トレード
「うまくいっているかしら?」
美由紀は、艦橋で外の星空を見ながら呟いた
「大丈夫だと思うよ。たぶん」
広域レーダーの操作をしているさよりが、ポッキーをくわえながら、答えた
「うまくいかなかったら大勢の人達が、亡くなるんだよ!そんな気楽に答えないでよ!」
「みゅう?なんか勘違いしてないかなぁ?」
まるで珍獣を見た顔で聞くさより
「私が、なにを勘違いしてるの?」
「この艦隊戦で出る殉職者数の、桁。トレード作戦が成功しようとしまいと、兵隊さん達は
大勢亡くなるんだよ?味方か敵かの違いはあるけどね」
「えっ!だって、この作戦が一番人的被害が少ないって言ってじゃない。そりゃ戦争なんだし、
私だって誰も死なないことは、あり得ないってわかっているわよ。」
「じゃ、どのくらいだと思う?」
「数百人ぐらいは出ると思うけど。」
さよりは、マイ湯飲み茶碗から紅茶を一口飲んで
「そう、この作戦がたぶん一番少ないよ、味方の人的被害は。それでも、両軍あわせて数十万以上は
戦死者が出るけどね。」
「どういうこと!!」
トレード作戦
それは、さよりが立案し、幸一と明美が検証してサナトリア王国とローレン連邦国の協力のもと、行われた作戦ネームであった。
簡単に言えば、お互いの艦隊に有る弱点を補い会う作戦内容だった。それは、
サナトリア王国には、大口径の長距離砲撃が行える、艦載砲を積んだ砲艦はあるけど、敵攻撃機に対して、有機的に防空システムが運用できる防空艦がいなかった
ローレン連邦国には、高性能な対空砲火を装備した防空巡洋艦はあるけど、大口径の長距離砲撃できる砲艦がなかった。
だったら、無いものを交換して補強したらいいんじゃん。
と、さよりが両軍の全艦艇のスペックを調べあげ、シャッフルして艦隊スペックが最大になるように艦隊編成を作成。
その艦隊運行に、幸一と正が手を入れて完成した、バニーニ国軍対応戦略艦隊だった。
拓哉が、その計画表見て
「一つの問題点さえ解決出来れば完璧だけど、それはどうするの?」
拓哉が、あげた問題点とは、
「艦隊は、人が動かしているんだよ。」
すなわち、さっきまで敵同士だった軍隊を、連携の取れる熟練度の高い艦隊行動をとらすとなると
簡単にいかないと言う基本的な問題点を指摘
幸一も、
「確かに、さっきまで殺しあっていた相手に、背中を預けるのは、勇気がいる、と言うより、怖くて出来るか!」
だったら、必要な軍艦だけ委譲して運行も考えたが、慣熟練習をしていなければ、その軍艦の100%の
性能を引き出せないし、そもそも操船が覚束ない。それでは、標的艦にしかならない。
新規に搭乗員を集めて慣熟練習をするだけの時間もない。
そのため、作戦が開始前に頓挫しそうになった。
「いい作戦なんだけど、机上の空論かぁ」
「この両国が、今まで仲が良かったら、問題にならないのになぁ」
それを打破したのは、さよりが、タートルエクスプレス艦内にいた二人を連れてきて、
「この二人に、艦隊の指揮を頼んだよ」
の、一声だった。
「敵、防空巡洋艦。8割沈黙。ローレン航空隊攻撃機、突入開始しました。」
「当艦隊は、続けて対空砲火をしている艦艇を攻撃せよ!」
「こちらの被害は?」
「はっ。プリンセス。当艦隊に敵戦艦より数弾砲撃を受けましたが、命中弾無く、被害はありません」
「よろしい。このまま攻撃機の援護を。」
「敵打撃艦隊、回頭終了した模様。こちら接近します。」
「いかがいたします?」
「敵打撃艦隊の有効射程距離までの時間は?」
「最短で、5分程度です」
「よろしい。回避行動を取りつつ、敵艦隊に接近。本当の艦対砲撃戦をバニーニ国艦隊に、教えてあげなさい。」
「イエス!プリンセス!」
「わかっているでしょうけど、ローレン連邦軍に恥ずかしい姿を、見せる訳にはいきません!」
「お任せあれ。プリンセス。サナトリア王国近衛兵団第一打撃艦隊の名に懸けて、葬ってやりますとも!」
「敵攻撃機残存数、15%」
「まずまずだな。」
「司令官。申し訳ありません。全滅を目標にしたのですが。」
「訓練通りには、いかないものだからな。」
「次こそ、確実に仕止めます」
「それより、こちらの被害は?」
「はっ、我が艦隊の被害は、あがってきておりません。」
「我々ではない!サナトリア王国艦隊だ。」
「申し訳ありません。現在、サナトリア王国艦隊の被害は、最前衛の護衛艦3隻が中破、4隻が小破した模様です」
「我々に付いていた、護衛艦か?」
「そのようです。」
「敵、第二次攻撃部隊接近。数、約2500機」
「よろしい。バニーニ国攻撃機部隊に、本当の防空砲火を教えてやろうじゃないか。一機たりとて
サナトリア王国艦隊に、近づけるんじゃない!!全艦前へ!」
「了解いたしました!これより、ローレン連邦艦隊防空戦隊、全力砲火を始めます!」
さよりの連れてきた二人とは、ローレン連邦艦隊ビュフェ総司令官と、サナトリア王国サファイア姫だった。
「サファイアちゃんに、近衛兵団の艦隊の指揮をとってもらって、長距離からのローレン連邦艦隊の援護射撃
ビュフェ総司令官さんに、防空巡洋艦艦隊の指揮をとってもらって、サナトリア王国艦隊の防空してもらえば丸く治まるでしょう?」
さよりが、ニコニコとして説明する
「確かに敵だった者からの命令には素直に聞けないが、この二人が指揮をするのならば、大丈夫だろう。
でも、ご両人、いいのですか?」
二人は、しばし顔を見つめ、幸一に向き直し
「確かにわだかまり無く、艦隊を動かすには、こうするしかありませんわね。ましてや、近衛兵団艦隊最強の打撃戦艦隊は、王族の命令しか聞きませから。」
「本官も、同意見です。防空艦隊は、私が育て上げた精鋭部隊です。私が指揮を取れば、兵士の士気も下がること無く艦隊運用が可能でしょう」
「ありがとございます!」
幸一は、二人の手をとり、力強く握手し、膝を折り、二人の手の甲に額を付けた。
「そ、そこまで感謝されることではありませんわ。私は、国民の為に最善と思ったからですわ。」
顔を朱に染め、幸一から離れて横を向くサファイア姫
「幸一殿。お顔を挙げて下さい。あなたは我々に勝って、ローレン連邦国軍の指揮権は、あなたが握っているのですよ。
我々はあなたの配下です。一声、行け、と言ってくださればいいのですよ。」
総司令官は、微笑みながら幸一に声をかけた。
こうして、サナトリア王国最強の近衛兵団艦隊所属 第一打撃戦艦艦隊が、ローレン連邦艦隊に、
ローレン連邦艦隊最強を誇る、防空巡洋艦戦隊が、サナトリア王国艦隊にトレードすることができ、
ここに、バニーニ国軍対応戦略艦隊が完成した。
「みゅう、どうしたの?顔色凄く悪いけど?」
俯いた美由紀に、心配そうにさよりが、声をかけると
「さよりは、平気なの?そんなに人が死ぬことに」
ちょこっと首をかしげたさよりが
「そうねぇ、平気かな?」
「どうして、平気でいられるの!!大勢死ぬんだよ!私たちが立てた作戦で!!」
大きな声を出して、さよりに問いただすが、さよりは
「だって、日本に居るときだって、他の国では、戦争、内乱、テロ、暴動が起こって、人が何人も死んでたわけでしょ?
今の気分は、それらをテレビで見ている感覚に近いなぁ。
そりゃあたしだって、拳銃やナイフで目の前の人を殺したら、恐怖や良心に苛まれるかもしれないけど
今はまだ、当事者じゃないからね。平気なんだよ。」
と言って、ニコッと笑った
美由紀が絶句していると、かめちゃんが
「お客さんが大勢お越しになられましたよ。」
「ぼちぼち、歓迎会を始めますか。」
幸一が艦長席に座り、つぶやいた
「こちら、アタック1 アケミ。出ます!」
「こちら、アタック2 タクヤ、続けて出ます!」
明美と拓哉は、敵機迎撃の為発艦して行った。
「二人とも、無茶をするなよ!」
「大丈夫!ちょっとダンスして来るだけだから」
なんか楽しそうに、出て行ったアケミ。
「ちゃんとエスコートして戻ってきます」
と、アキラメ感の拓哉の言葉
2機が並んで飛んでいく姿に、艦橋の全員が、
「「「「「「なんだ!あの巨大な機体は!!!!」」」」」」




