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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第3章
142/144

サヨリを探せ!6

その頃、サヨリは城の皇族が使う地下通路にいた。

「マズイ。理由も聞かないで逃げてきちゃった。どうしよう。みゅうちゃん(ミユキ)怒っているかなぁ?」

サヨリは、ミユキが何故捕まえようとしてきたのか、考えて思い当たる節が……………

有り過ぎて悩んでいた。

「うぅ~、やっぱり追っかけてくる理由を聞いてから逃げたほうが良かったかなぁ?。

そうしたら、ちょっと言い訳するだけで済んだかもしれないしなぁ。理由を聞かずにトンズラしたからなぁ

これって、確実にお説教コースだよねぇ。どうしよう。」

サヨリは、手持ちの2in1PCを起動して、事後策を考えだした。

「とりあえず、部屋へ帰ろうかなぁ。うん?誰かいる。」

サヨリは、飛ぶ前に確認する為に、公団住宅の自分の部屋に有るカメラを確認すると

カメラに映る人影に、

「うわぁ~、かめちゃんが張り込んでる。って事は、自首した方が怒られないで済むかなぁ?」

その時、画面に映るかめちゃんが、カメラに気づき覗き込まれたサヨリは、

慌てて回線を遮断、接続経路を削除すると同時に欺瞞経路をアップ

「うわぁ~、絶対にバレたよねぇ。逃げようと。」


サヨリの部屋で待機していたかめちゃんが、部屋のカメラが作動しているのに気づき、逆探知をかけたが

場所を突き止める前に回線を削除されたので復旧させたが、ダミー経路に誘導されたのが

判明したので深追いする事なく撤収した。

「この逃げの速さ、間違いなくサヨリさんですね。何も考えず飛んで来てくれたら、簡単だったのですが、さすがに用心深いですね。」

かめちゃんは、今のやり取りをミユキに報告した。


次の日、イレーナと別れてミユキとかめちゃんが訪れたのは城

タケル・ヤマト皇帝陛下には、公務で面会出来なかったが、クロダ宰相が対応してくれた。

「ミユキさん。サヨリ様の行方は判りましたでしょうか?」

「申し訳ありません。昨夜は接触出来たのですが、逃げられました。」

クロダ宰相は、話を聞いて落胆しているようだが、ミユキは本日城に来た目的を説明した。

「『試練の間』に、また入られるのですか?」

「はい。至急に調べてみないといけないことがありまして。」

「わかりました。全面的に協力いたします。しかし、我が帝国皇族以外の方々が皇帝権を有するのは、

私としては、心苦しい問題なのですがね。特に、ミユキ様のような方は。」

「私がですか?」

ミユキは、わけがわからないという顔をして首を傾げた。

「わかりませんか?」

「はい。自分を卑下するつもりは有りませんが、他のメンバーに比べて、能力が高い訳でもないですし

他のメンバーと比べて、これと言った得意分野も有りません。それより私は、そんなに偉く成りたいとは思わないので、

万が一皇帝に指名されても、謹んでお断りしますから。」

「どうしてですか?ミユキ様にはすでにその資格があり、誰もが憧れる地位ですよ?」

とクロダ宰相が聞くと、

「これ以上、厄介事に首を突っ込みたくないだけです。それでなくても、サヨリやアケミの

フォローだけでもしんどいのに、これ以上仕事を増やしたくないだけです。」

そう言い切るミユキに気圧され、言葉に詰まってしまうクロダ宰相だが

「確かに、あの御二方のフォローするのは大変そうですね。」

アケミとサヨリの2人を思い浮かべ、しみじみと言った。それに対してミユキが

「大変なんてもんじゃないですよ!他のメンバーは逃げるし、当人達は反省しないし、

私がどれだけ謝罪するのに駆けずり回る事か!……あっ!すいません、クロダ宰相様には

関係のない私の愚痴でした。」

一瞬我を忘れたミユキだか、クロダ宰相を見てすぐに冷静になり頭を下げた。

「いやいや構わないですよ。お互い気ままな者のフォローは、大変ですよね。」

その言葉から、ミユキは

「クロダ宰相様も?」

「ミユキ様に比べて1人ですから、まだ楽なんでしょう」

「クロダ宰相様。サヨリが輿入れした暁には、何がありましたら、私にご一報ください。

サヨリに関しては、私の方で抑えますから。」

「それは頼もしい!今後ともより良い我々の関係を望んでいます。」

と言って2人はガッシリ手を握りしめた。

その様子を見ていたかめちゃんは、ココロの中で

(サヨリさんもタケルさんも、なんかご愁傷さまです)


クロダ宰相は、『試練の間』に入っていく2人を見送り、公務に戻るべく執務室ヘと歩き出した。

「しかし、ミユキ様が私の同僚と成れば、タケルがさらに良い皇帝陛下になれるだろうに。」

クロダ宰相がそう思うのには理由が有った。

確かにミユキの個々の能力は、他のメンバーと比べて低い。

会話術は、コウイチやサヨリに勝てない。物事の洞察力については、マサトやタダシに劣る。考察力は、アケミやタクヤに及ばない。その他の能力についても、ミユキが他のメンバーに勝てるものはなく、特筆出来る能力もはない。

しかし、ミユキを除く6人のメンバーの能力の平均値が、ミユキなのであった。

周りにいる人物達が、抜きん出て特異な個性を持っているがゆえの没個性

これと言った個性的な特技がないが、まんべんなく卒なくこなす能力に、サヨリとアケミが起こしたトラブル対応と謝罪能力

そもそも、本人は気づいていないのか、あれだけの個性が強いメンバーをまとめ上げているのは、ミユキの人徳と言えるだろう。

宰相という役職は、主に寄り添い、主が行う政ごとを適材適所に働き掛け滞る事なく進める役職である

ミユキを見ていると自然体で、各人に仕事を振り分けていることがよく分かる。

「私では、あのメンバーを使いこなす事は無理だろうなぁ。サヨリ様が輿入れした暁には、ミユキ様も我が陣営に組込みたいものだ」


この時の想いが後に、別の形で実現するとは想像すらできないクロダ宰相であった。



『試練の間』に入ったミユキとかめちゃんは、程なくして女神様と面会がかなった。

「今回は、なにしに妾に会いに来たのじゃ?権限は渡したであろう。」

ミユキは、

「権限の事ではありません。少し女神様とお話をしたくて参りました。」

とこたえると、女神は

「本日は妾の話し相手になってくれるのかえ?」

少し嬉しそうな口調にて確認をしてきた。

「はい。よろしくお願いいたします。」

と言って頭を下げるミユキ。

「頭を下げなくとも良い。」

それを聞き、ミユキが

「ありがとうございます。」

と言って顔を上げ

「えっと、お話をする前に、私から少し質問をさせて頂いてよろしいでしょうか?」

とたずねると、女神は

「ウム、問題無い。」

「では、サヨリには私達が頂いた一部権限とは違い、女神様の全権移譲されましたね。」

「了」

「やはり。」

「どういうことですか!」

ミユキは女神の返事に納得し、かめちゃんは驚愕した。

「ミユキさん!どういうことですか!この女神様の全権移譲って!」

「かめちゃん、落ち着きなさい。仮にも貴女、AIでしょう?」

「そうですけど、この女神様の権限って、一部使えるだけでこの星系を支配出来るんですよ。それを、全権使えるって。」

「フム、そちら者が言う通りじゃ。にして、ナゼお主は落ち着いておる?」 

女神は、落ち着いて話すミユキを見て、興味深かげにたずねてきた。

「あの(サヨリ)ならば、そのぐらいやってないとおかしくですから。

それと、あの(サヨリ)だけが転移システムを持っているのがおかしいでしょ?

普通に渡される権限だけじゃあのシステムは無いと考えたら、自ずと結果が見えます。

まったく困った事をしてくれたものです。」

ミユキが優しげに口元に微笑みを浮かべながら静かに話す言葉に、なぜかかめちゃんは

背中に冷気を感じて、なんとなく少しミユキと女神から距離をとった。

「フム、サヨリは、我と楽しき時間を過ごした仲。それに応えるのも、ワレとしては、普通な事だ。

それ故、いつでもワレと話し相手してくれるというので、渡したまで。」

女神は、さも当たり前のような口調にて答えると、ミユキの微笑みが深くなった。

かめちゃんは、もう少しで出口という付近まで後ろへ下がり気配を消して

(私、もう帰っても良いかなぁ)

遠い目をしてそう思っていた。ミユキは、優しそうな表情を崩さず

「その転移システムって、どういう仕組みなんですか?」

聞くと

「大した性能はない。6ヶ所の登録済みの場所に転移出来るだけの物だ。我にとっておもちゃのようなものよ。」

とんでもない技術の物を、おもちゃと言い切る女神に、戦慄を覚えながらも、ミユキは顔には少しも出さず、次の質問をした。

「その6ヶ所は、随時変更可能なのですか?」

「いや、一度登録すれば変更は効かぬ。サヨリに渡した奴は、すでに3ヶ所登録済みであったから、サヨリが登録できる箇所は、残り3ヶ所。随時変更ができぬから故におもちゃじゃ。」」

「そうなんですね。では、最初に登録している箇所はどこですか?」

「この場所と、主等が『神託の部屋』と呼んでいる場所、この星系の者と我が、初めてあった場所。」

「それとサヨリが登録した、自分の部屋、か。場所の登録に必要な注意事項は?」

「出現ポイントには、半径1m以内には物質が無いこと。」

「ちなみに登録した場所は、女神様は把握可能なのですか?」

「可能。転移のためにゲートを開く要素があるのでな。」

「じゃ、あと何箇所登録出来ます?」

「1ヶ所」

「もう一つ登録している?そんな場所は……あそこかなぁ?サヨリが登録した場所は、サヨリの部屋と城の地下通路ですか?」

「お主の言う場所はわからない、我は転移先の座標軸が、登録されたのがわかるだけ。」

「そっかぁ。じゃ、一つは地表よりも高く、一つは地表よりも低いですか?」

「御」

ミユキはそれを聞き、にっこりと笑って

「やっぱりね。じゃ、女神様。サヨリに渡した転移システムを、停止させてくださいません?」

と切り出した。

「ナゼじゃ?」

女神は驚いたように聞き返すとミユキが

「それを使われると、サヨリを捕まえにくいからですけど?」

何当たり前のことを聞くの?と言った顔で返答した。

「無理じゃ。サヨリに渡した権限がある限り、全てを止める事は出来ぬ。」

女神は威厳を込めてそう言い放つが

「って事は、一部ならば改変する事が、出来るのね。」

ミユキにそう言われ

「……………」

黙ってしまった。それを見てミユキは

「で・き・ま・す・よ・ね。」

と、迫った。女神は何かに屈したように

「…………それは可能。」

と、答えてしまう。ミユキが

「じゃ、転移先を全てこの場所にしてもらえません?」

「それは………」

「出来ますよね。」

「しかし・・・・・・」

「で・き・ま・す・よ・ね。」

「可能じゃが…」

「じゃ、今すぐ!」

「拒否する。」

女神がミユキにサヨリに渡した転移システムの停止を要求されると、あきらかな拒否をしめした。

それを見てミユキは、

「お話し合いが長くなりそうねぇ。女神様、ここに、テーブルとソファーを出してもらえません?」

と言って床を指差した。かめちゃんが困惑した顔で

「ミユキさん。それは無理じゃないですか?」

言ったが、ミユキは

「どうして?」

不思議そうに返答した。かめちゃんは、過去に入った皇帝達の修行といってもいい、過酷な行為だった事で、

「ここには、食料や飲料水が無い為に、ここに入られた歴代皇帝は、籠もる時間が長いほど、脱水症状と

飢餓状態に成っています。それは、女神様との対話が長引けば、有益な情報が入手できますが、それに耐える覚悟がなければ。」

と説明したが、ミユキは首をかしげて

「だから?」

意味が分からないといった風に、かめちゃんを見た。

「だからって、出せるならばそんな状態にはならないと思うのですが?」

かめちゃんも、そんなものが出せるぐらいならば、歴代の皇帝たちが苦労はしなかったと言ったが、

「そうかしら?それは、歴代の皇帝さんたちがやり方を知らなかった、もしくはそのようなことが

出来るとは思わなかったので、してなかったじゃないのかな?この女神さんならこのぐらいの事

簡単に出来ると思うけど?ねぇ。女神さん。できますよね。」

と言って女神の方を見るミユキ。

すると、ミユキの指差した場所に、上質な革張りソファーとそれに見合う豪華なテーブルが現れた。

「えっ!?」

驚くかめちゃん。それを無視してミユキは

「これだけじゃダメね。どこのメーカーでも良いからティーポット付きのティーセットをお願い。

茶葉は、ノーザフ産のファーストリーフがいいな。お茶うけはマヌカン菓子店のマカロンを味違いで数個お願い。」

ミユキがそう言い終わると、テーブルの上にティーカバーがついたティーポットとソーサー

白い皿に乗った数個の色鮮やかなマカロンが現れた。

「えぇ〜!!」

「やっぱり、出せるか。」

ミユキは、確信を得たようにつぶやいた。そんなミユキを見てかめちゃんが

「ミユキさん!知っていたのですか!!」

かめちゃんは、驚いていた。

「知らないわよ。」

「で、でも」 

「サヨリならばこのぐらいの事はやってのけるでしょうから。」

それを聞き女神が驚いたように

「サヨリから聞いたのではないのか?」

と問うと、ミユキが

「聞けるはずないでしょう?すぐに、逃げられたのだから。」

うんざりしたような口調で答えた

「では、なぜそのような事が出来るだ?ここに来た歴代のモノハ、サヨリを除き誰も気づかなかったというのに」

「女神様は、転移ができますよね。だから持ってくることはできるって思っただけですよ。

それと、転移システムを手渡しできるような大きさで創る事ができる事から、物質合成が出来るんじゃないかなって思ったんですよ。それに、あの(サヨリ)が空腹を我慢するとでも?

あの(サヨリ)なら何らかのヒントがあれば、それから導き出された方法で食料や飲料水を手に入れるわよ。

それから推理したら、女神様に具体的な注文すれば、出してもらえるってたどり着く。

私は、それを推理して実証実験したまでのこと。お陰様でゆっくり座ってお話し合いが出来ますからね。」

微笑んでソファーに座るミユキに、今まで感じたことのないえたいの知らない感情に支配されつつある女神だった。



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