無双
「第一次攻撃部隊、帰還しました!」
「予想よりも、遥に損耗率が高いな。」
バニーニ星系国家群連合軍第一機動艦隊所属、旗艦空母エストランゼの艦橋で、マセラ司令官が見守る中、傷だらけになりながら着艦してくる帰艦機を見て青ざめていた。
「確かに、相手は大型輸送艦1隻ですよね。直衛機もあがってないですよね?」
「そのはずなのに、どうしてこんなにも損害が多い?新たな情報は無いのか!」
各空母に帰還する機体に無傷な機体は1機たりともなく、しかも未帰還機の方が多かった。
「長距離航海してきた船体であるから、多少は武装していると思われたが。」
参謀官達が情報の少なさにいらだってきた時
「報告いたします!帰艦したパイロット達の話によると、我が艦隊の防空巡洋艦以上の対空砲火を
浴びたそうです。しかも、大型の連装主砲も最低5基、目視確認したと」
航空甲板要員が、パイロット達からの聞き取り情報及び、ガンカメラによる映像が作戦本部に
上がってきた。ガンカメラで撮影された、敵艦の姿を見て
「我々が相手しているのは、単純な大型輸送艦や、深宇宙探索船ではなく、強力な戦闘艦ということですか?」
「それも、全長800mを超える超ド級戦艦だ。我が艦隊の戦艦は最大でも、300mクラスだ。」
参謀のコリアンナ准将が、顔色を無くした。
「しかも、まだ健在だと!いったいミサイルを、何発撃ち込めば沈むんだ?」
「対空砲は、何基かを沈黙させたのですが、主砲はまだ健在なようです。」
「どのくらい被害を与えたと思う?」
「希望的観測では、中破。実際は、そこまでいっていないと思われます。」
「我が航空隊の被害は?」
「一次二次合わせて、護衛機を除いた攻撃機は3800機で、一次攻撃部隊の未帰還機492機です。二次攻撃部隊は、さらに損耗率があがると思われます。」
「相手は、直衛機を上げていないのだろう?それにしては、護衛機の帰還機が少ないようだが?」
マセラ司令官は、帰艦して来る機種を見て疑問を口にした。
「それは、打撃艦隊からの要請で、敵機の迎撃に向かっております。」
「どういうことか?」
言いにくそうに、一人の参謀官が状況を説明した。
「敵艦から発艦したと思われる、大型爆撃機と護衛機の2機が我が打撃艦隊に張り付いて、甚大な被害を与えていると。」
「直衛機がいただろう?たかが2機に、そこまで手こずるものか?」
マセラ司令官は、不信感を露に参謀官を睨んだ。
「それが、最初の邂逅で敵機からの弾幕により30機の直衛機が全滅、攻撃機の護衛をしていた部隊
20機が駆け付けたものの、乱戦になり半数が脱落、敵機に防空ラインを越えられたとまで連絡が
有り・・・」
その時通信官が、真っ青な顔色で声を震わせながら
「ほ、報告いたします。現在、第1から第3打撃艦隊が壊滅したと……連絡が……」
一瞬静まる艦橋
マセラ司令官が、
「よっ、よく聞こえなかったんだが、もう一度言ってもらえるかな?」
自分の耳を疑った、マセラ司令官は報告に来た報告官に、再度報告を求めた。
通信官が、一度深呼吸をして呼吸を整えると
「は!報告いたします。第1打撃部隊所属駆逐艦タシュゲンドより、敵爆撃機の攻撃により、
全打撃艦隊の6割が大破以上したとの報告。当艦タシュゲンドは、生存者の救出に向かう。
と報告が入りました。」
艦橋が静寂に包まれた。1人の参謀官が
「そんな馬鹿な!会戦して、まだ2時間ほどしかたっていないというのに、戦艦860隻、重巡1680隻 の半数以上が喪失しただと!!」
悪夢を見てしまったような顔で、固まっていた。
「はい!しかもその2機が、いまだに我が艦隊に対し攻撃を、続行中です!!」
「全戦闘機を、発艦させろ!!これ以上敵攻撃機を、打撃艦隊に近づけるんじゃない!守れ!」
空母内部にいた戦闘機隊が次々とスクランブル発艦していく
「頼むぞ。」
発艦していく戦闘機隊にマセラ司令官が敬礼をして見送った。
「あの爆撃機、なんであんなに早いんだ!」
バニーニ星系国家群連合軍第2機動部隊空母エクストランゼ所属第3戦闘隊隊長アカリル大尉が悔しそうに叫ぶ
バニーニ星系国家群連合軍航空隊の中でエースパイロットと言われ、最新戦闘機Dfk-225を駆る
アカリル大尉は、敵の爆撃機が新型のミサイルらしきものを撃つ瞬間に、自機の照準器に捉えたものの、
撃つ寸前に逃げられてしまい、その直後、戦艦が爆沈するのを見て一瞬気が動転したが、すぐに立て
直し追撃し、後を追っているが一向に追いつかず、それどころか、反撃を食らい僚機が撃墜されてしまった。
「くっそ!爆撃機とは思えない速度に機動性、しかも護衛の戦闘機も強力な砲をもっている!
もしも、これらが大量に来られたら我が艦隊は、もう存在はしていなかっただろう。
2機でよかったと言うべきなのか?」
アカリル大尉は、敵機の速度、機動性、攻撃力を目の当りにして、自分に与えられた愛機が、
最新型ではなく、すごい旧型に思えてきた。
「我国最速を誇るこの戦闘機が、全く追いつかぬ!これでは、」
アカリル大尉の目の前でまた1隻戦艦が爆発した。
バニーニ星系国家群連合軍第4打撃艦隊所属軽巡洋艦グリシャムは、戦艦グルリヴと敵攻撃機の間に
入りあらんかぎりの対空砲火を放っていた。
「なぜ当たらん!!」
「艦長!敵機の速度が速く、対空砲の旋回が間に合わず、照準が定まりません!」
「レーダー射撃で、予測攻撃出来ないのか!」
「レーダー撹乱材が、当宙域にかなり頒布している為、ターゲットロックの信頼性は、35%以下です。」
「かまわん!敵機の進路予想宙域に、主砲も使って弾幕を張れ!あの爆撃機の積み込んでいるレールガンは、
何発弾が残っているかわからんが、あと一基!あれさえ凌げば、帰投するだろう。
それまで、戦艦を守り抜け!!」
敵機を観察していた見張り要員からの情報で、敵爆撃機は、撃ち尽くした物はパージして捨てる仕様
な事が解り最初の遭遇から3時間を経て、敵機が持つレールガンは、最後の1基を残すのみになっていた。
「爆撃機、レールガン発射しました!最後のレールガンランチャーのパージを、確認しました。」
「弾頭、戦艦グルリヴへの直弾コースです!!」
戦艦が回避行動をとるが、間に合いそうもない。
「上げ角32度、速度増速!当艦の艦首で敵弾を受ける!艦首要員、緊急退避!総員!着弾のショックに備えよ!」
軽巡洋艦グリシャムの捨て身にて、戦艦グルリヴに被害は出なかった。
しかし、艦首を吹き飛ばされ、航行不能となった軽巡洋艦グリシャムの艦橋で、ベルン艦長が額から血を流しながら
「ザマァ見やがれ。これで全て弾を撃ち尽くしただろうが!さっさと帰投しやがれ!」
映し出されているモニターに向かって叫んだ。
「これから、我が艦隊が反撃してやるからよ。」
そんな艦長を、嘲笑うかのように、
「敵爆撃機、発砲!エネルギー弾頭来ます!」
「なんだと!」
「エネルギー弾頭、戦艦グルリヴに命中!船体が、折れます!」
「そんな馬鹿な」
「明美、やり過ぎたんじゃないか?」
拓哉が、元は、戦艦だったであろうデブリを避けながら、先行する明美の後を追うように飛行していた。
「ちょっとね。まさか本当に、1発1艦が本当になるなんて思わないでしょう?」
明美は、自機の攻撃力に呆れていた。
明美と拓哉の二人は、かめちゃんに向かう敵の攻撃機をかわしたあと、脇目もふらず敵艦隊の
戦艦隊を標的にして突っ込んで行った。
敵の直衛機30機が前に立ち塞がったが、明美が空対空多弾頭ロケットランチャー6基で、殲滅。
すぐさまロケットランチャーをパージして、後方から追い付いてきた敵機20機が、拓哉の機動に
翻弄されて連携を、取れなくなった所で拓哉と明美機の後方機銃で、次々と撃墜されていた。
明美は最初、映像で見た名の知らぬエースがしたように、1隻あたり2発で敵艦を足止めしようとした。
うまくいけば、そのまま轟沈してくれるのを願って宙雷を撃ち込んだところ、1発は外れたが当たった
1発で、戦艦と思わしき敵艦が真っ二つに折れ、轟沈してしまった。
その事実を目のあたりにして、バニーニ国軍と明美達はしばらく動きが止まった。
先に行動を再開したのは、バニーニ国軍だった。明美機を近づけては危険と判断。
味方機がいるのも関わらず、猛烈な対空砲火を開始する。
迂闊に敵艦隊に近づけなくなったが、明美はアウトレンジからの攻撃を開始する。
残る宙雷を1発1艦になるように、まずは対空砲火の切れ目を入れる為に、防空巡洋艦から狙い撃ちを開始。
宙雷とは、言うなれば使い捨てのメガ粒子砲。
1回で焼ききれるジェネレータで、光速まで加速されたメガ粒子を高出力で打ち出す仕組みになっている。
30センチ加粒子砲が、主砲の標準であるバニーニ国軍戦艦に対し、明美が放った宙雷の口径の大きさ
61センチと言う倍の口径のエネルギー弾頭に、耐えれる装甲はバニーニ国軍敵艦隊に存在しなかった。
防空巡洋艦が沈められてからは、対空砲火が減った為に明美機による一方的な攻撃になった。
50センチレールガンは、弾頭の速度こそ宙雷や主砲に比べ遅く接近して打ち込まないと、回避行動で
簡単に逃げられてしまうが、実体弾頭の為に、電磁シールドに左右されずに当たってからも、
その速度が乗った質量は、装甲を破壊し艦内に入り込んでから爆発する。
小型艦ならば、艦体を貫通して近くの僚艦を巻き込み、2隻撃破してしまうことも。
6発しか積んでいなかったが、対艦ミサイル『スペースハプーン』も想像を絶するミサイルだった
起爆地点を中心に、半径20kmの空間を崩壊させ亜空間に送り込む、空間破壊爆弾だったのである
このミサイルで多数の護衛艦が消えて行った
極めつけは、機体に内蔵されている、35センチテラ粒子砲
この砲の前に、戦艦の装甲が紙で出来てるのではないかと思われるぐらい、威力が半端ない。
元々、800m超えの艦艇を破壊する為の砲なのであるからして、300m弱の艦艇の装甲板では、
太刀打ちできる訳ないのである。
バニーニ国軍艦隊の必死の防空砲火、回避行動にも拘らず、明美機が次々と大型艦が沈められたのは、
バニーニ国軍が想定している攻撃機の3倍以上の速度で戦場を飛び回る、明美機の高速機動行動によるものだった。
その為に、対空砲の性能が追い付かず照準を付けることさえ困難になり、直衛機も性能の違いから
攻撃はおろか、追いつくことさえできない。
ましてや、明美の操縦は、大型機とは思えない高速で機敏な機動を繰り返し、時にはあり得ない機動を
して確実に艦隊の力を削って行った。
拓哉は、明美の行う回避、機動行動に付いていくことを早々に諦め、少し距離をおいて明美機に
近づく、敵戦闘機から明美機の護衛をしていった。
「敵さんの戦闘機の速度、遅くない?」
明美が、戦闘中に気付いたことを、拓哉にたずねてみた。
「確かに、加速は悪いみたいだね。こっちが全力で加速したら付いてこれないようだ。」
「そのせいかなぁ。対空砲火が、私達の後ろに流れるのは。」
「どういうこと?」
「対空砲の演習って、仮想敵機用いて行うもんじゃない。私達の機体の速度が、この辺りの機体よりも
数倍速かったとしたら?」
「対空砲の旋回速度が、俺たちに付いてこれないってこと?」
「そう考えると、対空砲が私達に当たらないことに、辻褄が合うんだけど?」
「確か昔の戦争で、レシプロエンジンの機体に調整していた対空砲の近接信管が、ジェットエンジンの
機体では、後方で働いて撃墜出来なかったので調整をし直したことがあったらしいし」
「その理屈で言えば、速さは、力よね。」
「確かにね。でもおかしいなぁ?」
「どうしたの?」
「あまりにも性能の差が大きくて、まるで複葉機対ジェット戦闘機のような構図になっているんだよ」
「それがどうしたの?」
「おかしくないか?1万年近く前のかめちゃんの技術力が、現在より進んでいるなんて」
「確かにそうだけど、元々、かめちゃんがチート性能なのも関係があるんじゃないかな?
結構オーパーツで作られていたりして」
明美は、かめちゃんの行動があまりにも、アンドロイド的じゃないのを思い出して苦笑する
「ま、後で考えましょう。敵さんの武器がいくら旧式と思えても、火縄銃でも殺傷能力が有るんだし
数でタコ殴りされたら、いくらかめちゃんの装甲でも傷つくし、最悪沈んでしまうんだから。
私達は、少しでも被害を減らせるように、敵艦の数を減らすようにしないと。」
「確かに。考察は後でするとしましょうか。」
「ほんじゃ、あそこに居る艦隊に行くわよ!」
「了解!」




