しただけで寒気がする。あんな着飾ってばかりの毎日にはうんざりでしたよ。だからやめたんです」


「全く……美しくあって何か悪いことあるかぁ? 美しいってことに罪はねぇだろ?」


「罪は無いですけど、あたしはそーいうの苦手なんですよ」


「戦い以外はどうでもいいってか?」


「まあ、そんなところです」


「じゃあ聞くがよぉ。フォエニカル、てめぇこのインカナ様たち吸血鬼がいなくなってこの世界に争いがなくなったら何するんだ?」


「争いはなくなりませんよ。だから大丈夫です。働くところはあります。ご心配なく」


「夢のねぇやつだなぁ……アルザギールのとこにいるくせに嫌に現実的だなてめぇは。ユーリとか絶対争いが無くなると思ってやがるぞ? アルザギールの活躍でこの世界に平和が訪れると真剣に信じてるんだぞ?」


「あれはアルザギール様に心酔してますからねぇ。そうなるように仕向けたわけで、始めはどうなるかと思ったもんでしたが、何かもうあれくらいいってると逆に見てて安心しますよ」


「はっはっはっ! なんだよそりゃ! てか、てめぇは違うのか? アルザギールに惚れて仕えてるんじゃねぇのか?」


「給料が良いんですよ。それに、あれこれ服装に口出ししてきませんしね」


「ちっ、言うじゃねぇか」


「申し訳ありませんね。最後になるかもしれませんから、言わせて貰ってます」


「最後か……ふん。柄でもねぇこと言うなよ」


「間違いなくこれまでで一番死を身近に感じてますよ。これから吸血鬼を相手取るわけですから」


「おいおい。随分と悲観的だなぁ。そんなんでいけんのか?」


「何とかなるんじゃないですかね。一突きするくらいなら。それより、インカナ様の方こそお願いしますよ」


「任しとけって。いざとなればトリフォリのやつを盾にしてでもアルマを止めてやる」


「うっわぁ……やっぱり辞めて良かったですよ、あなたのところ……」


「安心しろ。このインカナ様が悪く言うのはトリフォリぐらいのもんさ」


「何ですかそれ? そんなに仲悪いなんて、お二人の間には何かあったんですか?」


「別に何もねぇ」


「は?」


「ただなんとなくああいうやつが気に入らねぇだけだ」


「え……?」


 やはりインカナは気分で物事を決定している。こんな雇い主のところで働いていなくて良かった。とフォエニカルは心底思った。

 丁度それと同時に、屋上へと続く階段が見えた。


「おい、もうすぐだぞ。準備はいいか?」


「覚悟はとっくに出来てます」


「美しい返事だ。それじゃあ、任せるぜ」


「はい」


 そうして二人は屋上に出た。

 そして、多くの犠牲を払って生まれた僅かな隙を突き、アルマに剣を刺したのである。


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