交戦
拓哉が、機内のエネルギーゲージが4分の1を切ったのを見て
「明美、そろそろ燃料がヤバそうなんだけど。」
「そう?私はまだ大丈夫だけど、船を狙えさせてもらえないようになったし、いったん帰艦する?」
「そうだなぁ。でも、帰艦するって言っても、かめちゃんがあの様子だからなぁ」
明美と拓哉は、敵戦闘機に執拗に囲まれ、敵艦隊への攻撃が出来ず、敵戦闘機とのドッグファイトを
繰り広げていた。
かめちゃんこと、タートルエクスプレス巡洋艦も敵艦隊と、反航戦に突入し接近戦を繰り広げている。
火力で勝るかめちゃんの主砲や副砲が火を吹く度に、消し飛ぶバニーニ国軍艦。
しかし、数で勝るバニーニ国軍艦隊が、わずかに残った戦艦を中心に軽巡洋艦で構成された艦隊で、
取り囲み、持てる火力を全力で叩きつける。
かめちゃん自慢の外装装甲で敵弾は弾き返していたが、確かに威力的には弱い1発だがなんども同じような場所に撃ちこまれ徐々に削られ、各箇所で火災も発生している。
主砲、副砲こそまだ稼働しているが、対空砲の稼働率は30%以下になり、外から見た感じは、満身創痍だった。
人的被害はまだ出てないと言うか、乗員は全て艦橋に居るので、それ以外の居住区に弾丸が飛びこもうと、人的被害は発生しない。
かめちゃんは、1番主砲以外の火器と、ダメージコントロールに全リソースを振り分け、これ以上の
被害を抑えるよう攻撃と修復に全力を上げていた。
美由紀のレーダー監視による報告を基に、幸一が判断し、正の操船により、弾幕の少しでも薄い空間へ艦を導き政史が、進路を塞ぐ敵艦を1番主砲にて蹴散らして行く。
通信席に座りヘッドフォンをしながら、ポテトチップス(大袋)を抱えて外部モニターを、見つめる、さより。
「あと少しで、敵艦隊を抜けます!」
美由紀の声が飛ぶ。
「どうする、幸一。このままトンズラする?それとも、再戦する?」
正が、操舵稈を持ったまま振り返ったこと
「敵艦隊反転して来ます!」
レーダーを見ていた美由紀から報告があがる。
「敵さん、まだやる気かよ。損害を考えると、ここで撤退だろうが。」
幸一が苦々しくつぶやくと、かめちゃんが現状を報告
「現在、私の損害は、対空砲稼働率28%、第3主砲小破修復中、第2副砲中破修復中、外装装甲板52%破損。動力炉正常運転中、通信、索敵機能32%ダウン、よって中破レベルです。
現在、ダメージコントロール中、外装装甲板修復まで26時間、あと一戦は、出来ると思いますけど、大破覚悟です。」
「こっちの予想以上に被害を被ったなぁ」
幸一が、交戦継続するかどうかを迷っていた。それは、サナトリア王国と、ローレン連邦の戦いが気になったからである。
あの2国が、順調に勝ち進んでくれれば、ここで踏ん張る必要性はないが、もしもの時には、ここにいる敵艦隊を少しでも減らさないと、今後の展開に左右してしまう。
「明美達が、帰艦許可を求めているけど?今なら、格納扉を開けていいかな?」
通信席から、さよりが声をかけた。それを聞いた美由紀が
「明美達は、無事だったの!ケガしてない?」
「とりあえず、拓哉が、何発か当たったみたいだけど、ケガはしてないらしいよ?」
「ちょっと声を聞かせて!」
と、言ってさよりからヘッドフォンを奪い取る美由紀。
「今は、ダメ!!」
と、さよりが美由紀から取り返そうとするが、すでに耳にあてて
「明美、拓哉、聞こえる!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・きゃーっ!!」
と、言ってヘッドフォンをほり投げ、顔を真っ青にしてワナワナと、震えだした。
美由紀の耳に聞こえてきたのは、明美、拓哉二人の声ではなく、他人の断末魔だった。
さよりは、ため息一つついて
「だからぁ、言ったじゃない。今は、ダメだって。」
床に転がったヘッドフォンを拾い上げ、何事も無かったように自分の耳に装着するさより。
「さより、今の聞こえてきた叫び声って?」
「敵さんの、今にも死んでいこうとしている人達の、悲鳴に呪詛の声だよ」
「もしかして、開戦直後から聞いているの?」
「そうだよ。」
「どうして?私は、ちょっと聞いただけで恐ろしくなったのに。がまんできるの?」
「作戦を考えた責任かな?1人だけ怖い思いをしないのは嫌なので。」
と、言ってモニターを見つめるさより。
「それより、二人を回収するよ。かめちゃん、お願いするね。」
「わかりました。左のハッチを開けます。」
敵艦隊を抜け、少し敵からの攻撃が手薄になったタイミングをはかり明美達の2機を格納する準備に入った。
まずは、エネルギー切れになりかけの拓哉機から、アプローチに入った。
「ほんじや、お先に」
着艦態勢に入り、格納庫への誘導路に進入した時、敵艦からの砲撃が格納上部に着弾
一瞬強い光で被われる。光が消えたあと、誘導路の奥に翼を破壊され機体が二つに折れ曲がり火を
吹いてひっくり返った拓哉機の姿があった。
「拓哉!!」
明美が絶叫するが、拓哉からの返事がしない。その時、明美の頭が真っ白になった。




