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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第3章
78/144

宇宙へ

「まもなく月軌道に到着します。」

自立支援重巡洋艦タートルエクスプレスは、太平洋の海中から一気に月軌道上まで上昇し

現在、月軌道を越えてショートワープするために通常空間を航行中


タートルエクスプレスの艦橋では、慌ただしく各計器のチェックが行われていた。


「通信システム異常無し、空間監視システムも異常無し。当たり前だけど、ここから先とりあえず冥王星までは、人工物は無いよぉ」

「各動力システム異常無し。生命維持システム異常無し。艦内重力システム1G設定変動無し。極めて順調。」

「火器制御システム異常無し。艦載機オートシステムチェック異常無し。」

「航行システム異常無し。マニュアル航行システム異常無し。宙図は、かめちゃん、この宙図大丈夫?」

「大丈夫ですよ。ここ200年新星やブラックホールは発生していませんから、そう大きく座標が変わっていませんから。」

「メイン動力炉異常無し。通常空間エンジン異常無し。現在出力5%にて稼働中。空間転移エンジン、アイドリング中。エネルギー充填完了。いつでもショートワープ行けます。」

「久しぶりに宇宙空間に来たなぁ」

「ここまで来ようと思えば、いつでも来れたんだけど、忙しかったしアポロも打ち上げって無い時代に来てもなぁ。」

幸一が、艦長席に座って月の裏側を見ながら呟いた。月と地球の間に浮かんでいる人工物を見て

「あそこに有るのが、第一スペースコロニー、別名飯場コロニーか。」

遠くに、現在建築中のコロニーの金属フレームの基礎が見えていた。

密閉型シリンダーコロニーベースとなるフレームに円盤型の太陽光集光ミラーが取付けられるように何本もの支柱が伸びている。

「どれどれ。ちっちゃいねぇ」

さより達が()()()()()()()()()に比べて、全長で10分の1程度の大きさしかなかった


「さより、仕方がないのよ。地球から部品を打ち上げって造る都合上、

あれ以上大きなフレームで造ることはできないのよ。」


 現在作成中以上大きなコロニーを地球資源だけで作ろうとした場合、

地球上の金属相場が高騰しすぎて、大変な事態が起こる予想がされたため、

最小限の物資で出来る範囲のスペースコロニー製作となっているのであった。


それでも、金属相場、特に軽金属の価格が跳ね上がることを押さえることが出来なかったのである。


幸一が建造中のコロニーを見ながら

「確かになぁ。完成しても100人ぐらいしか、まともに暮らせないしな。」

と言うと政史が

「なんせ、コロニーの3分の1は、小惑星から資源を取り出す為に、小惑星を粉砕するための、削岩機と分離機になっているし、その後ろに急遽改装して付けた、太陽熱を利用した溶鉱炉と焼結炉が連なっていて、加工ブロックに出来た素材を送り込んで、本当の意味でのスペースコロニーを造るための部品を製作する空間になってるからね。」

と続けて言った。

「まったく、誰の発案か知らないけど、小惑星から有効な資源を取り除いた土塊を溶かして、コロニーのフレームを造ることに思い付いたもんだ。」

正が感心した感想を言った。


 現在建造中のスペースコロニーは、本格的に人類が宇宙空間で生活できるスペースコロニーを、建造するために造られているいわば工場コロニーであり、

世界的には人類初の恒久的宇宙生活空間、と騒がれているのだが、それは正確では無くなっているのであった。

 確かに設計予定構想では、このスペースコロニーは次世代のスペースコロニーを作成するために建造される、密閉型工場型スペースコロニーとして約500人ほどの人が、コロニー部品製作に携わりながら生活をしていくコロニーとして、建造が始まったのであるが、急遽設計変更をしたために構造的な欠陥が出来てしまい、完成しても多くの人が恒久的に生活することが出来なくなったのである。


 それは、設計変更により太陽熱を利用した溶鉱炉と焼結炉を増設する為、生活空間用に設計されてあった、住居及び空気浄化用森林草原ユニット部の場所を破棄したためであった。


 その為に生活できる人数が大幅に減少し、コロニー内の工場で働く人たちの為に、コロニーの外周に宿泊休憩出来る移住ユニット、食用植物の水耕栽培プラントの食料ユニットが後付けで増設設置されることが決まり、通常150名、最大300名が生活できるスペースを、なんとか確保することが出来たのである。

 それも、汚水処理や二酸化炭素分解触媒を詰め込んだ生命維持システムを、最低1ヶ月に1度交換しなければならず、とても恒久的に生活できるとは言いがたいスペースコロニーだったのである。


 ではなぜ、このような設計変更がされたか?


 それは、次世代のスペースコロニーのフレーム素材が、この工場スペースコロニーのような軽金属製のフレームを用いらず、重セラミック製のフレームへと変更したためである。


 ではなぜ重セラミック製のフレームに変更せざる得なかったのか?

 当初この工場コロニーで作製されるスペースコロニーのフレーム材料として選ばれたのは、小惑星から産出される有効な金属資源を用いる予定であった。

その為の熔鉱炉に圧延、冷却ユニットを開発し、打ち上げる寸前まできていたのである。


 だがここである問題が発生。


 それは、残土処理問題だった。


 小惑星を砕き資源を産出することにより、出来る土塊は当初コロニーが出来た時に内部に搬入し、コロニー内部の基礎土として利用する予定であったが、思った以上に土塊が大量に発生することが計算上で判明し、全てのスペースコロニーが完成し終わるまで、その大量な土塊を長期に渡りどこに保管するのか。

 当たり前ではあるが、宇宙空間では地球上のように、海に埋め立てたりする事で処分することが困難で、うっかり飛散しようものなら、小石程度の物でも宇宙ゴミとなり、

宇宙空間を航行する宇宙船に対して危険極まりなく、欠片一辺たりとも見逃せないのである。


 そこで考えられたのは、

『土塊や岩石を溶かして、圧延して金属の代わりにならないか?』


 つまり、地球上で言うレンガ造りの建物のように、土塊を使用した新たな建材を開発すると言う研究が始まり、地球上で溶岩や土を型に流し込み、

いろいろな実験を繰り返した結果、岩石を粉砕粉末処理をして、型に入れ焼結処理をすることにより、十分フレーム資材として使用出来ることが判明し、

嬉しい誤算として、宇宙線等の放射線に対する耐曝性耐久性能は、金属製フレームより優秀で、金属と言うより磁器に近い性質の為、酸化による腐食劣化も

起こらないことも、コロニー建材としてプラス要因となった。


 問題点として挙がったのは、金属製と比べて耐衝撃性が弱く割れやすいと言うことだったが、それも形状、表面コーティング、製作方法等の研究を重ねた結果、

金属製フレームと何ら遜色の無い物が連続生産することに成功したのである。


 これにより、残土となる物を資源として使用できることが判明。

コロニー建造に必要な大量な建材の供給問題も解決し、小惑星から取り出した有効な他の資源は、コロニー内部のインフラや地球に降ろし、

地球上での金属相場の高騰を抑えることが出来る見通しが出来、関係者を安心させた。



「ま、巨大な建造物を造るのに、大量に余る廃棄物が材料として使えたのが大きいな。」

幸一がスペースコロニーの製作話をすると

「要するに、スペースコロニーの骨格となるフレームは、金属製から産廃利用のセラミック製になったって事だよねぇ」

明美がつぶやき、政史が

「しかし、俺達が生まれたコロニーのフレームが、セラミックだったって知ってたんだけど、最初は半永久的な素材という理由で、開発して建造したって聞いていたんだけど。」

と遠くの建造中のコロニーを見つめ

「私、歴史の授業で強度が高く、岩石の持つ不変的な耐候性が有り加工が容易で、材料コストが低く抑えられるので、採用に至ったって教えられたんだけど。」

美由紀が、少し遠い目でコロニーを見つめ、正が困惑した声で

「俺も、セラミック建材の利点を聞かされた。比重の重いセラミック建材を使用することによって、慣性の法則によって、自転周期に公転周期がブレ難くなりコロニー内での人工重力が安定するって聞いてたんだけど」

つぶやくと、さよりが

「全ては、後付けの意味で、実際は産廃ゴミの処理目的だったんだねぇ」

何とも言えない微妙な空気感が漂っていた。


さよりが、

「あの工場コロニーが歪な形に造られているのは、設計変更があったからなんだねぇ」

コロニーとしては歪な構造をしている工場コロニーを見ながら聞くと、幸一が

「もともと、太陽光を取り込む可動式ミラーを持つ開放型シリンダーコロニーは、窓部分に素材的にコストがかかり過ぎるし、

あの巨大なミラーを開閉する駆動方法も今の技術じゃ完成してなかったので、仕方なくシリンダー中央に太陽灯を付けて中を照らす

密閉式のシリンダー型コロニーを設計していたんだけど、ほら、コロニーのフレームを金属製からセラミックに変更したから、高出力な大型セラミック焼結炉が

必要になったんだけど、土塊を連続焼結させる為に当初搭載予定の核融合炉の出力では不足する恐れがあって、長時間出力することが出来るか?の問いが

『無理すればできるが安全の保障が出来ない』と言う見解が出て、安全と引き換えに生産に出力を回すことが出来なかったし、新たに高出力の核融合炉に

変更するにしても、高出力に伴い大型化する核融合炉に対し、コロニー内には設置スペースが無く、新たに設計し直すと時間もかかり、

しかも核融合炉の大型化に伴い、当たり前だが核融合炉の自体の重量が重くなるため、重さに対しコストは2条で増えることから、運ぶコストが跳ね上がって、

再計算した予算が、当初の100倍以上に膨れ上がることがわかって、苦肉の策として、焼結炉の熱源を電力によるものではなく、外に大きく広げたミラーで

太陽光を一点に集光して焼結温度にするという方法しかなかったんだよ。

だから、集光の為にコロニーの外装部を剥ぎ取って、光路を確保して集光部に溶鉱炉と焼結炉を配置、

計算式上では、十分に高温が得られるので、それに沿って設計変更を行ったようだね。

それと追加した焼結炉の設置場所の確保の為に、居住空間を無くして組み込んだんだから、あんな形になってしまったんだよなぁ」

政史が

「見た目開放型シリンダーコロニーだけど、ミラーは固定されていて、実際は密閉式シリンダーコロニーなわけだ。」

拓哉が

「そのせいで、強度低下を招いて回転による人工重力を内部に発生させることが出来なくなったんだよなぁ。」

美由紀は建造中のコロニーを見て

「あのコロニーが、部品類を製作し稼働しているのが見れるのかな?」

と言うと、かめちゃんが不思議そうに

「あれ?皆さんは、あのコロニーが稼働しているところを見たことが無かったのですか?」

美由紀が

「そうなんだよねぇ。私達が小学生の頃は、もう博物館になってたからね。」

政史も

「そうそう、行ったなぁ。遠足とか社会科見学で。人類初のスペースコロニーと言ってさ。

宇宙に住む我々はこのコロニーのおかげで、今があるんだぞって何回も聞かされたよ。」

懐かしそうに言うと、さよりが

「あたしも行ったよ。あのコロニー、構造的強度が無いとかで、住居ユニット部以外完成してから一度も人口重力発生の自転をしたことが無いんだって。だから分離機以外は無重力状態で稼働していたんだって。

移住区もわずかな重力しか発生させることが出来なくて、長期滞在が出来なかったって聞いたなぁ。」


この工場用コロニーは、全てのコロニー(32基)が完成した後、残っていた小惑星を

全て資材に加工後、工場としての生涯を終えた。その後、高温の発生源となるミラーの除去作業、各部所の補強、内部リフォームして、各国から集めた宇宙に関する資料を配置し、後世に宇宙開発の歴史を残すといった、歴史資料館として再出発を果たしている。


「しかし、ここの(地球)スペースコロニーもフレームにセラミックを使っているんですね。」

かめちゃんは、建造中のコロニーを見て感心したように言った。

「どうしたのかめちゃん?」

「いや、帝国でもスペースコロニーのフレームメイン材料は、セラミックだったんですよ。ここと同じように

小惑星から出る残土を使ったセラミックで造ったんですよ。なんか似てますね。地球と帝国って。

でも帝国の場合は、最初から規格寸法で決められたセラミック資材で設計施工されていましたし、

小惑星に直接工場を作っていましたから、あのようなコロニーの製作はしていませんがね。」

かめちゃんによると、帝国内でスペースコロニーを製作するときは、大きさは規格で決められているので、

依頼人は、カタログから大きさと用途を決め注文すると、受注業者が手持ち小惑星に、無人工場ユニット設置。

工場ユニットは小惑星を削りながら、パーツを作成し自動的に組立したのちに、搬送業者へ。

後を引き継いだ搬送業者が、スペースコロニーを依頼人の設置場所となるラグランジュ点に曳航して行き

自転をさせて内部重力を発生させると、次の内装業者に引き渡し、注文通りの内部構造へと改装していき、注文主に依頼された内装に工事をするそうなのである。

注文主の中には、個人の別荘として小型のコロニーを注文する人もいるという


「なんか、技術力と経済力の違いを見せつけられた気がする。」

幸一は、かめちゃんを造船した帝国の国力のすごさに頭が下がる思いだった。

「さて、皆さんの計器類のリハビリは終わりましたか?」

かめちゃんが声をかけると

「こんなもんだろう。」

「大丈夫でしょう。」

「だいたい思い出した。」

「完璧よ。」

「問題ない」

「なんとかなると思うよぉ」

幸一はみんなを見渡して

「では、最初のショートワープの準備に入ろうか。目標座標、冥王星軌道」

「了解!」

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