表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第1章
38/144

恐慌

 それは、銀行窓口が開いて数分後、ひとりの少女が窓口 で、自分の預金口座解約の手続きをして、

少し多めの現金を下ろそうとしたのが始まりだった。


「カメヤマ様、申し訳ありませんが、口座解約をされて、これだけの金額の現金を何にお使いなのでしょうか?」

窓口のカウンターで、預金口座解約を受けた女子行員が、少女に質問をした。

「プライベートな事なのに、言わなくちゃダメなの?」

明らかに不満を顔に出して、行員の女性を睨み付けるひとりの少女。

「いえ。大金なので、買い物のお支払でしたら、口座振替をされる方が安全で確実と思いまして。」

女子行員は笑みを絶やさず、少女に説明をする。

「どうでもいいでしょう!それとも、なに!!わたしには現金を渡せないって言うの!!」

少女はケンカ腰に、女子行員に対して怒りの大声をあげる。

「御気に触ったのなら誠にすいません。出来ましたら、大声を出さないでください。」

「わたしが貯めたお金よ!わたしがどう使おうが勝手じゃない!」

銀行にいる他の客からの視線を集める事態に

「お客様、落ち着いてください。わかりましたから、大声を出さないでいただけるでしょうか?」

「大声だって出るでしょう?まるで、わたしが他人の口座から現金を引き出すような疑いをかけられたんですからね!」

「そうは思っておりません。だだ金額が大きいものでご心配だったもので。」

「どうも、ありがとう。それじゃ、早く用意してよ!全て新札で!」

その言葉を聞いて女子行員は、固まった

「どうしたの。早くしてよ!」

「お客様、全て新札で用意は出来かねないのですが。」

「どうしてよ!」

「誠に申し訳ないのですが、当銀行にございます新札が、お客様の金額には足りず、ご用意出来ないので、旧札を使用してもよろしいでしょうか?」

「ショボい銀行ねぇ。無いものは仕方がないわね。わたしも前もって言っておけば良かったんだけどねぇ。まぁいいわ。早く用意してよ!」


一応お客様が落ち着いた感じなので

「では、用意して参ります」

と言って女子行員は、店の奥へ逃げるように席を離れた。


 銀行の窓口で騒いでいた少女は、かめちゃんずの1人(1体?)だった。

「現金。用意出来るかしら?」


 しばらくして、先ほどの女子行員 が、貫禄のある男性を連れて戻って来た。

「カメヤマ様。当銀行の支店長のムッソリーと申します。」

と挨拶してきた。

「なんですか?わたしは、お金を早く頂きたいのですけど?」

「カメヤマ様にお渡しするお金なのですが、今すぐでないといけませんでしょうか?少し時間を…」

「もちろん、今すぐに必要です」

間髪入れずに大きな声で返答する、かめちゃん

「なんですか?用意出来ないって言うんじゃないでしょうねぇ?わたしは、ここの銀行の、この支店の、普通口座にある、わたしのお金を出したいだけですよ?」

「お客様。わかっております。そんなに、大きな声を出さなくとも」

支店長と名乗った男性が、興奮したお客をやさしい口調でなだめた。

「ほんとうにぃ~?普通は、普通口座の金額ぐらいは、金庫に現金を用意しているんじゃないの?

もしかして、そのぐらいのお金も無いぐらい経営危機なの?ここの銀行は!!」


その言葉で、銀行内にいた聞き耳をたてていた他の客は、敏感に反応してきた。

行内にいた他のお客の反応を見て、支店長のムッソリーは、慌てて

「なっ、何をおっしゃいますか!」

「じゃ、今すぐここに持ってください。新札じゃなくても良いですから。」

「わかりました。ただ、少しお時間を頂けないでしょうか?金額が金額なもので。そもそも、

このような大金をどうするおつもりなのか、教えていただけますか?」

「国外に逃げるだめですけど?もうすぐそこまで、敵艦隊が来てるんでしょう?」

その時、他の窓口が騒がしくなりだした。

「なにをおっしゃいますか?」

「だって噂で聞いたけど、我国の艦隊が負けたって。それも、宣戦布告してすぐに。それでもうすぐ

敵艦隊が押し寄せてくるって」

かめちゃんの後ろにいた、男性が

「お譲ちゃん、そんなデマを信じちゃいけないよ。我国の艦隊はサナトリアごときの艦隊に負ける訳

ないから」

と、余裕の笑顔で話しかけてきた

「そうなんですか?」

かめちゃんは、疑った目つきでその男性を見た。その男性は、自慢するがのように

「当たり前だろう?あんな大きいだけで機動力の無い前世代の艦隊なんぞ、我国の最新艦隊が負ける訳

ないって。艦隊の数も我国の方が多いんだぜ」

バニーニ国の艦隊がどれだけ優れているのかを語りだした。

その話を聞いて、かめちゃんが、にっこりと笑い

「なんかそれを聞いて、安心しましたが、お金は降ろします。」

と、女子行員に向かい現金を要求。支店長が

「どうしてですか?」

「現金を持ってる方が、これからは安心かな?って思いまして」


 その時、ATMコーナーの方から、なにやら騒ぎが起こりだした。

すぐに、銀行の店内放送で

「お客様に申し上げます。現在当行のATMコーナはトラブルの為、しばらく休止いたします。

誠に申し訳ございませんが、窓口にて手続きを行いますので、よろしくお願いいたします。」

その放送を聞いて、かめちゃんが

「どうしたの?まさか本当に現金が無い訳じゃないでしょうね!早く!わたしのお金、出してくださいよ!」

と、また大声を上げた。これ以上は無理と思ったのか支店長は、後ろに来た女子行員に

「わかりました。君、用意は出来たかね?」

と尋ね、女子行員が

「支店長、こちらに用意は出来ましたが・・・・」

と、少し困惑な顔をした。

「かまわん、このお客様にお渡しして。私は、少し連絡をして来る。」

と言って、支店長が窓口を離れ、現金を持った女子行員が、窓口に座った。

「カメヤマ様、こちらが2500万クレジットとなります。すこし細かくなりますが、1万クレジット紙幣1000枚。5000クレジット紙幣1000枚。1000クレジット紙幣10000枚。となります。お確かめ下さい」

といって、札束を積み上げた。新札は1000クレジット紙幣の束が10束だけで、あとは旧札だった。

「銀行さんを信用しますね。」

と言って、かめちゃんは持っていたカバンに、金額の確認もせず無造作に札束を入れて、銀行を足早に後にした。

「こんなことで、本当に戦争が早期終結するのかな?」




 「大統領!!大変です!!」

バニーニ国の政務官が、大統領執務室に飛び込んできた。


「どうしたのだ。戦局が動いたのか?」

「いえ、そちらは、敵艦見ゆ。のまま連絡がありません。」

「ではなんだ?」

「は、国内の市場が大変な事になっております!こちらを、見て下さい!」


その資料は、株価と為替のグラフが添付されており、株価のグラフは、宣戦布告後各業界の株価が、

急上昇してきたが、そのあと急降下して、現在、全ての株価ストップ安 になっていた。

為替も、叩き売り状態で全面安になっていた。


「これは、どうしたのだ?このままでは、我が国は経済的な崩壊が始まってしまう。どうしてこうなった」

「現在調査中です。今わかっておりますことは、市場に現金が廻っておらず、銀行に預金の解約を

求めて民衆が集まり、一部は、暴動化していると言うことです。」

「市場に現金がない?」

「は、国内の銀行各社の、現金保有率が著しく低下しており、ATMは、稼働している物がない状況

だそうです。」

「どういうことだ?」

「現在調査中です」

「ゼンドッヌ経済大臣、株価の急降下の原因は?」

「主に銀行株が売られ、そこからの波及で、商社株、運輸株が売られているようですね。今ならば銀行株にテコ入れすれば持ち直すと思われます。」

「そちらは任した。株価の安定化をお願いする。」

経済大臣は、すぐさま各方面に指示を飛ばし、事態の打開策を模索し始めた。

しかし、そんな政府の思惑をせせら笑うように、経済は坂を転がるように悪化していく。



「官房長官、このままでは我国の最低8万社以上が倒産の憂き目にあいます。」

市場調査をしていた事務方の報告が悲鳴に近いものだった。

それは、オンラインで手形決済をしていた企業すべてが、現時点で不渡り手形を出してしまっている事態になっているからであった。


「オンライン決算が出来ているが出来ない?意味が解らない。どうゆうことだ?」

資料を見た経済省の大臣、事務次官が頭をかしげた。

調査をした官僚が

「調べましたところ、金融関係のオンラインの動作には全く異常が有りません。ただ、出金データが相手先口座に反映する入金データーの時、一旦その金額が入金されるのですが、その後手数料として入金額の99%差し引かれていたようです。これでは、入金されてないのと同じ事です!」

資料には、入金の実験をしたであろうデーターが載っていた。

「なんだと!どこに手数料が引かれるのだ?」

「それは、金融オンライン管理機構と言うところが、勝手に手数料を引いているのですが、」

「なんだ?その機構は。さっさと辞めさせて返金をさせろ!」

大臣が怒鳴るが、報告に来た官僚は、しどろもどろになりながら

「その機構自体は経済省直下の外郭団体でして、どちらかと言うと天下り先の一つでありまして、

その・・・・・・ 仕事等の実績が無かったモノですから、」

「天下り先?実績が無い?」

「ですから、どこの誰に指示を伝えればいいかわからないのです。」

と言って、さらに事務方が持ってきていた資料が広げられた。


 そこには、理事として歴代の大臣、経済省トップの名前が数10名連なっていた。

一般職員よりも管理職員の方が多い、明らかな天下り先のリストが有った


「手をこまねいていても仕方が無い。このままでは、野党の連中が騒ぎ立てて、さらに事態が悪化し、政局に影響するかもしれん。今すぐ活動の停止を要請しろ。」

「連絡はどこに?」

「事務所が有るだろう。そこに事務員ぐらいいるだろう。」

「それが、居ないのです」

「どうゆうことだ?」


 金融オンライン管理機構の事務所を調べたところ、経済省5階の一室がそこに割り当てられていて、

常時人がいないということだった。

 その部屋に入ったところ、立派な書斎机1つ、10人用事務机1つとパソコン10台、複合機1台が新品のまま置いてあったと報告が有った。


民間で言うペーパーカンパニーだった。


「クッソー!とりあえず、オンラインの専門家を呼んで、手数料を取らない対応させろ!」

「わかりました!」

と駆け出して行く事務方。それと入れ違うように別の事務方より報告が上がる。

「新聞社の記者達が、開戦と経済のコメントを求めていますが。」

「業務多忙と言って追い返せ。」

「株価の下落が止まりません!!」

「おい!銀行株は、持ち直したんじゃないのか?」

「銀行株より、今は製造株の下落が止まりません。」


 株価下落に、政府介入により銀行株、商社株の下落に歯止めをかけたように思えたが、今度は製造株関連が暴落し始め、過去最大の下落率を更新して、株式市場を大混乱に陥れた。

 銀行株が下落したのは、午前中に起きた、現金払い戻しトラブルが全土に広がり、収拾がつかなくなったのを受け、宣戦布告が銀行にとって危機だ!と、まことしやかに囁かれ、国内市場が大荒れになったからである。

 政府介入と、メディアを通じ冷静に対応するように訴えて、沈静化するかに思えたが、そこへ輸送船の大量沈没の不確実な情報が入ってきた。

 情報の裏取りに、各社が取材に走ってわかった事は、開戦前に現敵国に向かった輸送船全てが、消息を絶ったと言う情報と、運送業社各社の支店とも連絡がつかないと言う情報が株式市場を駆け回った。

その被害額は天文学的な額になるのでは?それより、業界再編成か!どこが潰れる!

と言う情報だけが独り歩き始め、物流の停滞による製造業界への悪影響、小売り業界への悪影響が取り出され、トレーダー達が手持ちの株を、損切りになる前に売り抜けしようと売り先行になり、連鎖株安に歯止めが効かなくなってしまった。


 株式市場の混乱が、ついにはシステムを停止してしまった。


 国民の間には、食料が配給制になったが、その直後から碌に配給されない事と、急激な経済の悪化に戦争している場合じゃないだろう!国の経済を建て直し食料を渡せ!国民を殺す気か!と市民団体の一部が騒ぎ始め

 さらに、経済の悪化の原因が、政府高官達の天下り先の機関が引き起こした手数料強制搾取のことも報道され、

一気に政府への不満が膨れ上がり、開戦2日目にして、各地で反戦デモに集会が行われ、一部では、暴動も起こり始めていた。


国は、緊急の議会を開き、経済への対応と、国民への食料の対応の検討はじめた。

せめて戦局は、格下相手との戦いなのだから、快勝の報告を待ち望んでいたが、出撃して行った艦隊から一切の連絡が取れず、全滅したのではないか?と言う憶測が飛び出し、政府高官や政治家達が浮き足だった時に、艦隊からの連絡が入ってきた。

それは、艦隊の半数以上が失われ、敵艦隊に追われていると言う悲報だった。

その報告を受け、信じられないと呆然と立ち竦む、軍中央参謀本部の参謀に官僚。誤報だと思いたい、政治家、政府高官達。

箝口令を引いたにも関わらず、各新聞社に流れ、歴史的敗退と言う見出しで号外が刷られ、巷に流れ一気に敗戦モードに。

野党は、ここぞとばかり議会で与党政府を言及し、議会は大荒れになった。

政府与党は、この国内状況のまま戦争継続は困難と考え、開戦3日目の夜、停戦もしくは休戦の講和の為の大使をサナトリア王国とローレン連邦国に派遣した。

両国は、すぐさま講和に応じる旨を伝え、講和場所として、地球銀河連邦国所属の重巡洋艦『タートルエクスプレス』を指名、

バニーニ国もそれを、承認した。

ここに、3ヵ国間停戦条約を締結する運びとなった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ