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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第1章
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停戦2

「こちら、サナトリア王国近衛第一打撃艦隊旗艦 サファイアです。さよりさん聞こえますか?繰り返します。こちらサナトリア王国のサファイアです。さよりさん聞こえますか?」

12時間にも及ぶバニーニ国軍との艦隊戦を勝利で終結し、その報告を地球銀河統一連邦からきた恩人達に連絡を取ろうと、サナトリア王国第一王位継承者 サファイア姫が、通信機器を前に約半時間呼び掛け続けていた。

その姿を見て艦長が

「サファイア姫、あちらに向かった敵艦隊は、こちらの数十倍の戦力であったと報告がありました。」

「それが、どうしたのですか?彼等が負けたとでも申すのですか?そのような話は、聞きとうない!さよりさんは、勝算の無いケンカはしないとおっしゃいました。きっとまだ、戦闘が終結してないので、忙しくて通信に返信する暇がないだけに決まっています!」

「そうだと、よろしいのですが。」

「そうに、決まってます!」

と言って、通信機器を見つめる、サファイア姫。

サナトリア王国近衛第一打撃艦隊 艦長ハッサンヌは、地球銀河統一連邦国の船は、多分無事ではすまないと考えていた。

ローレン連邦国艦隊と派遣されてきた我々の艦隊が、対面したバニーニ国軍艦隊とは数では互角で、我々の先制攻撃が決まったのにも関わらず、現在無傷な艦が1隻もなく、たまたま敵艦隊の補給が来ないといった幸運がなかったら、勝利することができたかわからないほどの、激しい戦いだった事を思うと、その数十倍の戦力に単艦で挑むことなど、無謀の一声に尽きる。無事で済むはずはない。

だが、彼等がそれほどの戦力を一手に引き受けてくれたからこそ、今回の会戦がこちらに有利に進めることができたのも確かな事だった。 

 我が国が誇る遠距離打撃艦隊と、ローレン連邦国の防空艦隊とのトレード作戦もみごとに的中し、通常ならば、被害は今より数十倍になったであろう会戦の被害が、この程度で済んだのだから。

彼等には、どれだけ感謝してもしつくせぬ気持ちで一杯だった。

しかし、戦場は冷酷なもの。聡明な姫も判っているはず。気が済むまで呼び掛けさせよう。と、考えていた。

「さよりさん、聞こえますか?」

何度この言葉を発しただろう?やはり、……

「ヤッホー!サファイアちゃん!元気?さよりだよぅ」

突如、通信機から明るい少女の声が流れた。それと同時にモニターに映る満面の笑顔の少女 さよりだった。

「さよりさん!!ほんとうに?無事だったんですね。」

思わずサファイア姫の目から安堵の涙がこぼれる。

「あれ?なに泣いているの?」

さよりは、不思議そうにサファイア姫を、見つめた。

「だって、こちらより多くの敵艦隊が向かったと聞いて、……こちらも、大変なおもいをしてやっとつかんだ勝利で、…………」

サファイア姫は、幼子のように、泣きじゃくった。

「もう、泣かないの。艦長さ~ん、お姫様に飴でもあげて、あやしてあげて。」

艦長は苦笑して、ハンカチをサファイア姫に差し出した。


「イヤ~ごめんね。返事が遅くなって。袋叩きにあってアンテナがまともに動かなかったんだよ。こっちも戦闘が終わって、相手と停戦条約をかわしたよ。」

「えっ!!停戦条約?」

それを聞いた艦橋にいる将校達は、耳を疑った。単艦で敗北せず、停戦に持ち込んだだと!

「それは、ほぼ勝利じゃないのでしょうか?」

「あたしは、どっちでもいいの。負けなけりゃ。幸一と代わるね。」

通信機から、男性の声で

「こちらは、地球銀河統一連邦国 タートルエクスプレス巡洋艦艦長、幸一です。サファイア姫、お怪我はありませんでしたか?」

モニターの画面がさよりから幸一に変わり、サファイヤ姫は涙をふき、威厳のある顔を取り繕った。

「こちら、サナトリア王国王姫サファイアです。この度の戦い誠にご苦労であった。私は、優れた家臣達に護られてなんともない。ただ艦は、数発命中したため無傷とはいかぬが。」

「お怪我が無く良かったです。こちらの被害は、ほぼ中破状態ですが、現在破損した外装の修復作業中です。順調にいけば、後、8時間ほどで終わると思います」

 静かに艦橋がどよめいていた。中破ですんだだと?しかも、ドックに入らずとも修理が進んでいる?

「あの、今そちらは、停戦条約を結んだ上に、修理中なのですか?」

サファイア姫は、幸一達がどういう状況なのか理解出来ず、質問した。

「そうですけど?それがなにか?」

幸一は、なに当たり前の事を聞くのかと、不思議そうにサファイア姫を見返した。

「幸一殿、某はこの艦隊を任されている艦長のハッサンヌと申します。貴殿の相手となったバニーニ国軍艦隊は、どのようになりましたでしょうか?」

艦長のハッサンヌも、地球銀河統一連邦国の軍事力が気になり、サファイア姫が黙ったタイミングで、質問をした。

「とりあえず、4割は黙らしたかな?こちらも、補給物資が届く事がないと言うこと、これ以上の交戦続行がバニーニ国として不可能ということが、相手の司令官が理解してくれたので、停戦できました。」

超大型艦とはいえ、単艦で数万隻の敵艦隊を相手に互角で戦うとは、

「そうですか、敵艦隊が3方面同時に補給が出来ないといった、致命的な構造的欠陥?が露呈したと言う幸運が起きたからお互いこのように勝利をつかみ取れたのでしょう。」

にこやかにハッサンヌ艦長が微笑みお互いの健闘を称えたつもりだったが、

「幸運?それは、ちがいますよ。」

幸一が軽く否定した。

「第一今のバニーニ国には、軍に廻せる物資がほとんど無い上に、もしあったとしても前線に送る手段がないのですから。」

それを聞いたサファイア姫が、

「どういうことです?あの国ほど、物資を溜め込んでいる国はないです。それがないとは、」

「そうですね。そして、あの国ほど、金に執着した国はありませんでした。」

ニヤッと幸一が笑って、

「金を積めば、誰彼構わず物資を売り払う気質の国でもあります。」

「もしかして、物資を買い占めたのですか?」

チラッと幸一はさよりを見て、

「出来るだけ多くの物資を買い占めました。それは、可能な限り大量に。サナトリア王国とローレン連邦国の復興出来るだけの量でしたから」

サファイア姫は、少し疑問を感じ

「この情勢でどうすれば、それほどの量の物資が、短期間で買えるのですか?」

「相場の3倍から5倍で即金払いすれば簡単だよ。」

と、さよりがなんでもないように返答するが、ここでサファイア姫はさらに疑問を感じた。

彼らは、この宙域での貨幣を持ちあわしてはいなかったはず。

「あの、幸一殿。それだけの物資を購入するのにかかった費用は、どのように調達されたのでしょうか?」

幸一は、サファイア姫に聞かれてしばし目を泳がしてから、

「さよりが、がんばって調達したのです。」

と言って、逃げた。さよりは、得意そうな顔をして、

「むずかしお話は、会ってからにしましょう!」

そのさよりの顔を見て、サファイア姫はとんでもないことをしたんだな、と理解した。

「で、これからどうされるでしょうか?」

「こちらは、バニーニ国に出向き、終戦の手続きをしようと思っております。すでに、サナトリア王国女王様、ローレン連邦国大統領殿は、向かっておられるので、当艦も最後の詰めを決めるべく参上する所存です。」

「母上も、向かわれているのですか?」

「はい。こちらが、片付けたことをまず連絡致しましたから、」

「私も、行ってもよろしいでしょか?」

「サファイア姫の艦隊は、ローレン連邦国の艦隊と事後処理を、御願いいたします。」

「えっ!」

「そちらのバニーニ国軍艦隊の無力化、捕虜の拘束等を行っていただかないと、万が一背後から攻撃されると困りますから。」

「ということは、そちらはすでに終わっているのですか?」

「まっ、艦隊の無力化は、得意ですから。」

と言って、さよりを見る幸一。 ハッサンヌ艦長が、納得した顔で頷く。

「バニーニ国は、交渉のテーブルに来るでしょうか?」

「彼等は、テーブルに付くしか国家の破滅を免れる術がないのですから、来ますよ。」

と言ってニヤッと幸一が笑った。サファイア姫をはじめ、艦橋にいた者全てが、背筋に冷たいものが走った感じがした。

「なにをされたのですか?」

「ちょっと、国家経済の危機的状況を、作り上げただけですよ。イヤ~オンラインから入出金は、気を付けてないとねぇ。」

「先程の、物資購入資金の出所と関係があるのですね。」

恐る恐るサファイア姫が、問い合わすと

「命令書も、気を付けてないとね。それ以上は、聞かない方がよろしいかと」

「また、会ったときに、詳しく教えてあげるねぇ!」

さよりがにこやかな笑顔で、手を振っている。

「わかりました。では、私どもはこちらで残務処理を行い、終わり次第駆けつける事といたします。道中、お気をつけ下さい。」

そう言ってサファイア姫は、通信を切った。

「ふぅ~。」

と、大きなため息をついて、通信席のシートにサファイア姫は沈みこんだ。

「大丈夫ですか?姫。」

「大丈夫、なんか大変な方々と知り合いになったと思ったら、どっと疲れが出ただけだから。」

「確かにそうですな。私も長く軍人をしておりますが、あのような人種には会ったことがないですな。」

「あの方々は、何があっても敵に廻してはいけないことだけは、わかったわ。暫く私は自室で休みます。ハッサンヌ艦長、申し訳ありませんけど、事後処理を御願い出来ますか?」

艦橋にいる全てのスタッフが、ビシッとサファイア姫に敬礼をし、

「あとは、お任せください。滞りなく進めておきます。姫は、次なる戦いに供えて、お休みくださいませ。」

「ありがとう。なにかあったら叩き起こしてくれて結構ですから。」

と言い残し艦橋を後にしたサファイア姫は、用意されていた高級士官用の部屋に入ると、側仕え達を下がらせ、着替えもせずにそのままベッドに倒れこんだ。

「疲れた~。」

の一声を発しただけで深い眠りについた。

後の世に、サナトリア王国救世の姫と讃えられる、サファイア姫17歳初陣であった。

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