復興へ?
「終わったなぁ」
幸一は、今しがた停戦条約にサインし、集まった各国の報道カメラマン達からのストロボフラッシュが
収まらない、三人の国家主席が笑顔で握手する撮影を、少し離れた場所で見ていた。
その様子を各国の国民は心より喜び、特にサナトリア王国、ローレン連邦国の両国民は、永く続いた
苦しい戦いが終わったことに喜び、国を挙げての祝賀モードになっている。
国内の復興も、宙港を中心に、活気が戻ってきており、人々に笑顔が戻ってきていると言った報告も
上がってきている。
「やっと戦争が終わったのね。」
美由紀は、これでこの戦争が終わったと思いホッとしていた。が
「なに言っての?終戦なんかしてないよ。」
と、さよりが、答えた。
「えっ!だって戦いが終わったんでしょ?戦争が終わったんじゃないの?」
美由紀は驚いた顔になりさよりに聞いた
「ぜんぜん、今回結んだのは、ただの停戦条約だから、一時的に戦闘行為を止めただけだよぉ?
休戦条約も終戦宣言もした訳じゃないから、まだ戦争継続するかもしれないよ?」
「じゃ、何のためにあれだけの人が・・・・・・」
美由紀が唖然としたように立ちすくむと、明美が美由紀の肩を叩いて
「みゅう。私達は部外者だよ、これ以上は出来ないって。とりあえず、殺しあうことを
止めたってことで、いいいんじゃないかな?」
さよりが、チョコスティックを頬張りながら
「いやいや、明美。こんだけひっかきまわして、部外者はないんじゃないのぉ?あれだけ暴れてたの
だれよ?でもまぁ、あとはここに住んで生活している人達の問題だよねぇ」
と、記者会見会場を見ていた。
そこへサファイア姫が、側近も連れず単身で近づいてきて
「皆さん、ありがとうございました。これで我が国も含め、3ヶ国の復興事業が盛んになっていくでしょう。
愚かな戦いを止めていただいて、ありがとうございました。何とお礼を言っていいか」
と言って頭を下げた
幸一が、頭をかきながら、
「いいですよ。お礼なんか、たまたま力になれる事が有ったんで、力を貸しただけですし、これからは、
3ヶ国とも内政を立て直していかないと、かなりキツイでしょうから、がんばってくださいね。」
と言って微笑んだ。明美が
「そうだよ。サファイヤ姫、これから国民と力を合わせてがんばってね!」
「ありがとうございます。皆さんに頂いた、予想以上に莫大な資材、祖国の為に活用させていただきます。
どのようにお礼を申し上げればいいのか、わかりません」
といって、お辞儀をした。
「もう、王族がそう簡単に頭を下げないの。いいって、いいって。どうせあの資材は、元手が一銭も
かかって無いから、気にしないで全て使っちゃって。」
と軽く、さよりがぱたぱたと手をふった。その発言に
「「「「「「「え!!!」」」」」」」
さよりを除くメンバー全員が驚きの声を上げた。
「みんな、どうしたの?そんなに大声あげて」
さよりは、耳を押さえながら聞くと
「さより、復興用の大量の資材ってなんだ?」
「元手がかかって無いってどうゆうことですか?」
幸一と美由紀がさよりに詰め寄って来た。
さよりが、引きつった微笑みで
「あれっ!言ってなかったけ?サナトリアとローレンに復興の為の資材を送るって?」
「資材を送るっては聞いていたけど、サファイヤ姫が驚くぐらいの資材って?」
幸一が問いただす
「そもそも、元手がかかっていないって、どっから持ってきた!」
正が、資材の出所、資金の調達を聞く
「さよりさん、あれほどの資材をさよりさん達の母国から、持ってきた物と思っていましたが、違うのですか?」
オロオロとするサファイヤ姫。
ヤバいと感じて逃げようとするさよりを、囲んで記者会見場から連れ出し、近くに有った小さな部屋へ。
「さより、説明して貰おうかな?今回の結末の筋書きを。」
幸一は、椅子に座らせたさよりに対しテーブルを挟んで前に座り質問した。
その感じは、万引きで捕まった少女を尋問する警察の取調室のシーンのようだった。
他のメンバーは、2人を囲むように立っていた。
さよりは、周りを見渡して
「戦争の終わらせ方なんかは、何通りもあるんだけど、今回はあたし達も先に急ぐ用事があるから、
超弩短期決戦の無難な7パターンを考えてみたの。」
サファイヤ姫が
「あれ?提示されたのは、5パターンでしたけど?」
と首をかしげると、さよりが
「いや~7つの内2つは、人道的にどうなの?って自分的に思いまして、自粛しました。」
といって、えへっっと笑いながら頭をかいた。明美が
「ちなみに聞くけど、その人道的にアレな方法って?」
「一番手っ取り早く終わらす方法として、敵さんの住む星の母星ごと無くしちゃえ!ってやつと、
敵さんの住む星系の恒星を無くしちゃえ!ってやつ。えっへ、痛い!」
「かわいく笑ってごまかそうとしても無駄!それって、ジェノサイドだろ?」
拓也が軽くさよりの頭を叩いた。頭をさすりながらさよりは
「だって、敵さんがいなけりゃ、そもそも戦争にならないんだし、時間的には一番短い方法だったんだけど、
みゅうがあまり人が死なない方がいいって言うから。」
と言って、美由紀の顔を見た。
「ちなみに聞くが、どういう方法を取るつもりだったんだ?惑星破壊とか、恒星破壊とかは?」
正がきくと
「簡単だよ。かめちゃんがいれば。」
さよりの説明によると、かめちゃんの総合火力を以てすれば、簡単にすぐできる
ということだった。それには、かめちゃん自身も
「そうですね、あの惑星ならば、全主砲をフルチャージで地表に向けて連続掃射すれば、1時間ぐらい
でしょうか?惑星の全てを焦土化するにかかる時間は。さすがに恒星は、主砲と時空転移弾を、
ありったけ打ち込んでも、20時間ぐらいかかりますが、その後は、超新星になって爆発するでしょうね。」
と言って同意した。とんでもない火力をさらりと言ってのけた、かめちゃんのその言葉に、
少し違和感を感じた幸一が
「それだけの火力が有るなら、あの艦隊戦であれほど苦戦する事なかったんじゃない?」
という言葉に対し、かめちゃんとさよりから、
「私、ハンディを付けてやってましたから」
「だよねぇ。フル出力で叩きのめすと、瞬殺しちゃって敵に恐怖を植え付けれないもんねぇ。」
二人が顔を見合って微笑んだ。
「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」」
「ど、どういうこと?」
あんなに苦戦した艦隊戦が、実はハンディ戦だったと聞かされて意味がわからない顔の面々。
さよりが、
「だって、みゅうが人を死なせないでって言ったから、出来るだけ撃沈させず大破で
航行不能にさせる作戦を考えたんだよ。」
「その作戦に賛同して私も、主砲の出力を十分の一にして、速射速度を半分に落として対応しました。
対空機銃の出力は設定できなかったので、フルチャージでしたけど。」
幸一が、
「そんな事は聞いて無いぞ!」
「あれ?言ってなかったけ?かめちゃん、みんなに作戦を説明してくれたんじゃなかったけ?」
「えぇ?さよりさんが立案した計画なんで、皆さんが合意のモノと思っていました。」
と、2人は顔を見合わせて、どちらも首をかしげた。
「良くそんな事して、勝てたなぁ」
幸一が、疲れたようにつぶやくと、かめちゃんが、
「勝てますよ。簡単です」
と、良い笑顔で返事して、さよりがしみじみと
「でも、相手は怖かったと思うよ。すれ違いざまに攻撃して船体の半面を破壊したと思って、
反転してきた時に、更に半面を破壊したと思って次に止めを刺す気でいたら、さらに引き返してきた
敵艦の半面が傷一つ無く、攻撃してくるんだもんねぇ。それが繰り返しされ、味方の艦隊が次々と
やられていくのに、相手はまるで無傷、自分たちの攻撃は本当に有効なんだろうか?って疑っちゃうよね。」
「私のダメージコントロールをフルに作動した結果です。」
と、かめちゃんが胸を張った。
かめちゃんの艦内にある、部品作成ユニットをフル稼働させ、攻撃を受け破損したパーツを即座に作成して
反転し相手から死角になっている間にパーツ交換を行い、完全に修理と言うか再生をしてしまっていたのである。
「だから、いくら攻撃を受けても損傷率が絶えず同じだったのか。」
政史がなっとくした声を出した。
「あの攻撃で傷つけられたのは、ほとんど第一装甲まででしたから、すぐに装甲板は交換できましたし、
破壊された対空機銃は、パージして新しいものと交換するだけですしね。」
「そんなに装甲板の予備って積んであったの?」
「積んでないですよ。艦内の製造システムで、材料から作成しましたけど?」
「でも、そんなに製作出来る資材って、積んでたっけ?」
「その装甲板を再生するための材料はどこから持ってきた?」
「いっぱい有ったでしょう?近くに」
「近く?」
首をかしげる面々、なんでわかんないかな?と言った顔をするかめちゃんが
「いっぱい有ったでしょ、敵艦の残骸が。あれを取り込んで艦内で加工するだけだったんで、
岩石からの素材精製行程から考えると、部品製作が簡単でしたよ。」
伊達に自立支援型の艦じゃないですよと言って、胸を張るかめちゃんであった。
サファイヤ姫が、おずおずと
「あの、もし、もしもですけど、この艦が持っている全力での攻撃をされてたら、バニーニ艦隊は
どうなっていましたでしょうか?」
と、質問をかめちゃんにすると、
「そうですね、あの紙のような装甲の艦隊を消滅させるのにかかる時間は、
1時間もあったら足りるかな?」
と、事なげに語る言葉を聞いて、改めてかめちゃんの総合火力を思い知って、
敵に回さないでよかったと胸を撫ぜおろすサファイヤ姫だった。
しかし、その言葉を聞いて、あの苦戦は何だったんだよ!と叫びたいメンバーだった。
「まぁ良くないけど、もういいや。終わった事だし。それより、さより。バニーニ国の大統領が、
なぜあぁも簡単に停戦条約に応じる気になったんだ?お前、バニーニ国内で何をやったんだ?」
投げやりな感じで幸一は、徹底抗戦するかも?と思っていたバニーニ国があっさりと停戦に応じたのは
絶対に何かやってたはずと睨んで、さよりに質問した。
「今回は、かめちゃんずとの共同作戦をしまいた」
と言って、さよりが今回行った停戦までの道筋話を始めた。
さよりはとりあえず、バニーニ国内を戦争に加担できる状態じゃないように、国内の経済を
壊してしまえって事から始めた。
まずは電子戦を行い、国中のサーバーをハッキングをして、各民間会社の倉庫の在庫量を、帳簿上
在庫量と実在庫量をずらしておく。
そうすることで、帳簿上在庫が有るから、とりあえず相手が欲しがる量を売っても当面困らないだろう
と思いこませて、全ての実在庫を金の力で買い占め。
(どれだけの量を買ったかは、さよりとかめちゃん以外誰も知らなかったが、)
調達した資材を、帳簿上のズレがばれる前に出来る限り早く運ぶ為に、多くの輸送船のチャーター料金を、
相場の3倍の金額を提示してありったけの輸送船をチャーターする。
手配した輸送船に、入手した全ての物資を載せて、サナトリア王国、ローレン連邦国に向けて発送。
軍部が前線への補給物資を、民間市場から入手せずにはおらない状況を作り、政府も物資の配給制の導入を検討させる。
宣戦布告直後に株式市場に介入し、銀行株、商社株を中心に株を大量に買いまくり、株価を暴騰させ
戦争景気に沸き立つ株式市場に誘導。
民間銀行には、一部の貨幣がトラブル貨幣で、市場にが出まわている事が解り、偽物として扱われると、
市場の混乱が予想される量なので、一時的に回収を行い検査して合格した貨幣を返還するということで、
政府銀行に貨幣を回収させる。
しかし、回収した貨幣は検査せず処理場に送、新しい貨幣の材料にする。
それと同時進行として、政府の貨幣製造システムをストップさせ、結果的に市場に出回る貨幣量を激減させる。
次に、メインの金融オンラインサーバーはあえて改変させず、通常取引を問題無く行われるようにしておき、
ただ各金融入出力端末にて、莫大なオンライン決済手数料が発生するトラップを仕込み、振込金額と同額の手数料が抜かれるようにする。
オンラインの決算システムで莫大な手数料が加算されるトラブルはすぐに発覚するだろうけど、
その対応は、まず基幹システムの調査から始まるので、端末で仕込まれている事に気づくのには
時間がかかる事を計算に入れ、抜いた手数料は、国家議員、大臣等の高級官僚の口座に入金されるように装う。
実際は、さよりの開設した口座に送金されるように仕込む。もちろん痕跡を残すようなことはしない。
世間が、オンライン決算が出来てないトラブルが発生した事に気づく時には、暴騰した株を
全て投げ売りする事により、株価を暴落させ、株式市場を混乱に陥れる。
同時に、各企業の帳簿在庫を実在庫と同数に戻し、市場混乱の対応に追われる各企業に追い打ちをかける。
最前線の総司令官名で、緊急物資補給の命令書を発行。本国の軍主計部は最優先で補給物資の
調達をする為に、軍の倉庫以外からの調達を開始
市場に残っていたわずかな物資さえも、軍により供出を強制的にされ、一般国民が入手出来なくなる
ように仕向ける。
この時点では、まだ政府は食料の配給方法を、確立はしていない。
当面の資金繰りの為、各企業は持ち株や社債、国債を売りに出して、資金を得ようとするが手数料
トラップの為、得るはずの資金が入金されず、気付くと各企業の口座には運転資金が無く、
巷には物資が無い状態に陥っている。
国民は戦争が始まった事と、物資の無さと経済の不安に、厭戦ムードとなり、かめちゃんずが率いる
グループがちょっとしたデモ活動した時に、暴動化させる。
国内は治安悪化の対応に、対外的に戦争をしている場合じゃなくなっていく。
その混乱に乗じて、本国の軍総司令部より、各方面軍に対し停戦命令が発行される
というシナリオを、さよりが作り上げた。
まさにその通りに、事が運び今に至っているのであるが。
「戦争を終わらすには、いくらでも方法が有るの。あとは、本気でそれをやる気が有るかどうかだけなんだけどね」
さより曰く、戦争も経済活動である
軍隊が戦えなくなるまで殲滅戦をやるまでもなく、軍隊がいくら完備されていても、それを動かす為の
バックヤードを潰してしまえば、戦争は継続不能に陥り、戦闘行為が終わる。
バックヤードが、国のプライドだったり、意地だったり、宗教だったり、欲だったりするが、
要は無い袖は振れないのである。
通常は第3国とかが、資金や物資を援助供給を申し出て、戦争は続くのだが、それらさえも巻き込んで
貧乏にしてしまうぐらいの勢いで経済を壊滅させたので、第3国が介入する前に力尽きて、停戦せざる
得ない状況になってしまったのが、バニーニ国家連合国だった。
「さより、それだけの事をしようとすると、莫大な資金が必要になるけど、それはどうした?」
「あたし名義の口座を、別の星系でひとつでっち上げ、そこに政府銀行に回収された貨幣の金額を
入金させたら、驚くぐらいの金額なっちゃって」
さよりは、その口座に集まったお金を使って、各方面に支払いをしたという。
ただし、手数料トラップにより支払った金額が全て、その口座に再入金されている事は黙っていた。
「今のバニーニ国の経済ってそんなに酷いのか?」
幸一の問いかけにさよりは、少し首をかしげ
「どうなんだろうねぇ?あたしが直接見た訳じゃないから、よくわかんないけど、とりあえず拾い集めた情報だと、
軍の創設以来初めての歴史的敗退による国民ショックと、株価大暴落と物資渇望によるスーパーインフレが市場に発生して、
企業が抱える工場は、生産したくても材料が手に入らず、資金の行き詰まりによる経営難から大量のリストラを考えていて、
市街地には、食料を含む物資が無く、国民が食料や仕事を求めてデモを行い、一部は暴動化して市街戦まではいかないけど
争いが起きてて、治安維持に警察だけでなく軍も出動しているらしい。
それらの原因である食料や資材を運ぶ船は国内に無く、政府は与党野党が入り乱れての戦争責任の
押し付け合いになって、議会が混乱していて、現状は無政府状態って言う感じかな?」
「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」
やはり、さよりは敵に回してはいけないようだ。
「いや、定期航路の客船や輸送船は、さよりがチャーター出来ないだろう?それらをフルに使えば、
少しは物資が国内に回るんじゃないか?」
幸一が国内に残っているであろう物資の輸送手段としてあげてみるが、さよりが
「それは、軍が足りない輸送船の代わりに連れていくでしょう?と言うか、すでに徴用してサナトリア王国方面に出港させてたし」
「それでは、バニーニ国が崩壊してしまうのでは?」
「かなりヤバいと思うけど、たぶん大丈夫と思うよ。だって、サナトリアやローレンで3日間足止め
していた輸送船が、順次帰国しているでしょ?その船が帰国したら、国内の物資の流れが元に戻ると思うしね。」
「でも、そうしたら、すぐに国内を立て直して、停戦条約を反故して再攻勢をかけてくるんじゃないか?」
「そこまで、速攻性が無いよ。だいたい、戦争したくても、艦隊をぼろぼろにしちゃったしね、あたし達が。
そもそもどの国も内政を立て直さないと、現政権が力尽きて倒れてしまう所まで来ているからねぇ」
「しばらくは、政治家が戦争する暇が無いって訳か」
幸一がなんか疲れたようにつぶやいた。
「だから、停戦なんだよねぇ。多分、しばらくして経済的に国内が安定してきたら、軍備を再整備して、
なにかの口実を作って停戦条約を破棄すると思うんだよねぇ」
さよりは、サファイア姫を見て言った。
「とりあえず、あたしがしたハッキングと、ウィルスの駆除は全て終わっているから、バニーニの国内は正常運転に戻ると思うよ。」
にへらぁっと笑ったさよりであった。
その様子を見て、サファイヤ姫が幸一に向かって
「急で申し訳ありませんが、わたくしをこの船に乗船させていただくことはできませんでしょうか?」
と言った。




