混乱2
軍の統合本部を出たカッシーニ大統領は、止めてあった車に乗車すると、
「すぐに議員を緊急召集せよ。緊急議会を開く」
秘書に命じた。そして、個人用の携帯端末を取り出すと
「カッシーニだ。マッカートニー頭取を頼む (しばらくして) マッカートニーか?かなり戦局が厳しいことになった。
大丈夫だ!まだすぐに負けることはない。しかし万が一と言うことがあるので、ワシの資産を全て貴金属に替えて、屋敷まで密かに
運んでくれ。」
通信を終えると、自分の屋敷に連絡
「マーガレットか?詳しい話は後でする。もうすぐ中央銀行のマッカートニーが荷物を持って来る。それを受け取ったら、
そのままプライベート港に向かって、クルーザーに乗って待っててくれ。ワシも後から行く。あぁ愛しているよ。じゃ、港でな」
「大統領、国会議事堂にまもなく到着いたします。」
「うむ、わかった。」
「あんた!どうするんだい?」
「どうすればいいのかなぁ」
バニーニ国のとある町の商店街のパン屋の夫婦は、明日からの店のことで悩んでいた。
それは、昼のランチ時の忙しい時間が過ぎ、明日以降のパンの仕込み用の小麦粉を注文しようと
いつもの問屋に連絡を入れたところ、
「在庫がないので注文には応じれない」
と断られたからである。
心当たりの問屋全てに連絡を入れたが、在庫がないの一点張り、理由も教えてくれなかった。
最後の問屋でやっと在庫がない理由がわかったが、
「軍が小麦粉を、買い占めるって?どう言うことなんだ?」
「それより、あんた。このままじゃ明日は商売できないよ。どうするんだい?」
パン屋の夫婦が頭を抱えているところに、近所のスイーツを販売しているマイクが訪ねてきた。
「ケビン、ちょっといいか?」
「マイク、どうしたんだ?」
「イヤ~おまえのところに、余っていたら小麦粉を分けて欲しいんだけど。」
「おまえのところもか?」
「と言うことは、小麦粉が手に入れないのは、俺のところだけじゃないってことか。」
「なんでも、軍の奴等が全部持っていったらしい。」
「軍が?どうして?」
2人が、首をかしげていると、テレビを見ていたケビンの妻のマリアが
「あんた、今放送で、大統領が演説しているけど、戦争が始まったらしいよ。」
「何だって!どことだ!」
「ローレン連邦国と、サナトリア王国を相手に全面戦争に入ったって」
ケビンとマイクは、店の奥においてあるテレビを見た。そこには、
カッシーニ大統領が、ローレン連邦国とサナトリア王国の2国から言われなき事柄で、宣戦布告を受け、話し合いを設けたが決裂し、
ここに至って、正義の鉄槌を振り下ろすしかないと決断したと言った旨の演説をしていた。
すでに、各艦隊が出撃しており、近いうちに勝利の報告を届けてくれるものと確信している。
と演説を結んでいた
その後、政府広報官に変わり、政府のこれからの方針の発表になった。
「国民の皆様にはしばし、物資等不自由な生活になるかもしれませんが、しばらくの我慢をお願いしたい。食料は暴動がおこるのを
恐れて、政府が直接管理する事にしました。我国は、敵国の4倍の戦力を持ち経済的にも裕福です。決して負けることが有りませんから、
しばらくの間我慢をお願いします。」
集まっていた記者からの質問が飛んだ
「戦争の始まりは、先日起こった、両王国の記者会見での爆破テロが引き金ですか?」
「あの事件は、今回の戦争突入と関係が深く、我が国が行ったように見せかけた、卑劣な犯行であり、断固として抗議するものである。よって、正義は我々に有る!デマに惑わされないように、重ねてお願いするものである」
後の記者から、
「出撃した艦隊の規模や、どの方面に作戦を展開しているのか」
「国家機密事項に触れます事項なので、お答えは出来ません」
といった、無難な質問が数回されて、最後の記者がした質問
「私が入手いたしました資料によると、すでに我国の艦隊が壊滅しているという情報が有りますが、説明をお願いします。」
と言って、出した音声付きの映像資料を再生した。そこには生々しい艦隊戦の戦場映像が映っており、次々に火を噴く艦隊が写っていた。その日を吹く船のほとんどが、バニーニ国家艦隊の物だった。
それを見た広報官は
「良くできた作りものですね。このようなデマの映像は、国民をパニックに扇動するようなものなので、困りますね。」
と言って相手にしなかったが
「デマじゃない!!従軍記者で艦隊に同行した当社の記者から5時間前に送られてきた、映像だ!そその記者は、それから連絡が途絶えている!これをどう説明してくれるんだ!」
と叫んだが、両脇から屈強な兵士に抱きかかえられ、会場から引きずり出されていった。
「これで、政府発表の重要記者会見を終わります。国民の皆様、くれぐれもデマに惑わされることの無いよう、落ち着いて行動をしてください。」
と言って、広報官が画面から立ち去って行った
ケビンとマイクはテレビを見て
「しゃぁないなあ。政府が小麦粉を供給してくれるのを待つしかないか。」
「そういゆことだな。」
といって、肩を落としため息をつくのだった。2人だけではなく近所の商店街の店主たちもしていた。
宇宙港ではもっとひどい混乱が起こっていた
それは、数日前に出港していった輸送船の大多数の行き先が、サナトリア王国か、ローレン連邦国のどちらかだったからである
各船会社は、緊急無線も使い各船を呼び出したが、返事が無かった。
港湾事務所の会議室では、各船会社の責任者が集まり、今後の対応策の緊急会議が開かれていた。
「全く連絡が取れん。ノイズでもいい識別シグナルぐらい拾えんのか?」
「やばいぞ!船が拿捕されたかもしれん。最悪撃沈されたか?」
「戦争になって、国際通信網が遮断されている。相手国に連絡が出来ない」
「社内無線でも通信は出来ないのか?」
「戦争中だぞ?敵国に向けて無線を発信しただけで、スパイ行為と言われて、射殺もんじゃないか!」
「おいおい、どうする?我社は、サナトリア王国にも支社が有るんだぞ。そこの社員を引き揚げさせないと。」
「それをいったら、当社はローレン連邦国とサナトリア王国の両国に支社を構えてるんだぞ。なんとか、社員の安否が解らないものか?」
「大使館にお願いして見るか?」
「馬鹿か、この前のテロ騒ぎでどっちの大使館も焼け野原じゃないか」
「じゃ、軍に行って救出を依頼しよう!」
「今忙しいんじゃないか?。」
「そんなもん、関係有るか!軍は国民を守る為に有るんだろうが、輸送船に乗っている乗組員は、国民じゃないか。それを見捨てるって
ことはさせないぞ!」
「そうだ、そうだ!」
「ちょっと、そこの軍事務所に言ってこようぜ!」
といって、何人かが立ちあがり軍に陳情しに行こうとした時、1人の船主が
「その軍が壊滅って言う噂が有るんだけどよう。どう思う?」
軍上がりの船会社の社長が
「そりゃお前、デマだろうが。確かに、サナトリアの巨艦の主砲はおっかねぇ。
一発でもあたりゃ、即轟沈しかねない威力の砲を山のように満載してやがるからな。けどアリャ、
防空が出来てない。しかもサナトリアには防空艦が無いも事実だ。奴らは、艦載機による攻撃では、艦が沈まないと考えている。
だが、昨今の技術開発で高性能な対艦ミサイルが出来ているって話だ。
主砲に当たらないアウトレンジから艦載機で攻撃すりゃ大丈夫だろう。装甲が厚いから、手間がかかるかもしれんがな。
ローレン連邦国の連中は、大型のドックが無いから巨艦が作れない、だから中型の空母を大量に作って艦載機によるアウトレンジ攻撃に
特化している。
しかし、強力な砲艦がいない上に、空母とか補助艦は装甲が薄いから、まともに艦隊戦になると、逃げの一手しかなくなる
すなわち、どちらも歪な艦隊なんだよ。だから今まで何度も交戦しているが決着がつかなかった。
その点うちの軍の艦隊は、バランスが良く数も多い。そう簡単に壊滅なんかするかよ。」
「でもよう。両国が連携を取ったら、脅威になるんじゃないか?」
「馬鹿か?そんなことできる訳ないだろう」
「なんだ等!両方の強みをもってかかって来られれば、我国の軍もやばいじゃないかって言ってるんだ。」
「お前、ちょっと考えてみろよ。しのぎを削っているライバル会社が、急に今日からグループ会社になりました、仲良くやりましょう。
それについてはお互いの帳簿を見せあいましょう。と言ってきて、よろこんで!って言ってお前は帳簿を見せるのかよ?」
「できるか!」
「当たり前だよな。会社レベルでさえできないもんが、昨日まで戦争していた国家間で、出来る訳ないだろうが。」
「確かに、暗号とかの情報が漏れたら取り返しがきかんもんなぁ」
組合長の恰幅のいい男性が
「とりあえず、軍にお願いだけはしてみようか?」
「そうするしか今は手が無いようだしなぁ」
といって、会議室を出て行った。
大都市の銀行では、有る問題が発生しつつあった。それは、現金の不足と言うものだった。
口座に有る金額よりも、はるかに少ない額しか現金の準備が出来ていない事実が判明した。
「どうゆうことだ?現金が無いというのは?」
「は、先ほど調べましたところ、我銀行の準備高である現金の保有量が、危険水位まで下がっている事が判明しました。
現在、取引は主に電子決済で行っておりますので、目立ったトラブルにはなっておりませんが、明後日から、小口の現金決済が
多数行われる週間に入ります。それまでに、現金の準備高を基準まで用意しませんと、業務が滞ると思われます。
まして、戦争状態に突入しましたので、現金決済が増えると思われます。」
「仕方が無い、国家中央銀行から現金を手配してもらうように、頼んでみるか。」
「お願いいたします。」
銀行の頭取が、国家中央銀行に連絡をしてみると、現金の発行を断られた。
「どうゆうことです?頭取」
「わからん。わからんが、なんでも紙幣の印刷機のトラブルで、一切の紙幣の発行業務が出来ないそうだ。」
「じゃ、どういたしますか?」
「他銀行から融通してもらえるように話はしておく。あと、それとなく市場から現金を回収しておけ。決済用の資金なら新札で無くても
よかろう。」
「わかりました。そう指示しておきます。」
その時、銀行内に警報が鳴り響いた。頭取は内線電話を警備室にかけた
「どうした!」
「はい!。現在決済用のオンラインが止まりました!原因を確認中です。」
「早く復旧させろ。」
頭取は内線電話を切ると報告に来ていた副頭取に
「オンラインが止まったらしい。今日の午後から大口の取引が始まる前に、各取引先に連絡しろ!」
真っ蒼な顔をして副頭取は
「わかりました!早急に各部署に通達して対応します」
といって、走って頭取室を飛び出して行った
「なんってこった。現金決済するにも現金がない。」
と言って頭を抱えた。
この銀行だけではなく、バニーニ国内にある全ての銀行、クレジット会社のオンライン決済用のサーバーが落ちていた。
メンテナンスを受け持つ会社が総力を挙げて復旧作業にかかるが、原因不明のトラブルは解消されなかった。
それどころか、為替相場、株式相場のメインフレームもダウンしてしまい、市場が混乱の模様を要してきた。
また、別の国中の信用金庫に貸金庫業界で大パニックが起きていた
「貴金属が、一切無いだと?どうゆうことだ!!」
そう、預かっていた貴金属の類が全ての金庫から消失していたのである。
届を受けた警察が調べてみると、ほとんどの貴金属が盗まれておりながら、美術品要素の高い物は残っており、一緒に預けてあった
有価証券にも、手を付けられていない事もわかった。
犯人は、純粋に金の延べ棒のような、貴金属と宝石しか盗んでいなかった
しかも、防犯カメラの映像を調べても、犯人の姿が映っていなかった。そもそも、金庫が開けられた痕跡さえ無かった。
これが、一軒の店舗ならば、内部犯行の仕業だと決めつけられたのだが、同じように出庫履歴が無いにもかかわらず、
物が一切なくなっている店が続発した為、大規模盗難事件として、捜査本部の設置。国中の捜査官を現場に急行させ捜査を開始した。
この事は新聞各社が、開戦の記事と共に、夕刊に大々的に新聞記事を賑わせた。
セントラル警察の捜査本部では、姿なき犯人を追い求め、市中を探し続けた。捜査本部の会議室では議論が交わされていた。
「いったいホシは、どうやって金庫から出したんだ?」
集められた防犯カメラの映像を見て首をかしげる警部。そこに笑いながら被害報告書を見る若手刑事
「警部、それよりこの被害総額。記録もんですね。」
「なに喜んでる!」
「でも、警部。これだけの金銀白金に宝石類ですよ。いったいどのくらいの重さになるんですかね?」
「それは、報告が上がってきてますよ。この報告によると、この街だけで約10トン近くになり、被害総額から算出した重さは、
約900トンだそうです。」
「冗談だろう?どうやって運べばいいんだ?そんなもん」
「いっぺんに運ぶとしたら、トラックでコンボイを組まないといけませんね。」
「質量の割に貴金属だから体積が無いだろう?そんなにコンボイを組まなくても。」
「そもそも、盗んでどこに運んだんだ?」
「国内の裏市場では、まだ売捌かれていないようです。」
「こんな量、全て売られてみろ、相場が大混乱して経済危機になるぞ。」
「船で、国外に持ち出したか?」
「でも、港湾事務所からの連絡では、そんなに大量の貴金属が持ち込まれた形跡が無いと言っていますが。」
「幸いと言っていいのか、今港には輸送船が1隻も有りませんからね。盗まれたものは、まだ国内に有ると思います」
報告書を見ながら応える捜査官
「輸送船は、どこに行った?」
「目下、我国と戦争状態に突入した、サナトリア王国かローレン連邦国ですよ。」
警部補は呆れたような声で
「なんで、そんな所に送り込んだんだ?」
「いや、依頼は戦争前に発注を受けてて出港して、航海途中で戦争になったので、通常の業務だったらしいですよ。」
報告書に書かれていたのは、ごく通常の業務で唯一違うのは、チャーターされて向かったというぐらいだった
「それじゃ、船には連絡がつかんのか?」
「船どころか、船員にさえ連絡が取れなくて、港じゃ大騒ぎですよ。たぶん拿捕されたんじゃないかって言うことですよ。」
「戦争相手国になにを運んでいるんだか?」
「積み荷は食品とか、鋼材、日用品各種となっていますね。ものすごい量ですけど」
「積み荷の裏は取ったのか?」
「一応確認は取りました。輸送各社の帳簿と各商社の伝票は一致していました。出港前の質量チェックも異常が有りません。」
「船で持ち出しは不可能か」
「どこに消えたんだ?」




