強化
第一機動艦隊所属の全艦載機の搭乗員は、ハードな訓練に明け暮れ、疲労困憊だった。
その理由は、政府から軍事アドバイザーとして派遣されて来た女性、明美特務中将。
正規の軍人ではないため、階級に特務と付いている。だが権限は中将でありお飾りの士官ではなかった。
着任そうそう、第一機動艦隊司令部の司令官、艦長達を集め、今までの訓練内容、熟練度のミーティングを行い、4時間にも及ぶ怒号と罵声の応酬が終わる頃には、艦橋スタッフが全てに、誰がこの艦隊のトップかを叩きこみ、先任航空隊長達と議論と言うケンカを吹っ掛けて、まずは、腕力勝負に完勝して
「ハンディをやる。」
と言って、自分は旧式の練習機に乗り込み、エース級15名に最新機種与え単機での模擬戦闘。
これもまた完勝し、エース級15名全員対単機での模擬戦闘も完勝し、実力の差を見せつけ、各部隊を力でねじ伏せて支配下に治めていった。
訓練宙域に到着して2日後、同行していた打撃艦隊と別れ、機動艦隊だけでの地獄のような独自訓練プログラムが始まった。
起床して艦内10kmのランニングから始まり、腕立て伏せ等の筋トレを90分してから、朝食。昼食まで座学を行い、午後から実機によるアクロバット飛行より高度な戦闘機動を行い、終了後、反省会と称し座学、アフターケア、夕食入浴就寝を守らせながら、ランダムに地球連邦軍の大型戦闘艦から攻撃を受けるため、就寝中だろうと食事中だろうと、全機緊急発進させる訓練を挟んでおり、しかも訓練から帰投した瞬間に地球連邦軍の大型戦闘艦が現れて、休憩するまもなく再発進するといった、身も精神も削る訓練だった。
このスケジュールを課せて半月。ようやく明美の及第点を取れる搭乗員が育ってきた頃、
「さっきも言っただろう!そこに物を置くなって!何べん言えば理解するんだ!お前の頭は、ザル出て来ているのか?あぁ、すまんザルなら、少しは覚えるか?ワクだな。少しも残らないからな!」
サナトリア統一連邦共和国所属第一機動艦隊、旗艦攻撃型航空母艦サナトリア1番艦サナトリアの、格納庫に響く女性の罵声
格納庫要員は、一応謝り作業を続けているが、小さな不満が蓄積していた。
しかし、今しがた罵声を浴びたダニエウ上級整備兵曹は、普段なら耐えていたが、2日連続の過酷な訓練の疲れから、忍耐力が尽きかけているところに、この言葉で遂に
「お前!何様だよ!特務中将がそんなに偉いのかよ!」
持っていたスバナーを、罵声を浴びせた女性に突きつけて、怒鳴った。
周りの整備兵が、駆け寄りダニエウ上級整備兵曹を、羽交い締めにして止めるが、それを振りほどいて、自分に罵声を浴びせた女性の前に立ちはだかった。明美特務中将は
「私が、偉いかどうかは、関係無い。」
と言い切った。
「なんだと!」
「私は、お前らのせいで、私が育て上げた搭乗員達を、死なせたくないだけだ。」
汚らしいものを見るような目をして、明美特務中将が答えると
「まるで、俺達が搭乗員達を殺すような言い方だな!」
「そうだが?」
何を当たり前なことを言っている?と言った顔で答えられたダニウエ上級整備兵曹は
「撤回しろ!」
怒鳴るが
「いや、お前。殺すだろう。」
「なんだと!もういっぺん言って見やがれ!」
明美特務中将は、物覚えの悪い子供を相手にしているように、呆れた顔をして
「やれやれ、耳も悪いのか?このままだと、お前は私の大事な搭乗員達を殺す。今すぐこの艦を降りて軍を辞めろ。」
と言い放った。
「何を根拠に言ってやがる!」
明美特務中将は、ダニエウ上級整備兵曹がさっきまで整備していた、サナトリア軍最新攻撃機に近寄り
「これが、証拠だが?今、お前が整備していただろう?もう終わっているのか?」
「完璧に終わっているよ!俺達整備のプロが整備したんだからな!文句があるのか!!」
「有るね。これに乗ったら、実戦だとすぐに死ぬ。嘘だと思うんなら、エンジンエネルギー供給系統の左手を調べて見ろ。」
「何もなかったら、どうする気だ?」
明美特務中将は見下した顔で
「お前の望みを1つ聞いて、この艦を降りるよ。」
「じゃ、素っ裸でこの格納庫を一周してもらおうか!」
明美特務中将は、侮蔑の表情を隠そうともしないで
「ふん、低俗な。かまわない。その代わり、何かあったら、お前はどうするんだ?」
「何でもしてやるよ。お前も、その言葉、忘れるなよ!」
「わかった。じゃ、調べて見ろ。」
整備が終わっている機体を再度点検する整備兵達。この様子は、訓練終わりの搭乗員達も興味深く見ていた。
整備用PCを接続し自動シーケンスで、機体の各システムエラーの有無をチェックしていく。
消耗パーツの消耗率を確認して、消耗率が高い物や基準を越えそうな物を通常交換していくが、今回は整備仕立てで、交換すべきパーツは全て交換し終えていたので、消耗パーツは部品消耗率を確認して、交換無しでチェックを終えた。
機体のエンジンカウルを外して、目視チェック。結果、異常無し。
目視チェックが終わる頃、システムチェックが終わり、こちらも、異常無し。
結果、マニュアル通りの整備では、異常無しの結果が出た。
「特務中将様。異常はありませんでした。なにか、言いたいことはありますかね。」
ニヤニヤしながらダニエウ上級整備兵曹が言ってきたが、明美特務中将は、エンジンカバーが外されて、むき出しのエンジンを見て
「あの、エンジンの横に付いている、15とナンバーが付いているパーツを確認してくれ。」
と言って10センチ角ほどのパーツを指差した。
「へいへい。素人が悪あがきしますね。このパーツですね。外して見ますよ。」
と言って、エンジンからそのパーツを外して明美に渡そうとした瞬間、ダニエウ上級整備兵曹の顔付きが変わった。
「どうした。素人の私に、見せてもらえない理由があるのか?」
焦った顔をしてダニエウ上級整備兵曹は
「ちょっと待ってくれ。マーサュタ!パーツのライフレベルに異常は無かったか!」
ダニエウ上級整備兵曹に呼ばれたマーサュタ整備上等兵は、リストを再確認すると
「異常はありません。」
「エネルギー制御系15番系統のライフはいくらだ!」
「損耗率10%です。異常ありません」
「どうゆうことだ?」
ダニエウ上級整備兵曹はパーツを見ながら考えていたが、明美特務中将に
「何があったか、この素人の私に説明して欲しいのだが?」
と聞かれると、悔しそうな顔をしてダニエウ上級整備兵曹は、
「エンジンのエネルギー制御用の弁が、焼き切れかけていました。」
明美特務中将は、冷めた表情のまま
「ほう、素人の私じゃわからないが、そのパーツがおかしくなると、機体はどうなるのかな?私は、整備については素人なので、詳しく知りたいのだが?素人の私にも解るように教えてくれないだろうか?整備のプロのダニエウ上級整備兵曹様?」
ダニエウ上級整備兵曹は、悔しさで顔を真っ赤にして下を向き
「このパーツが焼き切れると、供給エネルギーに対して供給制御不良となり、エンジン出力の安定が失くなり、しかも制御不能となったエネルギーが暴走することにより、最悪エンジンブローを起こします。」
と報告した。それを聞いて明美は、冷淡な声で
「で、確かこの機体の、完璧な整備は、整備のプロの君がしたのだったな。素人の私に、さっき異常は無かったと言ったね。聞き間違いだろうか?」
ダニエウ上級整備兵曹は、絞り出すような声で
「いいえ。確かに、私は異常無しと報告しました。」
明美が、声に殺意を乗せて
「じゃ、素人の私がもう一度聞くが、この機体で訓練ではなく実戦だった場合、戦闘中にもしもダニエウ上級整備兵曹様が言った事が起きると、搭乗員はどうなる可能性が高い?素人の私に教えてほしいのだが、プロの整備をされるダニエウ上級整備兵曹様。」
ダニエウ上級整備兵曹は、下を向いたまま、
「最悪、帰らぬ者となります。」
周りにいた、整備兵よりも搭乗兵の方が、騒いだ。それを明美は、一瞥で黙らして
「それは、敵に殺されたわけではなく、味方に殺された事になるよな?違うだろうか?プロの整備をされる、ダニエウ上級整備兵曹様。」
何も言えず、下を向いたダニエウ上級整備兵曹に代わり、マーサュタ上等兵が
「明美特務中将殿、なぜあなたは、気付いたのですか?」
何を当たり前な事を聞くと言った感じで、自分の耳を指さして
「音だ。エンジンの音がいつもと少し違う音がしてた。そして、そのパーツの色が若干おかしかったんでな。」
マーサュタ上等兵が驚きを隠せず
「それだけでわかるものなのですか!」
と言ったが、明美は呆れたやつ、といった顔をして
「私じゃ無くとも、ベテラン搭乗員ならパーツはともかく、あの音ですぐにエンジンが不調だとわかると思うぞ。なんせ、機体に命を預けているんだからな。」
何人かのベテラン搭乗員達は、頷いていた。
「私は別に、ここの整備してもらっているあなた方が、嫌いな訳じゃない。ただ、血の吐く思いで訓練して、必死になって技量を研鑽した優秀な搭乗員を、メカニックに素人の私にも解るような、エンジン不調で自爆するようなバカげたことで、失いたくはないんだ。そこの所だけわかって欲しい。」
明美は、周りを見渡して
「言っとくが、私は搭乗員達にも嫌われている。今さら、この性格を直そうとは思わない。今後の訓練は、さらに厳しくいくので、各員、覚悟しておくように。それと、ダニエウ上級整備兵曹。先ほどの約束だが、この整備甲板を1人で、油じみ一つ無きまで清掃するように。以上だ。」
と言うと、尊敬と畏怖が混じった眼差しを受け、整備甲板から立ち去って行った。
拓哉もサファイア女王の任命で、明美と同じ特務中将の階級を与えられて、こちらは艦隊運営を任されていた。
艦隊司令長官のガジェッタ少将は、タクヤ特務中将が訓練の指揮及び評価をすると聞かされたとき、
「こんな青二才に、何が出来るのですか?」
と、艦隊指令本部に苦言を申し入れていた。
女王様の友人かどうか知らないが、素人に指図されるのは、熾烈を極めた過去の対バニーニ国囮戦に一兵卒から参加して、叩き上げで今の地位を築いてきたガジェッタ少将の矜持が、許さなかった。
タクヤ特務中将が、この艦隊の訓練を指示するのは、1ヶ月の訓練航海だけと聞かされたときは、
「お飾りの指揮官で、箔付け行為か。」
と思っていた。
実際タクヤ特務中将は、着任の挨拶をしたあと、実弾訓練海域を目指すことを指示をした後、本人曰く散歩と称して指定宙域に着く3日間、艦内を視察とも言えない態度で、1人でぶらぶらしていた。
そして砲撃訓練初日、小惑星を敵艦に見立てた艦砲射撃と、空母からの攻撃機と連携した機動攻撃の訓練結果を見てガジェッタ少将は、高く評価しタクヤ特務中将にも意見を求めたところ、タクヤ特務中将が言った言葉が
「ナルシストの自己満足集団だなぁ。明日から少しキツくなるけど、がんばってね。」
と言って、艦橋から出て行った。それを聞いた艦橋参謀スタッフ達は
「自分は何様と思っているのでしょう!素人の癖に!」
「明日から少しキツくなる?お前がだろが!」
と言っていた。
しかし、それが現実になろうとは。
訓練2日目から、艦隊指令部のスタッフは、何かがおかしいと感じるようになる。
まずは、第一機動艦隊航空隊から、独自訓練をする旨が伝えられて、空母とそれを護衛する艦隊が離脱して行き、残ったのは戦艦や重巡洋艦等の砲艦が残った。
次に、何処に潜んでいたのか地球連邦国の大型戦闘艦が現れて、模擬ミサイル弾を発射。回避行動が遅れた艦は、次々に大破もしくは沈没判定を受け艦隊から離脱していく。気が付くと全滅判定をされていた。
その様子を指令室から見ていたタクヤ特務中将は、表情を変えず一言
「当たり前だけど、弱いねぇ。」
その言葉を聞いた艦橋参謀スタッフの1人が、
「敵味方識別信号を付けず、近づき不意討ちされれば、指揮系統が乱れて当たり前じゃないですか!こんな訓練!意味が有るわけ無いでしょう!」
ちらっとそのスタッフを見た拓哉が
「声だけは勇ましいなぁ。この負け犬が!」
と言って、渾身の力で殴り付けた。殴られたスタッフは、壁まで飛ばされて蹲った。
「おぉ~痛てぇ。」
拓哉は殴り付けた手を振りながら、他のスタッフを見渡すと怒りの形相で
「今の戦闘が実戦だったら、ここには誰も生きていないよなぁ!監視レーダーが、所属不明艦の反応して撃たれるまで、15分間。お前ら、一体何してた?不意討ち?笑わせるな!これが戦場だったら、敵味方識別信号を出していない艦が近づいてきたら、敵だろう?違うか?見つけ次第停船警告を出すか、威嚇砲撃するべきじゃないのか?何なら、撃破しても構わない!しかも、ミサイル弾だけで全滅?お前らは、操艦技術が無いのか?回避行動って知らんのか!それとも、迎撃出来んのか?撃ち落とすか避けろよ!あのミサイル弾は、直進しかしない非誘導弾だぞ?ただの的に成りやがって!それと、ついでだから言っておくが、昨日行った小惑星を敵艦に見立てた砲撃訓練。あらりゃ落第だ。着弾地点がバラけていたし、敵艦も避ける回避運動をするんだ。もっと接近し着弾を集中させ砲撃しないと、回避されて当たるわけ無いだろう。よって、今から手動による艦隊機動の訓練を行う。」
と言って、艦隊を密集編成に再編成するように指示をすると、そのまま進行速度を上げるように指示。
「左舷の駆逐艦!飛び出すな!速度を守れ!重巡洋艦!遅れるな!艦隊の編隊を崩すな!そこ!ふらつくな!真っ直ぐにも操艦出来んのか!」
直進で艦隊体勢が維持できるまで、休憩無しで行われた。どうにか形になって来たときにまたもや地球連邦国の大型戦闘艦が現れて、ミサイル弾をばらまいてきた。
全滅判定はかろうじて回避したが、各艦独自の回避行動をしたため、艦隊内で多数の接触事故が発生。艦の被害は、小破がもっとも多く、幸いなことに大破した艦艇はなかった。破損した艦艇を、地球連邦国の大型戦闘艦が横付けで修理してくれる事に。
艦内では、ケガ人の対応に追われていた。骨折した重傷者が数名出た以外は、ほぼ打撲で済んでいるが、この事も拓哉にしてみれば、
「下手くそ!とりあえず、応急修理終了まで当直要員以外は、休憩とする。ケガ人はなぜケガをしたか、今後の対応策を書き報告しろ!艦が接触したためなどと言うたわごとは聞かん!ただし、士官以上は、1時間後大会議室に集合。反省会だからな!おい!ガジェッタ!仮にも囮艦隊の生き残りだろう!お前の乗船していた駆逐艦ゲッタリデの砲雷長に操舵長を忘れたか?平和ボケしやがって!」
と言って拓哉が指令室から出て行った。残されたガジェッタ少将以下参謀スタッフは苦々しい顔で見送った。
「ガジェッタ少将!言われぱなしでいいんですか!」
まだ若い艦橋参謀の一人が、ガジェッタ少将に詰め寄ると、
「言い返せない。あまりにも正論過ぎて。」
と、言葉をこぼした。
ガジェッタ少将は、拓哉特務中将が初日の射撃訓練をなぜ、ナルシストの自己満足と言ったか、理解してしまった。
それは今更ではあるが、自動操船ではなく手動操船では、今の操舵手は真っ直ぐに艦を走らすことが、出来ない事が判明してしまったからである。
今までの訓練では、操舵手は何をしていたか?攻撃コースを決めると、自動操船をしていたのである。いかにきれいな艦隊体系を保ちつつ、いかに効率よく的に当てる訓練しかしてなかったのである。
それは砲撃手も同じだった。訓練用砲撃目標に対し自動標準による砲撃しかしていなかったのであった。
いつしかそれは、艦隊ショーとしては綺麗な動きだが、実戦的ではないことがこの1日で、分かってしまったのである。
実戦では、敵艦は回避行動をして当たり前、反撃もしてくる。その状況で自動操船では、対応出来るわけがない。せいぜい敵艦の的に成るしかない。
砲撃に関しても同じことが言えた。敵艦の装甲の薄い所、動力炉や艦橋等の重要部分に、ピンポイントに狙って当てなければ、敵艦は沈まない。自動標準による数値に、敵艦回避の未来予想を立てて補正数値を手動で入れなければ、狙ったところには当たらない。
35cmの主砲を12門ある戦艦であっても当たらなければ意味がない。逆に8cmの主砲が4門だけの駆逐艦であっても全砲門が一点に集中出来たなら、敵戦艦であっても沈める事ができる。
ガジェッタ少将は思い出していた。まだ軍に入り2年目の時行われた、対戦のことを。
当時、海軍学校卒で準尉だったガジェッタ少将は、駆逐艦搭乗員として従軍していた。今自分が預かっている艦隊よりも大きな艦隊が、今よりも密集体系で、敵対した艦隊に対し、一糸乱れない艦隊行動で、敵の攻撃に対して被害を最小に抑え、すぐさま胸のすくような反撃に移り、勝利に導いた。そこには、自動操船などしている操舵手は1人もいなかった。
砲撃手もシステムからの適切攻撃角度の数値に、独自の補正をマニュアルで足し込、敵艦に集中弾を浴びせていた。
艦隊指揮を任された時から、いずれそれを越え更なる高みを目指すため、今まで訓練を行ってきたというのに、実際は、見栄えの良いショーを行ってきていたことが判明してしまったのが、この訓練だった。
その瞬間、あの拓哉特務中将は、あの対戦に参加していた地球軍の乗組員だったことも思い出し、見かけが若く侮って素人と決めつけてしまった、己の自惚れを大いに恥じた。
これを機に艦隊の引き締めを行うことを決意。それには、拓哉特務中将の指揮のもと、鍛え直そうと考えていた。
それから、事故原因の究明が行われ、ほとんどの接触事故は、慣れぬ密集編隊での手動操船で、操舵手の恐怖による勝手な判断、と言うことが報告された。
怪我人も、緊急体制の放送が有ったのにもかかわらず、訓練だと甘く見て安全処置をなにも行ってなかったことが判明。
さらに何隻かの艦では、自動で行われる最小のダメージコントロールさえされてないことも、判明していた。
この徹底した原因調査が思わぬ事も浮き彫りにしてきた。
実戦を経験していない隊員が多く、訓練と言うことで、ダレ切った規律、出世の為にミスを隠して報告する者。官給品の横流しをしている者の発覚。
これらの報告を聞いた拓哉は、頭を抱えた。
「これから、私の組んだ訓練メニューを行う。死なないように、頑張ってくれ。」
と壮絶な笑顔で会議室に集まった幹部士官を見渡し、拓哉特務中将が言い放った
その訓練は凄まじく、死者が出なかったのは奇跡とまで言われていた。
定刻の演習だけでなく、ランダムに鳴らされる第一級警報で、就寝中だろうと食事中だろうと、鳴れば即臨戦態勢にならなれば、出来るまで何度も繰り返されて、休む暇さえなくなっていく。
しかも、何回かに一度は地球軍の大型軍用艦タートルエクスプレスが現れて、艦隊攻撃を仕掛けてくる。
やっとの思いで、ミサイル弾による生存率が上がると、ダミーやデゴイで固めた艦隊で攻撃してくるのだが、そうなると勝てないどころか、またもや全滅判定まで受けていた。
さらに生存率が上がると、ミサイル弾以外の攻撃が混じるようになって、艦隊を鍛えていく。
その間、拓哉特務中将はいつでも指令室に居て、状況を把握していた。戦闘が終われば反省会が開かれ、それに対応した訓練メニューが追加されていく。
それが終わってからの食事に休息。しかし、急な戦闘訓練が起きても、一番最初に指令室に入っているのは拓哉特務中将だった。
しかも指令室にいるときはいつも、皺一つない制服を着て、髭も剃ってありシャンプーの香りまでするといった感じで、他のスタッフが疲労を感じる顔や、よれて皺になっている制服を着ているのと比べると、スタッフの中では、いつこの人、着替えたり寝てるんだろう?と噂さえなっていた。それほどまでに、指令室にいる人だったのである。
それほどまでに、厳しい訓練を繰り返すこと半月もすると、そこそこの強力な艦隊となって来ていた。そこへ、訓練初期に離別した機動艦隊が帰って来て、さらに過酷な合同訓練が始まった。
地球連邦国の大型戦闘艦からの、訓練用メニューが変わったのもこの頃からだった。
電子ダミーにデコイを使い、レーダーに表示される数は、一気に100隻を超える艦隊となり、無人攻撃機も500機を超える数で攻撃してきた。
勝利条件は、地球の大型艦に致命弾の判定を得ること
結局、訓練最終日までかけたが、勝利することは出来ず、課題を残し訓練を終了したのであった。
サナトリア国の全艦隊は、今後打倒タートルエクスプレスを掲げ、訓練に励むこととなる
「ただいま、かめちゃん。」
「お帰りなさい。明美さんに拓哉さん。訓練どうでした?」
ニコニコ顔のかめちゃん。その顔を見て、明美と拓哉はため息をつき
「少しは、手加減してほしかったなぁ」
「まったくだよ。こっちが苦労して底上げした部隊を、コテンパンに叩くことないだろう?」
「だって、私は訓練とは言え、負けたくないですから。」
と言ってVサインを誇らしげに出したのであった。




