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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第3章
83/144

さより 失踪

 サファイアが晩餐会で、婚姻発表と言った爆弾発言した次の日、国中サファイア女王の結婚を祝福するお祝いムード一色に

 各地域のメディアは、サファイア女王の結婚相手が、統一地球連邦政府の重鎮で、先の戦争を終わらした、英雄だと報じた。


今まで明かされなかった留学先での、功績やラブロマンスも報じられ、その時の二人のなかつまじい様子の写真も公開され、各種新聞や、画像配信サービスにて連載されることに。

 (これらの記事はもちろん、幸一をはじめとする地球陣営総力を挙げて編集した、フェイクニュースだが。)


この様な全ての人達に祝福を受けている中、やはりというか、ある一定数の反対派はどの世界にも存在し、その中の極一部に極端な行動を取る者が居るのも現実である。


 脅迫めいた怪文書、不審物が王宮や政府関係箇所に届くことが増えてきていた。

その為、新国家樹立と女王の結婚が同時に行われる日が近づくにつれ、警備関係者は、今まで以上に警備態勢を強化することとなった。

 統一地球連邦政府(?)も幸一氏の身辺警護にと、武装アンドロイド(かめちゃんフルアーマー版)を2体派遣していた。


 サファイアは、新国家の準備に女王として公務が忙しく、朝夕の食事以外は幸一と接することができない状態で、幸一は1人寂しく宮廷内を護衛フルアーマーかめちゃん付で散歩する以外、暇を潰す手段が無かった。

他のメンバーは、さっさと身支度すると、サナトリアの観光に出掛けてしまった。


 「くっそう!薄情な奴等め。俺も外に出掛けてもいいじゃないか!」

1人宮廷の手入れの行き届いた庭園を歩きながら、ぼやいていた。3日目ともなるとどんな素晴らしい庭園と言えども、飽きてくる。

「まあまあ、幸一さん。イライラしないで下さいね。1週間我慢したら、自由に動けるようになるかも知れませんし、ね。」

右後方に控えている武装アンドロイドが男性の声で、幸一を慰めた。

「かめちゃん。せめて女性型にしてほしかったなぁ。」

「仕方ないですよ。護衛って事ですので、見かけから威嚇しないと効果が薄いですから。」

痩身なロボットが、器用に肩をすくめていた。

「しかし、威圧感が半端ないなぁ。」

「ですね。」


 紅くモノアイを光らしたその姿は、身長2mの長身で、全身ステルス仕様の光沢を消した黒塗装が施してあり、右の腰のホルスターには、20mm弾が15発装填された自動拳銃が入っており、右肩に固定式30mmレーザーキャノン、背中に接近戦用に単結晶でできた刃渡り75センチのナイフと言うより刀が一本と、同じく単結晶でできたクナイが10本胸元に、これ見よがしに装填していた。


「はぁ~。こんな生活が結婚しても続くのかなぁ?」

「マリッジブルーですか?幸一さんらしくないですね。」

表情の無いロボットなのに、笑っているのがわかる。

「違うって。他の奴等はいいよなぁ。顔が知られてないから市街を普通に歩けて。俺が行くと、この姿のかめちゃんが付いてくるんだろう?周りに迷惑かけちゃうからなぁ。」

「いいえ。街中ではこの姿で歩きませんよ。」

かめちゃんは、当たり前でしょうって感じで返答してきた。

「えっ?」

「あれ?幸一さん、この姿は宮廷内限定ですよ。知らなかったのですか?」

「と言うことは、外に出掛けたら?」

「いつもの私で、護衛しますよ。当たり前でしょう?周りの一般市民に威圧かけてどうするんですか?」

幸一は、それもそうかと思いながら

「でも、俺って有名人だから…」

「いいえ。街中素顔で歩いても、誰も気づきませんよ?」

「えっ?顔バレしているから、室内にいるんじゃないの?」

そんな機能は無いのに、ため息を付く動作をして

「幸一さん。いつの間にか顔写真を撮られたんですか?」

と、かめちゃんが聞いてきたので

「あの晩餐会の時とか?地球でのエピソードの1コマとか?」

首を横に振ってかめちゃんは、

「エピソードでの写真は、顔がはっきりしないように加工してました。晩餐会では、誰も撮影してませんよ。だいたい、許可無くあの場で女王を撮影したら、不敬罪にあたります。幸一さんは、サナトリア女王の横に居たので、撮影することは出来ませんよ。」

何をいまさらなことを言った風に言うと

「じゃ、なんで俺には外出許可が…」

「出てますよ。外出許可」

「えっ!じゃ、なんで?」

「皆さんが、あまりにも、今回の結婚が羨ましいので、気づくまで黙っておこうってなりまして。」

幸一は、ふつふつと怒りがこみ上げてきて 

「あの野郎共!!かめちゃん!今から、外出する!」

と宣言したが、

「今からは、駄目です。」

あっさり却下された。

「どうして?外出許可は出ているんだろう?」

かめちゃんは、そうゆう表情が出来るボディーじゃないのに、呆れ顔をして

「もう、忘れたんですか?昼食後、主要人会議に幸一さんも参加って、言ってありましたが。」

幸一はしばし考えて

「そう言えば、聞いた気がする。」

「ですから、今日はもう外出は出来ませんよ。」

ちらっと腕時計を見て幸一は、

「くっそう!早めの昼食にする。」

「了解です。」



 主要人会議が開かれる会議室には、サファイア女王を筆頭に各国から選出され、新国家で新たに就任する大臣達が集結していた。

 今まで経験したことのない、史上最大に巨大化した国家の舵取りを任される大臣達は、高揚した感情と任される重圧感で一杯だった。


 これまでに事務方の草案から、何度も繰り返し議論を尽くし叩き台を作り、さらに官僚を交え旧国家との軋轢を最小限にする努力を重ね出来た、新国家憲章に憲法、基礎法案がこの会議にて承認されて公布されることになっていた。


 各項目に対し、疑問点や矛盾点がないか最終確認が行われ、最後にサファイア女王が、承認のサインをすることで、全ての作業が終わる。

その重苦しくも、少しの開放感がある会議室に、オブザーバー的にサファイア女王の左手に幸一が座り、会議を見届けていた。


しかし、この会議に異変が起き始めていた。


 普通ならば、係の者が条項を読み上げるだけで、大臣達は異義無し、と言って承認もしくは追認をして進めていくのだが、今回は時々異義の声が上がり、その度に審議応答が行われていた。

 最初は、小さな誤字脱字の類いだったが、次第に項目の矛盾点に、解釈のしかたでどうにでもとれる文章の改定、さらには、法を跨ぐと起こる抜け道のような文言。悪質なのが、最終精査した後に補行の欄に、小さく罪を逃れる為としか思えない追加文に、例外として通例を認めると書かれた一文。


 それらをズバズバ指摘して改定を求めた為に、専門部会の委員や法学者まで動員される騒ぎになってしまった。

 午前中に終わる予定の会議が大幅に伸び、昼食をはさんで夕方遅くまでかかってしまった。

その中心人物は、さよりだった。


 さよりは、法の抜け道を徹底的に潰しまわっていた。

反論する者も居たが、高名な法学者でさえ、さよりの主張を論破出来る者はいなかった。


 これには、幸一も驚くしかなかった。いつの間にさよりは、この新国家の憲法をはじめとする、全ての法律書に精通したんだ?

次第にいならぶ法学者達から称賛を浴びていた。

最終的に、最初よりも厳格な国家憲章に憲法、行政法、刑法が承認されて会議は閉会した。


「あ~ぁ、疲れたぁ。あんなこと、あたしのする事じゃ無かったなぁ。」

閉会後、サファイア女王の執務室に入り、ロングソファーの上で寝ころがって、チョコレートを食べているさより。

「しかし、さより。よく、あんな法律書を読み込んでいたなぁ。」

「そうです。さよりさん、もしかして我が国で一番法律に詳しいんじゃないですか?でも、おかげさまで、素晴らしいできに成ったと思います。ありがとうございます。」

サファイアが頭を下げたが

「いいっていいって。それよりも、あの法律はもう変更しないよね。」

「はい、私が最終承認したので、基本法は原則変更出来ません。変更、改定するためには、憲法は国民投票で、全国民の3分の2以上の賛成を得なければ出来ませんし、他の基本法は全国会議員の3分の2以上の賛成がいります。民法、商法、刑法等の修正や改変は、時代に応じて不具合が出てくれば、最高連邦議会に変更点を提出して、賛成を得れれば見直しが出来ます。それも柔軟に対応できる法になっており、今後の基礎になる素晴らしい法になりました。」

「だよねぇ。がんばったかいがあったわ。」

と言ってニンマリ微笑むさより。その顔を見て幸一が、

「さより。お前、なにか仕組んだな!」

と、問い詰めた。するとさよりは

「人聞きの悪いことを言わないで。ちょっとだけ、あたし専用の抜け道を組み込んだだけだから。たいしたことじゃないでしょ?」

その言葉を聞いて、幸一は天井を見上げ、サファイアは絶句した。

「お前、いった何を?」

「さよりさん!あの厳格な法の中に、抜け穴が有るのですか!」

焦る2人を見てさよりは

「大丈夫だって。そうそう使うような法じゃないし。まぁ保険みたいなものだから。」

と言ってパタパタ手を振った。

「そんな事より、サファイアちゃん。ガニメデ?帝国ってどんな国?教えてほしいんだけど?」

ワザとらしく話を変えるさよりだが、追求しても素直に答える気が無いことを知っているサファイヤは、

「はぁ~。カルダニア帝国です。情報が乏しくて、分かっていることは、皇帝が統治する国で、現皇帝は御年86歳で、後継者は第一皇太子、独身です。」

とこたえるが、不満そうな顔をして

「情報はそれだけ?最低皇帝の名前とか、皇太子の名前は?それに、国土の大きさは、人口は?兵力は?現在の経済力は?」

矢継ぎ早に帝国の情報を聞いてくるさより。

「それは~。」

答えに困窮するサファイアを見て、さよりがため息交じりに

「あ~ぁ、全然わかってないよねぇ。そのぐらいなら聞かなくてもわかってる。詰めが甘いんだけど?いくら国内が忙しくとも、外敵に成りうる対象があるなら、情報収集しないといけないでしょう?」

「すいません。一応自由貿易船を使って、帝国内に潜り込ましているんですが、情報収集に手間取っているようでして。」

サファイアは小さくなって答えた。

「まあ、いいか。おいおい、その辺の情報は集めていくよ。それと、星図を見て気になったんだけど、」

と言って、壁に星図を投射した。

「これってなぁに?ここんとこから、宇宙の涯って記載されて、何も無い空間が有るんだけど?」

そこに映し出された3D星図は、星系の座標が示されている星図なのだが、端の方は、恒星がまばらな先に黒く塗りつぶされており、何も書かれてなかった。

「それは、最近発見された場所で、現在調査中なのですが、現在わかっているのは、縦235億光年以上横7395億光年以上、奥行き不明の、高濃度星間物質集合宙域なんです。天然鉱物資源が豊富に採集できる良質の宙域となっており、現在鉱山開発をしています。その箇所を調査中に、ガニメデ帝国と接触したのです。」

幸一も3D海図を見て、

「サファイアちゃん。なにそれ?宇宙空間に出来た壁?のような物は?」

「幸一さん。現在調査中なんです。無人長距離探索ブローグを放っているのですが、壁を回り込むことも、壁を越えることも出来なくて。便宜上『宇宙の涯』と呼んでいるのです。」

「壁を越えれないの?」

「はい。最長の2万光年ジャンプできる探査ブローグを、壁の中方面に放っても、ジャンプアウトした瞬間、消息不明になるので、推測ですが、ジャンプアウトした瞬間に星間物質と融合して、対消滅してしまっているのではないかと思われています。」

「壁の奥は、最低2万光年先までは、何かが詰まっている空間ってことか。」

「はい。」

「宇宙に横たわる巨体な壁かぁ。不思議な自然現象だなぁ。壁の中に入れないの?」

「幸一さん。壁と言っても、星間物質が通常より高濃度に有るだけで、小型船なら通常空間を、星間物資を避けて進めば、奥まで行けます。ただ、それで壁を超えるには、何億年と言う時間が必要で、そのような長時間、単独で稼働できる探査機はないです。」

「壁を抜けた先がわからない事か。」

「はい。現状は壁の表面を開発するしかできないです。」

「サファイアちゃん。帝国側は、この壁をどこまで解っているか調べてる?」

「はい!さよりさん。推測ですがほぼ、私達と同じくらいしか解析出来ていないようです。その根拠になっていますのが、初めて接触した時の相手の通話です。『壁の中から来たのか?』この事より、私達と同じく、壁表面を探索中に偶然、私達と遭遇したものと思われるからです。それともう一つ。帝国も近くにベース基地を作って、本格的な採掘を始める準備を、行っているということです。」

「向こうも、まだ試験採掘だけ?」

「はい。寄港した場所での情報ですが。」

それを聞き、さよりはしばらく目を瞑り何か考えているようだった。

「最初の接触した時の言葉が残ってるって言ったよね。自動翻訳機で聞いたわけ?」

さよりが少しに疑問に思った点を、サファイヤに質問した。

「いいえ、なぜかこちらの公用語を、相手が話したので。」

さよりと幸一は顔を見合わせて、えっ!と言った顔をして、さよりが

「サファイヤちゃん。それって、相手が日本語を話したってことだよね?」

サファイヤがしばし考えて、あっ!と叫んで

「そうです!なぜ今までこんな重要なことを気付かなかったのでしょう!こちらで公用語ですけど、本来は他の言葉が有りますよね!」

「日本語が公用語もしくは、母国語の帝国か。なんか不思議な国だな。」

「皇帝に会って見たいなぁ。」

さよりがボソッと呟いた。

「さよりさん。ちょっと難しいと思いますよ。」

「どうして?」

「お恥ずかしながら、現在に至るまで帝国の首都までたどり着けていないのです。」

「サファイアちゃん、さっき自由貿易船が帝国領土内に潜り込ましているって言っていなかった?」

「帝国の領土は広く、自由貿易船が領土内に入ったと言っても、まだ辺境地区を抜けたとは言えません。」

「なんですぐに帝国の首都に向かわないんだい。」

「そっか!幸一、そりゃ無理、無理。ね、サファイアちゃん。」

「どうして?…あっ!補給か。」

「そうなんです。帝国領土内を航行することになると、補給できるポイントを確保してからでないと、奥へと進むことが出来なくて。現在、商人たちの努力にて2つほど、食料と推進剤の補給をさせてもらえる港を確保したにすぎないのです。」

「そっかぁ。帝国にとっても宇宙の涯は、辺境地区なんだよなぁ。」

「しかも、帝国側の軍艦に攻撃されてますので、国としては国交が無い状態で、友好外交もしてません。その為、帝国領土内の航海図を入手出来てません。せめて帝国内の航路がわかる物が手に入れば、まだやりようがあるのですけど。こちらが接触できる辺境地区では、警戒が厳しくて。最低辺境地区に来る、帝国の輸送船航路だけでも、判明できることができたら、主星の場所を推測できるんですけど。今は、個人の技量が高い自由貿易船のスタッフに、期待するしかない状態なんです。せめて補給船を同行させてやりたいんですけど、下手に軍事行動と思われたらいけないので、実現できてません。そのようなことが有って、なかなか首星までたどり着けていないのです。」

と言って、サファイヤは頭を下げた。

「いいって。サファイアちゃん。取りあえず、帝国に関しての情報は収集中ってことでいいね。現状では、ほぼなにも解って無いってことでいいね。」

「さよりさん。すいません。せめて皆さんが来られるまでには、解消しておきたかったんですけど。」

「いいっていいって。暇つぶしが見つかっただけでも、めっけもんだよ。」

と言ってさよりは、ニコッと笑った。


 1週間後


 新生統合国家として、新たな歴史を歩むことを、全国民に向かってサファイア女王として公布した。

続けて、幸一がサファイア女王の横に立ち、夫としてサファイア女王を支えていくことを宣言。

国を挙げての祝賀会を、各地域で行い全土で祝福に満ち溢れていた。


その最中、さよりの消息が、消えた。




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