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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第2章
52/144

どうしてこうなった?

『かっぽーん』

勝山組の奥座敷から見える中庭で、懐から拳銃を出そうとした男の眉間に

大型拳銃を突き付けているかめちゃん。

周りは、木刀を握りしめた男達や拳を握る男達が十数人、かめちゃんを囲み一触即発の剣呑な空気に支配されている。

さよりは、出された茶菓子の大福を口に咥えたまま

(どうしてこうなった?(゜ロ゜;ノ)

と、心の中で頭を抱えていた。



時間を少し戻す



さよりは、かめちゃんとサファイアを連れて、勝山組に来ていた。

屋敷の玄関口で、

「組長さんいますか?」

と、顔見知りの男性にさよりが訪ねると、

「さよりちゃん。今日はなんだい?」

「組長さんに、住所が決まったらおいでって言われてたので、そのお知らせに来ました。」

と、にっこり笑って答え、対応した男性は

「そうかい。ちょっと待っててや、呼んできたるさかい。外は暑いやろ?こっちに入っとき」

快く屋敷の中に通されたのだが、さよりの後に続いて入って来たサファイアを見て驚き、その場にいた数人が

異国人さんが来た!異国の女性が来た!と大騒ぎ。


 明冶時代はまだまだ外国人が珍しく、ましてや金髪碧眼の美少女のサファイアが現れたので、

外国人を見たことの無い日本人の反応を盛大に出しているパニック状態の勝山組の人々

玄関での大騒ぎに組長が

「えらい騒がしいなぁ。どないしたんや」

と言って奥からでて来た。それを見たさよりは、

「組長さん!家を買ったから住所が決まりました。あれの手配の方法教えて下さいなぁ」

と声をかけた。さよりの姿を確認した組長は、

「なんや、さよりちゃんかいな。住む所が決まったんかいな。ほな、戸籍の用意せなあかんな。戸籍を作る奴の名前と住所、年齢を書いたもんくれる……」

組長は、さよりの横にいる女性に気付き声が止まった。

「さよりちゃん、横に居られるのは、サナトリア国のお姫様か?」

「そうだよ。サファイアちゃん。って言うの。」

それを聞き

「てめえら!なにしてやがる!さっさとお客人を、奥の座敷にお通しせい!どうぞ狭苦しいところですが、上がってくだせい。

あと、さよりちゃん、ちょっと聞きたいことがあるからこっちに来てくれるか?」

サファイアとかめちゃんは、先に奥座敷に通され、さよりは、組長さんのもとに。

「なに?」

「さよりちゃん。異国人さんを急に連れてこられたら困るがな。あのお方、異国のお姫様やろ、どんな茶菓子を出したええんや?」

「なんでもいいよ。サファイアちゃんは、好き嫌いがないから。」

「そういわれてもなぁ。」

と、考え込んだ。その時、しのぶが買い物から帰って来た。

「ただいまぁ。あら、さよりちゃん、来てたの?」

「こんにちは。しのぶさん。住む所が決まったのでお知らせに来ました。」

「よかったね、さよりちゃん。あれ、お父はんどないしたん?なんか家が騒がしいんやけど?」

しのぶが、周りの雰囲気を感じて組長に声をかけると

「さよりちゃんがな、姫さんを連れてきよったんで、ちょっとバタバタしてんねん。」

「姫さんって!あの外国の!」

「そうや。とりあえず、奥の座敷に通した。しのぶ、なんか茶菓子用意してくれ。ちょっと着替えてくるわ。」

と言って奥に引っ込んだ。

「異国人さんに茶菓子って!さよりちゃん、どうしよぉ。」

外国人パニックになっているしのぶに、

「日本茶と大福餅で十分だよ。」

「それだけでいいの?けぃきとかの洋菓子?とかじゃなくて?」

「いいって、いいって。」

とさよりが言って、しのぶがそれなら用意出来ると言って、台所に向かった。

さよりは、肩をすくめて、勝手知ったる他人の家、だれの案内もなく迷わず奥座敷に向かった。

 

 上座に敷かれた座布団の上に正座で座ったサファイアにかめちゃん。その横に並んでさよりが座ると

お膳に山のように盛られたお菓子が出され戸惑う3人。

裃に着替えた、組長がサファイアの前に座ると、深々と頭を下げ挨拶を済ませて、本題に。


 さよりが持参した8人の氏名と年齢を書いた紙と、住所を書いた紙を組長に渡すと、組長が近くにいた男性にそれらを渡すと、一言言葉を添え顎をしゃくると、その男性は立ち上がり部屋を出ていった。

「さよりちゃん。戸籍のことはこれで大丈夫や。出来たら連絡するさかい、待っててや。」

勝山組長がそう言って、笑顔を見せた。

「えっと、あたしたちが何かしなきゃいけないんじゃ?」

戸籍の作成の手続きを教えてもらえるっと思っていたさよりは、困ったような声を出したが

「ええって。さよりちゃんの奇術と同じで、タネは見せんもんや」

と言って気にするなと

「ありがとうございます。」

さよりは頭を下げた

「ええって。奇術のお礼やし。ところで、この前の用心棒のお姉ちゃんは、来んかったんか?おつきの侍女さんだけで、姫さんを護衛無しで大丈夫なんか?」

組長は、心配そうに聞いてきた。

「大丈夫、大丈夫。かめちゃんが居れば半径300メートルは、絶対安全圏だから。」

と、さよりがメイド姿のかめちゃんを指さすと、かめちゃんが少し照れていた。

「絶対安全圏?そんなに腕が立つのかい?この娘が?」

組長は、疑いの目をしていた。

「組長さん。信じてないねぇ。まっ、かめちゃんの姿に騙されるからねぇ。なんなら試す?」

と、悪い笑顔でさよりが言うと

「そうやな。一国の王女様を護衛する力量は、どれほどのものか知りたいなぁ。三治、ちょっと稽古つけてもらえ。」

「わかりました。」

と言って立ち上がった巨漢の男性。

「三治は、もともと関取だった奴で、剣の方もどこぞの藩で師範しとったぐらい、結構な腕をしとるんや。王女さんを守るんなら最低こやつぐらいには、勝てるやろ?」

組長も悪い笑顔でさよりを見て言った。立ち上がった三治をかめちゃんが見て、

「しのぶさん。手拭いとサラシを用意してもらえますか?」

「ええけど、なんに使うん?」

「ちょっとハンディがいると思いましたから。」

「はんでい?」

良くわからない顔をしているしのぶだが、ちょっと用意してくると言って、部屋から出て行った。

「で、何で試しますか?」

とかめちゃんが聞けば、

三治がどこからともなく木刀を二振り持って来て、一振りをかめちゃんに差し出した。

「剣術ですか?」

「そうやな、肉弾戦有りのな。」

と言って、ニヤニヤ笑っていた。しのぶが部屋に帰ってきて

「サラシと手拭い持ってきたけど、どうすんの?」

「しのぶさん。ありがとうございます。いただけますか?」

かめちゃんが、しのぶからサラシと手拭いを受け取ると、中庭に出ていった。

すると、手拭いで目隠しをして、左手だけで器用にサラシを身体に巻き付け右腕を身体に固定し、しっかり縛ったのを確認して、左手に木刀を持ち

「じゃ、始めましょうか。」

と三治の方に顔を向けた。口元は笑っていた。その姿を見て

「おい!なんや!その格好は!!おちょくってんのか!!」

三治は、激昂して叫んだ。

「別に、このぐらいハンディと言うか手加減してあげないと、貴方とはいい勝負にならないでしょうから。私は、これでも余裕であなたに勝てますけど?」

かめちゃんは、肩をすくめ小馬鹿にした口調で答えると

「三治さん。かめちゃんに木刀か拳骨が決まれば、あたしからこれあげる。」

と、さよりが出したものは、二十円金貨。それを見てしのぶが

「なにあほなことしてんの!さよりちゃん。三治はうちの組でも1,2を争うほどの腕が立つ男なんよ。亀山さんがケガをするわよ」

「あほなことやないよ。かめちゃんが絶対勝つからね。あと、かめちゃん、あたしがいいというまで、手出ししたらだめだからねぇ。」

その言葉に激昂した組長は

「よっしゃ。三治。手加減せんでえ!小馬鹿にする小娘達を思い知らしたれ!!」

「もう!!お父さん!!」

「しのぶ。男が、おちょくられて黙っとれんのや!いってまえ!三治。ワシが許す。ボコボコにしたれ!」

組長が三治に激を飛ばす。

「わかりました。手加減無しでやらさせていただきます。」

と静かな怒りを込めて、中庭に向かった。

対峙する両者

「いつでもいいですよ。」

かめちゃんは、左手に持った木刀を肩に乗せのんびりした構え、対する三治は、木刀をしっかり両手に持ち正眼の構え。

しばし両者の間に静かな間が流れ、

「哈っ!」

気迫のこもった声と共に三治がかめちゃんに一太刀。

しかし、かめちゃんはほぼ動くこと無く紙一重でかわし、口元には微笑みを浮かべていた。

そこから三治が繰り出した、目にも止まらない鋭い太刀捌きによる連続攻撃

それら全てを、木刀を肩に乗せたまま紙一重の動きで全てかわすかめちゃん。

「さよりちゃん。あの娘、目隠ししているわよね?まるで見えているみたいに避けるけど?」

しのぶがさよりに聞くと

「いや、目で見てても三治の太刀捌きを、あんな風にかわす事は、普通は出来ん。何者だあの娘は」

組長のつぶやきには驚きが込められていた。

三治は、太刀だけでなく、巨漢とは思えぬ身軽な身のこなしで体当たりをはじめあらゆる体術をも

絡めて攻めてきたが、かめちゃんは、全ての攻撃を最小限の動きでかわし、10分もすると三治の息があがってきた。

息を整える為、三治が間を開けてかめちゃんの出方を伺うが、かめちゃんは口元に微笑みを浮かべたまま動かない。

「なんで、かかってけぇへんのや?」

と三治が言うと、さよりが

「だって、あたしが攻撃無しで勝ってねって言ったからだよ。」

と、ニコニコしながら言って、大福をほおばった。三治は、

「くっそ。この女。まったく隙がねぇ」

繰り出す手がなく2人は膠着状態に。


 それを見て、さよりが周りにいる組員たちに

「三治さん1人じゃ大変そうだから、助っ人してもいいよ。」

と言ってさよりが砂時計を出すと、

「ただし、この砂時計の砂が落ちきる約10分間だけね。その間に、かめちゃんに一太刀浴びせるか

一発殴ることが出来た人にも、これあげるよ。何人係りでもいいよ。やって見る?

ただし、あたしは、かめちゃんの反撃の許可をするけどね。」

先ほどの二十円金貨を掲げてそう言いきった。

この言葉を聞いて中庭に何人もの男たちが助っ人として参戦。そのうちの一人が

「ほんまにそれ貰えるんやろナ?」

さよりの持つ20円金貨を指さすと

「当たればね。たとえまぐれ当たりでもいいよ。」

中庭に降りた男たちは顔を見合わせ

「みんなで一気にやっちゃえば、大丈夫や。行くでぇ!」

「「「「「おぉ~!!」」」」

さよりが砂時計を置くと同時に、男達がかめちゃんに殺到した。

 しかし、三治と組長は結果が解っていた。反撃を禁止されているにも関わらず、勝てる要素が

まったくなかった相手が、反撃して来るとなると?

 そう、一瞬で数十人の男達が中庭に倒れてしまった。かめちゃんの太刀筋なんぞ常人が見切れる速さではなく、その時点で常人が勝てるわけない。

 圧倒的な力量。中庭に1人佇むかめちゃん。口元には微笑を浮かべて。

その姿を見て1人の男が、中庭の植え込みに隠れて

「極道をこけにしやがって。これでも、喰らいやがれ!」

と、懐に手を入れ、持っていた拳銃を抜こうとした時、かめちゃんから『バン!』と何かが弾ける音がして、その場からかめちゃんが、消え、次の瞬間目視できたかめちゃんは、さらしで固定してあったはずの右手に大型拳銃を握ったかめちゃんが、男の眉間に銃口を突きつけている姿。

「それを抜いたってことは、この反撃を受ける覚悟、出来ているんだよね」

何が起きたか理解できず

「あわわわあわあわあわ」

声にならない声を出して腰が抜けたのか、座り込む男。散り散りに破れたさらしが、地面に落ちたと同時に

「で、どうするんだい?引き金を引けば、私も引くよ」

と、地の底から聞こえるような低く冷たい声で、拳銃を構えようとした男に問う姿だった。


 静まり返った殺気に溢れる中庭で、動く者がいないなか、まず動いたのは、サファイヤだった。

すっと立ち上がると、中庭で固まっているかめちゃんと男に近づき、男の拳銃を握りしめている手をさすりながら

「拳銃を手から放してくださいね。」

と言って、ゆっくりと指を1本づつ開かせ、拳銃を確保

「はい。かめちゃんも私に拳銃を預けなさい。ほら。」

かめちゃんは、男を睨みながら、銃の安全装置を入れグリップをサファイヤに差し出した。

2丁の拳銃を持って座敷に帰ってきたサファイヤは、御膳に拳銃を置き、組長に向かい

「もう、稽古はいいですね?」

と言って、ニッコと飛び切りの笑顔を見せた。

その笑顔を見て、ふ~っと大きく息を吐いた組長は

「すまんかったな。姫さんにこんな真似させて。おい!!お前ら!しっかり詫び入れろや!」

中庭にいた全員、土下座をして

「申し訳ありませんでした。」

と声をそろえて謝罪してきた

「ワシからもこの通りや。まさか、拳銃出してくるアホがおったとは思わんかった。」

と言ってサファイヤとさよりに頭を下げた。それを見たさよりが慌てて

「いいですよ。実際撃たれてないし。あたしが、変に煽っちゃったのがそもそもの原因なんだし。

それに、親分さんのところの銃じゃ、あたしたちには傷一つつかなかったのに、かめちゃんが目隠ししてるから大ごとになっただけだし。」

とさよりが言って、かめちゃんに向かって

「かめちゃん!目隠し外して、相手の拳銃をよく見て。」

と言って、目隠しの手拭いを外して拳銃を見たかめちゃんは

「申し訳ありません。私の過剰防衛だったみたいで。」

と言って、中庭にいる人たちに頭を下げた

「どうゆうこっちゃ。」

と頭を下げたかめちゃんに首をかしげる組長

「だって、組長さんのとこの拳銃って22口径のリボルバーだもん。これどこ製なのかな?」

と言ってさよりが拳銃を触っている

「さよりさん、危ないわよ。拳銃が暴発したら大変だから。」

としのぶが声をかけるが、すでに拳銃から弾が抜き出されており、御膳の上に並べられていた。

「これってS&W製のModel1かな?でもこの拳銃の弾じゃ、あたしたちの首より上に当たらないと

ケガもしないよ。それに比べて、かめちゃんの持ってる銃は、デザートイーグルの.50AE版なのよね。

ってこれオーパーツにならないの?」

さよりがデザートイーグルの弾倉を外し薬室からも弾を抜き、その弾を同じように並べると、組長以下

「なんだ、そのでかい弾は!」

と驚いていた。

「直径約5.59mmと約12.7mm。弾の大きさがこんだけ違うと、威力は3倍じゃきかないよね。」

と組長に弾を渡して見せた。受け取った弾をしげしげ見て

「こんな大砲みたいな物ンを持って、どこと戦争するきや?しかも、あの太刀捌き。一瞬の判断で護衛対象の安全を確認し危険対象を排除か。確かにあんさんは、最強な護衛やな。認めざる得んなぁ。すまんかったな。この通りや。」

と言って頭を下げる組長。

「そんなに頭を下げないで下さい。たいして大事にはなってないのですから。」

かめちゃんが組長に言うと

「この騒動、最初にあんさんの腕を疑ったワシのせいやな。そもそも堅気の人間、ましてや婦女子に

拳銃を向けるなんぞ、何をどう言い繕うと筋が通らん。そんな奴を舎弟にしたワシが悪い。この侘びとして、

困ったことがあったら、何でも言ってこい。この勝山組がお宅ら御三人には、無条件で力になってやるわ。」

と言って、再度三人に頭を下げる組長

「頭を上げてください。こちらも悪かったのですから、お互い様っていうことで手を打ちませんか?」


 この日以降、勝山組はサファイヤとさよりには頭が上がらなくなって、かめちゃんには尊敬と畏怖の念を感じるようになった



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