遠く(過去)に来たもんだ
いつの時代かわからないが、自分たちのいた時代より過去と思われる地球に降りる事に
日本が、というよりは太平洋側が夜になる時間に合わせて大気圏に突入。
降下速度をコントロールしての降下の為、船の外部が大気との摩擦でプラズマ化することもないので、
赤く光る事もなく、暗い夜空を掠めながら何事もなく太平洋に着水。
情報収集を兼ねて、着水前に先行して小型無人偵察機を4機放った。
行先は日本、アメリカ、ヨーロッパ、中国
4機からもたらされた情報によると、現在1884年 明冶17年7月ということだった。
世界的には、第一次世界大戦が始まる前で、日本は西南戦争の混乱も終わり世の中が落ち着いてきた時代だった
「結構昔に来てしまったなぁ」
各偵察機が集めてきた情報や写真を見ながら幸一は、ため息をついた。
「私達がいた時代から、百三十年?四十年前? 私達の曾祖父の時代よねぇ。」
美由紀が、年表を思い浮かべながらつぶやく。さよりがニコニコして
「ご先祖様の若い頃の姿を見に行く?」
「さよりが絡むとややこしくなると言うより、絶対ややこしくするから、止めておけ。」
幸一が頭を押さえながらさよりの提案を却下する。
偵察機が撮影してきた各国の街並みのカラー写真を見て各々に
「しかし、第一次世界大戦で灰塵した街並みがきれいに撮影されているね。」
「まだ、戦争前だからでしょ?」
「ほら、日本の街並みだって今はない建物がいっぱい映ってるし」
「中国もなかなかな写真だよ」
「これって、残しておけば歴史的資料になるかな?」
と、わいわい写真を見て楽しんでいた。正が日本の写真を見ながら
「で、どこに上陸する?」
「どこに上陸しても、変わらないと思うけど?」
「少しは、土地勘が働くと思う、大阪にしようと思うけど、どう?」
「それでいいんじゃない」
潜水したまま、日本本土に接近し大阪湾に入り現在、淡路島と大阪港の間に潜水したまま停泊中。
理由は
「困ったなぁ。大阪港の深水がこんなにも浅いなんて。」
そう、この時代日本は港湾インフラは脆弱だった。横浜、神戸等国外用に開港したものの、波止場が
大型船隻に完全には対応出来ておらず、大阪港も大型船が直接入港するには浅かったので、大型船は
神戸港に取られており、築港の改修工事がまだ始まっていないので、かめちゃんが、姿を隠したまま港に着くことが出来なかった。
「これじゃ、闇にまぎれて町の中に入ることが出来ないなぁ。」
幸一が、頭を抱えて困っていた。そこに政史近づき
「幸一、上陸するにあたって2つ問題がある。」
そう言って、上陸することによる重要な問題として1つ目に上げたのが、資金だった。
「そう言えば、俺達金持ってないなぁ。」
美由紀が、
「出発前に買い出しに行った時のお金、まだ余ってたはずだけど?」
と言って、買い出し資金を預かったままの財布を出してきた。
「ほら、ここにまだ70万ほど入っているよ。」
と言って財布の中身をテーブルの上に並べた。確かに美由紀の言う金額はあった。が幸一が
「そのお金、明冶時代には使えないお金じゃない?」
その言葉を聞いて美由紀は、そうだね。と言って財布をなおした。
「かめちゃん、出発する時に買い物に使った金塊はどのくらい残っている?」
「そうですねぇ。この航海で使うとは思いませんでしたから、ほとんどベースに置いてきましたから、ここには1キロの延べ棒が2本で2キロですねぇ。」
「足りないなぁ。」
と言って、腕を組んで考え込んだ。サファイアが
「留学費用にと、母国から金貨を持って来てますが、お役に立つでしょうか?」
「留学費用に用意されたものですか?いかほど?」
「持って参りますね。」
と言って自室から持って来た金貨は、1枚約10グラムの金貨1000枚だった。
合計 金が12キロ。
「全員が、町で部屋を借りて、サファイア姫が学校に通って暮らしていくのには、まだ足りないなぁ。就職するかな?」
「幸一、その就職活動に関する問題が2つ目だ。この時代、あたりまえだけど、俺達誰も知り合いがいないし戸籍もない。身元証明するものがないから、就職なんか出来ないぞ。」
「アルバイトは?」
「さより、この時代にファーストフードの店員っていうバイトは無い。あっても日雇いの土方作業だろうなぁ」
「そう言えば、そうだな。困ったなぁ。どうするよ。」
「もう、ややこしいことは捨ててアメリカかヨーロッパに行って移民のふりで活動した方がいいかな?」
サファイアとかめちゃんを除いて、頭を抱えてしまった。
「皆さん、戸籍って、なんですか?」
サファイアは、戸籍の意味がわからなかった。幸一が
「サファイア姫、戸籍と言うものは、簡単に言うと国籍の証明書と言うか、ここ日本国民の証明書とも言えるもので、それがないと、日本国民としての権利が補償されない重要なものなのです。」
「我が国で言うところの国民IDのようなものですか?確かにそれがないと困りますね。その権利は購入はできないものなのですか?」
市民権のように購入できないものかと尋ねられたが
「そうなんですよ。日本では、お金で普通買えないものですから。」
「幸一さん。戸籍なら前に私がやったように、戸籍データを改竄したらいいのでは?」
かめちゃんが、前に戸籍システムに侵入して亀山里美と言う戸籍データを簡単に作製した経験から
今度もまた、作ればいいのでは?と、思っていた。
さよりが
「かめちゃん、今出来る?」
と、にたぁ~と微笑んでかめちゃんに、お願いしてみた。
「任してください!今からちょちょいっと作りますね。えっと市役所のアドレスは……」
と言って、通信電波を探し市役所のメインサーバーを探そうとアクセスを始めるが、そもそも、通信電波が見つからない
あらゆる周波数を調べるが見つからない。
「さよりさん、ここ大阪ですよね?公衆WiFiどころか、携帯の電波がありません!」
「かめちゃん。この時代個人用電話の普及率は人口に対して0に近いこと知ってる?」
「え!」
「もちろん、携帯電話用の電波も無いし、Wifiなんて存在しないよ。」
「どうしてですか?」
「まだ作られていないので、存在してないもん。そもそも、コンピューターなんか影も形もない時代
なんだけどなぁ。そもそも半導体ってなにそれ?おいしいの?って言う時代だよ?どうやって、
無いものにハッキングするつもりだったの?そもそも、大気圏突入する前に、電波がないって言ってたじゃない。教えて?」
「でも、ラジオ放送していますよ。半導体無しでどうやって回路を組んで電波を飛ばしているのですか?」
「真空管じゃないかな?」
「えぇぇぇぇ~~!じゃ、どうやって記録を保存するのですか!」
「普通に紙に書いて保管するの。」
「音声データは?」
「レコード盤に直接録音かな?」
「じゃ、計算は!!」
「そろばんかな?」
「この時代の人間ってそんなに凄かったんですか!さよりさん!退化してる場合じゃないですよ!進化しないと!!」
「なんか、かめちゃん。あたしに失礼な事言ってない?」
二人のじゃれている会話を無視して、幸一達は、対応を考えていた。
「まずは、資金をどうする?確かに金塊12キロを換金すれば、大金が手に入るが、一時的に資金が有るにすぎない。
使い切ったら補充は無いのだから働きに出るにしても、たいして稼げるものではないだろうし。」
「そもそも、働きに出れないよね。戸籍や知り合いがいないんだから。」
「無理を言えば雇ってくれるかもしれないけど、丁稚奉公だろうな」
「そんな奉公なんて、おこずかい程度でしょ。住み込みだし。みんなバラバラになっちゃわない?」
「確かになぁ」
「会社起こす?そうしたら、全員同じ会社に勤めることとして、その会社で寝泊まりすれば、暮らしていける気がするけど」
「そのためにもまず、戸籍をどうにかしないと。会社起こすにしても戸籍が必要になってくるし。確か戸籍の書き方って何回か変更されたはずだけど」
「そうのタイミングで強引な技で作れんこともないかな?」
「しかし、そこのタイミングまで暮らすのには、資金がいるぞ」
「そこに行きつくよねぇ」
みんなが、今後の資金や身の振り方について考えると、かめちゃんをからかっていたさよりが
「お金になるものだったら、あたし宛に届いてるかもしれないんだけど、探しに行ってみる?」
と言った言葉に、全員の注目を浴びた。
「さより、それってどうゆうこと?」
美由紀が不思議そうにたずねると、さよりが
「かめちゃん、サナトリアを出港する時に、あたし宛の荷物何か届かなかった?」
かめちゃんが小首をかしげて
「そう言えば、大型コンテナーが2つ、バニーニ政府から、さよりさん宛に届いてましたから、倉庫に入れておきましたよ。あれなんですか?メッチャ質量がありましたよ。あまりにも大型のコンテナーが届いたので、船倉を片付けないと入りませんでしたし、届け物があるなら先に行ってもらわないと困ります」
それを聞いて満面の笑顔で
「そう!それは期待できるねぇ~。ちょっとお宝を見に行かない?」
と言って、さよりがかめちゃんを先頭に、送られてきた大型のコンテナーを見に行く事に。
他のメンバーもどんなお宝が来たのかを見る為、2人の後に続いていった。




