サナトリア事変4
偵察衛星を確認した幸一達は、さりげなくサナトリアの人達にわかるように
「あれ!あんなところに衛星が?」
というと、レーダーによる座標値を付けて強制送信した。
サナトリア革命軍、サナトリア王国軍両陣営は、地球連邦と名乗る船から送りつけられたデータを解析した結果
急遽艦隊編成が大きく変わった。
元々同じ軍隊だった、サナトリア革命軍とサナトリア王国軍は、すぐさま一時停戦
条約を取り決め、お互い連携を取り被害の少ない艦を、外側へ中破以上の艦は
まとまって後方へ離脱して行った。
「すごい!こんな短時間で艦隊の再編成を行うなんて!」
幸一がサナトリアの艦隊運営に、感動していた。
艦隊の編成を終えた、サナトリア軍から返信が来て
「地球連邦国の諸君。重大な情報を知らせてくれて、ありがとう。感謝する。」
ワーク将軍からと
「地球連邦国の幸一殿。偵察衛星の存在を知らせていただいありがとうございます。あのまま進んでおれば、ローレン連邦国の罠にかかっているところでした。」
ノーマカ少尉からの感謝の言葉をいただいた。
「いえいえ、たまたま私どものレーダーに引っかかっただけなので、」
と言った幸一だが、内心焦っていた。
サナトリアの艦隊は、退くってことは考えないらしく、作戦会議が始まり敵との遭遇戦をベースとした戦術を練っていた
「待ち伏せしているかもしれないというか、していますから。」
幸一が意見すると、
「なぁに、相手が待ち伏せしてようが、我等の艦隊が負けるようなことはありません。地球連邦国の方々は我等の戦いを観戦していただくだけで、結構です。」
「みなさんを無事、バーニニ星系に送り届けますから、安心して下さい」
「その通りじゃ、我国の精鋭大艦隊がローレン連邦の艦隊ごときに遅れをとるはずがなかろう。妾の勇敢なる兵士達よ!正義は我等に!!」
王妃が味方に鼓舞する通信を行うと
「「「「おぉ~。」」」」
各艦から勝鬨が挙がった。
「どうする?あれ」
拓也が、処置なしと言った顔をした。
「ゲームで言ったら、死亡フラグが連立だよなぁ。」
正も唸るしかない
「死亡フラグと言うより、全滅フラグですけど?どうやったら40隻程度の艦隊が、待ち伏せしている120隻超えの艦隊に勝てるって言うんですか?」
かめちゃんが、呆れて肩をすくめた。
「しかし、あの法螺話を真に受けて、真剣に俺たちの護衛を買って出てくれたから、ここで勝手に引き返すわけにもいかんなぁ」
「穏便に済ませれたらいいけど、無理だろうねぇ」
この時点でまだ、サナトリア側はローレン連邦が120隻もの艦隊を連れて来ていることは、信じなかった。
というのは、サナトリア側のレーダーにはまだ、ローレン連邦の艦隊がまだ映っておらず、かめちゃんことタートルエクスプレスからの長距離レーダーの情報を
信用していなかったのである。
しかも、サナトリア王国はローレン連邦国と過去に十回の艦隊戦を行っており、
全戦全勝、負け無しの状態で来ていて、大型艦を持ててないローレン連邦国は、いつも30から多くても50を超えない巡洋艦レベルの艦を中心に、艦隊運用しかしてこなかったので、知らされた情報の半分は、デゴイか岩礁の誤検知だろうと、
解釈して強襲して敵陣営を分断して、各個攻撃していく作戦を計画していた。
「信用してくれないのは、しかないとしても、このまま巻き込まれて、負けるってことになるのもなぁ。」
「どうします?」
「かめちゃん、いつ主砲の有効射程圏内に入るかな?」
「とっくに入っていますよ。この距離なら精密射撃で、初弾着弾大破も簡単に狙えますよ。」
かめちゃんが、あっさり応えた。
「この辺の艦隊に比べて、どんだけチートな性能なの?かめちゃんは。」
明美が呆れた
「まっ、私は同系艦の中でも高性能でしたからね。」
かめちゃんは、誇らしげに胸を張った。
「いや、そういう問題じゃないと思うけど」
「そもそも200m級の艦艇で、戦艦って言わないで欲しいです。」
かめちゃんは、違うところで怒りをためていた
「あんな哨戒艇みたいなのが、駆逐艦って言うのもおこがましい」
「確かに、かめちゃんクラスが重巡洋艦なんだから、銀河民主共和帝国の戦艦クラスって、どのぐらいの大きさになるの?」
「そうですね、元々、私の体は高速戦艦をベースなんですけど、火力重視の戦艦クラスで、800m超で、超弩級戦艦大和尊クラスだと、1.5kmを超えたと、思いますよ。」
銀河民主共和帝国の国力を、さまざまと見せつけられた感じのする話であった。
「サナトリア国が逆立ちしても敵わないな、それだと」
「国力の違いなんだろうけど、この戦いはどうなんだろうね」
「でも、このまま行くと、30分もせずに戦いが始まってしまうでしょう。どうします?」
美由紀は、心配そうにスクリーンを見つめた。
「そんなにかからないでしょう。あちらさんは、小型船?違うな、これは戦闘機を先行させて、迫って来ていますよ。敵機の数、約200機 接触まであと5分。」
かめちゃんからの観測による予測で、この戦いが戦艦同士の砲撃による艦隊戦から、艦載機を使った航空戦に変わったことがわかった。
「さより!サナトリアに緊急送信、防空戦を依頼して!!」
「わかった!」
さよりがサナトリア軍に連絡をしたのと、ほぼ同時に、サナトリア軍のレーダーにも無数の小型機の反応があった。
「サナトリア軍の皆さん!敵機が来ます!防御態勢をとってください!」
美由紀の呼び掛けに対し帰って来た返信は、
「地球連邦国の皆さん、慌てなくても大丈夫です。あのような、小型機がいくら来ようが、戦艦には、なにも出来ませんから。」
というものだった
「大丈夫なのですか?」
「はい。ちょっと今回は数が多く鬱陶しですけど、ローレン連邦国が最近始めた攻撃方法みたいなのですが、過去4回このような戦いを仕掛けてきて、小型機はレーダーの撹乱剤の塗布以外してなくて、意外にたいしたことはないのです。」
ノーマカ少尉は、にこやかに説明してくれた。
「そうなんですか?敵は、ミサイルとかの攻撃はしてこないのですか?」
「大丈夫です。あの小型機が搭載できるミサイルでは、船にキズを付けることさえ出来ません。せいぜいレーダー撹乱剤を撒く程度のことしか出来ません。ローレン連邦国は、いつもこのようにして、不意討ちを狙い攻撃して来るのです。」
と、少尉が説明してくれた。
「ですから、撹乱剤を抜ける頃から敵の攻撃が激しくなります。それに対応して、密集陣営でシールドを、強めて第一陣の攻撃をかわして、」
少尉がこれからの、戦術を説明しようとした時、
「報告します!敵機の攻撃により、前衛第一砲艦及び第3砲艦中破し、戦線離脱します!」
「なんだとう!!」
「なおも敵機の攻撃は継続中にて、当方対空砲火による迎撃を行っておりますが、敵機の数が多く、間に合っていません。」
サナトリア艦隊に雲蚊のごとく群がって来る敵の攻撃機
サナトリア軍は善戦しているが、対空砲火の絶対数の不足及び、練習不足による、迎撃精度の低さにより、被害が出始めていた。
その後方を航行している、かめちゃんことタートルエクスプレスでも、対応が追われていた。
「たっく。航空機の数が多くなっているんだったら、今までと、戦術が違うってなぜ気づかないかなぁ!」
幸一は、戦況を見て悪態をついた。
「そもそも、こちら側は、なんで迎撃機が一機もいないんだ?」
苛つく幸一を見て、さよりが、
「幸ちゃん、たぶん飛行機をサナトリアの人は持っていないと思うよ。」
「嘘だろ?」
信じられないと言った顔で、幸一はスクリーンを凝視した
「さよりの言葉が真実みたいだよ。1隻当たりの対空砲火もそんなに無いし、密集陣形と装甲の厚さのおかげでなんとか、防御出来ている状態だし」
美由紀が戦況を分析していた
「敵機の一部がこっちに来るよ」
サナトリア軍を翻弄している、ローレン連邦国の宙空攻撃隊が艦隊後方を航行している大型船に気づいて
「体長!敵艦隊の後方に、大型艦1隻航行中。この戦闘中にも関わらず定速航行しています。」
「補給船か?もしかして王族の御在所船か!」
「β中隊及びε中隊は、大型船へ向かい、攻撃せよ!」
密集陣営から後方に離れて航行していた、タートルエクスプレスにローレン連邦国
の攻撃機が目を付けて30機の編隊で接近してきた。
「どうします。あれ、撃墜します?」
かめちゃんが、ローレン連邦国の攻撃機の編隊を指差して、聞いた。
「人殺しはしたくない。」
美由紀が、つぶやいた。
「なに言っているのですか?戦闘中のど真ん中に居るのに、」
びっくりした声を、かめちゃんが上げた
「でも、このまま攻撃されるままの状態を続けていたら、かめちゃんにも、その内被害が出て来て、私達が死んじゃうよ?」
さよりは、美由紀を見て言った。美由紀は下を見て黙りこんだ。
「敵機、ミサイル発射。数20。着弾まで30秒」
かめちゃんが、感情の無い声で報告
「わかんないよ!何が正しいの?どうしたらいいの!」
美由紀が、顔をあげて叫んだ。
その時、鈍い音と揺れを感じた。
「敵対艦ミサイル全弾命中。被害軽微」
「かめちゃん、とりあえず防空戦開始。」
正から、かめちゃんへ伝達、かめちゃんは対空攻撃を開始。
瞬く間に攻撃コースに入っていた10機が火を吹き四散する。
その光景を見た20機は回避行動をとり、体勢の建て直しをしている。
サナトリア艦隊を攻撃しに来た、攻撃部隊が後方に居る大型艦に向けて、全力で接近を図っていた
「ここまで近づいているのに、警告どころか対空砲火も無い、このまま攻撃して下さいってか!お望みどうり、第一次攻撃開始!!」
ローレン連邦国軍の攻撃機10機が、演習通りの攻撃コースに入って、一機当たり2発搭載の大型の新型対艦ミサイルを発射
ミサイルは吸い込まれるように、大型船へ飛翔していき艦首あたりに全弾命中した。
艦首が爆炎に包まれるが、現れたのはダメージを感じさせない艦の表層
「なんて、頑丈な装甲していやがる。攻撃を続行せよ。」
体長から、継続攻撃の命令が下された
第二次攻撃隊が攻撃コースに入ってこれから、対艦ミサイルの標準をつけようとしたその時、先頭の機体が火を吹き、瞬く間に10機全機が四散した。
その光景を見て、隊長が
「散開せよ!あの、敵艦の防空砲火は精密で強力な上に、濃密だぞ!」
一瞬で、攻撃の内容が、ほかのサナトリア軍の艦隊運営とは違うと感じた隊長は、
「敵艦の後方にて態勢を、建て直し再度攻撃をする。」
「敵機10機撃墜、残り10機は回避して、10機は帰投するようです。」
感情の無いかめちゃんの声が、艦橋に響く。
「ねぇ、ここから逃げよう。かめちゃんの古里に早く行こうよ。」
美由紀は、立ち上がって訴えた。
「そしたら、人殺しをしなくてもいいし、そもそもここの人達とは関係なんて、私達とは関係ないんだから、ほっておいても」
パシッ!!
頬を押さえうずくまる、美由紀。
その横に
「ゴメン!勢いをつけすぎた。ゴメンね、痛かった。」
と、謝っているさより。
「何が起こったんですか?」
かめちゃんが、一瞬何が起きたかわからなかった速さだった。
「さよりが、美由紀の頬をビンタしただけ。」
幸一がなんでもないように言った。
「えっ!でも、美由紀さんの席とさよりさんの席って離れていましたよね。一瞬でそんなに早く移動できるんですか!」
自分が認識できないほどの、速さで移動したとしか思えないかめちゃんは、艦橋内
観測カメラのデーターを引きずり出して、今起きたとこを、見極めたいと思っていた。
「叩いて、ゴメンね。でも、それ以上の事を言ったら、わたし、本気でみゅうの事を嫌いになっちゃうから。ね、」
そこへ幸一が
「みゅう、確かに俺たちは、ここの人達とは縁もゆかりもないけど、ほって置くわけにはいかんだろう。だって、俺の作り話を真に受けて、必死に俺たちをバーニニ星系まで連れて行こうとしてくれているんだから、勝手に逃げる訳にはいかんだろう。」
すると美由紀が目に涙を浮かべて
「だって私はまだ、普通の女子高生です。こんな非日常過ぎるこの空間は、辛いんです!」
その言葉を聞いた、艦橋内に居る女性陣が
「もしもし?私が普通の女子高生じゃないような発言やめてくれる?」
明美が呆れ顔で美由紀を見ると、
「そうだよぉ。さよりも、普通の女子高生です!」
と言ったさよりを、
「こらこら、嘘をついちゃいけないよ。」
「いや、さよりは規格外」
「さよりが、普通な訳ないでしょう。」
と、周りから全否定
「え~ぇ!!明美には、言われたくないなぁ」
と言ってさよりはむくれた。
「とりあえず、あの人達を見捨てて行くわけにはいかんので、救出してサナトリア王国に帰る作戦を考えますか。」
スクリーンには、サナトリア軍の艦隊が、ローレン連邦国の航空機による攻撃を
一方的に受けて、少なからずの被害を出していた。
「みゅうは、無理に戦うんじゃなくて、いかに話し合いで和平できるか、考えてもらえる?」
明美が美由紀に声をかけた
「うん。わかった。考えてみる。」
美由紀は、涙を浮かべた目で明美を見つめた。
明美は、その顔を見てにっこりと笑い
「じゃ、みゅう。ちょっと遊んでくるから、お留守番おねがいね!」
「では、明美お嬢様。私がエスコートいたしましょう。」
と言って、明美と拓也が艦橋から、出ていった。
「あの~、どこへ?」
美由紀が二人の付いていけない会話に、後ろ姿に声をかけると、明美が
「かめちゃん!スクランブル用意して!」
と言って、二人が駆け出した。
「もしかして、あの二人、この乱戦状態の中、艦載機で出て行く気なの?」
美由紀が、入り乱れて飛び交う敵機との戦いを、スクリーンで見ながら、唖然として二人を見送った
その時、艦橋では幸一が
「タダシ!速度増速、サナトリア艦隊の前に出て援護する。政史は主砲スタンバイ。かめちゃん、対空砲火、よろしく!!」
「サナトリア軍に、回線接続。指揮権強制介入開始!!」
さよりは、かめちゃんの持てる電子戦能力で、サナトリア艦隊のメインシステムにハッキングして、指揮権を書き換えた
「敵機後方7時方向より、10機接近、及び、前方11時方向より、30機接近。」
タートルエクスプレスの側面がスライドして穴が開いて、格納庫の瞬光から艦橋に連絡が入った
「こちらアタック・1 明美、発進する。」
「同じく、アタック・2 拓也、発進する!」
2機の瞬光がリニアカタパルトを使って、宇宙空間に飛び出した。
無事に発艦した2機を見て
「明美、拓也!後方の敵機10機は任した!」
「了解!」「任された!」
2機の瞬光は、翼をひるがえし、後方より接近する10機の敵機に向かって飛んで行った。
「いやいや、あの人達初陣でしょ。なんであんなにリラックスしているんですか?」
かめちゃんが、訳わからないと言った顔でスクリーンを見つめていた
「くそ!ちょこまかと飛び回りやがって!左舷!弾幕が薄くなっているぞ!」
ワーク将軍は、戦況をにらみながら、各方面に指示を出していた。
敵機の半分以上が、装甲の厚い砲艦と戦艦に攻撃をかけた為、最初の一撃で、2隻の砲艦が中破を負ったが、それ以外は今の所、小破の船が3隻で留まっているが、いつまで持つか?
ワーク将軍は、撤退か、進撃か悩んでいた。その時になって
「将軍!レーダーに敵艦隊多数接近のとのことです。いかがいたしましょう」
通信兵が報告にやってきた。
「どこから、正確な数は?」という質問に対して
「乱戦なので、きっちりした数はわかりませんが、敵艦約60 多くは、ほぼ重巡洋艦クラスと思われます」
レーダーを見つめて、ワーク将軍は唸った
「このままでは敵の包囲網に、絡められて逃げ場が無くなってしまう。緊急かぃ・・・・」
その時、船が旋回し始めた
「何事だ!敵前で回頭するとは!自殺行為だぞ!僚艦に接触するぞ!」
ワーク将軍が叫んだ
「解りません!ただ、操船の自由が効かなくなっております。原因を究明中です。」
操船部長参謀が返答し、部下に指示を与えていた。
よく周りを見てみると、この船だけではなく、艦体全体が回避行動をとり始めていた。
「こちらは、ノーマカ少尉、ワーク将軍なにが起こっている!こちらの船が操縦不能に陥っているのだ!」
「そちらもか?王妃は無事か!」
「今のところは大丈夫だ。しかし、なにが起こったのだ?」
歴戦の二人が首をかしげる、異常事態なのである
「このままでは敵の包囲網から逃れなくなり餌食になってしまう。せめて王妃だけでも、無事に帰国させないと」
「確かにそうだ。全力を挙げて復旧させ、この宙域を離脱する」
「わかった!こちらでも調査して見る」
その時、通信兵から
「報告します!地球連邦国の大型船が、速度を上げて、我ら艦体の前に出ます!」
かなり、サナトリア国が不利な展開になっていますが、どうかめちゃんはするのでしょう