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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第3章
93/144

帝国にて5

会見の間は、しばし静かなティータイムになっていた。

「で、さより。どうする?」

珈琲を飲み終えた明美がさよりに問うと

「う~ん。それで困っているんだよねぇ。皇帝陛下が予定より早くお亡くなりになったからねぇ。」

と腕を組んで困った素振りをした。

「と言うことは、まだしばらくは帝国に居座る気なんだな?」

「そうだね。仕込みがまだ完全じゃないんだけどねぇ。」

「仕方ないな。お前が死ぬわけないと思っていたが、とりあえず生存していた事は確認が取れたし、サファイアが逢いたがっていたが、それはお前がなんとかしろよな。」

「それはなんとかするよ。どうせ、最後の仕上げには、協力してもらう予定になっているからねぇ」

「無茶振りはやめてくれよな。」

「あ~ちゃんなら大丈夫、大丈夫。ちょっと大きな花火を上げる予定だから、楽しみにしていてね。」

さよりがニコニコ笑いながら話せば話すほど明美の顔色が悪くなって

「ほどほどにしておけよ。」

と、ため息と共に吐いた言葉のあと、諦め顔になった。

「ちょっとすまない。御二人の話が見えないのだが、今の話を聞くと、皇帝陛下が亡くなるのが早まったように聞こえたのだが。どういうことか、説明していただきたい。」

クロダ宰相が問うと、タケルヤマト皇太子も

「確かに、医師団の見解でもあの急変はおかしいと言う者もいたが、そもそもさよりさんは、この3ヶ月何処に居たのですか?」

「うん?あたし?お城に居たよ。と言うか皇帝陛下の側付き侍女してたけど?」

「「なんだって!」」

皇太子と宰相は声を揃えて叫んだ。

「いつから城にあがっていたのですか!」

「4ヶ月前かなぁ。侍女の欠員が出来たとかで募集していたから、応募したら合格したみたいで、採用通知が来たから慌てて、どうせ短期の採用だからと言って、働いていたところに無理を言って出向扱いさせてもらって、3ヶ月前からお城で働いていたよ。」

皇太子が宰相を見ると

「確かに、4ヶ月程前に高齢の皇帝陛下付き侍女が1人退職しまして、後任の募集をかけたのは覚えております。」

「クロダ、お前、確か最終面接のメンバーだったよな。」

「確かに最終面接は、私と筆頭侍女長のサマンサ、公安局局長のイサミコンドウの3人にて行いました。面接の時は」

宰相が、さよりの顔を見つめると、

「アッ!思い出した!特級侍女の資格を持っているので、高度な質問に答えられるか試したら、完璧過ぎる返答してきて、筆頭侍女長は喜び、なぜか途中で公安局局長が、顔色が悪くなる事態になって、私は彼女の知識に舌を巻いたのでした。」

「じゃ、なぜ今まで彼女に気が付かなかったんだ?」

「あの時と全く違う雰囲気でしたから。てっきり別人かと思っていました。」

「ま。化粧の仕方一つで雰囲気をガラッと変えることが出来るもんね。」

ニへらとさよりが笑った。

「それより、さよりさん。どうして私に連絡をくれなかったんですか?」

タケルはさよりに不満をぶつけるが

「気が付かなかっただけじゃありませんか?あたしは、皇帝付きの侍女ですよ?皇太子様達が皇帝閣下の御面会の時も、皇帝閣下のそばに控えておりましたよ?」

「えっ?」

「そもそも、皇帝付きの侍女に気安く御声をかける皇太子を見たら、周りはなんて思いになるか?自重なさいませ。」

ピシャリとさよりは、侍女然とした態度で皇太子をたしなめた。

「確かにそうだな。」

寂しそうに少し項垂れた皇太子が吐くと、さよりがはぁ~とため息をつくと

「仕方がございませんね。ほれ、これが有ればいいでしょ。」

と1通の封書を皇太子に手渡した。受け取った皇太子が何気なく見ると、驚いたように

「この封蝋は!皇帝しか使えない物じゃないか!」

慌てて封を切ると、中に入っている羊皮紙で書かれた書類を引きだし内容を読むと、驚きは最高潮になった。

「サヨリさん!これって!」

顔を興奮と羞恥心で真っ赤にした皇太子が、さよりに向かい声にならない喜びを表していた。

「クロダ!これを見てくれ!!」

クロダに手渡すと

「これは!タケルヤマト皇太子。おめでとうございます!しかし、これでは勅令に等しいですね。」

直筆のサインに玉璽まで押してある書類の内容を読み、クロダ宰相は祝辞を述べた。

グランド近衛兵団長も側近も、同じように祝辞を述べ皇太子を祝った。

「まったく。それをもらうのにどれだけ苦労したか、わかる?」

ガラにもなく、照れたようにさよりが顔を朱に染め、プイッと横を見て言った。

「サヨリさん、ありがとう!我が命が尽きるまで、貴女を大切にすると誓おう!!」

と、帝国側のメンバーが異様に盛り上がるのを、なんだか蚊帳の外に置かれた幸一と明美は、さよりに

「何が書いてあったんだ?」

「何を渡したの?」

と尋ねると

「大したことないわよ、前皇帝陛下直筆のあたしと皇太子の、婚姻許可書だから。」

その言葉を聞いてしばらく、幸一と明美は理解が出来なくて、ぽかぁ~んとしてしまった。

「婚姻許可書って!結婚!!!」

「さよりが!!結婚!!」

と叫んでから、大声で笑いだした。

幸一は笑いながら腹を押さえて、痛い痛いとのた打ち回り、明美は目に涙を浮かべと言うより涙を流しながら、大笑い。

「だから、この二人の前で見せたくは無かったんだ。」

とさよりはむくれて、皇太子にテーブルナフキンを投げつけると、赤い顔を見せないようにうつむいた。

ひとしきり大笑いした、幸一と明美は、さよりの側に行き

「いや~笑ってすまん。」

「ごめんね。」

と謝罪して、

「心から、おめでとうと言わせてもらおう。」

「私からも、おめでとうと言わせてね!」

とさよりの手を取り、2人はさよりに微笑んだ。

「ありがとう。」

さよりも満面の笑顔を浮かべ、2人に答えた。

「しかし、これで妻帯者が3組目か、」

「サファイヤちゃんが喜ぶわね。」

と幸一と明美が言っているところに、さよりが

「幸ちゃん。さっきあたしと皇太子が結婚したら、ミルキーロードとか言っていたわね。」

「言ってたけど?違うのか?」

さよりは右手の人差し指を左右に振って

「チッチッ、違うわよ。ミルキー?そんなもんじゃないわよ。ハニーシュガーロードになるに決まってるじゃない!あ~ちゃん。今まで惚気られた分、倍返ししてあげるからね。覚悟しておいてよ!」

「ゲッ!幸一逃げてもいいかな?」

「ダメに決まってるだろう。拓哉と一緒に惚気られろ!」

といって、いい笑顔で幸一が明美を見た。タケルヤマト皇太子は

「さよりさん、喪が明けたらすぐにでも、婚姻の儀に・・・・・」

と言いかけるが

「ちょい待ち。結婚するためには、これから始まる最後の試練を超えてからね。それが出来ないのなら、この話はなかった事にするからね?まぁ、仕込みが不十分だった分、あたしも協力するから、ね。」

と、さよりに止められた。

「最終試練?」

タケルヤマト皇太子が、首を傾げるが

「そっ。もうすぐ始まるから」

と言って、胸元から眼鏡を取り出し掛けて、耳に無線イヤーフォンマイクを装着した。

それを見た幸一と明美は、周りを警戒するようにいつでも動ける用意をした。

訳が分からず、タケルヤマト皇太子が

「サヨリさん、何が始まるんだい?」

と、問いかけたその時だった、爆発音と銃撃戦の音が外から聞こえてきた。

負傷した近衛兵の1人が会見の間に走り込んできて

「報告いたします!第三皇太子の私兵が攻撃してきました。敵は現在、この建物を囲むように布陣しております。一刻も早くこの場所からお逃げください!」

会見の間は一瞬騒然したものの、すぐさまグランド近衛兵団長は、

「殿下、この場は我々が盾となりますので、その隙に建物からお逃げください。」

「しかし、この建物を包囲されているのだろう。どうやって逃げろというのか?それよりも私が投降すれば君らは助かる。」

「しかし、殿下が投降したところで、」

と、帝国側のメンバーが話していると、外から拡声器で

「我は、第三皇太子ミツシサキリシアだ。室内に居る、タケルヤマト皇太子、いや、国賊のタケルヤマト!皇帝毒殺の容疑がある!すぐさま罪を認め投降しろ!」

と通告してきた。

「なんでミツシサキリシアの奴がでてきた?」

タケルヤマトは、困惑の顔をして事態の裏に何があるのか考えた。ふと、そういえばこの様な場所でサヨリさんが怖がってないか?と思いさよりを見ると、何かしら手持ちの小型端末を弄っていた。すると

「あいつ、やってくれたわねぇ。グランド兵団長!ここに務めている、お前の配下は何人!」

さよりは叫ぶように聞くと、一瞬怯んだグランド近衛兵団長だったが、

「14名だ。」

「3名負傷、1名死亡です。」

駆け込んできた兵が補足した

「どうした?さより。何かわかったか?」

「最新、情報を頼む」

幸一と明美は、さよりに情報提供を望んだ。

「第三皇太子のミツシサ・キリシアが、第二皇太子のミコト・スサノを殺害して内乱を始めたのよ。あのバカ!焦りやがって!」

周りに驚愕と緊張が走るが、さよりは続けて

「一応大義名分は、第一皇太子と第二皇太子が共謀して、病床についていた皇帝を毒による暗殺。

二人は、次期皇帝の座を取ることにより、内政と外交を私腹を肥やすために利用して、この国を食い物にしようとしている。ってことになっているわね。」

「そんなことは考えたことが無いぞ!」

タケルヤマト皇太子が叫ぶが

「それを咎めたミツシサ・キリシア第三皇太子に対して、ミコト・スサノ第二皇太子が発砲してきたため、仕方なく返り討ちにして、宮廷内を鎮圧。

現在、ミツシサ・キリシア第三皇太子が、タケル・ヤマト第一皇太子の証拠隠滅を防ぐために蜂起した。ってことになっているよ。

そのため、ミコト・スサノ第二皇太子の領地に停泊していた、ミコト・スサノ第二皇太子所属艦隊を、第四憲兵艦隊により無力化に成功

ミツシサ・キリシア第三皇太子所属艦隊、第三打撃艦隊が、帝都の安全の確保及び暴動の鎮圧に対応する為に緊急配備し、現在宙港は全て閉鎖。

もちろん、帝国主星に近づく船も、追い払われているわ。運送ギルドが抗議をあげて、貨物船の入出港を認めさせようとしているね。

タケル・ヤマト第一皇太子所属、第一打撃艦隊及び第一機動艦隊からなる第一連合艦隊は、第二憲兵艦隊及び第三憲兵艦隊の追跡を振り切り、現在逃走中。近衛艦隊と第一憲兵艦隊は現在、情報収集してからの対応するということで、にらみ合いが続いている。

第一から第五までの首都圏防衛艦隊は、中立な立場を貫いており、微力ながら第三打撃艦隊に対して、武力行為の抑制を交渉にて続けている。

惑星の地表では、近衛陸戦部隊と、ミツシサ・キリシア第三皇太子親衛隊が、小競り合いをして、双方に若干の負傷者が発生している。

よくまぁこんな嘘を付けた物よね。うん?これって……。」

さよりは、にこやかな笑顔を保ったまま、全ての感情が抜け落ちた表情になった。そのさよりを見て、幸一と明美は、

「さよりを本気で怒らせやがった。第三皇太子、死んだな。」

「周りの連中も、まともな死に方せんぞ。」

とつぶやいた。

「はぁ?このあたしが、皇太子の正室を狙った年増な上級侍女?淫乱な身体で皇太子に近付いた女で、身体目当ての皇太子に騙されて、皇帝暗殺の共犯?ほっほぉ、言ってくれるねぇ。」

さよりは、今にも携帯端末を握り潰すが如く手に力が込められていた。さよりから危険なものを感じた幸一は、

「さより、そこまで言うには、何かしら証拠はあるんだよな?」

「幸ちゃん。このあたしが、そこを押さえないって思っている?」

「思っちゃいないがな、周りが付いてこれてなくて、説明が必要だろう?」

周りを見渡して、さよりが

「それもそうね。皇帝陛下の様態が急変したのは、新しい医師の問診を受けてからだったのは、知っている?」

タケル・ヤマト皇太子に聞くと

「いや、初耳だが。クロダは知っているか?」

クロダ宰相はしばらく考えて

「そういえば、主治医の面談の後、1人の専門医が問診をしていたな。それが?」

「その医者が処方した薬で、皇帝陛下の様態が急変して、最善の手を尽くすも間に合わなかったのよ。」

「じゃ、その専門医が・・」

「そう簡単にいかないの。その専門医の処方箋は、総合ビタミン剤だったから、容態が急変する訳がないの。当の医者が慌ててたからね。」

「じゃ、どうゆうこと?」

「薬がすり替えられていたのよ。」

「そんなもの、調べればすぐにわかるだろう!それに、皇帝を暗殺したところで、次期皇帝は、タケル・ヤマト皇太子と決まっておったのだぞ?」

「団長さん、うるさい。薬の成分で症状が出たんじゃない。薬を糖衣していた成分が、症状を起こす物と変えられていたようなの。しかも、すり替えられていたのは、たぶん一錠のみ。でも分の悪い賭けじゃない。その薬は、1日分の処方で、3粒しか処方されてなかったから。」

「なぜ、貴女はそれがわかるのですか?」

困惑した顔つきで、クロダ宰相がさよりを見ると

「だって、亡くなる前の最後の1ヶ月間は、あたしが皇帝陛下のお側仕えだったもん。急変した時は、飲んだ薬が原因と確信してすぐに嘔吐させて、完全に解けきる前の錠剤を確保。すぐさま胃洗浄をして、主治医に緊急連絡をしたんだけど、間に合わなかったのよ。タケル、ごめんね。」

「いや、父の為に頑張ってくれてありがとう。」

タケルヤマト皇太子は感謝をするが、幸一は

「その状況じゃ、確実にお前が、犯人に仕立て上げられるんじゃないか?」

「だからね、皇太子の正室を狙った年増な上級侍女って、あたしの名前が出てるんだ。そりゃ、上級以上の資格を持った侍女って、おねぇさま方が多いけど、このあたしを年増呼ばわりってどうよ!このあたしが妖艶な身体?明美の身体にどれだけ憧れているか!」

確かにさよりの身体つきは、妖艶と言うよりよく言えば少女だった。ローティーンの。

「それに、あたしが薬を仕込んだことにして、逃げようたってそうはさせるか!こうなることも考えて、この薬を仕込んだやつを、速攻で探しだしたのよ。証拠は、あたしが確保しているし、成分分析は、元の職場の機材で解析したし、出所も押さえた。」

「さよりの事だから、もう分かってるんだろう?首謀者が誰なのか。」

「サヨリさん、誰なんだ!」

「首謀者、ミツシサ・キリシア第三皇太子。作戦考案者、アシヤ・ドウザン。実行者、ゲッペル情報少将の配下。ただし、配下の者は処理済みだったけど。」

「なぜだ?ミツシサ・キリシアの奴がそんなことを?」

タケルが疑問を口にすれば、サヨリがあきれた口調で

「銀河の覇者になりたいそうよ。」

「銀河の覇者?」

「そう、帝国は大きな版図を持っているけど、ほぼ安定した国家運営でしょ?国民に人気が無くて、武力でしか2人に勝てないミツシサ・キリシア第三皇太子は、帝国の他に大国があることを知った、それを武力にて制圧し、己の力を示そうとしたんだけど、ほれ、先ほどの通商条約に国交樹立の条約が結ばれちゃったでしょ?友好国を攻めるってことは出来ない。だったら?2人を亡き者して、皇帝になり条約破棄してしまえば、攻め入ることが出来るじゃない?」

「そんな事の為に、こんな事を?」

驚くタケル・ヤマト皇太子だったが、銃撃の音がだんだん近づいてきた。

「あ~ちゃん、武器は?」

さよりが聞くと明美は

「ここのセキュリティーがきつくてな。」

と言ってどこからともなく、1丁の自動拳銃と2つの弾倉を取り出し

「この銃1丁と15発入り予備弾倉2つだけ。」

さよりが

「それだけあれば十分だね。あ~ちゃんは、幸ちゃんの護衛をして、先にここから逃げて。」

「どこから?」

明美の拳銃を見て唖然とするグランド近衛兵団長。身体検査を入念にしたにも関わらず、なぜ武器がここにもちこまれた?

「お前、それをどうやって」

拳銃を奪おうとするが、明美が

「黙れ!今は、説明する時間が惜しい。さより、ルートは!」

と一喝してサヨリに脱出ルートの確認をする。

「あたしが潜んでいた、あの食器棚の上に抜け穴があるの。そこからこの建物の屋根の上に出られる。

屋根に、隣の建物までワイヤーが張ってあるから、それを使って隣に移動して。ワイヤーで滑空する分には、死角になっているから、撃たれることは無いはず。

隣の建物の煙突の2つのうち1つはダミーだから、それの中を伝って下りれば下水に繋がっていて、そのまま川に抜けれるから。」

「了解、幸一、行くぞ!」

と明美は食器棚の最上段の扉を開けて、中に身を潜り込ました。

「さより、ほんじゃ、また後で。」

と幸一が笑って食器棚に向かうと

「ちょっと待ってくれ。サヨリさんも連れて行ってくれ。」

皇太子が幸一を呼び止めたが

「タケルヤマト皇太子、いや、次期タケルヤマト皇帝陛下。これはあなたの試練です。部外者は退散しますので。」

そう言い放ち、一瞬怯んだタケルヤマト皇太子だが、

「サヨリさんを、危険な目に遭わすわけには。」

と言い募るが幸一は笑って

「大丈夫です。そいつが勝算の無いところに、いつまでもいると思いませんから、では。」

と言って食器棚の中に入って行った。

「タケル、サヨリさん、我々もここを使って脱出しましょう!」

クロダが食器棚からの脱出を促すが

「残念。そこは、先客2名様までなのねぇ。別ルートを考えないとね。」

とさよりが笑いながら答えた。

「じゃ、どこから?」

「負傷した人を連れてきて。遺体もある?」

「はい!」

「じゃ、全員ここに集まって。」

さよりが指図をすると、グランド近衛兵団長が

「何をする気だ?我々は皇太子の身を」

「わかってるって!そんなに深刻にならないの。ね!」

ニコニコと笑いながらさよりは、食器棚の最下段に引き戸を開けると、底板を外し始めた。

そこには、地下へと通じる階段が現れた。

「ここから逃げれるから、心配しないの。わかった?」

と、脱出口を示した。唖然とする周りをよそに、さよりは

「負傷した人を先に、急いで!この地下道は、隣の墓地の外れまで続いています。出たら安全の確保をお願いします。しんがりはグランド近衛兵団長にお願いしますね。遺体は、上段の棚に入れてください。ちょうど脱出しようとして力尽きたような感じで、そこの抜け穴をふさいでください。」

テキパキと指示をすると、

「さぁて、旦那様、用意していたものと少し変わりましたが、これからあたしからの試練を始めます。この試練に打ち勝って、あたしを妃に迎えてくださいな。」

とにっこり笑った。

「わかった。この試練に打ち勝って、銀河一の花嫁として私の妃に向かえることを誓おう。」

「じゃ、行きますか?」

部屋の偽装工作をして、さよりは食器棚の底板を閉め地下道を走り出した。


5分後、建物内に突入した第三皇太子の私兵は、もぬけの殻になった部屋で、食器棚の上段の棚の奥で、抜け穴を前に力尽き倒れている兵を見つけ、抜け穴を捜索したが、すでに皇太子はおろか護衛の姿も無かった。

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