サナトリア事変6
身動きできない状況で、システム部のスタッフが艦の指揮権を取り戻そうと、懸命な復旧作業を行っているが芳しくない中、突然通信システムが起動して、スクリーンに一人の少女が写し出された。
少女は、何か慌てた様子を見せ、キョロキョロしてから
「えっと、もしもし、ローレン連邦国のみなさん、無駄な抵抗はやめてください!」
と、第一声を出したが
「違う、ちがう。相手は抵抗してないから、というか出来ないから。」
という別の少女らしい声が訂正して
「えっ!あっ!ごめんなさい!間違えました!降参していただけますでしょうか?」
と言って、頭を下げた。
「謝らなくていいから。顔をあげて、あげて!それにまだ、名乗りを上げてないでしょ。名前を言って」
と、今度は男性の声がした。
顔をあげた少女はキョロキョロすると、真っ赤に顔を染めると
「もう無理です!誰か代わって!」
と言ってスクリーンから姿を消した。
すると、別の少女が写し出され
「すいませんねぇ。慣れてなくて。」
頭をかきながら、ニコニコして話しかけてきた。
ローレン連邦国艦隊 ビュフェ司令官は唖然とする部下に、同情しながらも、自分の職務上
「だらしない顔をするな。」
と艦橋スタッフに一喝。
その言葉で自分にも気合いを入れ、スクリーンに写し出されたニコニコしている少女に対峙した。
「私は、ローレン連邦国連合艦隊司令ビュフェと申す。先ほどの少女の言葉から、そちらは我々に降服を要求しているのか?」
ビュフェ司令官は、自分の言葉1つで預かっている。
相手は、どんな手を使ったかわからないが、これだけの艦隊に電子戦だけで勝敗をつけた、とんでもない技量の持ち主がいるのだろう。
この艦隊にいる数万人の兵士の命が、この宇宙空間で一瞬に散るかもしれないプレッシャーを感じながら、一言、一言に注意を払いながら訪ねた。
そもそも、サナトリア軍はいつの間にこれだけの大型艦を造船させたのだ。
「うん!そうだよ。 わたし、柿本さよりって言います。」
スクリーンに写し出されたニコニコ顔の少女、さよりは大きくうなずいた。
「降服してくれる?」
ビュフェ司令官は、艦橋スタッフを見渡し、スクリーンを見て
「いいだろ。ただ、条件付きでお願いできるか?」
「条件?」不思議そうな顔をして、さよりは
「別にいいよ。」と応えた
「ありがたい。」
ビュフェ司令官は、少し安堵した。戦時下の捕虜の扱いには、多少の条約があるが、問答無用で連行されては、部下達の安全の保証が取れない
部下達の為に、いつ気まぐれで生命維持システムを止められるか、わからないこの状況を、最低限生命と人権の保証の要求を伝えようとして、口を開くより先に衝撃な言葉が聞こえた。それは、
「ただね、私、サナトリア国の人間じゃないんだよねぇ。と言うか、この船自体サナトリア国とは、縁もゆかりもないけどねぇ。だからここの捕虜条約?知らないんだけどかまわない?」
「なんだと!貴様ら、何者だ!」
ビュフェ司令官は、思わず大声を上げた。
サナトリア国とならば捕虜交換協定があるので、まだ生きてさえいれば、祖国の地を踏めるが、他国の場合それも叶わない恐れが出てくる。
「なんだったけ?」さよりは、少し首をかしげて、何かを思い出したように
「そうそう、地球銀河連合国です。」
初めて聞く国の名前に、ビュフェ司令官は動揺した。タートルエクスプレスの艦橋でも、違う意味の動揺が走った
そのころ、タートルエキスプレスの艦橋では、恥ずかしさのあまり、最後まで言えなかった美由紀が、少し自己嫌悪に苛まされながら、心を落ち着けようとしていた
「大丈夫ですか?美由紀さん」
と言って、かめちゃんが冷たい水の入ったグラスを、美由紀に手渡した。
グラスを受け取って、一口水を飲んで
「ふ~、恥ずかしかった。いきなり映し出されても、なにをしゃべっていいか、わからないよ。もうめちゃくちゃになっちゃたし。」
「しかし、さよりさんは、堂々としているというか、いつも通りのしゃべり方で相手の司令官と話しますね」
かめちゃんは感心したように、さよりの後姿を見ていたが、突然のさよりの発言に
「地球銀河連合国ってなんですか!」と思わず言ってしまった
「星1つまとまらない地球が、いつ銀河統一したような名前になるんだ?ていうか、向こうの司令官も動揺してるし」
幸一が、さよりの発言で、今後どうやって辻褄を合わせていくか考えなければ、あかんなぁっと頭を抱えた。
サナトリア国は、どんな大国をバックにつけたのだろう?単艦ながら、全長はローレン連邦国の戦艦の3倍、こちらを向いている2連装の主砲4基の大きさを考えると、まともにやりやったらこちらの被害はどのぐらいの規模になったであろうか。
もし、あの大きさの船で艦隊を組まれて攻めてこられたら?銀河連合と名のる我々の想像を越えるであろう国、地球銀河連合国とは!いったいどのような国なのか。
スクリーン越しに、固まったビュフェ司令官を見て、さよりは、
「なんか私、変なこと言ったかな?」
振り向いて幸一に聞いた。
「まったく、最初の設定で地球連邦国って言ったでしょうが。地球銀河連合国って規模が大きくなっているでしょうが。」
「ゴメン、ゴメン、てへっ。」
さよりは照れ笑いをした。
「もう、笑って誤魔化すんじゃない。」
さよりは笑顔のまま、ビュフェ司令官に向き直り、
「で、条件は?」
ハッとして、ビュフェ司令官は、こちらを見ている少女の無邪気な笑顔を見て、冷や汗が止まらなかった。
なぜだ?あの天使のような笑顔を見ていると、見た目と違って、心の底から恐怖が込み上がってくるのは?
ビュフェ司令官は、スクリーンから目を反らして艦橋にいるスタッフに顔を見てみると、全員蒼白な顔色をしていた。
ビュフェ司令官は、意を決して
「部下達の生命と人権の尊重をしていただきたい!」
腹の底から絞り出すが如く、気合いを入れて言い切った。
それを聞いたさよりは、ニコニコ顔のままで
「いいよ。で、それ以外は?」
「それ以外?」
なにを聞かれている?人命と人権が守られて、捕虜にそれ以上の望みを言えと?捕虜にせずこのまま解放しろとか言えと言うのか?
次に言うべき言葉が見つからなくて、黙ってしまうと
「無いのなら、こちらからの要求言ってもいいかな?」
さよりは、ニコニコ顔のままビュフェ司令官に問いかけた。
「要求?生命に関する捕虜虐待や、人権を無視するような行為以外ならば。」
にまぁっと笑ったさよりがいた言葉は
「ねぇ、この戦い、やめない?それを誰に言ったら、この戦い終わると思う?」
「えっ!この空域の戦いを一時的に停戦と言う形に」
このまま停戦もしくは休戦に持って行く気なのか?ビュフェ司令官は、考え込んだが、
「違う、違う。」
さよりは、ぱたぱたと手を振り
「終戦?というか、ローレン国だったけ?とサナトリア国は、もう戦いません!って言う事を、誓ってほしいんだけど」
「なんですと!サナトリア王国との和平条約を結べと言うのか!」
「ダメかなぁ?」
上目づかいで、おねだりをするように聞いてくる、さよりに対して、ビュフェ司令官は、底知れぬ恐怖を感じた。
もし断れば、じゃ、用は無い と言って生命維持装置を停められたら、どうすればいい?それとも、自爆装置を起動されたらどうするべきか?
カメラの死角から、設備班からの状況が手書きのメッセージボードでビュフェ司令官に最悪な情報が伝えられた
救命ポット手動でも使用不可
最悪だ、今この船からは脱出も出来ない。なんとか、時間を稼がないと
「一将兵には、手に余る問題なので、本国の指示を仰がないと、返答が出来ないので、本国との通信を許していただけないでしょうか?」
「えぇ~通信だけ回復させるのがめんどくさい。全て止めるのは簡単なんだけどなぁ~」
さよりは、心底めんどくさいと、表情にも表れていて、ビュフェ司令官をビビらすに十分だった
「さより、ビュフェ司令官さんをこちらに呼んで、ここから相談してもらえばいいんじゃないか?」
幸一は、顔面蒼白になったビュフェ司令官に申し訳ないと思い、こちらから呼びかけてもらうように提案した
「そうするね。司令官さん、こちらの船に来てもらえます?こちらから迎えの船を出しますので。あと、なに怖がってるのか、わからないんですけど、命の保証はしますから。来て下さいね。待ってます」
と言って、通信を切った
「ビュフェ司令官!どうします!」
通信の切れた指令室では、作戦参謀達が集まって対応を考えようとしていた。
「とりあえず、私が行くしかないだろう。」
「いえ、司令官一人で行かせるにはいきません。何かの為に何人かを連れて行った方がいいと思います」
「しかし、相手がそれをどう思うかだが」
「確かにすべてを止める方が早くて簡単と言い切る、少女でしたからね。すぐにでも死ねって言いそうでしたし」
「簡単に、殺されたくは無い物です。でも、護衛は付けた方がいいでしょう。火器は持ち込まして貰えないでしょうが、格闘戦の得意な者をつけて行くのはどうでしょう?」
「そうだな、なにも1人で来いとは相手も言ってないからな。陸戦隊経験者がいたはずだ。すぐに2名ほど選出しろ」
慌ただしく、未知なる敵の船に行く為の準備が進められる
「誰が迎えに行く?」
幸一が艦橋に集まったメンバー全員を見て聞いた。
「幸ちゃん、行くのは決まってるよ、かめちゃんだけって」
と、さよりが自信満々に答えた
「私ですか?いいですけど、どうして私なんですか?」
「かめちゃんには、その姿のかめちゃんと、厳つい格好したもう一つの姿のかめちゃんで、行ってほしいなぁ」
「フルアーマードタイプで行くなら、この姿の私も行く必要性が無いんじゃないですか?」
「司令官さんの乗ってる船を外からハッチを開けるのは、今の姿のかめちゃんで無いとムリだから。だって、私の使い魔君2号を一部解除してあげないと、あの船何も動かないよ。それが出来るのは私か、かめちゃんだけなんで、かめちゃんに行ってほしいの。ほら、私は船の操縦できないしね」
ニコニコ顔のさよりに、押し切られて、かめちゃんが連絡艇で迎えに行く事に
ローレン連邦国所属戦艦グラーフ・マークの外部ハッチが開き、小柄な女性が入ってきた。
「地球連ぽ じゃなかった、地球銀河連合国 自立支援重巡洋艦タートルエクスプレスより、ビュフェ司令官殿をお招きに参りました、亀山星美と申します。」
と言って敬礼した
「私が、ビュフェです。」
ビュフェ司令官も、返礼をして
「あの船が、重巡洋艦なのですか!」
「そうですが、何か?」
冷たく光る眼付で、ビュフェ司令官を見つめる、カメヤマ
「いえ、ただ我々の船の大きさからすると、スケール感が違いまして、」
自分の娘ぐらいの女性がら睨まれて、タジタジとなるビュフェ司令官だが
「あと、私のほかに、この2名ほど連れて行ってもいいだろうか?」
と言って、後ろに控えていた大柄な兵士2人を示した。
「かまいませんけど?皆さんではなく、そこの2名だけでいいですか?」
かめちゃんは、そこに集まっている、20数名の顔ぶれを見て答えた
「連れて行ってもいいのか?」
「別にあと2,3人ならかまいませんけど?」
「それでは、お言葉に甘えて、ラッツ艦長、付いてきてくれるか?ホルマン副指令はこの船に残り、指揮を頼む」
ビュフェ司令官は、振り返り二人に指示をして、合計4名で敵艦に行く事を伝えた。
「では、4名様ですね。こちらに移乗してください」
かめちゃんは、後ろを振り返る事も無く、連絡艇へと戻って行った
ビュフェ司令官以下4名は、その後を付いていった。
連絡艇に乗り込むと、中には対人対車兵器をフル装備したアンドロイド2体が、4名を待っていいた。
銃こそ構えていないが、その威圧感で4名は、すくみ上がった。
アンドロイドの2体の間を、カメヤマと名乗った女性が歩いていく、仕方なく4名もその後を続いた。
50人はゆうに入れる、キャビンに通され、「ここでお寛ぎ下さい。」と言われ4名は、飲み物と軽食の位置を教えられたが、固まって座る事に。
「司令官、あのアンドロイドは、ヤバいです。ここで戦うのは圧倒的に不利ですね」
陸戦隊か上がりの士官の1人が小声で話した。
ドリンクコーナーから、何か飲み物を持ってきたカメヤマが、4名の前に置いた
「ま、ソフトドリンクでもいかがですか?毒は入っていませんよ。」
と言って、自分の分で持ってきたグラスに入った飲み物に口を付けた
「カメヤマさん、少し聞いてもよろしいか?」
ビュフェ司令官は、前に座るカメヤマに声をかけた
「なんでしょう?」
「あなたの姿は、我々からして女性に見えるのですが、女性でいいのですか?」
「そうですね。女性であっていますよ。どうしてそれを?」
「いや、通信のやり取りから、男性を見かけないもので、我々と違う異星人ですから見かけが、我々と違う場合がありますから」
ビュフェ司令官は、過去に有った異星人との遭遇での話をした。
「男性もおりますよ。見かけはあなた方と同じ感じです。姿を見せてないのはただ、艦橋で遊んゴホン、ゴホン 別の要件が有り、たまたま女性が対応させていただいただけです」
なぜか咳払いをして、視線を外すカメヤマ。ラッツ艦長が
「女性の貴方が、1人で我々4人と向き合って、怖くないですか?」
「どうして怖がる必要があるのですか?」
不思議そうな顔をして首をかしげてカメヤマが答えた
「我々が、あなたを襲い、人質にしてこの連絡艇を乗っ取るってことは考えもしないのですか?」
にこっと微笑んで、
「しませんね。だってそれは、無理ですよ」
後ろで控えていた、アンドロイドが銃を構えて近づいてきた
「あなた方4人がかりでも、私負けませんから」
と言って否定し、グラスの中身を飲み干した
その姿を見て、ここでの騒ぎは起こさない方が賢明と、4人は認識した
「どうぞこちらへ。」
カメヤマの先導により、4人は艦橋に導かれた。そこで目にしたのは、まだ若い乗組員たちだった。
「ようこそ、自立支援型重巡洋艦タートルエクスプレスへ。私が艦長を任されています。津田幸一と言います」
と言って幸一が、右手を差し出した。
「ローレン連邦国所属戦艦グラーフ・マーク、ビュフェ司令と言います。」
と言って、右手を出して握手した
「さっそくで、すいませんがあなた方の本国に、あなた方が我々に負けたと、降伏報告してもらえませんか?」
幸一は、ビュフェ司令官にそう切り出した。
「いいでしょう。では、本国への通信回線をお教えしますので」
「もうわかっているから、そこのマイクで話してもらえますかぁ」
ビュフェ司令官の言葉をさえぎって、さよりが手招きして席を勧めた。
「なんですと!本国への超空間通信は極秘回線です。そんな簡単にわかるはずがない!」
ラッツ艦長が、さよりに向かって大声を出した。
「ラッツ艦長、落ち着きたまえ。彼らは、我々の艦隊を簡単に乗っ取ったんだ。その辺の情報は流出しているのだろう。このマイクでいいのかな?」
と言って、勧められた席に座ろうとして、違和感に気づくビュフェ司令官
「あなた方の言葉は、我々の言葉と同じなのですか?」
そう、何気なくしゃべっていた、自分におかしいと気付いたビュフェ司令官だった。相手は異星人なのになぜ言葉の疎通が出来る?
「自動翻訳機がうまく作動しているようなので、違和感無かったでしょう?」
と、カメヤマというこちらに案内してきた女性が話した。
「自動翻訳ですと!」
「リアルタイムに翻訳してるから、違和感感じないよねぇ」
ニコニコ顔のさより。この技術力の差は、完敗だった。こんな国を相手に戦ってはいけないと、ビュフェ司令官は思い本国に、報告する決心をした
席に座ると、スクリーンが光だしどこかの会議室を映し出した。
「こちらは、ローレン連邦国軍合指令室である、この回線を使って通信してきた、貴官の所属を述べよ」
スクリーンに映し出された、兵士が訪ねてきた
「こちらは、サナトリア制圧連合艦隊司令 ビュフェである。統合本部司令官に緊急の連絡があり回線使用した」
「本人確認をいたします。秘匿コード及びバイタルデーターの送信をお願いします」
「秘匿コードはθγβζα。バイタルデーターは、」
「本人の確認が取れました。しばらくお待ちください」
スクリーンから兵士が消え切り替えの為の動画が流れた
「私は、バイタルデーターを流した覚えは、」
「大丈夫ですよ。ちゃんとあなたのデーターが通信されたから、向こうも確認できたんでしょ?深く考えないでね」
カメヤマがウィンクしてきた
ますます怖いこの国の技術力。
スクリーンに1人の将校が映し出された。
「おう、ビュフェ司令官。作戦は成功したのかね。しばらく前から君の艦隊からの通信が途絶えて、こちらでは心配しておったのだよ。敵艦隊は壊滅したのか?」
スクリーンを見て、少し目を離し今いる状況を見渡して、ビュフェ司令官は重い口を開いた
「イーグラン総合司令。誠に申し上げにくいですが、我が艦隊は現在降伏勧告を受けており、それを受けざるしかない状況です。」
「なんだと!なにが起きた!説明をしろ!」
慌てたように叫ぶイーグラン総合司令。その姿を見て、
「我連合艦隊は、サナトリア国艦隊と決戦を挑みましたが、その時、別の第三国と交戦状態となり、サナトリア国ではなく、別の第三国、地球銀河連合国と交戦状態に入り、電子戦にて敗北し、現在艦隊の自由を奪われ、私は、地球銀河連合国の船より、そちらに通信をしております。全艦隻は目立った損傷ありませんが、すでに基幹システムを乗っ取られ、我々では抵抗が不能となった為、降伏宣言をいたします。」
スクリーンの向こう側で、大騒ぎが起きていた。
イーグラン総合司令は、焦点を失った目をして、虚空を見た後
「わかっておるのか?貴殿の艦隊は我国最大の艦隊だってことを。その艦隊が全滅したということはどうゆうことか。」
信じられない顔をしていた
「申し訳ございません」
と言って、ビュフェ司令官が頭を下げた。そこに
「地球銀河連合国、自立支援型重巡洋艦タートルエクスプレス、艦長を任されています。津田幸一と言います」
幸一が割り込む形で、通信に入り込んだ。
「誠に申し訳ないのですが、貴国の艦隊を全て無力化させていただいた。」
「地球銀河連合国?と言いましたか、あなた方はサナトリア国と同盟国だったのですか?」
イーグラン総合司令が聞いてきた
「いえ、違います。たまたま通りがかった空域で、戦闘に巻き込まれただけでございます。ただ、言われも無く攻撃されたものですから。すこし本気になってしまい、貴国の艦隊を全て手中にしてしまいましたが。本来このような形で相まみえることは、本心ではありません。もっと友好的に会いたかったと思います。
ですが戦いにおいて、こちらが完勝したもので、こちらの条件をのんでいただければ、こちらにおられる司令官以下全員の命、及び艦隊を全てそちらにお返しいたします。悪い話ではないでしょう?」
幸一は少し微笑みを浮かべながら、スクリーンの向こう側に居るイーグラン総合司令に話しかけた。
「その話を断れば?」
イーグラン総合司令が幸一を見つめながら尋ねた
幸一はスクリーンから目をそらして、ため息をつくと
「その時は、お互い不幸な結果が待っていると思われます。」
と言って、イーグラン総合司令を見た
「今我々は、これだけの捕虜をもらっても困るだけなので、貴国の艦隊にある指示をして、帰国の途に着けます。そして、貴国に向けて貴国の艦隊が艦砲射撃をするようなシーンを、我々は見たくないので、不本意ながら、別の国を探すと致します」
スクリーンの向こう側で、蒼白な顔色でイーグラン総合司令が震えていた
「同志討ちさせる気か」
「我々が手を下す事も無いので」
しばらく無言でにらみ合う二人
「わかった。条件を聞こう」
イーグラン総合司令が折れた
「大したことではありません。サナトリア国との和平交渉の席について頂きたいだけです」
さらりと、幸一が用件を伝えた。
「なんだと、そんなことが一軍の司令官が決められる事ではない!」
「わかっておりますよ。だからあなたには、そちらの国の首脳陣と話を付けてください。こちらは、サナトリア国をその席に着かすように致しますから。明日のこの時間に、また連絡いたしますから、失望をさせないでくださいね。ではでは」
「ま、待て!」
幸一は通信を切った。
一部始終を見ていた、艦橋に居る全員は、いろいろな思いが渦巻いていた
「よかったね、みゅう。これで誰も死なずに戦争が終わるよ」
ニコニコ顔でさよりが、美由紀に話しかけると、拓哉が
「そううまくいくかなぁ、絶対にこじれると思うけ」
「そうよね、それより、幸一。どうやってサナトリア国に和平の席に着かせるんだ?」
明美が幸一に尋ねた
「まだ考えてないけど、なんとかなるんじゃないの?」
「あんたねぇ」
明美は疲れたように息を吐いた
「ねぇねぇ、ご飯にしない?私、お腹すいちゃったぁ」
さよりは、食事をすることを提案し
「ローレン国の皆さんもご一緒にどうですか?」
と幸一が誘った
「お言葉に甘えようとするか。」
ビュフェ司令官が、付き添いの3人に声をかけた
「司令官、毒でも盛られたら、」
「なに、その心配はいらないようだ。そんな事をするぐらいなら、もう我々はこの世にいないだろう」
「では、今の会見?を艦隊に伝えませんと」
「それなら大丈夫と思うよ。全艦に流しておいたから、」
さよりが何気なく言った
ビュフェ司令官は、驚きながらも、
「では、兵士をしばらく交代で、休憩を取らさしてもいいですかね。緊張しているだろうから、」
「じゃ、そこのマイクを使って。全艦に流れるようにセットしておくから」
と言ってさよりは、ごはん、ごはんと言って艦橋から出て行った
「すいませんね。変わったやつで」
と言って幸一がビュフェ司令官に話しかけてきた。
「苦労しているようですね。では、マイクをお借りしますよ。
こちらは、ビュフェ司令官である。全艦隊に次ぐ、現在我々は、地球銀河連合国との不幸な遭遇戦により、砲火をかわさずに負け、艦隊の指揮権を奪われている。しかし心配しなくても良い。地球銀河連合国は、今すぐには我々には危害を加えることが無いことを確約してもらった。現在本国との交渉で停戦状態となっておる。各艦は第3級戦闘態勢に移行し、交代で休息をとるように。以上!」
「それでは私たちも、食事に行きますか?ローレン連邦国の皆さんのお口に合えばいいのですが」
そう言って、美由紀がローレン連邦国の4人を食堂へと誘った
次は、サナトリアの説得へ