恐慌
「さて、緊急招集をかけたのは、間もなく起こる世界大恐慌について、どう対応するか会議をしたいと思う。」
幸一が議長として、今回の会議「世界大恐慌の対応方法」の会議が始まった。
幸一が緊急招集して、銀河社の会議室に、幸一、美由紀、政史、正、サファイヤ、かめちゃんの
6人が集まったのは、次の日の夕方だった。
さよりはアメリカに社員旅行に出かけているため欠席。
明美と拓哉は九州出張(旅行?)で、訪問先に電報により急遽帰阪を要請したが、まだ帰ってこれていなかった。早くても明日の午後になると思われた。
「幸一、本当に世界大恐慌が起こるのか?」
政史は確認するように幸一に聞いた
「あぁ。起こる。それも多分ここ1,2か月中に起こると俺は思っている。」
「どうして、幸一さんは恐慌が起きると思われたのですか?確かに、関東の方で起きた大地震の影響がまだ残っていて、この国自体は経済的に不安定な所が残っていますが、世界的にはアメリカの好景気に支えられて、世界経済は安定していますし、株価は上昇し続けています。陰りは見えていませんが?」
サファイヤは、自分がわかる範囲で急遽調べた世界の経済状況を踏まえて幸一に聞いた。
幸一はそれを聞いて、静かに言った。
「さよりがアメリカに渡ったからだ。」
集まったメンバーは、何?と言った顔をして困惑していた。
「それがどうして?」
と代表して正が聞くと
「あいつは、恐慌の起こる日時を正確に覚えているんだろう。それまでの間にアメリカの株式市場で
しっかりと稼ぐつもりなんだろう。社員を連れて行ったのは、株価の乱高下で起こる悲喜劇を現場で
見せるためと思える。」
その時に起こる、前日までの投資家の我が家の春を謳歌している姿と、次の日の地獄の縁に立たされた悲劇を同時に見せるため、社員教育として投資の見極めを教えるのであろう。
「幸一はさっき1,2か月の内って言ったけど、正確な日時は解らないのか?」
政史が質問すると
「それがわかれば、こんな緊急会議は開かないよ。誰か、世界恐慌が起きる日覚えている奴いるか?
歴史的な出来事があったとは覚えているけど、詳しい日時まで覚えていないもんだよなぁ。だから、世界恐慌の起こる可能性が有るってわかったから、持てるだけの資料を漁ったんだけど、今年に起こるってこと以外、すべて削除されていたよ。」
と言って幸一が、大量のプリントアウトした資料を出してきた。その資料にはアメリカで起こった恐慌の歴史と各国の混乱が書かれてはいたが、詳しい日時の所だけ、黒く塗られてたり削除されていたりした。
「えっ?日時が資料から削除って?そんな、一つも残ってないっておかしいよ」
みんなが資料を調べ、かめちゃんが保存しているライブラリーも調べたが、全て隠蔽工作の跡があった。
「たぶんさよりの奴だな?なんのためにそんなことをしたのかわからんが、あいつ以外にそんな
手の込んだ細かいことをするやつが思い浮かばん。」
幸一が、天井を見上げ考え込んだ。
「そういえば皆さんが緊急会議を開いたら、渡す様にって、さよりさんからメッセージを私預かってます。」
と言ってかめちゃんが懐から、1通の封筒を出して幸一に渡し、中に入ってた手紙を読んで幸一は
「あの野郎!仕組んだなぁ!」
と叫んだ。
「どうした幸一!何が書いてある!」
政史は幸一がさよりに対し叫ぶ姿など見たことが無かったので、慌てて内容について聞きたかった。
「あの野郎!!サファイヤ。これはさよりが仕掛けたサファイヤへの経済に対する課題だ。
これからいうことを、よく聞いて判断してください。あの野郎。アメリカから帰ってきたら絶対説教するからな!」
さよりからのメッセージは、サファイヤへの課題だった
手紙の内容は
この手紙を読んでいるってことは、あたしがまだアメリカから帰ってないってことでいいんだよね?
出来れば世界恐慌が起きる前に見てくれるとうれしいです(^-^)
サファイヤちゃん、もうすぐ世界恐慌が起きます。(起きてたらごめんねm(__)m)
それまでに対策を考えてください
課題として
1つ。大前提として今手持ちの企業5社を倒産させないこと
2つ。社員を定年退職以外辞めさせないこと
3つ。さよりちゃん資金は使わないこと(もっともロック掛けたので使えません(^-^)v)
4つ。他社に身売りは禁止
以上の約束事を守って、この恐慌を乗り切ってください(^-^)/
タイミング的には、あたしがハワイのビーチでトロピカルジュースを片手に、ダイヤモンドヘッドを眺めているまでに、会議が始まれば余裕かな?
サンフランシスコでケーブルカー(この時期有ったっけ?_(^^;)ゞ)乗ったりフィッシャーマンズマーケットで、ロブスターをパクついている頃だと、そろそろヤバイ
ニューヨークに着いた頃だと、必死でがんばって下さい
ではでは、あたしはアメリカでバカンスを楽しんできまぁ~す
帰りはたぶん年明けになるかも?
じゃ、がんばってねぇ (^-^)/~~
と、綴られていた。
「うん、舐めた文章ですね。1人バカンスを楽しんで、苦労は丸投げですか! さよりが帰ってきたら、私も説教します」
と美由紀が静かに怒りながら、テーブルを拳で殴りつけた。
幸一と美由紀が怒っているのは、2人で上期末の慌ただしい決算と書類との戦いで、終わったらゆっくりしたいと考えていただけに、これ以上忙しくしやがって!と言う思いと、楽しみにしていた休みを取り上げられ、その上重要で緊急な仕事を休日返上でさせられ、その押し付けた本人が楽しそうに遊んでいるのを想像してしまって怒りが倍増した、のだけども、幸一と美由紀がなぜそこまで怒っている理由がわからない4人は、少し引いていた。
サファイヤが少し考え事をしながら、
「この文章はさよりさんらしくていいのですが、大変な課題ですね。」
と言った。
「さよりちゃん資金って、船倉にあるあの金銀財宝のことだろう?ロック掛けったって書いてあるけど、どうゆうこと?かめちゃんわかる?」
と幸一がかめちゃんに聞くと
「そう言えば、さよりさんコンテナに量子キーを設定してました。そのことじゃないですかね。」
「そのキーってかめちゃんでも開けれないの?」
「時間さえかければ開けれると思いますが、ちょっと見てみますね」
と言って、かめちゃんは本体にあるコンテナのロックキーにアクセスして解除を試みた。
「さよりさんらしいですね。これ開けるのは私のリソース全て使っても1年以上かかりますよ。」
幸一はロック解除をあきらめ腕を組んで考え込んだ。
「さよりの残した資金が使えないとなると、今ある企業内の内部留保の金だけで乗り切らないとあかんなぁ」
「余計な経費の締め付けもしなアカンし、研究資金もかなり絞らなヤバいか?」
政史と正がそう言って、自分らが抱えている研究所関係の実態を考えた。
幸一が、金策としての渡辺銀行の資金状態と各企業の予算の配慮を考えることに。
美由紀が
「でも、この課題って何の意味があるんだろうねぇ。確かに金策で困って倒産する前にさよりの資金を
導入できれば解決することだし。それまでに人件費を圧縮するのにリストラをすれば経費が浮くので、
倒産の回避もできるし、最悪どっかに身売りできれば、社員も会社も助かるのに、全ての策を封じて
いるのは何の意図かな?」
と、このメッセージの疑問を呟いた。確かにどれか一つ許してもらえれば、倒産の危機は回避できる内容だった
「恐慌って資本主義の社会じゃ、時折起こる現象だし、それに対して厳しめで対応することに
慣れていれば、どんな状況でも会社を守れることに繋がるってことかな?」
と、政史が言うと美由紀と正が同意したが、幸一は
「いや、さよりのことだからそんなことじゃないはず。何か隠しているなこのメッセージには」
と考えていた。
メッセージをじーっと見つめて考えていたサファイヤが、ハッとした顔をして
「これ、私宛の課題ですよね。そういうことならば、社員のリストラ禁止や身売り禁止、他者からの
資金導入禁止の理由がわかります。」
と言いきった。
「どうしたの?サファイヤ。さよりの意図が掴めたっていうの?」
美由紀が聞くと
「はい。これは私に経済を勉強するように言っていた、さよりさんの言葉を思い出せば、この課題の理由は明白です。
『会社の経営は国家の経営と思って行動してね。』と言われてました。その言葉からしたら、今回の
恐慌という現象は、国家規模での経済的危機となります。企業イコール国家として考えると、倒産は
国の破綻、社員のリストラは、国家による国民の粛清による淘汰、もしくは難民発生流出による優秀な頭脳及び人材の流出。さよりさんの資金導入は他国からの資金援助、と言う名目の借金。その借金を返済する為に国税増加の懸念。そもそも借金する時点で、経済的に自立してないことに成ります。身売りは他国の属国に成り下がるってことです。
どれも国民に負担をかける物で、私が目指す国家とは違います。必ず課題をクリアーして見せます。」
とサファイヤが新たな決意を述べた。
「よし!さよりの意図がそうだったとして、俺たちは全力で俺たちが築いてきた企業を守ろうと思う。
政史、正!2人には研究内容で緊急性の薄い物から凍結もしくは一時中止の命令。ただし、半導体と電波関係は除外しておいてくれ。それらは今後必要になる分野だから、縮小するわけにはいかない。その他は経費の縮小をしてくれ。俺とサファイヤは、各企業の来年度予算の見直しと、企業目標の作成をする。かめちゃんは俺たちについてきてデータの取り纏めをしてほしい。
美由紀は、全員のサポートをよろしく。」
幸一はざくっと役割を決めると行動に移ろうとした。
「明美と拓哉はどうするの?まだ帰って来てないし、役割も決まってないけど?」
美由紀からの言葉で幸一は
「二人は外部の提携会社を対応してもらう。たぶんそっちの方がしんどいかもしれないが、倒産しても、さよりの課題じゃないからな。でも、今まで共に頑張ってきた会社だから、援助は行うってことで二人に行ってもらおう」
「わかったわ。」
「よし!出来るだけ被害を少なくなるように全力で取り組もう!
「「「「おう!!」」」」
こうして、銀河社における対世界恐慌の作戦が切って落とされた




