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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第2章
67/144

番外編  さよりちゃんのお仕事って

銀河社でちょっとした問題が発生していた。

それは、さよりと新入社員6人との関係悪化だった。

発端は、まだ海外から帰って来ないさより宛てに、国外から送られてくるしっかり木枠梱包された荷物だった。

 この荷物が送られてくる前に、さよりから手紙で何個か送られてくることは、事前に知らせてもらっており、さよりの手紙では多少雑に扱っても良いので、邪魔のならない場所に積み上げて欲しい、ただ、帰国するまで開梱はしないように。と書かれていた。送り状に書かれている品物名は、英語で書かれてはいたが、頭にAuと書かれた 部品名、鉱石名が書かれていることが多いが、中には金属屑、ガラクタと書かれている物も

 実際に届いた荷物の側面に、番号が焼き印されていたので、来るたびに順番に並べて適当に積み上げていたが、小型とはいえ1個が30Kg近い重量物で、月に3個のペースで届く荷物が、百個を越えた辺りから置き場に悩むようになってきた。

新入社員達は、開梱して箱を片付けでは?と上司達に言うと

幸一は、

「これ、パンドラの箱だろうなぁ。」

サファイアは

「まさか、あれじゃないでしょう?あれだとしたら、どうやって集めたのでしょう?。」

政史と正も

「いやいや、あれだとしたら量が多すぎる。」

明美は

「ま、さよりだから、どっかでちょろまかしてきたんじゃないの」

拓哉は

「さよりだからねぇ。世界中で暴れてた気がするなぁ」

美由紀は

「さよりだからねぇ。触らぬ神に祟り無しですよ。みんなも、勝手に開けないようにね。後悔するからね」

と言って、誰一人触ろうとせず積み上がって往くばかりだった。

 さよりという人物を見たこともなく、どうゆう人物かまったく知らない新入社員には、上司達の内容のわからない会話聞かされても戸惑うばかりだった。

仕方なく新入社員達は、送られてくる荷物を受け取ると積み上げることを繰り返していた。

しばらくして、さよりが6年ぶりに日本に帰国。

 新入社員達はさよりが帰国したら、荷物は片付けられていくと思っていたが、さよりは開梱せずにただ眺めているだけで、なにもしない。

しかも、荷物は送り続けられて来ていた。

さすがに帰国してから2か月が過ぎても放置してある荷物に、新入社員達が邪魔だから片付けて欲しいとさよりに言っても、

「もうちょっと待っててねぇ。」

と笑って言って、一向に片付けようとしない。新入社員達が不満を募らせているのは、さよりが仕事をしている姿を、まったく見たことが無いと言うこともあって、社内にいて仕事もなにもしないのだったら、送ってきた荷物ぐらい片付けぐらいして欲しい。と思っていた。

なにしろ新入社員達からしたら、さよりは居候の遊び人としか見えなかったからである。

帰国してからすでに半年以上を過ぎても、毎日ぶらぶらして仕事らしいこともせず、毎日昼頃に事務所に顔を見合せるが何もせず、ふらりと出て行けば、ほぼ午前様で酔って帰って来て、事務所の奥にある自分の部屋に入り出て来ない。

 さよりが、晴れ着を着ていそいそと出かけるので、どこに行くのかと思い後をつけてみると、外国人男性と親しげに腕を組みながら、歩く姿を目撃する。その相手の外国人男性も、日によって違うことも。

珍しく朝から事務所にいると思えば、

「みゅう、お金が無くなったから、ちょうだい。」

と仲野部長にお金をねだり、仲野部長も強く叱咤するものと思いきや

「また?今度はいくらいるの?」

「そうねぇ。とりあえず2百円有ればいいや!」

「無駄遣いをしないでちょうだいよ。」

ため息を付きつつ、金庫から現金をさよりに渡す。

「ありがとうねぇ。」

と、仲野部長からお金をもらってどこかへ出掛けて帰って来ない。そうやって会社の金庫から、度々お金を持っていく姿を見かねて、

「仲野部長!さよりさんにあんな大金、渡しちゃ駄目じゃないですか。あの人仕事もしないで遊びに行くか、異国の男に貢ぐだけですよ。」

と意見を言っても

「あの子は、貢がれることは有っても、貢ぐことはないなぁ。たぶん。でも、ある程度のお金を渡しておかないと、他で何してくるか。」

「何するんですか?さよりさんが?」

ため息をつきながら

「あの子には、ある程度お金を渡しておかないとね。出所を聞くのが怖いお金を、いつの間にか持っちゃてるからねぇ。ま、お金を渡すのは、私の心の安心感の問題だから気にしないで。」

と言って仕事に戻ってしまう。

それを聞いて、仲野部長は友達だから、さよりがお金を稼ぐのに春を売るのも辞さないので、それを防ぐ為に心を砕いていると、新入社員たちは思い込んだ。


「こんな感じかな?じゃ行ってきます!」

と言って、珍しく正装して出かけたと思えば、2,3日帰って来ず、深夜に帰ってくるようなことも。

最初は、他の部長と同じように他社に出向き、経営の指南をしているのかと思っていたら、

繁華街で堅気じゃない近寄りがたいガラの悪い連中と、スーツを着たさよりが

「さよりの姉御、久しぶりに、うちに寄って来ませんか?」

「いいねぇ、何か新しいモノ入った?」

「そりゃもちろん。」

「いいねぇ、いいねぇ。」

と、笑いながら肩を並べて歩いてやくざの屋敷に入って行ったり、ある時は、派手な服装で花街の如何わしい店に出入りしている場面を多々見かけ、そこで出くわすと

「おーい、三郎じゃない?一緒に遊ばない?」

と、声をかけられて誘われたりもするが、さよりの周りに侍らす女性達の雰囲気にびびって

「い、いえ、仕事がありますので。」

視線を合わさず逃げるように立ち去ると

「付き合い悪いぞ。ま、いいや、また今度ねぇ。このお店に来たら、サービスするからねぇ」

と、手を振られて見送られる。


 またある時は、津田営業部長と同行していた佐藤が、取引先の役員の接待で高級料亭で会食していた時、廊下で高級な着物姿のさよりと鉢合わせして、驚いた佐藤が

「何してるのですか、こんなところで。」

声をかけると

「あれ?佐藤君だ。どうしたん?」

と、笑顔で手を振りながら近付き

「津田部長の付き添いで、お客様と会食ですよ。さよりさんは?」

「あたし?あたしは、知り合いのオッチャンに御呼ばれしたの。ここのお店のお料理美味しいよね。あたしを呼ぶんだったら、ここにしてって言ったら、すぐに席を取ってくれたんだ。だから、ちょっと行ってくるね。バイバイ」

と言って料亭の奥の座敷に消えていった。そのことを津田部長に伝えると、幸一は左手で頭を押さえると

「佐藤、忘れろ。さよりが今会食している相手を詮索するんじゃないぞ。後悔するからな。」

と、言ってきた。

「なぜですか」

「いいから、世の中知らないほうが幸せってことがあるんだからな。」


思い余って石井部長に、注意してもらおうと

「部長!さよりさんを注意してください!呑みに行くなとは言いませんけど、ガラの悪い連中と付き合わないようにするとか、会社のお金を持ち出さないようにしてもらえませんか?」

と直談判をしたが、

「あなた達の気持ちはわかるけど、さよりなりの仕事してるからねぇ。それとなく言っとくわ。だから、さよりには、絶対お金のことで嫌みを言っちゃダメよ。」

と言われ、なんら改善することはなかった。

ますます、さよりが部長たちに依怙贔屓されているとしか思えず、さよりに対して新入社員の6人の不満が膨れて行った。


 そんなある土曜日のこと、半ドンなのにいつものように慌ただしい銀河社の社内で、いつものように一人、応接間でお茶を淹れてせんべいを齧りながら、のんびり新聞を読み寛いでいるさよりの姿を、外回りから帰ってきた営業の佐藤が見て、仕事先でのイライラもあって、ついさよりに向かって

「そこの穀潰し!」

と言ってしまった。あわてて

「おいおい、やめておけ。」

と同僚の鈴木が制するが、佐藤はさよりに

「いいや!今日こそ言ってやる!部長達の友達か知らないけど、仕事もせず遊んでいるそこの穀潰し!」

さよりは、キョロキョロと周りを見渡した。

「何してやがる!お前だ!お前!」

さよりは、人差し指を自分の顔に向けた。

「そうだ!お前だよ!昼間からゴロゴロしやがって、それでいいと思っているのか!」

コクンと頷くさより。

「良いわけないだろ!仕事しろよ!仕事を!!」

なんで?という感じでせんべいを齧りながら、首をかしげるさより。

「お、お、お前なぁ。」

怒りのあまり声が出なくなった佐藤。その時、

「国際貨物を、お届けにまいりました!」

と、郵便職員の声がかかり、いつものように中庭の荷物が置いてある場所に運び込んできた。

それを見て応接室から、さよりが中庭に出てきて

「いつもすいませんね。いつものように、そこら辺に置いておいてくださいなぁ。はい!判子」

と言って荷物をさっさと受け取って、いつものように箱を所定の位置においてもらった。

箱の焼き印は200となっていた。

「ご苦労様です。これ、少ないけど冷たい物でも買ってちょうだい。」

と言って幾ばくかのお金を郵便職員に握らせた。

「いやいや、困ります。こんなことをしてもらうと。」

「良いって。この荷物が最後だから。重かったでしょう?今までご苦労様でした。ってことだからね。」

ニコッと笑って見つめると、少し照れたように

「そうですか?じゃ遠慮なく。」

と言って二人の郵便職員は、お金を受け取って帰って行った。

 さよりは踵を返すと、自分の部屋からカメラと三脚を持ち出してきて撮影の用意をすると、山のように積み上げていた箱の前に立ち、シャッターに外付けセルフタイマーを付けて撮影。それを三回繰り返し

「念のために。」

と言って、デジタルカメラに換えて再度セルフタイマーで撮影

「ふう。やっと配送が終わった。これで写真と共に契約書を渡したら終了だぁ!」

と言って撮影機材を片付け、部屋に帰ろうとした。

「お前何してんだよ。まだ話は終わってねぇぞ!」

佐藤は、部屋に戻ろうとしていたさよりの肩を掴み、振り向かせた。

「何すんの!痛いんだけど?」

と言ってさよりは、振り向きざまに佐藤の腹に鋭い蹴りを入れた。たまらず手を離し蹲る佐藤

「てめえ!なにしやがる!」

痛みを堪えてさよりに飛び掛かるが、ひらりと避けられ庭に転がる佐藤だった。

完全に頭に血が上った佐藤は、

「この阿婆擦れ!毎日金をせびって仕事もせず遊びやがって!少しは稼いでこい!身体を売る事しか出来やしねぇだろうけどな!」

と叫んだ。

そこに騒ぎに気付き駆け込んできた、美由紀を筆頭に事務所にいた4人の新入社員

佐藤の吐き捨てるように言った言葉を聞き、頭を押さえる美由紀。

「あちゃー。佐藤。あんたは、言っちゃいけない言葉をさよりに言っちゃたねぇ。謝るなら今のうちだよ。」

さよりを庇うような言葉に、佐藤は

「仲野部長。でもあいつ仕事してないじゃないですか!居候の分際で!いつも遊び歩いてばかりで。悔しかったら一銭でも稼いでみろ!」

さよりは、カメラからフィルムを出す為に、フィルムを巻き戻しながら

「お金?いくら、稼げば、いいのかな?」

感情が欠落した声を発した。その声に冷や汗をかきながら美由紀は

「はぁ。佐藤、死んだな。私はもうあんたを、庇えないよ。」

あきれ顔で佐藤を見た。

「部長は、俺じゃなく、さよりを庇っているんじゃないですか!今までも!全く仕事もしないその阿婆擦れを!」

「佐藤!口のきき方があるでしょ!」

あまりの口調に美由紀が注意すると

「仲野部長。確かに佐藤は口が悪いですが、間違ったことは言ってないと思います。」

「鈴木君もそう思うの?」

美由紀は困った顔になり、鈴木を見ると

「はい。お前らもそう思っているだろう?」

と鈴木は事務所にいた4人にも同意を求めた。

「お前達、鈴木はああ言っているが、どうなの?」

「はい。私もさよりさんは、仕事もせず遊んでいると思っています。国外からガラクタを送ってきて、邪魔なんです。毎日遊んでいるなら、その荷物を早く片付けてください!」

沢井が言うと、後の3人もうなずいた。

「やくざ者と付き合ってる人が、同じ会社にいるだけで、嫌なんです。」

「花街にも居たそうじゃないですか。働きもせず遊ぶお金欲しさに、体を売るなんって。女性なのに恥を知りなさい。」

「自分のお金でもないのに会社の金庫から持ち出して、毎晩飲み歩いて。節度というものを知らないのですか?」

新入社員からの罵声を一身に浴びるさより。その背中が少し震えてるように見える。その姿を見て佐藤が吐き捨てるように

「泣いたら、許してもらえると思ってるのか?甘いんだよ!」

「そうだ。泣く前に言うことがあるだろう!」

その言葉を聞き、何かあきらめたように

「はぁ~。さより。任せたわ。私はもうこの子たちを庇わないからね。」

と美由紀が言うと、カメラからフィルムを取り出したさよりは、フィルムを美由紀に手渡して

「みゅう。それ、現像してきてもらってきて。今からこいつらを教育的指導するからね。」

ニタァ~と笑いながら6人を見た。その姿を見て

「再起不能にだけはしないでね。ここまで育てたんだから、手加減してあげてね。じゃ私は写真館に行って現像してもらってくるからね。会社の玄関に営業終了の看板出しておくから、後はよろしく。」

フィルムを預かると振り向かず逃げるように、会社から足早に美由紀は出て行った。

そのやり取りを見届け唖然となった新入社員達に、さよりは背筋の凍るような笑顔で

「さぁ~て、あたしが仕事してないって言ってたよね?一銭でも稼げって言ってたよね?荷物が邪魔って言ってたよね?ふ~ん。ほらよ。」

と言って、6人の足元にどこから取り出したのか、バールが3本投げ出された。

「な、なにしやがる!」

佐藤が怒鳴るが

「なぁに、商品が全て揃ったから、やっと開梱出来るんでね、証拠写真も撮ったし、木枠をばらしていいよ。」

「なんで俺らがやらないといけないんだ!」

と言ったが、さよりの

「ぐずぐず言うな!やれ!」

普段のさよりからは想像できない気迫で、思わず男3人がバールを手にしてしてしまい、仕方がないかと顔を見合わせ、庭に積んであった荷物の梱包をばらし始めた。

船便の荒い扱いにも耐えるようにしっかりとした木枠梱包が外され、中から木の箱が出てきた。

その木の箱の蓋を外すと、中から光り輝く金の延べ棒が2本出てきた。

「「「「「「えっ!!」」」」」」

「こ、こ、こ、これなんですか!」

「見た通りの金の延べ棒だけど?」

「どうして、まさか、ぬす」

「何言ってるのかな?これは、あたしが海外で稼いだ、ほんの一部なんだけど?どう?金塊10kgが二本入りで一箱20kgの純金。どう?一瞬で1銭以上稼ぎましたけど?ほらほら、何とか言ったどう?」

さよりは、嫌味たらしく6人に語りかける

「盗んだんじゃないよ。6年間海外でしっかり稼いで、金塊にして送って来たものだからね。あなた達、年間で、これぐらい稼いでる?」

荷物の前に立ち新入社員達を、冷ややかに見つめるさより。

急に形勢が逆転した感じになった新入社員達は、

「これっていったい、いくらになるんだ?」

「佐藤、ヤバいぞ。この箱全てこれが入ってたら、1千万長者どころの騒ぎじゃないぞ」

「あの、さよりさん。全部そろうのを待ってたと言ってましたが、それはどうゆうことですか?」

沢井が恐る恐る聞くと

「イギリスの会社に、金塊20kg入りの木箱を200箱送る様に依頼したんだ。全てがそろうまで開梱せずに、最後の箱が届き次第写真を撮って、残りの代金の支払いの手紙を送る算段になってたので、最後の箱が来るまでバラせ無かったのよねぇ」

と言って、荷物の山を見た。

「仲野部長もこれを知ってたから、何も言わなかったのね」

「しかも、巻き込まれるのを嫌がって、逃げたわよね。仲野部長」

正解

「何話しているのかな?早く全部バラしてほしいのだけど?」

バツの悪い顔をして佐藤が

「さよりさんが、海外でお金を稼いできたのはわかりましたから」

「わかりましたから?で、なに?」

さよりは、木箱に腰かけて佐藤を見た。

「言い過ぎたのは謝ります。申し訳ありません。」

と、頭を下げた。その姿を見たさよりは微笑みながら

「だから、なに?」

「えっ。」

「まさか、それであたしが許すとでも、思ってるの?」

「しかし、」

「あんた、あたしに、言ったよねぇ。泣けば許されるって思っているのか!って。そしてあなた達、あたしがほくそ笑みしてるのを知らずに、尻馬に乗って攻め立てたよねぇ。あんだけあたしに、大口叩いたんだから、覚悟を持って木箱を片付けなさい!」

「でも、日本では働いてなかったでしょ。今更こんな金塊を見せられたって、仕事してないことには変わりないでしょ!」

稼ぎはしていても、それは海外ならば日本では働いていないのは、間違いじゃないと言いたかったが、

「仕事はしてたよ。なんなら調べた見たら?」

そう言われて、沢井が事務所に駆け戻り、社員全員の勤務表を持って戻ってきた。

「そもそもここに、さおりさんの名前がありません。ここの社員じゃないのですね。社員でもない人に偉そうにされるいわれはないです!」

その勤務表を受け取ったさよりは、ページをめくり

「ここにあるけど?」

と言って沢井に見せた。そこは一般社員の欄ではなく、部長達が書き込む行動の欄の次のページで、1人だけの欄が有り、そこにはしっかりと『柿本さより』と言う名前が書かれており、行動予定には『市場調査』『出張』『休暇』『会食』の4つだけが書かれていた。

しかも『会食』欄に書かれてた内容は、大手財閥の役員の名前や大臣の名前も書き込まれていた。

「ここって、部長達の行動予定欄だよね。まさか、さよりさんって部長級?」

「「「そんなぁ」」」

「サボらない!休まない!男はさっさとばらす!女は金の延べ棒を左の倉に入れて。」

「「「「「「はい」」」」」」

新入社員達は訳がわからず、全員で木枠梱包をばらす作業に。

男性が木枠をばらすと、女性が延べ棒を持って倉の中に運び積んでいく。ひたすら作業を繰り返し、気付けば日も暮れて星が瞬いていた。


 中庭の縁側には、幸一にサファイア、政史に明美、拓哉、正、美由紀にかめちゃんと、銀河社の重役が勢揃いしていた。

「美由紀さん。新入社員達は何させられているのでしょうか?」

サファイヤが状況を飲み込めなくて、美由紀に問うと

「新入社員の子達が、さよりにねぇ。穀潰しだの、1銭でも稼げだの言っちゃったのよねぇ」

止めたんだけどねぇと、苦笑いをしながらこたえ

「その禁句を言っちゃったのですか!あれほど言ってたのに。仕方ないですねぇ」

サファイヤは呆れた顔をして新入社員達を見た。

「しかし、やはりパンドラだったなぁ。あの箱。」

「幸一よぉ。でもあれだけの金塊をどっから持ってきたと思う?」

「そもそも、あれって輸入したこと申請してるのか?密輸になるんじゃないか?」

「所得申請しないといけないかな?所得税でほとんどなくなるんじゃないか?」

と、外野でしゃべっていると、山本三郎が駆け寄ってきて

「仲野部長、俺達男はいいけど、どうか、女の子たちを助けてください。」

と頭を下げてきた。

すでに開梱された箱は56個。100本以上の金の延べ棒が蔵に移されていた。

女性陣は、1本10Kgの金塊を1人では持てなくて、山本と合わせて4人で二人一組になり金塊を倉に運んでいたが、そろそろ体力的に限界が来ていた。

開梱している佐藤に鈴木も、汗ずくになり肩で息をしながら、ふらつく足で木枠を外していた。

「なぁ、さより。そろそろ許してやったらどうだ?」

中庭を見ずに、なにか書類を書いているさよりに、幸一が声をかけた。さよりは幸一に一瞥すると、

黙って中庭に降り、カメラを彼らに向けて数回シャッターを押し撮影した。

「手を休めて、集合!」

さよりの掛け声で新入社員達は、疲れた体を引きずる様にさよりの前に集まる。

集まった新入社員達を見渡して

「最初に言っておくね。銀河社は情報を売る会社だってことは知っているよね。会社運営、技術、為替などの情報の真偽を確かめ、お客様に有益な情報を提供し、お客様の会社が繁栄することで、この会社はお金をもらっています。裏付けのないガセ情報を公開すると、お客様に損失を与え、当社の信用を無くします。

あなた達は、思い込みで動いた結果、どうなりました?」

全員下を向く、その中で佐藤が

「でも、さよりさんの日頃の行動では、我々には情報が少なすぎて、勘違いしたのは仕方がないことだと思いませんか?」

「そっかな?町のあっちこっちで会ったよねぇ?その時に聞けば、勘違いしなかったんじゃない?」

さよりはニヤニヤとしながら答えると

「だから、誤解を解くためにも、俺の質問に答えてください。まず、さよりさんはこれだけの金塊を、どうして輸入できたのですか?」

普通はこれだけの大量の金塊を輸入できる権限はないと、言うと

「おいおい、あたしは言っとくけど、銀河社の財務部長だよ?知ってた?偉いんだぞぉ。ついでに言っておくと、ここのメンバーと、同い年だぞ。知ってたよね。投資目的で金塊を輸入することなんぞ、簡単なことだよ。」

全員が驚きの声を上げ、美由紀と幸一とサファイヤを見る

「あれ?私言ってなかったけ?」

「俺は言ってないなぁ。」

「さよりさんは、私の経済の師匠ですよ」

全員愕然とした顔になり

「「「「仲野部長ぉ~聞いてませんよぉ」」」」

「「津田部長ぉ~」」

6人は自分の上司に恨みがましく声を上げた。

「あははは、ごめん、ごめん。つい忘れてて。」

「すまんなぁ。ま、これで解っただろう?さよりは怒らしたらダメだってことが。」

幸一は頭をかきながら、かるく謝罪した

「じゃ、あのお金を仲野部長からもらってたのは?」

久子が聞くと、何でもないように

「接待費を、もらってただけだけど?」

「歓楽街でやくざ者と歩いてたり、組事務所に入って行ったのは?」

「あたしの舎弟の、勝山組の若いもんのことかな?調べさせてた事を聞きに行っただけだけど?ここで会うわけにもいかんでしょ?体面的に。」

「勝山組って、あの西日本最大と言われる勝山組が、舎弟!」

「そうよ。何か問題でも?」

気負った風でもなくさらりと答えるさより

「そういえば時々、目つきの鋭いおじいさんが、さよりさんのことを訪ねて来てたけど、あの人って?」

「たぶん、銀二さんだね。確か今の勝山組の組長してるんじゃなかったけ?」

6人はとんでもない人を、怒らしたことにこの時になって実感してきた。

「花街で何してたんですか?」

「あそこでは、お店持っているし、顔役の1人だからねぇ。会合とかあるのよねぇ」

「酔っ払って朝帰りも?」

「そりゃ、財閥の重役連中やお偉い大臣達との会食に、顔を出さないといけない時もあるしね。あいつら、夜通し飲み明かしやがるから」

「!!!」

「たまにねぇ、資金を貸せとか、情報をよこせとうるさいのよ。渡さないけどね」

「社内でぶらぶらしてたのは?」

「あたしの仕事って、出先ですることが多くて、この社内でする仕事は無いからねぇ。経理はみゅうがしてくれるし、資金運営は渡辺の所がしてるしねぇ。」

「えっ!渡辺ってもしかして、渡辺投機投資会社のことですか?」

「そうだよ。だってあたし、渡辺投機投資会社の非常勤常務だからね。」

「もしかして、仲野部長、渡辺投機投資会社の人が毎月納めに来る、あの大金て?」

久子が美由紀を見ると

「あっ、あれね。さより個人の資金運営で稼いだお金の100万以下の端数を、持ってきてくれてるの。だから、S金で処理してたでしょ?」

「S金のSって、もしかしてさよりさんのSですか?」

「そうだよ。あれ?これも言ってなかったっけ?」

と言ってあらぬ方向を見る美由紀。

 渡辺投機投資会社が毎月持ってくる、10万を超える大金が端数って。じゃ、元本のお金っていくらあるの?

しかもその端数の累計が、目の前にある金塊の価格よりも、確実に上回ることに思い当たって、穀潰しとか、稼いでない!とかよく言えたなぁと、遠い目をする事務系の4人

「どうしたんだお前ら?」

達観したような4人を見て、不思議そうな顔をする佐藤と鈴木

「いや、すごいお金持ちって世の中にはいるんだなぁって思って」

「お金持ちって、こんな金塊の山でさえ、はした金なんだって思うと」

「私達ってなんだか。」

「・・・・・・・・・・・・・・・」


「他に質問は?」

「町なかで親しげに歩いていた、外国人男性たちは?恋人とは違うのですよね?」

「恋人?まさか!あ、あれ。ただの知り合いだよ?彼奴ら海外の投資家や企業の重役だけど?外国人だから、日本人にないスキンシップするから、そう見えたかなぁ?」

頭をかきながら、バツの悪そうな顔になった。

「どうゆう知り合いなんですか?」

「それは、さよりが東洋の魔女とか、為替の妖精という二つ名のせいだろうなぁ。」

幸一がボソッと言うと、佐藤が目を見開き

「柿本さより、って。マサカあの柿本さよりですか!津田部長!!」

「うそだろう!!」

と言って頭を抱え込む鈴木

「お前達が驚く気持ちはわかるが、そこにいるのが、今思い描いてる人物だよ。」

驚愕の事実を知った佐藤と鈴木だったが、事務職系の4人は何かわからなかった

「どうしたの?2人とも」

うつろな目をした佐藤が

「お前らは知らないか。国際株式市場で空前の荒稼ぎをしている日本人女性を。」

蹲ったままの鈴木が

「あの世界恐慌の直前に、大量の株を売り抜けして巨額の利益を得て、いまだに稼ぎ続けている伝説的女性相場師を。」

2人は凄腕投資家のさよりに対して、なんて言葉をかけたんだと思い、身の程知らずな発言を思い出し身震いした。

そして、全員で心の底から

「「「「「「すいませんでした。」」」」」」

といって頭を下げた。さよりはいつもの天真爛漫の笑顔でニッコッと笑いながら

「わかればいいのよ。みんな、お疲れさん。」

その言葉で全員が、脱力したように地面に座り込む。その姿を見てさよりは

「かめちゃんに、お風呂と食事、寝床も用意させたから、今夜はここに泊まって行きなさい。」

と言って背を向けてその場から立ち去って行った。




 後の銀河社の社長になった佐藤と、会長になった鈴木は、回顧録にさよりと思われる人物のことを綴っていた

「我が社には、小さく愛らしい妖精が住み着いている。いたずら好きで困り者だが、決して怒らしてはいけない。死ぬよりも辛い目に遭いたいのならば別だが」


「我が社の金庫には天使がいる。いつも幼い笑顔で優しく微笑んでいるが、決して侮ってはいけない。悪魔が目を覚ますから」

と、


何とか、年内に上げれました\(^o^)/

さて、平成最後のお正月 のんびり炬燵にこもります(^^)v


来年こそ、二輪の免許欲しいなぁ (小型ATでも可)

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