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トテトテと早歩きでエントランスホールを目指す
探すより、エントランスホールなら確実に父様を掴まえられる
絶対に会う!そのために
………エントランスには執事のエヴァンスがいた
まだ、父様は家に居る………
慌てずゆっくりと階段を降り、エヴァンスに声を掛ける
「エヴァンスゥ、まだとうしゃまは居るかしあ?」
(エヴァンス、まだ父様は居るかしら?)
少し驚いた顔をしたけど、すぐにいつもの柔らかい微笑を浮かべ
「おはようございます、アンジェお嬢様。旦那様はじきにお出になりますよ」
そう、膝をついて私の目線に合わせてくれた
25才になるエヴァンスは、なんと言うか草食系というか優男系イケメンだ
………話し声が聞こえる………
「エヴァンス、何をしゃがみ込んでいる?……?」
エヴァンスの後ろから、家令のポールが父様と一緒に歩いて来た
「とうしゃまっ!」
(父様っ!)
バチッと目が合った
「アンジェ!私の天使!」
叫んだと思ったら、走ってアッという間に抱き上げられました。
電光石火です!いつものシュッとした美形がデレッとした美形に早変わりです
「とうしゃま、アンジェはとうしゃまにおあいしちゃくて頑張りましや。」
(父様、アンジェは父様お会いしたくて頑張りました。)
余りの残念トークに目頭が熱くなります。
父様の目頭も熱くなってるのか、潤んできました
「とうしゃま…とうしゃまにまいちちおあいしちゃいれす…」
(父様…父様に毎日お会いしたいです…)
通じて!残念トーク!
ぎゅっと抱きしめられ頭を撫でられながら
「父様、頑張るよ…アンジェ…可愛い、私の天使」
私は父様の頭を抱きしめ
「とうしゃま…むりしないえ…アンジェ、まいちちとうしゃまにおてまみかくかや」
(父様…無理しないで…アンジェ、毎日父様にお手紙書くから)
あ…父様の涙腺が崩壊寸前だわ…
「あぁ…アンジェ…私のために…ありがとう、毎日の楽しみになるな」
「旦那様、お時間が」
ナイス!ポール!
父様はそっと私を降ろすと、ニッコリ微笑んで
「私の天使、父様は皆のために頑張って仕事をしてくる。アンジェも今日みたいに無理をしてはいけないよ、父様は心配で仕事に集中出来なくなるかもしれないからね?………父様はアンジェからの手紙が楽しみだよ」
私も笑顔で父様と目線を合わせ
「れは、アンジェはまいちちとうしゃまにおてまみをかきましゅ!」
(では、アンジェは毎日父様にお手紙を書きます!)
父様は再び頭を撫で、頷くと「行ってくる」と短く告げ歩き出した。
父様が扉から出る時「とうしゃま、いっれらっしゃいましぇ!」
(父様、行ってらっしゃいませ!)と叫んだ
前世では、ただの1度も父親に言う機会も無かった言葉を…
チラッと振り向きざまに手を振る父様に、私も手を振った