サヨリを探せ!8
前日に、アップしていますので、お気を付けください
「さぁ~。どうしたものかなぁ?」
サヨリは、ここ最近のお気に入りのカフェにて、ガトーショコラと紅茶のセットを頼んで、
テラス席に座っていた。
すると、
「同席しても?」
と、声をかけられ振り向いてみると、にこやかな笑顔のかめちゃんがいた。
「ぇ゙っ!!」
「何を驚いているのですか?」
かめちゃんは、サヨリの正面の席に座って、オーダーを聞きに来たウェイターに
「苺と白桃のパナンシェと、本日のおすすめの紅茶で。」
と伝えウェイターが下ると、サヨリに向き
「サヨリさん。この後一緒に来てもらえます。」
「それって、任意同行?」
上目遣いで可愛らしく小首をかしげて聞いてきたが、かめちゃんはにっこり笑いなが
「いいえ。強制連行ですよ。」
と言ってのけた。サヨリは頬を膨らませ
「ブーブー。」
と言ってみたが
「私にそんな抗議しても、意味がないのはわかってしていますよね。」
呆れた顔をしてかめちゃんが、サヨリにさとすが
「だって、あたし、なんにもまだしてないもん!」
サヨリが、ガトーショコラを一口食べて抗議するが、かめちゃんは取り合わず
運ばれてきた自分の頼んだケーキに、フォークで一口大に切り分け口に運んだ。
「サヨリさん。まだって、なにかする気だったんですか?」
呆れた顔で聞くと
「そうじゃないけどさぁ。今回、みゅうちゃんが動くのが早過ぎだよ。」
サヨリは紅茶を口に含みそう言った。
「まぁ。ミユキさんの仕事量を考えると、この案件はさっさと終わらしたいんでしょうねぇ。」
かめちゃんは、表通りに目を向けてしみじみ言った。それを見て
「ねぇ。みゅうちゃんの仕事そんなに多いの?」
サヨリが聞くと
「サヨリさんが押し付けた、移民事業に格好つけた人材引き抜き事業。アケミさんが残していった
サナトリア連邦共和国軍と帝国軍の、軍事連携業務資料の作成及び、提携における約款作成
マサトさんの新規エネルギー開発事業協力の契約及び、宇宙の壁開発における工作用重機販売契約
タダシさんの新物流進行システムのレポート作成及び検証報告書作成。
コウイチさんは、サファイアさんと皇帝陛下の会談日程調整を頼んでいきましたからね。
あと、それらに附随する雑務等、スタッフをフルに稼働させて処理していますよ。」
かめちゃんは、指を折りながらミユキが直面している主な頼まれ事を、サヨリに話すと
「うわぁ~。みんなみゅうちゃんに振り過ぎ」
サヨリは、引いた顔で言うがかめちゃんは、首を横に振りながら
「最大の厄介事と言うか、ミユキさんが1番頭が痛いのは、サヨリさん、貴女を確保する事なんですからね!」
かめちゃんがサヨリに手を伸ばすが、それを躱しサヨリは
「ここの支払い、よろしくお願いします。」
と言って、笑顔を残して消えた。
「サヨリさん。そのカラクリはもうバレているし、どの行き先を押しても今は行き先が1つに成っているのに。」
サヨリの居なくなった席を見つめてつぶやいた。
カフェから自分の家に転移する予定だったが、転移してきた場所は女神の部屋だった。サヨリは、
「アレ?押し間違いした?」
と言ってブローチを見るが
「間違ってないわよ。」
と声がかけられた。サヨリが声のした方を見ると、ミユキが椅子に座ってサヨリを見ていた。
「やっほ~みゅうちゃん。」
との笑顔で手を振るサヨリ。頭が痛そうにミユキは、手で額を押さえてから
「はいはい、わかったから、行くわよ。」
ミユキは立ち上がるとサヨリに近づいていった。
「どこに?」
「お城」
「なぜ?」
「はぁ~」
ミユキは大きくため息をついて、
「あのね、タケルさんとサヨリの婚約発表の為でしょう!あと1週間強しかないと言うのに!」
「えっ!聞いてないけど!」
「タケルさんが伝える前に、どこかへ出掛けたまま連絡しなかったのは、誰ですか?」
「えっと、電話を……」
「したよ、もちろんメールも、私が覚えている限りのアドレスにしました。メッセンジャーにもね。」
ジッとミユキはサヨリを見つめ、
「連絡してこなかったのは、誰ですか?」
あたふたと自分の携帯端末をチェックするサヨリ
バツの悪そうな顔をして
「あの〜、ゴメン」
そんなサヨリを見て、
「兎に角、時間が無いので行くわよ。」
「はい」
「それじゃ、女神様。ありがとうございました。また、遊びに来ますので。」
「うむ、待っておるぞ。」
ミユキは、サヨリを連れて玉座の間に通じる通路を歩き出した。
「ねぇねぇ~。発表当日まで、あたしが居なくても、大丈夫なんじゃないの?」
サヨリが行きたく無さそうに聞いてきたが
「あのね。当日じゃ式典用のドレスが間に合わないでしょう!それに、式典の打合せもあるし、経済界の重鎮達を
頷かせる役目はどうする気?っていうか、招待客への招待状を送らないといけないのに、誰に送るかは
サヨリしかわからないでしょう。そもそもサヨリ、発表の日を知らなかったじゃない。」
「確かに、そうだけどさぁ。」
不服そうに発するが
「ダメよ。手持ちの物で誤魔化すなんて。タケルさんの、ひいては皇族の面子を潰す気?」
「うぅ~」
2人は通路を抜けて玉座の間に出ると、待ち構えていた数名の侍女がサヨリを取囲み、
「えっ?」
サヨリが声を出す間もなく、サヨリを連れ去って行った。それを見送るとミユキは端末を出して、どこかにかけて
「今、侍女達に引き渡しました。あとは、よしなに。」
と言って通話を切った。
ミユキは、帝都に取ってあるホテルの、自分の部屋にまで帰ってくると、そのままベットへとダイブした。
「あ〜ぁ疲れたぁ〜」
そう言ってしばらく動かなかったが、もぞもぞと動き、ポケットから端末を出して立ち上げると
メールのチェック、タスクチェックを済ませ、必要箇所に数件の指示メールを送る作業をしていたら
ドアをノックする音が。
ミユキは、ノロノロと起き上がりドアの所へ行き、ドアを開けるとかめちゃんが両手にビニール袋を持って立っていた。
「おかえり。」
とミユキが声をかけると
「ただいま帰りました。はい、これが頼まれていた、お弁当とお茶です。」
かめちゃんが、ビニール袋を差し出した。
「ありがとう。ご飯にしますか。」
と言って、袋を受け取り室内のテーブルに持って行くと、中身を取り出した。
「いただきます。」
と小さくつぶやいて遅めの夕飯をとるミユキ。
「ミユキさん、明日からどうします?一応サヨリさん確保に用意していた日数が、2日余ちゃいましたね。」
かめちゃんも、自分の弁当を食べながらミユキに話をふると、
「私はその2日、有給休暇を申請してるわよ。」
「えっ?いつの間に?」
「だって、サヨリの確保なんか最短3日で終わるって思っていたからね。これ幸いって休みを取っちゃた。」
「いやいや、最初の話だと1週間でかかるって言っていませんでした?」
「最大ね。まぁ女神様の説得にちょっと時間がかかってしまったから、伸びちゃったけどね。」
と言って笑うミユキを見てかめちゃんは、
「やっぱり、メンバーでの最強はミユキさんですね。」
とつぶやいた。それを聞き
「なんで私が最強なのよ。口ではコウイチに負けるし、力ではアケミに勝てない。作戦指揮じゃタクヤに敵わないし、
人脈ではサヨリのほうがねぇ。物作りじゃマサトの方が器用だし、論理的思考はタダシには勝てる気がしないね。」
と言って笑う。
「なにを言ってるのですか!理詰めではコウイチさんに勝てるし、計画性でアケミさんがミユキさんに勝てるとも?
アケミさんを叱咤出来るだけでタクヤさんは、ミユキさんに頭が上がりません。お金の管理をしてない
サヨリさんが困らないのは、ミユキさんが管理しているからでしょう?
それに、巷では巨匠と呼ばれているマサトさんが造った物を、平気でダメ出し出来るのはミユキさんだけですよ。
それに、引き篭もるタダシさんの自己主張を真っ向から否定して、部屋から連れ出して仕事させれる事が出来るのはミユキさんだけですよ。」
かめちゃんは、ミユキにそう言ってみるが、ミユキ本人は
「そう?大した事はしてないわよ。だってコウイチは、口だけだからいつも破綻してたから注意しないと、アケミも勢いだけで始めちゃうからね。
タクヤはアケミに甘すぎるし、サヨリはだらしない。マサトは自己満足すると手を抜くし
タダシは、引きこもりしちゃうから、ちょっと強引でも連れ出してやらないと動かないのよ。」
何でも無いように話すミユキだが、それを聞いてかめちゃんは、
「ミユキさんは、みんなのお母さんですか!」
そう叫んでかめちゃんは気付いた。このミユキだからこそあれ程の個性の塊のメンバーがまとまっているんだと。
「かめちゃん、明日どうする?私は、テーマパークに行って、温泉旅館でのんびり美味しい物を食べに行くけど、一緒に来る?」
「はい!」