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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第3章
98/144

帝国内戦1

誤字、脱字のご指摘、感想、ありがとうございます。



 サナトリア統一連邦共和国所属ドルフィン型高速偵察巡洋艦一番艦バントウの客室には、帝国からの客人3名と幸一、明美、さよりの6人がテーブルを囲み作戦会議をする予定だったが、幸一が小声でさよりに

「さより。トレーダーで何したか、教えておけよ、連中に。特にお前の婚約者さんには、ショックだろうけどな。」

「そっかなぁ?タケルとは、結構素で付き合って来たけどなぁ?」

「だけど、あの様子じゃ、まだまだお前を解ってない。だいたい、お前。あのトラックで何を掻っ払ってきた?」

「当面の生活資金と、皇太子からあたしへの結納金。」

「ほう!3トン近い貴金属がか?」

冷ややかな目で見ると

「だって皇帝家の逃避行用に備蓄されていた資金だよ?第一皇太子が逃げる為にも資金は必要だもん。持って来ても怒られやしないよ。それに、新婚生活にはお金がいるじゃない?」

さも当たり前のことだと、さよりが返す

「大義名分も用意してあったか。」

「当たり前です。あたしは、泥棒じゃありませんので。」

さよりは、宝物殿に有った貴金属を全て持ってきたらしい。幸一は、頭を抱えたいのを我慢した。


「サヨリさん、ちょっといいかな?」

タケルヤマト皇太子が困った風に声をかけてきた。

「なに?」

「どうしても、トレーダーにいかないとダメか?」

「あなた方が、夢を捨て、志を捨て、民を捨て、国を捨て、あたしに捨てられるのなら、行かなくてもいいけど?」

と平然と答えた。それを聞きタケルヤマト皇太子は困惑気味の顔で

「それがわからないんだ。なぜ、領地に戻って反攻の体制を作る事が、国を捨てる事に成るのかが。」

タケルヤマト皇太子の言葉に、クロダ宰相も

「私もそう思う。領地に行けば防衛衛星トールディーンがあり、どんな攻め込まれようが、一歩たりとも敵対する者を領地に踏み込まれる事はない。それなのになぜ、敵地とも言える惑星トレーダーに行かないといけないのか?」

サヨリは、大きくため息をついて

「クロダさん。タケルヤマト皇太子領地、ベルンナーズ星系は大型ドックが何基あるの?」

「一基だったと思う。」

「守護衛星トールディーンで、艦隊の修理は?」

「それは、出来ない。守護衛星トールディーンにはドックが無い。艦隊への補給も出来ない。守護衛星トールディーン自体が強力な砲台なので、敵がベルンナーズ星系へ近づけない砦でもあるからな。」

クロダ宰相は誇らしげに言ったが、サヨリは呆れたように

「ふ〜ん、使えないねぇ。じゃあ、ベルンナーズ星系の食糧自給率は?」

「55%ぐらいだった。」

それが?と言った顔をしてクロダ宰相が答える。

「はぁ〜。まだ、わからない?じゃ、普段足りない食糧はどこから?」

「近郊の農業惑星フランシクから随時運んでいるが?」

「ふうん、フランシクって48光年離れた隣の星系だよね。届くのに2日ぐらいかな?そこ以外からは、輸入してないの?」

「事が足りるから、他からは輸入をしてはいないが?」

「ベルンナーズ星系内での、現時点での食料備蓄量は?」

クロダ宰相は、少し考えて

「食料備蓄量?確か災害対策用に、非常食が1ヶ月分が有ったはず。」

「そんな認識なんだ。じゃあ、日用品や民生工業用品は?」

「小規模な工場等はあるので、日用品等は生産しているが、ベルンナーズ星系は、自然と伝統工芸品がメインの保養地の要素が高いため、大規模な重工場等は存在しない。」

「と言うことは、兵廠なんかは無いのね?」

「確かに、武器や兵器の生産を行っていない。それが…・・・・あっ!そうか!」

クロダ宰相は、サヨリが何を言いたかったのか、自分達が見落としていた点がわかった。

「やっと気付いた?領地に籠ったら、どうやって補給物資を確保するつもりだったのか、説明してもらえますか?クロダ宰相殿。」

「それは…」

「守護衛星トールディーンが有るから、敵は侵略出来ない?バカですか?今回に限れば、敵は攻める必要性が無いでしょ?

領地に籠ったら、周りを包囲して1隻たりとも脱出出来ないように包囲して、フランシクからの補給物資を止めて、1ヶ月以上完全封鎖してしまえば、クロダ宰相さんが思っている備蓄量ならば、すぐにでも領民は食糧不足になって、餓死者を出すかその前に暴動が起きるでしょう?

 と言って、先に打って出るのも難しい。1回戦で完勝しなければ、補給物資を艦隊に供給する方法が無いのだから次が無い。破損した艦艇の修理もろくにできない。よって、相手に第二波を繰り出す手立ては存在しない。

そもそも相手は、それを知っているから、真面目にやりあわないで、消耗戦を仕掛けて来るでしょう。回避行動するだけで、まともに戦ってくれません。案外、機雷を撒かれて港から出れないかも?だって、下手に関わってケガでもしたら嫌じゃない。手を下さず、相手が勝手に自滅するのを待てばいいんだから。」

「そんな馬鹿な。」

「守護衛星トールディーンは、防衛に置いて最高のシステムなのはわかるんだけど、それは、外敵が攻めてきた時にシェルターとして使用して、友軍が救助に来てくれると言う、前提条件があるからなの。

 今回のように、内乱の場合は、誰が救助しに来てくれるの?ましてや、艦隊を4つも喰わせていけるほど、物資はない。」

「確かにそうだが、」

「第三皇太子側とすれば、最低限の戦力で閉じ込めておくだけで時間を稼ぎ、その間に『覇者の勾玉』を探しだし、政権交代が反対意見も出ず簡単に出来てしまう。

 政権を固めた後に、包囲網を解いて人道支援とか言って、食糧等の物資を大量に届ければ、国民からして、どちらの陣営が自分たちの為にしてくれるか、考える間でも無いよね。」

「だが、……」

「信念や理想だけじゃ、生きていけないの。お腹が膨れないの。まず、お腹がいっぱい、美味しいものが食べれることが保証されてて、安心して眠れる暖かな寝床が有ることが、国民にとって最低限の幸せなんだから。それを与えてくれる指導者になびくのが、国民よ。」

「それじゃ、ダメなんだ!奴隷と同じじゃないか!」

「そうならないように、教育が有るでしょ?偏見や偏りの無い教育を施す事で、その人の性格、生活環境によって、何が良くて何がダメな基準が変わるでしょうけど、きっと少しはマシな世の中になるって!」

さよりは、ニコッとタケルヤマト皇太子に笑いかけた。

「いくら旗を振っても無視される事もあるけど、気が付けば祭り上げられていた事もあるから、今は、あなたの信じる道を迷わず真っ直ぐに歩けばいいの。」

と言ってさよりは、タケルヤマトの肩をポンポンと叩いた。

「わかった。」

「トレーダーに関しては、あたしに任して!このあたしが自分のホームグラウンドに居て、負ける要素は1pÅ(ピコオングストローム)も無いからね!」

輝くような笑顔を浮かべたサヨリがタケルヤマト皇太子の顔を見た。その笑顔を見て、タケルヤマト皇太子の心が決まった。

「よし!行こう!トレーダーへ。」


1500年以上の歴史を誇る帝国最後の皇帝、タケルヤマト皇帝の回顧録に、この時の事が書かれている。 

『この時、我に勝利の女神が降臨したと思った。確かにそれからは、負け知らずで勝ち進んだ。しかしあとから思えばそれは、帝国が国家として、幸せな終焉の幕を開けた事にまだ気付かなかっただけだと。』

幸一は、この時の事を日記に

「第三皇太子殿。御愁傷様」

と一行書くにとどめていた。。


内乱状態になって3日目の帝国首都

「第一打撃及び機動艦隊、ロスト!近衛艦隊及び首都圏防衛全艦隊、ロスト!」

「何が起きた!」

「アードリアン宙域に集結しつつあった第一皇太子派艦隊が、一斉に行き先を攪乱してジャンプしました。チェイサーにて追跡しましたが振りきられました。」

「なんだと!補給は受けずにジャンプしたのか?」

「いえ、多少は補給していたと思いますが、我々の監視艦隊が付く前に逃げました。」

「なぜチェイサーで追えない?」

「時空震がひどく、追うことが出来ません。」

時空震のパターンを見た司令官は

「バカ者!奴等は、三段跳びで航跡を消しただけだ!古典的な欺瞞行動に引っ掛かりやがって!基礎から訓練してこい!」

「では、今からフィルターで……」

「もう遅い!各監視機構に対して、通達。いち早く艦隊を発見しろ!今にでも首都上空に現れても不思議じゃないぞ!」

「わかりました!」

「それと、第三打撃艦隊に通達。首都防衛体制を取れと!」

「了解しました!」

慌ただしく命令を各方面に飛ばしていた。


帝国首都にある。軍総司令本部

普段の規律あるエリート軍官僚らしからぬ喧騒に満ちていた。

それは突如、3日前に第二皇太子が起こしたと伝えられる、皇帝陛下暗殺に関わり、第二皇太子が第三皇太子に殺害され、第一皇太子と第三皇太子の皇帝の席を巡っての御家騒動。

各所で第一皇太子派と第三皇太子派に分かれて情報収集に明け暮れていた。

その中でもいち早く体制を建て直したのは、第一皇太子派閥だった。

まず、第二皇太子派閥の多い外務省を掌握し、対外的に安泰している旨の情報操作を行い、第一皇太子の安否確認をした。

その結果第一皇太子は、既に宇宙に上がっており、現在近衛艦隊と合流する為に移動中という、情報が伝えられる。第一皇太子派閥はその情報を受け、普段通りの業務の再開させていた。

 第一皇太子は普段から、役所勤めの職員に対して、有事の際は現状把握して、各自の身を守ったら国民の為に働く事が役所勤めの本分だ、と繰り返し伝えていた。

それが今回活かされ、各省庁は冷静な対応がとることが出来た。

第一皇太子派閥が内政をほぼ掌握していたから出来たとも言うが、艦隊勤務者は、第三皇太子の影響力が強く混乱が続いていた。

影響がなかったのは、近衛艦隊と首都圏防衛艦隊、第一機動及び打撃艦隊が、第一皇太子派、第三打撃艦隊、第二機動艦隊が第三皇太子派で強い結束で行動していた。

もし艦隊戦になれば、第三皇太子が有利と全ての職員及び国民は思っていた。なぜなら、第三皇太子の片腕と言われる惑星トレーダーの駐在軍総司令のクスノマサツグ司令官が保有する第七艦隊が第三皇太子側に付けば、戦力差は倍以上に成るからである。

ただ、今回の御家騒動は、第三皇太子が皇帝の座がほしくて起こした騒ぎと国民からは思われていて、世論調査した結果は、第三皇太子にとって芳しくなかった。

このままだと、第三皇太子が皇帝の座に付いたとして、国家運営に支障をきたすのではないか?と思われていた。



商都 惑星トレーダー  

サナトリア統一連邦共和国の高速艦隊は、帝国首都から最高速度を維持して、帝国の高速艦でも4日かかる距離を、2日間で惑星トレーダーにたどり着いた。

「うん。いつ見ても、壮観な眺めよねぇ。」

サヨリは、サナトリア統一連邦共和国所属高速偵察巡洋艦の艦橋から、行き交う大量の商船を眺めて無邪気にはしゃいでいた。


「艦隊は船泊の宙域にて停泊後、半舷休暇。2日後本国に向けて出港する。それまでに、物資の補給を確実にな。」

明美は、サナトリア統一連邦共和国所属の艦隊に対して、補給と休暇の指示を出していた。

「それじゃ、行きますか?」

幸一が、タケルヤマト皇太子に気楽に声をかけて、トレーダーからの迎えのシャトルは向かった。

惑星トレーダーは、サナトリア統一連邦共和国の大使をはじめ、帝国の第一皇太子が寄港したと言うことで、要人迎えのシャトルを仕立ててサナトリア統一連邦共和国艦の旗艦バントウに接続していた。

タケルヤマト皇太子達は、敵陣と言ってもいいトレーダーへの上陸に緊張した面持ちで、連絡ブリッジを渡った。



惑星トレーダー、軌道エレベーターターミナル

第一皇太子達は迎えに来たシャトルで、地表へとつながる、軌道エレベーターターミナルに案内され、現在、そこにある貴賓室に向かっていた。


 案内の女性の後ろに、サヨリ達3人、その後ろに第一皇太子達3人がついて歩いていた。

「こちらで、皆さまがお待ちです。」

と言って、両開きの重厚な扉を恭しく大きく開けた。

部屋の真ん中に赤い絨毯が敷かれ、その両側に数名の正装した男女が膝をつき頭を垂れて並んでいた。

正面奥には、3人の男性も片膝をつき頭を垂れた姿で出迎えている。

その中をサヨリが先頭で歩いていく。クロダ宰相やタケルヤマト皇太子にとって、良く目にする光景だが、どこか雰囲気が違う。

皇太子である自分や宰相のクロダを、敬っている雰囲気ではない。

前を行く幸一は苦笑した、明美からは呆れたと言った感情が感じられる。どう言うことかと考えているうちに、奥の3人の前まで来ていた。

サヨリは、3人の右端にいる初老の男性に明るく

「元気だった?」

と声をかけると、男性は顔をあげ、

「はっ。家族共々恙無く暮らしております。」

「それは良かった。やたちゃんはどう?」

次にさよりは、左側の男性にも声をかけると、男性はにこやかに

「はい!サヨリ様のご指導のおかげで商売繁昌になっております。」

「うんうん、あなたに任して良かったよ。これからもよろしくね。」

「はい!今以上精進を尽くして参ります。」

最後に真ん中の男性に近寄り

「クッスンは、今回、どうする?希望は聞くよ。」

と、優しい声で語りかけると、面を伏せていたクスノマサツグ司令官が顔を上げ

「サヨリ様に、一点確認したいことがございます。」

「なにかな?」

「今回の件。そちらの第一皇太子が原因でしょうか?」

クスノマサツグ司令官は、殺意のこもった目付きで第一皇太子を睨み付けた。

サヨリは少し困った顔をしたが、顔から笑みを消し真面目な顔になると

「あ、彼は関係なし。確かにあたしの婚約者に成ったから、クッスンが気にするのはわかるけど、それとは別。彼の事だけなら、ここには来ないわ。現地で3日でケリ付けるから。最大の原因は、このあたしを貶めて嵌めようとしやがった奴等に、どっちが上か教えるためだから。」 

冷たく言いは成った。それを聞きクスノマサツグ司令官は平伏するように、頭を下げると

「解りました。サヨリ様の元で、働かさせて頂きとうございます。」

「ありがとう。ごめんね、無理させたっちゃったね。あたしの出来る事範囲で、あなたに報いたいから、希望があったらなんでも言ってね。」

と労うと

「滅相もありません。そのお言葉だけで、ありがたき幸せです。このクスノマサツグ。粉骨砕身サヨリ様に尽くす所存です。」

サヨリはしゃがんで、クスノマサツグ司令官の肩をそっと叩き、

「期待しているわ。」

と耳元で伝えると、立ち上がり周りに対して

「さぁ、みんな!畏まってないで、これからの事を考えるわよ!」



 帝国首都では、2日前に行方のわからなくなった第一打撃及び機動艦隊に近衛艦隊、首都圏防衛艦隊からの奇襲を恐れ防衛体制を解かずに警戒していた。

そこに、艦隊発見の連絡が

「第三皇太子殿下。第一皇太子の行先及び第一打撃艦隊等の集結先が判明いたしました。」

「どこだ。」

「惑星トレーダーであります。現在、惑星トレーダー沖の宙域に続々と集結しているようであります。」

「惑星トレーダー?まことか?」

「はい!観測ブローブからの情報によると、一定の間隔を開けて集結及び停泊しているもようです。」

「第一皇太子。何を考えている?そこは、貴様等にとって敵陣の真っ只中に等しいぞ。まさか、惑星トレーダーの第七辺境艦隊を撃ち破り、惑星トレーダーを拠点にする気ではあるまい。どうする気だ?」

「クスノマサツグ司令官に連絡して、確認しましょう。」

惑星トレーダーの軍司令本部に連絡してみるが、異空間ノイズが酷く繋がらない。

「通信妨害されているとしたら、すでに、戦闘状態に成っているやも知れません。救援に向かいましょう!」

「確かに情報が少なすぎる。至急、惑星トレーダーに関して情報収集をするよにせよ。」

「了解しました。」 

「我が艦隊は、いかがしましょう?」 

「惑星トレーダーの第七辺境艦隊が、第一打撃及び機動艦隊とやり合って、やすやすとトレーダを落とされる事はなかろうが、無事に済むわけもない。援護するために我が艦隊から分隊を編成し送り込む。中規模の派遣部隊を編成。出来次第発艦せよ。」

艦隊司令部はあわただしくなり、戦艦10隻を中心としたその数250隻あまりの、打撃艦隊を中心とした派遣部隊を編成し、部隊間リンクが出来た部隊から順次救援に向かった。

それらを見送っていた、ゲッペルが

「第一皇太子は、惑星トレーダーを拠点にするのでしょうか?」

疑問に思った事を口に出した。

「だとしても、第一皇太子はトレーダーに関して、知己の者が居るとは思われませんな。確かに、第七辺境艦隊を味方に付けることが出来たのならば、我々はかなり厳しい状況に追いやられる事に成りますが。」

「確かに、第七辺境艦隊が敗れ、第一皇太子派に寝返ることになれば、我々が戦力的に追い詰められる立場となる。」

「いくらなんでも、それはあり得ないだろう。第七辺境艦隊の最高司令官は第三皇太子殿の片腕と言われるクスノマサツグ司令官ですぞ。そのようなお方が第一皇太子を与されるとは思わん。そもそもクスノマサツグ司令官は、第一皇太子のことを毛嫌いしておりました。」

「確かに。金や権力には、靡かない男だからな。その点は安心できる。」

司令部で今後の対応を会議する場で、ゲッペル情報中将が

「第一皇太子は、第一連合艦隊に座艦しているのでしょうか?」

と疑問を口にした。

「どうした?ゲッペル。先ほどから浮かない顔をして、心配事でもあるのか?」

「いえ。第一皇太子がこの星から上がったのが確認できたのは、惑星トレーダー近郊に第一打撃及び機動艦隊が集結することにより、第一皇太子の識別信号に反応が有ったからですよね。」

「そうだが?」

「第一皇太子は、どうやって上がったのでしょうか?私の情報網からは、ルートの特定が出来ませんでした。」

ゲッペル情報中将が、自らのレポートに目を落として、そう伝えるとアシヤ参謀長官が

「ワシのところの情報網からは、貨物コンテナー内に皇太子等を隠して、城よりトラックで運び出し、そのまま個人経営の運送屋に運ばせた、とあるが。」

その返答をもらっても、ゲッペル情報中将は

「しかし、その個人経営の運送屋を、調査したところ、10社あり、送られたコンテナー全て行方不明に成っています。理由は、荷物の引き渡しを、座標指定届されたためです。」

「わかっておる。あの犯罪まがいの受け渡し方法でな。」


 座標指定届とは、港での受け渡しではなく、宙域座標の座標を指定して宇宙空間にて荷物の受け渡しを行う届け方で、相手に直接渡さなくとも、コンテナーを指定座標に置き、指定ビーコンを発信させればそのままでよく、よく無寄港レースに用いられる荷物の受け渡しであった。

 ただ、悪用される可能性が高いため、運送業者には事前に申請が義務付けされていた。

申請により、運輸省配信課から誘導ビーコンの周波数が指定せれ、コンテナーに指定されたビーコンを発信させなければならない。

 荷物を受け取った側が、ビーコン発信解除コードを入力した時点で受け取り完了となる。

 配信課を通さずビーコンを発信させたり、他人のコンテナーを取れば重罪に課せられる事となる。

配信課は、犯罪目的のコンテナーのビーコンを監視する役目もあった。


「座標指定届自体は、事前に申請しておけば犯罪にはなりません。無寄港レースや長距離探査の為の補給物資の受け渡し方法として確立されていますから。ただ、今回の座標指定届された座標を調べていると、法則性が見えまして、」

ゲッペルが宙域図に座標投棄された座標を表示する。

「これって、使用されたコンテナーの大きさから、小隊規模の艦隊ならば、補給の受け渡しになるのではないでしょうか?」

それは、アードリアン宙域から帝国首都へ繋がるラインに成っていた。

「第一皇太子の個人識別信号が、トレーダー近郊で確認されたとのことですが、彼等は個人識別信号を欺瞞する方法を知っています。

消す事が出来るのならば、特定の箇所に表示させることも可能ではないでしょうか?

我々は考え違いしていたのではないでしょうか?まだ第一皇太子がこの地を離れていなくて、潜伏していたとしたら?

もしかしたら、近衛艦隊及び首都圏防衛艦隊の目的地はトレーダーではないとしたら?」

すぐさまアシヤが

「惑星トレーダー近郊宙域に、近衛艦隊及び首都圏防衛艦隊は?」

「そちらは、まだ判明しておりません。」

「首都圏防衛艦隊はともかく、近衛艦隊が惑星トレーダー近郊にいないのか?」

「はい!現在、確認出来ておりますのは、第一打撃及び機動艦隊の旗艦クラスが惑星トレーダー近郊宙域に集結しつつあるという」

「目立つ艦ばかりだと!補助艦の類いは!」

「現時点では、付随しているであろう駆逐艦隊や補給船団は発見されていません。」

「我が艦隊に緊急通達。首都防衛体制を厳にしろ。惑星トレーダーに集結しているのは、陽動の疑いあり。

 第一皇太子のシグナルが惑星トレーダーに有ろうが油断するな!すでに奴等は個人識別信号を改竄する能力がある。大艦隊を陽動に使い、近衛艦隊及び首都圏防衛艦隊を使った、首都への攻撃を考えている可能性がある。」

第三皇太子の命令通達に応じて、第三皇太子配下の艦隊は全て首都防衛体制にシフトしていった。

しばらくすると、敵味方識別信号を出していないピケット艦3隻が、首都圏近郊の宙域にジャンプアウトしてきて、強力な探査波を放ってすぐにジャンプして逃げて行った。

「やはり来たか、かなりの策士が向こうに付いているようだな。アシヤ。今の探査波を放ったピケット艦をどう思う。」

「やり手ですな。おそらく、こちら側の戦力の分析する為に放ったのでありましょう。第七辺境艦隊と一戦するのかと思わせておいて、首都攻略部隊を放って来るとは。」

「奴等は、我々がまだは『覇者の勾玉』を確保していないのを知って、手薄に成った首都攻略をするつもりか?」

「それと、第一皇太子はまだ、この星から出て無い可能性が有る。」

「陸戦隊は、公安、警察と協力して、隠れている第一皇太子を探し出せ!」

「そうなると、艦隊の戦力差が不味いな。派遣した艦隊の分若干だが、近衛艦隊の戦力が上だ。それに、首都圏防衛艦隊が足されると、負けはしないだろうが、無視できる損害で済むわけもない。」

「今しがた、惑星トレーダーに向けて出港して行きましたからな。」

「防衛主体ならば、被害を最小限に抑えられるか?今のピケット艦は、現在の戦力を確認しに来たのだろうな。タイミングが良すぎる。呼び戻すか?」

第三皇太子は、宙域図を睨み付け考えていた。

6時間後、同じようにピケット艦3隻がジャンプアウトしてきて、再び強力な探査波を放って逃げて行った。

それを踏まえて第三皇太子は、派遣した艦隊の半分を引き返すように指示を出して、首都防衛体制を強化した。

それと並んで、潜伏していると思われる第一皇太子を探し出すために、あらゆる手段を用いた。そのため、国民からは、ひどく疎まれた存在になっていくが、かまってはいられなかった。


 しかし、それを嘲笑うかのように、

『タケルヤマト皇太子の領地に、近衛艦隊が集結の兆し有り』

との連絡が入る。

「アシヤ。どう考える?」

「今のところは、なんとも答えられませんな。近衛艦隊がメインなのか、第一連合艦隊がメインなのか?はたまた、首都圏防衛艦隊が首都攻略してくるのか。」

「ゲッペルの考えで、民間のコンテナーを利用した補給を使ったとなると、首都圏防衛艦隊は十分な補給が受けられたと考えて良いだろ。では、近衛艦隊はどうだろう?」

「私くしめが思いますには、最初に寄港したアードリアン宙域内で、補給を終えたと考えます。その補給で、領地に戻ったものと考えられます。」

「第一連合艦隊はどうだろう?」

「難しいところではあります。ただひとつ言えるのは、艦隊全体としては、十分な補給は受けられなかった、であろうと言うことです。」

「なぜそう言える。」

「まずは、第一連合艦隊の艦艇の数が多すぎます。全ての艦艇に十分な補給をするのに、あまりにも滞在時間が少なすぎました。補給が十分に受けられたのは、せいぜい小型艦艇位でしょう。中型クラス以上は、半分も補給は出来てないと思われますな。」

「それだとすると、録な補給も無しに第一連合艦隊のメイン艦艇は、トレーダーに来たのか?ますます陽動行動としか見えんな。それに、補給を十分に受けられたと思われる小型艦艇が少なすぎる。それについて、アシヤ。何か思うことはないか?」

「2つ考えられます。」

「聞かせもらおう。」 

「まずは、首都圏防衛艦隊と合同にて、首都攻略部隊を結成し、手薄な防衛箇所に突入して首都陥落する作戦。

もう一つは、領地に篭り反抗体制確立する作戦。でしょうか?」

「どうしてそう言える?」

「第一皇太子がまだ首都に潜伏している場合、防衛衛星の内側のアステロイド地帯に、小型艦艇を集結させ、一気に首都に攻め入り、我々を首都より追い出し新皇帝を名乗りあげる。

首都圏防衛艦隊の連中は、アステロイド地帯での訓練を良くしておりましたから、我々の知らない抜け道があっても不思議ではありません。

領地に篭る手段は、悪手ですが軍艦を輸送船代わりに使うとなると、若干活路が見えます。ただし輸送量が大幅に減るので、コスト的に合わない方法ですが。」

「そうすると問題は、残った第一連合艦隊の扱いだが?アシヤ、お前なら陽動以外にどう使う?」

「そうですなぁ。」

問われたアシヤは、しばし考えて

「今のままならば、首都攻略部隊の突入に合わして、防衛衛星への攻撃をとりますな。

満足な補給が無いのなら、首都攻略部隊の為に玉砕攻撃を仕掛け、少しでも成功率の向上に役立てるでしょうなぁ。」

「やはり、使い道はそのぐらいか。」

「ただ万が一、補給が充分されていた場合。第一連合艦隊として、どこで火蓋を切るかが問題になりますな。

第七辺境艦隊と構えるのか?領地防衛か?首都攻略なのか?ま、どの手で来られようが、このアシヤにお任せあれ。首都圏へは1隻たりともたどり着けやさせませぬ。」

自信に満ちた顔で応えるアシヤに、キシリア第三皇太子は

「作戦は、任せた。」

「御意。」

しかし、かめちゃんの影が薄くなってきている(^^;

しばらくは、さよりのターンになります

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