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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第3章
81/144

婚約発表(?)

 衝撃的な発言をして、幸一達が固まっているのを幸いに、顔を真っ赤に染め上げたサファイアが、お供を連れだって足早に迎賓室から逃げ出すように出ていった。


 扉の閉まる音で、我に返った侍女を含め迎賓室にいた全員は、幸一を睨み付けた。

室内が急に冷えた感じがしたと思ったとき

「幸一さん?白状してもらいますか?サファイアちゃんを、何時、何処で、手込めにしたんですか?」

明美が、幸一の前で仁王立ちになり、殺気を圧のあるプレッシャーに変えて、幸一に叩き付けた。

逃げようとする幸一を、政史と正が素早く、

「まっ、ゆっくり話、しようか。幸一。」

いい笑顔で、幸一の両脇を固めると、幸一の背後に拓哉が立ち幸一の両肩に手を置いて、

「なんで逃げるんだ?やましい事なんか無いよなぁ、幸一。」

と、幸一の肩に置いた手が、指が肩に食い込むぐらいに力を入れて、こちらもいい笑顔で言ってくる。

「拓哉、痛いって、そんなに力入れるなって。」

それを見て、美由紀が呆れ顔のまま

「もう、みんな落ち着いて。幸一君が嫌がってるじゃない。」

「美由紀。ありがと…」

幸一が美由紀に礼を言おうとしたら、真顔の美由紀が

「で、何時から付き合ってるの?」

幸一の顔を覗き込んでくる。表情の抜け落ちた美由紀の顔を近づけられて

「美由紀、真顔で見つめられると、怖いんだが。」

と言って視線を差外そうとすると

「なんで怖いのかな?正直に話せない事があるのかな?かな?」

「俺は、無実だ!」

思わず幸一は叫んでしまった。哀れな者を見るように明美が

「犯罪者って、すぐそう言ってシラを切るのよねぇ」

「明美。本当に知らないんだ。サファイアちゃんがなんで、急に結婚なんて言い出したか。俺にもさっぱりわからないんだ!そもそも、サファイアと俺が結婚したところで、何の罪なんだよ!」

美由紀が、指を折りながら

「未成年略取?詐欺?不純異性交際?国家転覆これってクーデターかな?そもそも、どうやって口説いたの?」

「なに言ってるんだ!サファイアからの連絡って、別れてから今回の招待状が届くまで無かっただろうが!」

「その点は、正しいと思います。幸一さんは、恒星間通信はしていません。ですから、通信越しにサファイアさんを口説くことは、無かったと思われます。」

「ほら!かめちゃんが証言してくれたじゃなか!」

と、幸一が言うと、残りのメンバーが輪になって

「じゃ、サファイアちゃんが、幸一に惚れたってこと!」

「そんな事があり得るか?」

「それよりも、別れるときに何か暗示か後催眠をかけたとか?」

「その可能性が高いな!」

「早く精神洗浄して、カウンセリングを受けさせないと、手遅れになってしまうぞ。」

「社会復帰できるかしら?」

と、言い合っているのを聞いて

「どうゆう意味じゃ!」

「お前ならやりかねんだろうが!口先三寸で世の中を動かすお前が、」

と、ワイワイと騒いでる横で

「サファイアちゃん。幸一のことが本当に好きなのかな?」

さよりが首をかしげながら呟いた。その言葉に美由紀が首を傾げながら

「さより、どうゆう事?サファイアが好きでもない相手に、結婚を申し込んだってこと?」

聞き返すと幸一が

「それはそれで、悲しいものがあるが。」

とつぶやいたが、さよりが

「う~ん。そうじゃないんだけどね。今の態度と表情からして、サファイヤちゃんは、間違いなく幸一には、少なからずの恋愛感情を持っていると思う。でも、ここに来たときは、それが恋愛感情だったかと言うと怪しいんだよね。どちらかと言うと、政略結婚の申し出をするのかな?って思ってたし。それにあたしの見立てでは、外交問題で困っていることと、経済的な事で悩んでいるみたいに見えたんだけどなぁ。」

首をひねって言った。明美が

「恋愛じゃなくて?」

と聞くと

「うん。あの結婚して下さい宣言は、前置きを言う前に、咄嗟に口に出た言葉だと思うんだけどなぁ。手伝ってくださいとか、アドバイスください、ならあたしの見立て通りなんだけど、何で結婚してください?どうしてそんな言葉が出たのか?う~ぅ…わからない!それに、あの態度。今は、間違いなく恋している少女だったし。急に恋愛?なんでぇ~!」

珍しくさよりが頭を抱えて悩み出した。その姿を見て幸一とじゃれてた政史と正が

「おい。さよりが頭を抱えているぞ。」

「サファイアちゃんの行動が、さよりにとっても予想外な行動だったのか?」

幸一と美由紀が、

「しっかりしてくれ。情報分析はお前の領分だろう」

「さより、大丈夫?」

しばらく頭を抱えていたさよりがガバッと顔をあげると、片時も手放さない愛用の特製2in1ノートパソコンを立ち上げ、ニヤリと唇を上げ

「やってやんよ!師匠を困惑させるとは、腕をあげたねぇ。だからといって、このまま大人しくするあたしじゃない。あんたの持っている心情まで暴いてやんよ!」

と独り言をこぼし、目にも止まらぬ速さでキーボードを叩き出した。それだけでは入力に間に合わないのか、音声入力、視線入力、指先のモーション入力全てを投入して作業を始めた。


 高精細高輝度の有機ELモニターに写し出される画面は、グラフィックを表示する速度も惜しいのか、全てのウィンドウはテキスト表示。常人の目では、追いきれない速さで流れるようにフォントが走っていく。それを見た幸一が

「久しぶり見たな。さよりの本気。」

引きぎみに呟いた。美由紀がかめちゃんに

「かめちゃん。これが、さより本気よ。めったに見れるものじゃないけどね。」

「美由紀さん。さよりさんも凄いですけど、それを追従できるあのパソコンはなんなんですか!」

多岐に亘るタスクを、滞りなく滑らかに処理していく、ノートPCとは思えない処理速度。

政史が

「あれは、俺達が生まれた時代の大阪精密電子が、持てる技術力を注ぎ込んで100台限定で販売した超高性能ノートPCを、さよりがメーカーオプションをフル装備させ、さらに独自の魔改造した物だよ。」

幸一が

「初の量子型CPUを搭載したノートパソコンで、ノーマルでも片手で持てる、スーパーコンピューターって言われてたもんだ。」

拓哉がさよりを指さして、かめちゃんに

「そのパソコンでさえ、さよりにとって遅すぎて入力機器にしかなりえない。情報の解析分析処理は、さより自身が行っているんだからな。」

「なんなんですか!さよりさんの処理速度!私に匹敵しそうなんですけど!」

かめちゃんが驚愕の言葉を発した。

「さよりだからねぇ。」

しばらくすると、さよりが急にパタッと後ろにひっくり返り動かなくなった。

「どうした!さより!」

皆が心配する中、さよりが発した言葉は

「お腹すいたぁ~。」


時計を見ると晩餐会の時刻になろうとしていた。


 それまで事態の成り行きに対応出来なかった部屋付きの侍女達が、8人を晩餐会会場に案内するために動き出した。

へろへろだけど、何か満足しているさよりが筆頭に案内を受けて歩いて行く。


 晩餐会に参加するということで、用意してきた衣装、男子は燕尾服、女子はロングドレスに豪華なジュエリー(美由紀が価格を聞いて、引き攣っていたが)で身をかため会場へと赴いた。


 晩餐会の会場となる城の広間では、サファイア女王を筆頭に、前女王、姉の行政大臣、兄の防衛大臣のほか、大臣クラスであろう人物が数十人テーブルに着いており、入場してきた幸一達を拍手で迎え入れて見つめていた。

先頭にいたさよりが、完璧なカーテシーにて

「本日は、このような晩餐会にお招き頂きありがとうございます。」

と挨拶した。余りにも優雅で美しい挨拶姿に、会場にいた人々が息をのみ、他のメンバーが挨拶をする前にサファイアが

「さよりさんに、皆さん。こちらへどうぞ。」

と言って席を勧め、案内役の持女がメンバーを指定された席へと案内した。

席順は、サファイアの隣から、幸一、さより、拓也、明美、政史、美由紀、正、かめちゃんという順番だった。


 グラスに、 発泡白ワインが注がれ、サファイア女王が立ち

「それでは、我が国と地球連邦国との、これからの発展を祝いて、乾杯を行いたいと思います。乾杯!!」

「乾杯!!」

晩餐会が始まった。


会食が始まりしばらくしてから、サファイアがさよりに

「びっくりしましたよ。先頭にさよりさんがいて、このような席で挨拶出来るのか心配しましたが、さよりさん。良くあの様な完璧な挨拶が出来ましたね。」

「まったくだ、おかげで、こっちがボロを出さずに助かったけどな。」

と、サファイアと幸一から言われて、ちょっとふくれたさよりが

「あのねぇ、あたしの知り合いに、イギリスやフランス、ヨーロッパ系貴族が居ることを、忘れていませんか?これでも、王族に公爵、伯爵クラスの貴族の親しい友人や知り合いだけでも数十人居ますからね。」


 そう、さよりは大東亜戦争以前からヨーロッパの貴族階級に知り合いがおり、ヨーロッパ社交界にもデビューしていたのだった。そのため、貴族に対する挨拶やつきあい方を、完全に身体に叩き込んでいた。その事を思い出し

「そうでしたね。忘れておりました。申し訳ありませんでした」

サファイアは非礼を詫び、幸一は

「普段の態度があれじゃ、信用ないからなぁ。でも、助かったよ。これだけの面々の前で非礼のない挨拶が出来たかと思うと、自信がないからなぁ。ありがとうな。」

と言った。

「じゃあさぁ。二人にこれをお願いしてもいいかなぁ。」

と言って、他の出席者には見えないように、二人にメモを渡した。


 メモの内容を読んで、幸一は、大声をあげそうになったのを、自制心をフルに使って押さえ込み、サファイアは、顔が真っ赤に成り俯いてしまった。


 そこには、『二人で、結婚発表しろ!』と書かれていた。


「ダメぇ~かなぁ?サファイアちゃんは、希望してるよね。幸一、男だったら女の子の期待に応えてあげないと、ねぇ」

さよりは、ニコニコ顔で押してくる。

「あのぉ、さよりさん。私が結婚って言ったのはですね。」

サファイアが、急にワタワタしてさよりに説明しようとするが、手で制して

「解ってるって、結婚しないと、いろいろ国政が上手く回らないようになって来たんでしょ。」

サファイアは驚いて

「どうしてそれを!」

「調べた。」

と言ってにっこりと笑った。

「私があの部屋を退室して、みなさんが着替えるまでの間にですか!嘘でしょう!」

「貴女の師匠を舐めないでくれる?20分の有れば調べられるからね。あなたの恋心も」

さよりは、可愛らしくウインク。

サファイヤはあの部屋に、通信環境があったことを思い出し、さよりが愛用のPCを片時もなく手離さないことも思いだし、それで検索したことに思い当たった。さよりが

「今、4つほど縁談を持ち込まれてるんじゃないの?例えば、向こうにいるグレハラス子爵とか、その横にいるアライサ伯爵。どっちもイケメンじゃん。ついでにグレハラス子爵は、実業家の一面が有って、結構手広く商売やってるね。アライサ伯爵は、外交面でかなりのお方なようだねぇ。結構他国の重鎮とのパイプも太いようだし。この晩餐会に居ないけど、運送事業に力のあるバレック評議委員とかね。そうそう、外交問題になっているお国の方からもあったっけ。」

サファイアは一瞬天井を見上げ、視線をさよりに戻し

「なんで、そこまで知っているのですか?」

「調べたからねぇ。」

「どうしたら、あの時間内でそこまで調べ挙げれるのか。しかもその内容は、セキュリィティーを高くして有って、そうそう簡単に侵入出来るようなサーバーには無いはずなんですが。相変わらず、電子の海に放つと怖い師匠ですね。」

サファイヤは、改めてさよりの情報分析能力に舌を巻くのであった。


 さよりは、にこやかに微笑みながら、ワイングラスを持ち上げ、サファイアに捧げた。


 サファイアは一呼吸置いてから

「幸一さん。先ほどは突然告白しましたが、私と結婚しても構わないでしょうか?」

幸一は、サファイアとさよりを交互に見て、諦めたように息を吐き出し

「別に今、結婚をしたいと思う女性がいないし、好きな女性もいない。俺達に出来ることは、協力するって言った手前、やらんとなぁ。」

「ありがとうございます。」

「感謝してくれるのはいいけど、本当に俺なんかで良いの?」

「幸一さんでないとダメなんです。私にとって結婚相手は、あなたでないと駄目なんです。」

真剣な顔をしたサファイア女王に、両手を捕まれ正面から顔を見つめられ、そう言われた幸一は、腹を括り力強い頷いた。


さよりは、他のメンバーに

『これから発表する事に、さも当たり前と言った態度で、対応してね』

とメモを回した。

晩餐会の歓談が続く中、そろそろ終盤に差し掛かろうとしたとき、サファイア女王が席から立ち上がり

「今宵は、私の遠方からの大切な方々を迎えての晩餐会に、出席していただき、ありがとう。ここで、私から報告したい事があるので、心して聞いて頂きたい。私、サファイアはこちらにおられる、幸一殿と婚儀を挙げることを、皆様の前で報告いたします。正式な発表は、開国宣言の日に、全国民に対し行う事とします。」

と言って、顔を少し赤らめながら、幸一を見つめる。


 会場は、一瞬の静寂に包まれた後、大騒ぎになった。国家元首でもある女王の突然の結婚宣言。

各テーブルでは、ショックを隠せない人や、歓迎ムードの人、敵意を露わにする人。色々な人間模様が展開されていた。

騒がしくなった会場で、幸一も席から立ち上がり、人好きのする笑顔(胡散臭い笑顔)をして、晩餐会に来ている人々に向かって

「皆様、お静かにしていただけますでしょうか?皆々様に置いては、青天の霹靂だとは思いますが、統一銀河地球政府代表の私が、この度、こちらのサファイア女王との婚儀を挙げれることになり……」


 幸一が、いかにサファイア女王と知り合い、これまでどのように愛を育んでいたかを、身振り手振りを交えて堂々と語り出した。

最初は、『なに言い出すんだ!』と心の中で叫んでいたメンバーも、1分もすると、『いつもの事か』と、晩餐会の料理に関心が戻った。


このサラダのドレッシングいけるね。あぁステーキが美味しい。デザートまだかなぁ。


 サファイア女王は、うっとりと幸一の語りに耳を傾けて、時折照れたように俯く姿が初々しく、晩餐会に招待された貴族や有力商人等は、次第に幸一の語りに飲み込まれていった。幸一の語りが終わる頃には、陶酔しきった人々からの絶賛の拍手だった。

それに片手を挙げて応え、席に戻った。

「よかったねぇ、サファイアちゃん。」

「はい!ありがとうございます。さよりさん。」


 晩餐会が終わり、幸一がサファイアをエスコートして会場を退出する時、会場に居た全ての人がスタンディングオベレーションで見送った。



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― 新着の感想 ―
[一言] >幸一達は、全員幸一を睨み付けた    幸一さんが沢山いるみたいです。少なくとも幸一はにらみつけなかったでしょうね。
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