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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第3章
96/144

帝国にて8

 地下の抜け道を、3人は無言で走っていた。教えられた通りに右に曲がり、宝物殿に繋がるエレベーターに乗り込んだ。


「で、宝物殿のどこに出るんだ?」

「それを聞くのを忘れてたな。」

「外か内かで対応が変わります。」

タケルヤマト皇太子は、少し考えて

「宝物殿の中に出ると思う。」

「理由は?」

「このような抜け道は、有事の時に無事に逃げ出せる為に造る物じゃないか。そう考えてみると、城から逃げる時に皇帝としての証も、持って逃げないと再建する事は出来ないだろう?それとだ、当面の生活資金も必要だからなぁ。見つからずに証と資金を回収する為には建物の内部に出るようにしていると考えた方が普通だろう?」

「確かにな。着いたようだぞ?」

エレベーターの前に立ち

「行くぞ。」

3人は、エレベーターに乗り込み宝物殿へ向かった。


 エレベーターは静かに上昇し止まる。しかし、扉は開かず操作パネルのモニターが周囲の映像を表示した。

「良く出来てる。いきなり扉が開かず、周囲に敵がいるか確認してから扉を開けるようになっている。」


誰もいない薄暗い通路が写し出されていた。


「でも、ここはどこだ?」

「とりあえず、出よう。」

3人は、エレベーターの開ボタンを押し通路に出ると、目の前に一枚の扉が有った。

「ここから、中に入れるようだ。」


扉には覗き窓があり、中の様子が見れた。

「誰もいないようだ。行くぞ。」


 神器を探す為宝物殿に入ると、そこは棚が大量に納められた小部屋になっており、入って来た扉以外にもうひとつ奥に扉が有った。3人は近くの棚から調べ出した。


 「さすがに宝物殿。金銀財宝がところ狭しに置いてあるなぁ」


 棚に置かれていたのは、きらびやかな宝石で出来た宝冠、大粒の宝石をあしらったネックレス、金塊等。

どれをとっても、当面の生活に困る事のない、金額になるのは確か。

しばらく調べていたが、貴金属ばかりで


「ここは、逃避行用の資金用か?」

「神器は、置いてないようだな。」 

「次に行こうか。」


3人は入って来た扉ではなく、もうひとつの扉を開け次に進んだ。

そこも小部屋になっており、ほのかに照らされた部屋に置かれていたものは、大型のガラスケースの中に納められた、漆塗りの黒い木箱が二つ。


「温度に湿度が調整されたガラスケースの中にある木箱。これに間違いないだろう。」

「でも、タケル。神器は3つじゃ無かったか?」


 クロダ宰相が指摘した通り、ガラスケースの中には、置き台は三つ有った。だが木箱は二つしかなかった。


「まさか!すでに持ち去られた!」

慌ててガラスケースを開け、中のひとつを取り出して箱の中を確認してみると、古い剣が納められていた。

「これは神器のひとつ、八岐の剣だな。」

タケルヤマト皇太子が手に取り、調べるように眺めていると、部屋に灯りがつき、小部屋全体を明るく照らした。

別の扉から第三皇太子のミツシサキリシアが部下を引き連れ現れた。


 「タケル!!ここで何している!さては!覇者の勾玉を奪取しに来たな!」

と言うなり残っていた木箱を取ると、中から神器を取り出した。

「これは!」

出てきたのは、青みがかった金属で出来た円盤状の物だった。

「草薙の鏡」


 保管棚が空いていた場所に置かれていたであろう、残る神器の『覇者の勾玉』の入れ物が存在しない。ミツシサキリシア第三皇太子はタケルヤマト第一皇太子に掴みかかり

「勾玉をどこへやった!」

「知らん!ここに来たとこから、すでにその棚には何もなかった!」

タケルヤマト皇太子の手にしている剣を見て

「まさか、ミコトスサノ?」

と言って手を離し、考えだした。

「お前が殺したのだろ?それが」

「うるさい!そうか!」

突然、踵を返して入って来た扉に向かって歩き出した。

「あいつが先に『覇者の勾玉』を、確保しているのか!だから、今回の話を持ちかけてきたのか。あいつの部屋を調べるぞ!」

ミツシサキリシア第三皇太子は踵を返し、入ってきた扉へと向かった。


「待て!どこへ行く!」

タケルヤマト第一皇太子が呼び止めるが

「うるさい!この3人が出ないように、この部屋に閉じ込めておけ!」

そう言い残しミツシサキリシア第三皇太子は小部屋を出て行った。

彼の部下達は、銃で3人を牽制して小部屋を出ると、扉を閉め鍵をかけた。


コンドウ近衛兵団長が、閉められた扉を力任せに、開けようとしてみるが、ビクともしなかった。

「閉じ込めた気なんでしょうか?」

コンドウ近衛兵団長が、二人のもとに帰ってきて小声で呟くと

「だろうな。扉は、1つと思っているんだろう。俺達も、あいつの部屋に行くぞ。」

と言って立ち上がりタケルヤマト皇太子は、草薙の剣を腰のベルトに差し込むと、踵を返し入って来た扉に向った。

「どうやって、第二皇太子殿の部屋へ行かれるのですか?」

コンドウ近衛兵団長が聞くと、

「来るときに、サヨリさんが言っていた。私邸に行けるエレベーターが有ると。それを使えば、ミツシサよりも早く行くことが出来るはずだ。」


そう言うと入って来た扉から出て、()()の小部屋を通り抜け、エレベーターに乗り地下へ。来た道を戻ってサヨリに教えられた通りに、第二皇太子の部屋に通じるエレベーターに乗り込んだ。


エレベーターが上昇し扉が開くと、香水の匂いと大量の派手な上着が目の前に掛かっていた。

「どこに出たんだ?」

上着を押し退けて、エレベーターを出ると、

「あいつのクローゼットか?」


出た先は、ミコトスサノ第二皇太子の衣装部屋だった。


 衣装部屋から移動して、3人で手分けして『覇者の勾玉』を探す事に。

城の敷地内に在る私邸と言えど、第二皇太子の私邸が狭いわけなく、プライベート空間の部屋数だけでも十を越える。

焦る気持ちを抑えながら、静かに探していたが、外から数名の悲鳴に罵声が聞こえてきて、部屋の扉が蹴破るように開かれた。


「タケル!!なぜここに居る!あの部屋に閉じ込めたはず。」

「ヤバい!」

タケルヤマト皇太子達は、まだ目的の『覇者の勾玉』を見つけられずにいたが、第三皇太子達が武装して押し入ってきた為に、捜索は中断し活路を求め、近くに有った窓を蹴破り、転がるように庭に飛び降り庭木を盾にして、逃走を余儀なくさせられた。

第三皇太子の部下達は、逃走するタケルヤマト皇太子達に向かって発砲。

数名が追跡の為、3人のあとを追った。


「くそ!逃げられたな。まあよい。あいつらは、『覇者の勾玉』を見つけられずに逃げたようだ。

おい!ここに有るものは全て持ち出して調べろ!」

残った部下達に、第二皇太子の私邸に有るものは、衣類はもちろん、ベットや家具類、床に敷いてある絨毯までも剥ぎ取り、全てを表に出して埃一粒に至るまで、調べるように徹底的探索させた。


 第二皇太子の私邸から、逃げ出したタケルヤマト皇太子達3人は、第三皇太子の部下達からの銃撃で、クロダ宰相が太ももを撃たれ重傷になったものの、コンドウ近衛兵団長の奮戦により追っ手は撃退出来た。


 3人は、クロダ宰相の太腿の傷を応急処置を施し、止血して木に寄りかかって休んでいた。

1人では歩けなくなったクロダ宰相が

「俺を置いて逃げろ。」

と、タケルヤマト皇太子に告げるが

「置いて行けるわけないだろう!それにだ、城内とは言え、追跡システムからどうやって逃げると言うんだ?」


 ここまで来るのに、サヨリの手により追跡システムに何らかの妨害をして、城内に入ることができたが、城内ではそれが出来ないと言われていた事を思い出していた。


「タケルヤマト皇太子殿下、クロダ宰相殿。よろしいでしょうか?」

コンドウ近衛兵団長が、声をかけてきた。

「あぁ。君にも迷惑をかけたねぇ。なんだい?」

「いえ、これが我々近衛兵団の仕事ですので。それよりもう一度。あのサヨリと言う女性に、居どころをかくしてもらえればいいのでは?」

「確かにな。ただ、サヨリさんが待っててくれているであろう、建物がどれかわからない。」

タケルヤマト皇太子が、周りを見渡して困った顔をした。

「それなら、わかる。あそこの建物だ。」

クロダ宰相が指さす

「あそこが、総合公舎2号館だ。彼女が公安職員と言っていただろう?あの中に入っている。」

休んでいる木立から見える、15階建てのビルが有った。

「ここを突っ切れば、そんなに遠くないな。肩に掴まれ。行くぞ。」

タケルは、クロダの肩を抱きかかえて、歩こうとした。

「タケルヤマト皇太子殿下、私がクロダ宰相を背負います。殿下は、もしもの時、走って逃げれるように、しておいてください。お願いいたします。」

コンドウ近衛兵団長が、タケルヤマト皇太子からクロダの身体を剥ぎ取り、クロダ宰相を背負って歩き出した。

「タケル、そう言う事だ。お前は身軽な方がいい。」

「わかった。」


 3人は誰にも会わずに、無事に建物の前にまでたどり着けたのだが、館内に入るためには、受付の前に姿をさらさねばならず、躊躇させてしまっていた。


 「今日は休日だったよな。なんで、職員が普通に働いているんだ?これでは、侵入出来ない。」

入口から見えるエレベーターまでの間に、受付カウンターが有り、1人の女性が事務をしていた。


「誰か、受付窓口に行って、サヨリさんを呼び出してもらうか?」

「そんなことしたら、アイツ(第三皇太子)に居場所を教えるような物じゃないか。それに後々彼女(サヨリさん)に迷惑をかけてしまう。」

「じゃ、どうする?」


考えがまとまらず悩んでいると、受付に座っていた女性が立ち上がり、こちらに近づいて来た。


「まずい。受付女性がこっちに来たぞ。」

「こうなったら、覚悟を決めるか。」

近づいて来た女性は、入り口の影で隠れている3人を見て、

「何しているの?早く入って来なさいよ。」

「お前は!」

「あれ?」

「サヨリさん?」


そう、受付女性は、サヨリだった。


「うわぁ、クロダさん、ひどい怪我をしてるじゃない!大丈夫?」

クロダ宰相に駆け寄り、太腿の傷を確認すると、

「コンドウ近衛兵団長、クロダ宰相を担げる?」

「大丈夫だ。」

「それじゃ、クロダ宰相を担いで、そこのエレベーターで地下二階の駐車場に行って。あたしも、ここを処理したら行くから、3人共、エレベーターを出た所で待ってて。」


 そう指示すると、サヨリは受付カウンターに戻って、何事もなかったように業務を始めた。


 タケルヤマト皇太子は、言われたエレベーターの前に立ち、エレベーターを呼ぶとすぐに扉が開いた。

クロダ宰相を背負ったコンドウ近衛兵団長が、エレベーターに飛込みタケルヤマト皇太子も乗り込むと、エレベーターの扉がしまり降下を始めた。

地下二階でエレベーターを出ると、その場で座り込んだ。


「クロダ、これで逃げれると思うか?」

「わからない。後は、彼女に賭けるしかないだろう。」

「確かにな。」

タケルヤマト皇太子は、苦笑するしかなかった。コンドウ近衛兵団長が

「ひとつ、聞いてもよろしいでしょうか?」

「なんだ?あらたまって?」

「タケルヤマト皇太子殿下、彼女は、何者なのでしょうか?」

タケルヤマト皇太子は、クロダ宰相を見てから

「とりあえず、私の婚約者だ。」

「それは、知っています。しかし、彼女の能力の高さは、なんなのでしょう?あの、鉄壁と言われていた、個人追跡システムの盲点を利用する電子技能に、受付女に扮したあの変装、もう超一流な諜報部員です。しかも、我が国の仮想敵国からきています。疑う訳ではありませんが、彼女を殿下の妃にしても、本当によろしいのでしょうか?」

真剣な眼差しでタケルヤマト皇太子に問うてきた。

「君は、私が騙されているとでも、言いたいのかな」

「そう言う訳ではありませんが、皇族である皇太子殿下でさえ知らなかった、城の隠し通路の存在を知っていました。お亡くなりになられた、前皇帝陛下自筆の皇太子殿下との結婚許可書。皇帝陛下自ら、普通一庶民の女性に書くでしょうか?」

「彼女は、国に帰れば侯爵の爵位を持つ貴族なのだが。」

「それは知りませんでした。しかし、我が国と国交がなかった国の爵位に、どれ程の価値があるのでしょう?」

「確かにな。で、君は何が言いたいのかな?」

コンドウ近衛兵団長は、言葉を選びつつ

「彼女は、我が国の皇族関係の、血筋の末裔なのでは?」

と、確認をするように、タケルヤマト皇太子に問うてきた。タケルヤマト皇太子は困惑した表情を浮かべ

「はぁ?意味がわからないのだが?」

とかろうじて答えたが、コンドウ近衛兵団長は、核心をついたように

「私が思うに、彼女は何世代か前の皇族の本流の末裔で、何らかの争いに巻き込まれ逃げ落ちた皇族で、この度帰国が叶い、皇帝陛下も認めた結果、皇太子殿下との結婚許可に、グェ!」

話したが、その近衛兵団長のこめかみに、警棒がグリーンヒットし、黙らずにいられなかった。


 自分を襲ってきた、警棒の手元をコンドウ近衛兵団長が見ると、そこには、怒りの表情で仁王立ちをした、サヨリが立っており

「何を、わけもわからない虚言をしゃべっているの?」

と、冷めた目つきでコンドウ近衛兵団長を見下ろしていた。

その姿はスーツを着て受付に居た先ほどとは違い、作業服のようなユニフォームを身に付け、警棒を持って立っているサヨリがいた。


「あたしのご先祖をどれだけ遡っても、この国の皇族関係に掠りもしないわ!いい加減な事を言うな!」

「しかし、隠し通路は…」

コンドウ近衛兵団長がなおも反論をしようとするが、

「あんなもの、城の造りに不自然な所が至る所に有ったら、気になるでしょうが!気になったら調べるのが、人として当たり前の事じゃない。」

「いや、普通城の造りに不自然を感じるか?」

「そもそも、どうやって調べる?」

と、クロダ宰相とコンドウ近衛兵団長が思うが、

「城の造りが不自然なところは、壁に穴をあけるか、床を掘ればだいたい仕掛けが見えて来るもんです。」

得意そうにサヨリが説明するが、

「いやいや、普通するか?そもそも、穴をあけたらバレるだろう?」

クロダ宰相が首を振るが

「それが、案外気づかない物なのよ。通路を見つけたら、後は通路をマッピングして、開けたところを元通りに戻しておけば、大丈夫だし」

サヨリは、悪びれずにこやかに言った。頭を抱えながらコンドウ近衛兵団長が

「皇帝陛下自筆の、結婚許可書は?」

と聞くと、サヨリはしんみりした態度になって、タケルヤマト第一皇太子を見て

「皇帝陛下は、親としてとても悩んでらっしゃったの。あの親父さん(皇帝陛下)、タケルさんが絶えずクロダ宰相と、行動を共にしていたから、タケルは男好きって思い込んでいてね。

それはそれは、心労になって嘆いていらっしゃったから、あたしと居るときの態度や表情を、スナップ写真を見せながら、男性として普通の恋愛感情をお持ちですよとお教えあげて、最後にあたしの心情をお教えすると、ありがとう、息子を正しい道に導いてくれて、涙を浮かべて書いてくれただけじゃない。すごく心配してたわよ。クロダさんと恋仲で道ならぬ道を歩んでいるって思い込んでたからね。」

「えっ!俺がタケルを!」

クロダ宰相は驚き焦るが、サヨリはそれを無視して、タケルヤマト皇太子に

「まったくもう!初恋を拗らして、女性不信に成りすぎよ。」

「いや、サヨリさん?どうしてそれを?」

タケルヤマト皇太子も、焦って顔を赤らめた。

「クロダさん。待たせている彼女がいるんでしょう?トレーシーさんだったけ?早く告白しちゃいなさい!これは、あたしが引き取るから。」

サヨリがタケルヤマト皇太子の腕を掴み、ニコッと笑った。

男3人共に目を白黒させて、サヨリの言葉に理解がついていかない。

「混乱するのは後回し。はい、これに着替えて。」

と手渡されたのは、サヨリが着ているのと同じ運送会社の会社のユニホームだった。


訳も分からず着替えるとサヨリは、タケルヤマト皇太子を引きずるように車へと向かった。

「さぁ、乗った乗った。」

サヨリが用意していた車は、ここに来たときに乗って来た小型乗用車ではなく、有名な猫の飛脚のイラストが書かれた、3人掛けのシートの奥に仮眠スペースがあるタイプの大型クラスのトラックだった。

「どっから持ってきたんだ?」

「いいから、いいから。乗った乗った。」


 仮眠スペースにクロダ宰相を寝かせカーテンを閉め、運転席に近衛兵団長が座りサヨリが真ん中で端にタケルヤマト皇太子が着席していた。

「じゃ、中央宙港に行って。」

サヨリが行き先を指示したが、コンドウ近衛兵団長は

「行ってもいいが、行く道は封鎖しているし、行っても、港は閉鎖されているぞ。」

「大丈夫。帝国3大ギルドが猛烈な抗議をして、流石のミツシサキリシア第三皇太子も、折れずにはいられなかったみたいよ。さっき港の閉鎖が解除されたから。」

それでも、気になり

「検問はどうするだ?まだそれは撤収していないだろう?」

「そこのボードを見せれば、簡単に通れるようにしておいたから。」

電子ボードがダッシュボードの上に置いてあり、行き先とバーコードが表示されていた。

エンジンをかけ、半信半疑ながら近衛兵団長は、地下駐車場から地上へのスロープへ車を発車させた。

「一ノ丸門から出てね。」

サヨリからの指示に驚き

「おい!そこは最大の警戒態勢だろう!」

抗議するが

「大丈夫だって。ほらほら早く行く。」

地下駐車場から出て、サヨリの指示通り一ノ丸門に向かった。

そこは、普段以上に警備兵が多く、出入りする人や車を厳しく1台1台車内はもちろん、荷台に車体の下までも、覗き見て検査していた。


 4人が乗ったトラックが門の検問に差し掛かると、警備兵の一人に停止するように指示され、許可書の提示を求められた。

近衛兵団長が、緊張気味に先ほどの電子ボードを見せると、バーコードをスキャンした警備兵が

「ご苦労様、行っていいぞ。」

とすぐに解放して、次の車の検問を始めた。


 訳が分からないが、変に留まって疑われるよりも、速やかに離れた方がいいと判断したコンドウ近衛兵団長は、すぐさま車をスタートさせ城外に出て、一般道から高速道路に入ると、車内に安堵の空気が漂った。


サヨリはその間、どこかへ電話していた。

「あ、あたし。今、高速に乗ったよ。渋滞は無いようだから、手続き含めて小一時間かな?あぁそれとね、銃で太腿を撃たれた怪我人が1人いるんだ。処置をお願いできるぅ?……うんうん、それじゃ、それでお願いするねぇ。じゃまた後で。」

タケルヤマト皇太子が、サヨリに

「サヨリさん、クロダを傷の手当ての為に、病院に連れていきたいのだが。」

と、言えば

「それ、今手配したから大丈夫よ。」

笑顔で返してきた。

「ありがとう。」

コンドウ近衛兵団長が

「サヨリさん、中央宙港のどこへ行くんだ。」

「第6エリアの検閲所に行って。そこから宙港に車ごと入るから。」


40分ほど高速道路を走り、中央宙港に着いた。


 第6エリア検閲所にて、入港の手続きを終え宙港内を走りたどり着いたのは、サナトリア統一連邦共和国大使が乗って来た、大型シャトルの横だった。


「サヨリさん!これは!」

「質問は、後々。後部ハッチから車ごと積み込んじゃって。」


シャトルの後部に回ると誘導員がおり、トラックを船内へと誘導した。

シャトルのスロープを登り、指定位置にトラックを停止すると、船内員が手早く車体を固定、スロープは仕舞われ、ハッチも閉じられた。


タケルヤマト皇太子が降りると、

「怪我人は、どちらですか?」

ストレッチャーを運んできた、船医と思われる人物が声をかけてきた。

近衛兵団長が、肩を貸してクロダ宰相を車から降ろすと、ストレッチャーに乗せ、船医が連れていってしまった。


「じゃ、あたし達も行きますか?案内して。」

サヨリが近くにいた兵に声をかけると、

「こちらです。幸一様と明美元帥閣下がお待ちです。」

兵が、先導して船内を案内した。

「へぇ、あ~ちゃん(井上明美)。出世してるなぁ。」


サヨリの後ろに従うように、タケルヤマト皇太子とコンドウ近衛兵団長が付いていく。

「タケルヤマト皇太子殿下。我々はどこへ連れて行かれるので?」

「サナトリア統一連邦共和国のトップの所へだろうな。」

タケルヤマト皇太子は緊張気味に答えた。


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