サナトリア事変5
「地球連邦国の船が我が艦隊の前に出ます。」
「まだ、操船のコントロールが戻らんのか!」
「申し訳ありません。ただいま原因を究明中です」
サナトリア艦隊は、戦域を離脱するコースを取り出した。
「おい!このままでは敵から離れて行くぞ!何とかしろ!」
「地球連邦国から、ワーク将軍とノーマニ少尉宛に、通信が入っておりますが、いかがいたしましょう。」
ワーク将軍は少し考えてから
「繋げ」
「了解しました。 地球連邦国の、さより様。お繋ぎいたします。」
ワーク将軍の艦橋スクリーンに、さよりの顔が写し出された。
「お前か。」
ワーク将軍は、少し疲れた声を出した。
「うんと、ワーク将軍さんとノーマニ少尉さんのどちらが偉いさんなのかわかんなかったから、両方呼んだんだけど、ワーク将軍さんが出たってことは、これからの連絡は、ワーク将軍さんでいいかいいかなぁ?」
「あぁ、暫定的に同艦隊になっておるから、軍では私の方が上位階級だから、現時点では私でかまわん。」
「ノーマニ少尉さんにも、伝えてくれる?」
「回線も共有しておこう。で、なんだ。お前達の船が我々を追い越して、どこへ行く?」
「本当にぃ~?敵対していたじゃない」
上目遣いでワーク将軍を、さよりは疑いの眼付で見ていた。
「ノーマニ少尉!回線は繋がっているだろ!お前も、何か喋れ!こいつと話すと無性に疲れるんだ。」
ワーク将軍は、唸るようにノーマニ少尉を呼び出した。ほどなくスクリーンに現れて
「わかりました。して、さより殿、貴殿の船が我々の前に出て、このままでは敵の矢面に立ってしまいます、早く撤退を」
「いいの、いいの、今から、私達あっちの艦隊を黙らしに行ってくるから、気にしないで」
ニコニコ顔のさより
「どうゆうことだ!それと現在、我々の艦隊が何者かに自由を、奪われていることに関しての何か知っているのか!」
ワーク将軍が、訪ねてきた
「そうそう!忘れるところだった。痛い!!」
スクリーンに映るさよりの頭を、誰かが拳骨で叩いた。さよりは、横を向いて誰かに苦情を言って、少し涙目で正面に向き直した。
「えっと、今勝手に艦隊が動いているでしょう。」
「原因を、知っているのか!」
「うん!わたしがやっているから。」
さよりは、スクリーン越しに親指を立てて、飛びっきりのウィンクをしてきた。
しばし呆然とするサナトリア艦隊。いち早く我に戻ったワーク将軍が
「どうやって!!」
「そんなことは、どうでもいいので、」
と、ぱたぱたと、手を振り
「じゃまだから、今、そっちの艦隊をこの戦域から離脱させているから。あと2分でコントロールをそっちに返すから、ここから逃げてね!」
「お前達はどうするんだ!」
「だから、あっちの艦隊を止めてくるからね。その間に王妃様を連れて逃げてね。あと、忘れないように王女さんも、助けに行ってあげてねぇ。」
さよりは手を振りながら、笑顔でそう言って通信を一方的に切って、スクリーンはブラックアウトした。
「ちょっと待て!おい!! コラァ! オペレーター!回線をつなげ!」
「申し訳ございません!あちらからの強制通信だったので、こちらからは」
申し訳なさそうにオペレーターが下をむいた
「あの野郎!」ワーク将軍は指令卓を蹴り上げ、イラつきを爆発させた。オペレーターが
「将軍、お言葉ですが、先ほどの方は女性で」
「わかっておるわ!あいつは、こちらの艦隊のコントロールを奪っているんだぞ!!」
その時、操舵手から
「将軍!艦のコントロールが、復旧しました!」
「よし!かなり離れたが、早急に態勢を立て直して、敵艦隊を追撃する!」
その時、ノーマニ少尉が
「ワーク将軍!それはならん!!」
「ノーマニ少尉!なぜだ!」
「地球連邦国の彼等が、切り開いてくれた活路を無にする気ですか?彼等が引き付けている間に、サファイア姫の所へ向かわなければ!」
「くっ!わかった。地球連邦国の者。必ず帰ってくるから、それまで死ぬんじゃないぞ!」
軍ではワーク将軍の方が上なのだが、王族が絡む問題となると、王族近衛兵のノーマニ少尉の方が上位階級となり、ワーク将軍も反論がしにくいのであった
サナトリア艦隊は、戦線を離脱し王女が捕らえられている、バーニニ星系に向かった
タートルエクスプレスの艦橋では、さよりが仕込んだウイルスによるハッキングで、サナトリア国の艦隊の全艦の制御権を掌握して意のままに動かせるようにしていた。
「さより、たぶん勝手に動き出している艦隊に、慌てているだろうから、今の状況を伝えて、これからのこちらの行動を向こうさんに伝えておいて」
幸一に言われて、サナトリア国の艦隊に通信を繋いで、ワーク将軍かノーマニ少尉を呼び出してもらうように頼んだ。
「お前か。」
スクリーンに映ったワーク将軍は、嫌そうな顔をして少し疲れた声を出した。
「うんと、ワーク将軍さんとノーマニ少尉さんのどちらが、偉いさんなのか、わかんなかったから、両方呼んだんだけど、ワーク将軍さんが出たってことは、これからの連絡は、ワーク将軍さんでいいのかなぁ?」
「あぁ、暫定的に同艦隊になっておるから、私の方が艦隊では上位階級だから、現時点では私でかまわん。」
「ノーマニ少尉さんにも、伝えてくれる?」
「回線も共有しておこう。で、なんだ。お前達の船が我々を追い越して、どこへ行く?」
「本当にぃ~?敵対していたじゃない」
じぃっと、さよりはワーク将軍を見つめた
「ノーマニ少尉!回線は繋がっているだろ!お前も、何か喋れ!こいつと話すと無性に疲れるんだ。」
すぐに、ノーマニ少尉がスクリーンに出てきた
「わかりました。して、さより殿、貴殿の船が我々の前に出て、このままでは敵の矢面に立ってしまいます、早く撤退を」
「いいの、いいの、今から、私達、あっちの艦隊を黙らしに行ってくるから」
ニコニコ顔のさより
「どうゆうことだ!それと現在、我々の艦隊が何者かに自由を、奪われていることに関しての何か知っているのか!」
「そうそう!忘れるところだった。痛い!!」
幸一が、さよりの頭を拳骨で叩いた。小声で、忘れるな!と、幸一が言って、さよりが横の幸一に向かって、叩かないでよ!と小声で抗議して、正面に向かいなおして、説明をし始めた
「えっと、今勝手に艦隊が動いているでしょう。」
「原因を、知っているのか!」
「うん!わたしがやっているから。」
さよりは、スクリーン越しに親指を立てて、飛びっきりのウィンクをした。
しばらく、サナトリア艦隊から音声信号が帰ってこなかった。ワーク将軍が慌てたように
「どうやって!!」
と聞いてきたが、さよりはめんどくさいので
「そんなことは、どうでもいいので、」
と、ぱたぱたと、手を振り
「今、そっちの艦隊を戦域から離脱させているから。あと2分でコントロールをそっちに返すから、ここから逃げてね!」
「お前達はどうするんだ!」
「だから、あっちの艦隊を止めてくるからね。その間に王妃様を連れて逃げてね。あと、忘れないように王女さんも、助けに行ってあげてねぇ。」
さよりは手を振りながら、笑顔でそう言って通信を切って、スクリーンをブラックアウトにした。
少し時間を戻して
サナトリア国の艦隊が急速反転した後、ローレン連邦国軍の2次攻撃の編隊は、後方から前に飛び出してきた大型艦に進路を向けた。
大型艦を一度やり過ごし、後方から攻撃の機会をうかがっていた、ローレン連邦国の10機の攻撃機は、大型艦より発艦した2機の機体を見て
「敵大型艦より、敵機2機発進、こちらに近づいてきます。敵の迎撃機と思われますが、データにはありません。」
「まさか新型の迎撃機か!そんな機体を搭載している情報は無かったぞ!」
緊急発進をした明美と拓也は、迫りくる敵機の前に躍り出た。
「さあ、かかってらっしゃい!」
獰猛な目つきで、明美が敵機の編隊に飛び込んでいった
「あんまり無茶すんなよ。」
と、拓哉が続く
「こちらには、敵迎撃機と戦闘できる機体が無い。全機ミサイルを投棄し、散開!逃げろ!」
隊長機が攻撃を中断し、各機に回避退却命令を出したが、明美と拓也の操る瞬光が若干速く追いつき発砲。
瞬く間に4機が機体を撃ち抜かれ、火を噴く攻撃機。
逃げ出す攻撃機を追わずに反転し、明美と拓也が、前方から来る30機の編隊に迎撃態勢をとる
「拓哉!あいつ等をかめちゃんに、近づけさせるんじゃないよ!」
「もちろん!」
2機は最高速で、敵機30機の編隊に飛び込んでいった。
最初の接触で3機を撃破し編隊を突き抜けた二人は、反転し再度、攻撃機に向かった。
攻撃機の編隊は、2機が近づいてくるのを見て、てんでバラバラにミサイルを発射して、遁走をはじめた。
「あれ?逃げるの?」
明美は、不思議そうに逃げ出して行く攻撃機を見ていた。
「明美、どうもあの編隊には、護衛機という機体がないし、攻撃機自体にもミサイル以外の攻撃手段を持っていないような?」
明美と拓也二人の乗る瞬光より、速度の遅い相手の攻撃機は、重いミサイルを捨てて機体を軽くしても、すぐに2機に追いつかれ、次々に火を吹いていく
拓哉が、無抵抗で逃げて行く攻撃機を見て
「ターキーショットってこの事を言うのかな?」
「みゅうじゃないけど、私も進んで殺略者になりたくないから、一回帰艦しましょうか?」
二人は、逃げ帰って行く敵攻撃機を見送って帰艦のコースをとった。
ローレン連邦国軍の艦隊で、この時点で少しトラブルが発生していた
最初のうちは、通信が途切れやすいというものだったが、徐々に操作パネルの反応が鈍くなりだし、出撃していた攻撃機が敵迎撃機に追われて、急遽帰艦してきた時には、かなり大ごとになっていた。
第1攻撃機母艦格納庫内
「こちら、第2整備部、システム制御部聞こえるか。」
「こちら、システム制御部、どうした?」
イラついた声で整備班長が
「攻撃機ハッサムードの整備シーケンスが立ちあがらない。原因は何だ?」
「そちらもか?」
困り果て疲れの混じった声が帰ってきた
「そちらもって、どういうことだ?」
「直衛機がまだ上げれらて、いないんだ」
「おいおい、しっかりしてくれよ。2機とはいえ、敵機が来るらしいじゃないか。攻撃されたらどうするんだ!」
「どうも、発艦用のカタパルトが途中で動かなくなって、復旧作業している途中なんだ。」
「それじゃ、敵機に関しては、対空砲火部隊に期待するしかねぇな。2機だから何とかなるだろう。しかしハッサムードの整備シーケンスが立ちあがらねば、帰艦したハッサムードの整備が出来ない。なんとかしてくれ!」
この空母から飛び出した攻撃機ハッサムード40機のうち、7機が未帰還機で33機が、緊急帰艦し発着甲板から整備格納庫へ集まりだしてきている。
攻撃対象のサナトリア王国の艦隊に1次攻撃部隊は、無傷で相手に有効な被害を与えたものの、2次攻撃部隊は迎撃機と濃密な防空兵器に阻まれ、致命傷となる被害をまだ、敵艦隊に与えられていない。
3次攻撃は、護衛機をつけて再度発進する予定なのだが、その為の整備と発進のシーケンスシステムが起動しなくなっているのであった。
「現在調査中だ。大量に機体運営をしたのが、今回が初めてだから、何かがトラぶっているようだ。すまないが外装整備からはじめておいてくれ。わかり次第連絡する。」
「了解。なるべく早く頼むぞ。敵は近くに居るんだからな!」
そういって、整備兵は今出来る整備に取り掛かるよう、部下に指示を出して行った。
第3砲撃艦では
「いったい何が起きているんだ?」
ローレン連邦国軍のある砲艦の艦長は、砲撃部に問い合わせた
「わかりません。原因究明中です」
「原因究明は後でもいいから、今、手動でもいいから動くようにしろ!今、敵に攻めてこられたらどうするんだ!」
この船は、主砲へのエネルギー供給が急に出来なくなり、主砲及び副砲が使用不能になっているのであった
「まさかと思うが、電子攻撃を受けているんじゃないだろうな」
「敵は、偵察ビットから情報の入る我々と違い、まだ我々がどこに潜んでいるか、探知できていないはずであります。その状態で、ピンポイントにハッキングをかけてくるなど、出来ません。ましてや、敵はこちらの攻撃機の猛攻に耐えかねて、進路が変わったと言うではないですか」
「確かにそうなのだが、その代わり大型艦が1隻近づいているという情報もある」
艦長は考え込んだ
「それも含めて、ただいま原因を究明中です」
副官が答え、部下にシステムの精査するように再度指示を出していた
実は、これらの現象は、かめちゃんこと、タートルエクスプレスの仕業であった。タートルエクスプレスのレーダーの到達範囲は、サナトリア王国やローレン連邦国が持つ艦の約4倍の能力を持ち、通信システムも7倍の出力を持っていて、かめちゃん自身のAIの能力は、両陣営合わせても遥かに上だって言う事がわかり、偵察ビットの一つを踏み台にして、そのパワー任せにローレン連邦国艦隊乗っ取り作戦を、現在かめちゃんを筆頭に、さよりと美由紀の3人にて実施中だった。
「これでいいかなぁ。みゅうの言う通り、あちらさんの兵器、これで9割がた使えなくなったと思うよ」
さよりは、キーボードから手を離し、大きく伸びをしながら、美由紀を見た。
「ほんと、めんどうなことです。無力化なんて、主砲を撃てば3分で終わる作業なのに」
かめちゃんが、やれやれまいったねといった表情をして、さりげなく物騒な事を言っている。
「ありがとう、二人とも。これで誰も死ななくていいよね」
美由紀は、手伝ってくれた二人にお礼を述べた
「別にいいって、その代わり降伏勧告は、みゅうがしてね!」
ニコッて笑ったさよりは、マイクを美由紀に手渡した。
「えぇ~わたしが!ここは、艦長役の幸一君でしょう」
「なんで俺が?計画立案したのは、美由紀だよね。はい!がんばって」
「え~ぇ私!!」
「計画立案は、美由紀だろう?最後までガンバってね!」
と、幸一は生温かいまざなしで見つめた。
「でも、でも、実行したのは、さよりと、かめちゃんだから。」
「私は、言われたとおりにしただけだしぃ。」
「私は、お手伝いしただけですから、呼びかけは美由紀さんが適任かと思われますが?」
「ちゃんと、投降を呼びかけてね。」
通信システムの前で、おろおろする美由紀を、艦橋にいるメンバーが見つめていた。
「そんじゃ、あちらさんに近づくね」
正は、前進させて徐々にローレン連邦国軍の艦隊に、船を近づけていった。
ローレン連邦国軍旗艦 戦艦ジェーンの司令部。レーダーの反応に
「前方より、大型艦が接近してきます。」
艦長が
「全艦、砲撃用意!」
と、指令を下した。だが、各艦からの返信は、
「司令官!各艦より、入電。原因不明のトラブルにより、主砲、副砲共にエネルギー注入が出来ず迎撃不能。」
「各艦、動力炉出力低下のため、航行不能!」
「空母より、発艦システムに異常発生、艦載機発艦不能!」
と、次々にあがる、戦闘不能のアラート
「どういうことだ!本艦はどうなっている!」
「本艦も、現在各砲塔にエネルギーを供給できず、主砲及び副砲は使用出来ません!」
「ミサイルは?」
「ミサイル発射システムに、何らかの異常が発生しており、使用不能です。」
「全艦そうなのか?」
「おそらく攻撃手段がすべて使用不能になっていると思われます。」
「電子攻撃され、艦の操船、さらに艦隊の指揮権を、既に奪われてしまったのではないか?」
「まさか?本艦隊は、随伴艦も含めると、130隻にもなる、大艦隊ですよ。それをすべて支配することが出来る訳ないでしょう!」
「だが、この状況をどう説明する?」
「システム部!ウィルスの侵入を感知出来なかったのか!」
「はい!ログはもとより、起動中のプログラムに至るまで異常はありませんでした。現在、再確認中!」
「間に合わん!」
「機関部より、メインエンジン停止、再起動せず。現在、動力炉はアイドルまで低下」
「生命維持システムは大丈夫か!」
「現在のところ、異常はありません。」
「司令官、これは間違いなく、我々の負けですね。」
「確かに、砲火を交わさず、完敗させられた。」
艦長と艦隊司令官は、寂しく笑いあった。
美由紀の立てた作戦は、さよりがサナトリア艦隊の指揮権を乗っ取ったのを、真似てローレン連邦国軍の指揮権を乗っ取れない?
火器とエンジンを、止めてしまえば、戦わなくとも勝てることにならない?
と、相談したところ、
かめちゃんは、
「技術的には可能ですが、頻繁に通信のやり取りをして、内情がわかっているサナトリア軍とは違い、ローレン連邦国軍は、入るきっかけがないですし、何の情報も無く作戦行動中にある艦隊をハッキングするには、短時間では無理ですよ。最低20時」
と、説明しようとしていると、さよりが横から割り込んで
「かめちゃんの言うとおり、五、六分では、無理だよ。最低30分は欲しいなー。」
と言った。かめちゃんが、ぎょっとした顔をして
「さよりさん、今簡単に出来るようなこと言いました?」
「言ったけど?かめちゃんも言ったけど?違うの?」
「違います!そんな短時間では、出来ません!最低20時間はいります!どうやって、侵入するのですか?作戦行動中にある艦隊は、通信封鎖はもとより、すべてのセキュリティをあげていますよ。」
「だから、あれを使うの」
「あれ?」
さよりが指差したのは、ローレン連邦国軍の偵察ビットだった
「あの子が発信している、探査データに使い魔を載せて送り込んで、艦隊中枢部に侵入させたらいいんじゃないかな?」
何でも無いように言う、さより。
「確かに、こちらの動きを監視しているデータは、リアルタイムで各艦に流れていますよ。中枢のAIで処理されているでしょうけど、そうは言っても、通信は暗号化されているでしょうし、通信のプロコトルから解析しないといけないし。だいたい、プログラム言語を解析してから、それに対応するウィルスを作らないといけないし」
と、問題点をかめちゃんが挙げて行くと
「あぁ、それね。それは、もう終わっているんだけど?」
と、当然のようにさよりが答えた。
「早!いつの間にですか!」
「さっきぃ?」
「ちょっと見せてください!」
「いいよぉ。」
さよりのデータを調べてかめちゃんは、美由紀に振り返り
「美由紀さん、出来ます。」
確信を持った目で答えた。
「ほんと!!」
さよりが
「今すぐ始めちゃいますか?」
「ヤっちゃって!」
嬉しそうに美由紀がお願いをした。
「じゃ、私の作った使い魔君3号を使うね。かめちゃん、このファイルを、この周波数でおねがいね。」
かめちゃんは、さよりの端末から受け取ったファイルの中身を解析して
「ここまでします?あと一行書き換えたら、敵兵は、艦内で戦わずして壊滅しますよ。」
「それは使い魔君2号だから。ちなみに1号はねぇ。」
ニコニコ顔で、ウイルスの攻撃性を語ろうとするさよりを、
「いいです。怖いから聞きたくありません!!」
と、かめちゃんが、無理やり止めた。その様子を見て美由紀が
「どうしたの?何か問題が?」
「美由紀さん、大丈夫です。作戦に問題はありません。ただお聞きしますが、さよりさんってどういう人なんですか?」
かめちゃんが、怖々美由紀に聞いた。
「つかみ所の無い人で、時々怖い人」
と言って美由紀は首をすくめた。
「はぁ~、私が、なんで乗組員から怖がられたのが、今になってわかった気がします。確かに怖がられますよね。自分の理解できる範囲外の事をされると、AIの私でさえ恐怖を感じます。」
そう言って、かめちゃんと美由紀が顔を見つめ、どちらからともなくため息をついた。
「どうしたの?二人とも。疲れた顔をして?」
さよりが声をかけてきた。
「なんでもありません。あなたのせいなんですけど、とにかくファイルを送信します。」
こうして、敵艦隊無力化作戦が開始された。