表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第1章
36/144

混乱1

 会戦早々入ってきた報告は、ローレン連邦国方面に出撃した部隊からの悲報だった。

それは、予想外の艦種の艦隊が前面に出てきての先制攻撃の報告だった

バニーニ国艦隊の誇る打撃艦隊の有効射程距離外の遠距離より先制攻撃をされ、行き足を止められ混乱した艦隊からの報告を受け、

あわただしく対応に追われる総合本部

「ローレン連邦国の艦載砲の有効射程距離外からの攻撃だと?どういうことだ!」

バニーニ連合国家軍総合本部で、作戦参謀元帥が叫んだ


 ローレン連邦国近郊宙域の戦闘で、ローレン連邦国では技術的に造船できなかったはずの、大口径長距離攻撃型の戦艦が6隻で

1艦隊の編成を10艦隊組んでバニーニ国家連合軍艦隊に対峙し、バニーニ国家連合軍艦隊の防空艦が次々と狙い撃ちされ、

装甲の薄い防空艦には成すすべ無く一方的に沈められていった。

「なぜ、ローレン連邦国に大口径の戦艦が配置されているんだ!そのような情報は事前に入っていなかったぞ」

 急遽装甲の厚い重巡洋艦艦隊を、防空艦隊の周りに結集させ楯とするが、それをあざ笑うかのように、重巡洋艦の隙間を狙い防空艦が

沈められていく

撃ってくる戦艦部隊は、急造艦隊のような緊急に配置された部隊などではなく、練度の高い艦隊だった。

「まるで、サナトリア王国近衛兵団の精鋭打撃(ナイト・ガーディアン)艦隊じゃないか!」

防空艦を失った直後に、攻撃機の大編隊に襲われ善戦するものの、次々と沈められていくバニーニ艦隊。

防空艦が無き今、艦隊を敵攻撃機隊から防ぐ術を持っていなかった。



第2報は、サナトリア王国に向かった艦隊からもたらされた悲報だった。

 サナトリア王国艦隊に向かった攻撃機が、サナトリア王国艦隊には存在していなかったはずの防空艦隊に攻撃を阻まれて有効な攻撃が

出来ず、それどころか壊滅的打撃を受けて攻撃機部隊が壊滅状態になり再編成が不可能になったという報告だった。

「サナトリア王国に防空艦隊だと?いつの間に配備された?」

サナトリア王国艦隊にいる防空艦隊は4隻で1艦隊を組み、32艦隊で幾何学的な模様を組んで鉄壁の防空網を作り、バニーニ国家連合国の攻撃機の侵入をほぼ完璧に防いで見せた。

「まるで、ローレン連邦国艦隊の鉄壁防空パーフェクトデフェンス艦隊じゃないか!」


現在、敵の索敵部隊に航行ポジションが知られ、追撃戦を仕掛けられているとのこと。

それにより

「これより我が艦隊は、機動攻撃部隊保護の為、空母は回避行動を取りつつ戦線離脱し、残りは打撃戦に移行する」

と連絡を受けたが、作戦司令本部は顔色を悪くした。

 通常ならばサナトリア王国には打撃艦隊しかおらず、脅威となる防空艦が存在していなかったため、サナトリア王国方面に派遣した

艦隊は空母を主体とした機動艦隊で、敵主砲の有効射撃距離以遠より、攻撃機部隊にて敵打撃艦隊を沈める作戦だった。

 そのため接近戦を想定しておらず、大口径の戦艦及び重巡洋艦を艦隊に組み込んでおらず、護衛艦隊の軽巡洋艦と駆逐艦隊だけでは、

サナトリア王国の打撃艦隊と打撃戦に移行するのには分が悪かった。


 最後に届いた連絡は、地球銀河統一連邦国に向かった艦隊からだった。

敵機1機の攻撃力が戦艦1隻に匹敵し、艦隊が蹂躙されている、と言った理解不明な報告が飛び込んできた。

敵機の搭載火器射撃によって、戦艦が吹き飛んだ。

1発の敵ミサイルが、1旅団の艦隊を消し去った。

などと言う艦載機の常識から考えて常識はずれな報告ばかり上がってきた。敵艦に対しての情報も

敵艦の主砲の射程距離が異常に長く、近づけない

敵艦の砲撃一発で3隻が轟沈した

敵艦の外装にミサイルが当たっても、傷がつかない

戦闘の激しさから、情報が混乱しているものと思った作戦司令部は艦隊戦情報収集に努めるが、要領の得ない報告ばかりが報告される。


 地球という国から来たという1隻に関わってる時間が、これほど多くなるとは思っていなかった。

 そもそも1隻に対し補助艦艇まで合わせると1万隻を超える大艦隊を差し向けたのは、その艦のいた場所が、サナトリア王国とローレン連邦国の中間地点だったからである。

一旦中間地点に艦隊を集結させ、そこから援軍を派遣する作戦を取っただけなのである。

敵艦は1隻なので、こちらの大艦隊を見れば大事をとって逃げ出すであろうし、もし戦いになったとしても大戦力を以て瞬殺出来るものと考えられていた。

 ところが予想以上の抗戦を受けて、どうゆう訳か1隻に対して、大艦隊が蹂躙され防衛に徹している状況になってしまった事で、

艦隊を分割しサナトリア王国方面や、ローレン連邦国方面に援軍を出す事が出来なくなってしまっている。


 さらに作戦司令部の混乱に追い打ちをかけるように、想定戦闘時間を超えての長時間作戦となった為、各部隊から追加の物資補給を

要請され手配をかけるが、軍部の備蓄物資が帳簿上と実在庫とは、大量に合わないことがここに来て判明。

 責任者を更迭し、民間業者に不足補充分を手配をかけるが、民間市場にもなぜか物資が無い。有ったとしても、値の吊り上げを狙ってか

売り渋りが横行する中、憲兵隊を中心に国中の民間倉庫を強引に開けさせ、あらゆる物資を国家経済維持法にて強引にかき集めた。


(そのせいで、さらに市場から物資が無くなり、国家に対して国民感情が悪くなっていくのだが)


 そこまでして集めた物資だが、今度はその物資を送るための輸送船が港に無い。

船会社に恫喝まがいの命令をかけ、現在の輸送業務をキャンセルさせ輸送船をかき集めようとしたが、ほとんどの輸送船が数日前から

国外を航行しており、引き返しさせたとして、一番早く帰って来るのが5日後に小型輸送船が3隻だった。


 このように開戦直後から、作戦本部に届く情勢は悪いものばかりで、開戦18時間後、ついにローレン連邦国方面に派遣した艦隊からの連絡が、援軍及び補給がない為に、壊滅的な被害を受け降伏勧告を受け入れたと言うものだった。

サナトリア王国に派遣した艦隊も、辛うじて敵の追撃戦をかわしているが、兵站が滞り動けなくなるのも時間の問題だった。

 地球銀河統一連邦国との戦いは、現在は数で押しているものの、補給部隊を連れずに出撃させている為、これ以上長引くと間違いなく

不利になる可能性が高いが、相手は超大型艦とはいえ1隻。

強力な艦ではあるが、補給が続くはずが無い。現在全艦隊を用いて、波状攻撃を繰り返しかなりの被害を与えてきた。

被害も多く出したが、もう一息でとどめを刺せるのではないか?と言う感じまで来た。


 だがこの攻撃に、母星で指示している作戦司令部は、なぜいまだに全艦隊にて対応しているのかが理解できずにいた。

強力な戦闘艦と言え、傷ついた大型艦1隻の相手に全艦艇による攻撃をしなくても、数隻の補助艦による部隊を編成し、それを使い部隊の分割派遣の邪魔をされないように足止めさせ、速やかに戦線から引き離し援軍として、サナトリア王国方面に移動させてもよいだろうと考え、比較的エネルギー、推進剤、弾薬の温存を図っていた部隊を編成し、サナトリア王国方面に援軍として派遣する作戦を発令した。


その時、作戦司令本部の扉が大きく開き放たれ

「話が違うじゃないか!両国と我が国との戦力差は一対四で、両面作戦になっても余裕で蹴散らせると言っていたのは、軍部の方ではないか!」

でっぷり太った身体を揺らし、顔を真っ赤にしながらバニーニ国家連合大統領カッシーニ氏が、軍の参謀達に詰め寄って大声で喚き散らしていた。

「大統領、落ち着いてください。」

「これが落ち着いておれるものか!ゲドルフ国防大臣!現状を説明したまえ!」

バニーニ国家連合軍の最高責任者でもあるゲドルフ国防大臣が、作戦卓を前にカッシーニ大統領に対し、戦況の経過と現状を説明し始めた


 ゲドルフ国防大臣より戦況説明を聞き、幾分落ち着きを取り戻したカッシーニ大統領であったが、戦況は厳しいと認識していた。

「現在地球銀河統一連邦軍と名乗る敵に対応している部隊より、60%に当たる艦艇を引き抜き、再編成を行いサナトリア王国に向けて

援軍を出す算段となっております」

「わかった。で、それで現状の状況は改善するのかね?」

「残念ですが、ローレン連邦国を制圧する事は、今回は出来ません。しかしながら、サナトリア王国方面に援軍を派遣する事により、

サナトリア王国の制圧は完了するものと思われます。援軍を派遣後、地球銀河統一連邦軍と名乗る敵を足止めしていた艦隊は、速やかに

交戦宙域を離脱、一旦本国に帰還させ整備し、ローレン連邦国に進軍させます。」

「地球銀河統一連邦軍と名乗る敵をどうするつもりだ?」

「どうもしません。」

ゲドルフ国防大臣は即答した

「なぜだ?超大型艦でかなりの戦力を保有する艦と聞いたが?」

ゲドルフ国防大臣はにやりと笑い

「奴らの国はここに有らず、修理補給のためにはどこかに寄港するしかありません。現状を鑑みますと、ローレン連邦国に寄港して整備

修理補給を行う必要があると思われます。

だが、この会戦に勝利したとはいえ、もともと工業力に劣るローレン連邦国では、自国の艦隊の修理整備に追われて、他国の船の修理をする為のドックに空きがないと思われます。

ましてや、報告に有るような超大型艦が入れるドックなど、ローレン連邦国にあろうはずが有りません。武装もローレン連邦国とは規格が違うでしょうし、どれほどの大戦力を持っているか知りませんが、修理に補給が受けれないのでは、ただの標的艦と何ら変わりありません」

カッシーニ大統領は、しばし瞑想し

「確かにな。その為には、工業力に優れているサナトリア王国には、巨大なダメージを与えるか支配する方向になるか。で、我国の艦隊の再編成にはどのぐらいかかるか?」

「被害状況が正確に把握できていませんが、3カ月あればローレン連邦国に進軍させるだけの戦力は揃うと思われます」

「うむ、わかった。その作戦で行うように。」

「了解しました。」

と、ゲドルフ国防大臣がカッシーニ大統領に敬礼をした時、連絡兵が報告に来た。

「地球銀河統一国方面艦隊より入電、現状では敵艦に対し数隻の補助艦による部隊での足止めは不可能。当艦隊は敵との交戦中において、艦隊の戦艦50%は、すでに大破以上の状態になっており、救助活動中の艦艇もあり、サナトリア王国方面派遣部隊の再編成をする余裕が

なく、現在当艦隊から派遣できる部隊は、水雷艇部隊3師団のみ。だそうです」

その報告を聞き、ゲドルフ国防大臣は激高し

「認められん!それだけの戦力では、サナトリア王国方面の戦局が覆らん!艦隊の分離が出来ぬのなら、即刻交戦を辞め全艦隊、サナトリア王国方面に移動せよ!」

続いて来た連絡兵が

「サナトリア王国方面作戦艦隊より入電。当艦隊は敵の追撃戦から逃れることが出来ず、抗戦をした結果、艦隊の68%を失い推進剤、弾薬、エネルギー枯渇により抗戦継続が不能の為、全面降伏する。とのことです!」

一瞬、ゲドルフ国防大臣とカッシーニ大統領はなにを言われたのか理解を拒否した。

作戦司令部のシートに崩れ落ちるように座り込み、重い口を開いたのは、カッシーニ大統領で

「ゲドルフ国防大臣、この戦は負けだな。」

とつぶやいた。

「しかし、まだ、敗走してはおりますが艦艇は残っています。それらを以て再編成し反撃に出れば、まだチャンスが有るかと」

作戦本部参謀の一人がそう進言してきた。

「確かに、自国防衛の為に残りの艦隊を集結して、防衛ラインを築きその間に部隊再編成をすれば、再度チャンスは巡ってこよう。

しかし、今度は相手も数段強くなっているものと思われるので、かなりの時間をかけなければ勝機は無いな。その為には、これ以上手持ちの艦艇を減らすことはできんか。 各部隊に通達、交戦を即刻終了し自国に速やかに帰還するように」

ゲドルフ国防大臣は、出撃して行った全艦艇に向けて、帰還命令を発令した。


が、少し遅かった。


 発令と同時に入ってきた報告が、地球銀河統一連合国方面軍が独自判断にて、限定停戦条約を結び、交戦を終了したことを報告してきた。

この報告には、作戦本部に動揺が走った

なぜならば、武装解除も含めての停戦内容だった為、バニーニ国の保有する艦隊のほとんどがこの時点で壊滅した事を表しているからであった。


作戦本部の参謀達は

「なぜ、負ける要素の無かったこの艦隊戦に負けた?」

「いや、そもそも物資がどこにも無かったのは、どうゆうことだ?」

「それを言うなら、貿易港なのに輸送船が1隻もいなかった理由は?」

と敗戦原因の犯人探しを始めた。


ゲドルフ国防大臣とカッシーニ大統領は、その参謀達の姿を見て

「なにしておる!まだ我国が負けた訳ではない!敵艦隊も多く傷つきすぐには攻めてこれないであろう。敵に対し、防衛戦を考え反撃のチャンスを掴む作戦を考えたまえ!それが諸君らの課せられた職務である!吾輩は、これより議会を開き、今後のバニーニ国家における

立場と徹底抗戦を国民に訴える。」

と言って2人は作戦本部より出て行ったっきり、二度とは戻ってこなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ