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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第3章
141/144

サヨリを探せ!5

「消えた?」

目の前から忽然と消えたサヨリ

「サヨリ…さん?」

いち早く意識を切り替えたミユキが

「かめちゃん!現状は!」

と、声をかけると

「あっ!はい!わずかに空間断裂があります!それとプラズマ痕あり。手段は解りませんが転移した模様です。」 

周囲を一瞬にして観測したかめちゃんが報告した。

「逃げたか。」

ミユキがつぶやくとイレーナが

「サヨリさんは、どこへ行ったのですか?」

「わからないわ。あの娘«こ»、どこからか、またいらん技術を手に入れたわねぇ。誰よ?

転移装置なんかあの娘«こ»に渡した奴は!」

ミユキは、怒りを露わに叫んだ。

「ミユキさん。考えられるのは、女神様じゃないですか?」

「女神様?」

「はい。女神様って転送出来ますし、城に転移装置を作らせる事も出来ましたから。」

かめちゃんが答えると、イレーナが

「となると、行き先は女神様の所ですか?」

「そうとも考えられるけど……」

ミユキが消えたサヨリが居た場所を見つめていた。

「ミユキさん。もしサヨリさんが、行きたい所に速、転移出来るならは、捕まえる事は出来ませんよ。どうします?」

「うわぁ。サヨリさん、無双状態じゃないですか!」

「多分そこまで、万能な転移装置じゃないと思うわ。」

「どうしてそう思われるのですか?」

イレーナが聞き返すと

「消える前に、ブローチを触っていたわ。多分、転移先を登録してあるタイプだと思う。

二人共。行くわよ。」

と言ってミユキが歩き出した。


タクシーを拾い来たのは、サヨリが住居としている国営住宅

ミユキは、合鍵を使いドアを開け、3人はサヨリの部屋に入った。

「イレーナさん。サヨリの部屋に来たのは初めて?」

「いえ、何度か来ています。」

「じゃ、この部屋のカラクリも知っているのね。」

「この部屋のカラクリ?」

何を言われたのかわからない顔をしているイレーナに

「知らなかったのね。」

と言ってミユキがサヨリのベットのマットを上げて、隠し階段を見せた。

「何なんですか!これ!」

「ミユキさん、プラズマ痕が有りました。それもつい最近の。」

かめちゃんの報告を聞いて、ミユキは、

「一旦、ここに飛んで他に移動したようだわね」

ミユキが部屋を見渡し、隠し階段を降りていくそれに続く二人

「ここには、来てないようね。」

ミユキが部屋を確認しているとイレーナが

「こんな部屋があるなんて。」

部屋一杯のサーバーラックを見て驚いていた。

「その様子じゃ、あの娘«こ»が聖女様って呼ばれていたのも知らないんじゃ?」

「聖女様?まさか!聖メビーナルー教会関係者が最近擁護している女性の事ですよね。ウチでも内偵をしていましたが、人物像が掴めなくて手が打てなかったんですが、その女性がサヨリさん?ウソでしょう!」

ミユキは頷きもう一度出てきた押入れを指差す。そこにはさらに下へと繋がる穴が有った。

「アハハハ。これじゃ、うちがいくら内偵しても尻尾が捕まらないハズですよねえ。そっかぁ、サヨリさんだったのかぁ。」

イレーナは、泣きそうな顔で笑った。

「イレーナさん。聖女の内偵をしていたのは、貴女でしょ?どうして内偵を?」

ミユキが声をかけると

「そうです。内戦前から急速に教会関係者の活動が活発化していまして、私の部署が密かに内偵を進めていたところ、教会関係者が計画しているクーデター計画が判明しました。」

「クーデター計画!」

ミユキが驚くとイレーナは

「はい。我が国は国教という宗教は存在いたしません。ですが聖メビーナルー教教会は、

歴史が古く国民の半数以上が信者であり、実質上国教とも言える地位だけでは満足せず、

聖女様の復活に伴い現政権である皇帝陛下を失脚させて、神の遣いである聖女様を頂点とする、

宗教国家樹立というか復権を目論んでいたのです。

その中心人物の聖女様と呼ばれる女性の個人が判明せず、捜査が難航していてサヨリさんにアドバイスお願いしたくとも、

全く連絡が繋がらずそのうちに内戦が始まり、しかも公安調査庁と軍部が対立関係になり

表立って私達が行動出来なくなりました。

幸いなことは、内戦になり教会関係者が避難させたはずの聖女様が、行方不明になったと、

言う情報が入って、教会側が計画していた儀式が急遽無期延期されて、私達公安に時間的余裕が生まれた事だったのですが。聖女様の正体がサヨリさんだったなんて。いったいサヨリさんは、何がしたいのですか?」

と現状公安がつかんでいる聖女の情報を話し、泣きそうな顔になっていた。

「ミユキさん。ほんとうにサヨリさんは、何がしたいのかわかりません。ミユキさんは、わかりますか?」

かめちゃんも、意味が分からないといった顔になってミユキに聞くが

「2人共、私にだってサヨリが何をしたいかなんて、神や悪魔でも解るわけないのに、

私にわかるわけ無いでしょう。」

と、ため息交じりに答え

「ただわかることは、サヨリは以前から女神様に会いたかったって事かな?」

とミユキの考えを言った。二人は

「「女神様に会いたい?」」

と驚いたように言ったが

「そっ。教会に近づいたのも、皇帝陛下に近づいたのも、どちらにも言える共通点は、女神様なのよ。」

ミユキは、2人を見て続けた

「皇帝陛下は、女神様に会う為の方法を確立していたでしょ?教会側は、過去に神託という名称の元に、女神様に会う為の方法が有った。」

「確かにそうですね。」

「どういう事ですか?」

よくわからない顔をするイレーナにかめちゃんが

「イレーナさん。皇帝陛下は試練の間という部屋があり、皇位継承者はそこへ行けば、

女神様に会えるのです。

 そして、教会側は、神託の間という部屋があり、そこで祈ると女神様が来られたのですよ。

ただ今の帝国に併呑される前の聖メビーナルー神国の時代なので、それ以降800年以上

女神様が降臨されてないらしいですが。」

と説明すると

「だからですか?稀代の聖女様が現れたので、女神様を降臨させて帝国から主権を奪おうしたのですね。

でも、なぜ女神様の降臨が必要なのですが?神様だとしても、それほどまでにこだわる必要性があるのですか?」

イレーナは不思議そうに聞くがミユキは

「イレーナさんの、信仰している宗教は、聖メビーナルー教ですか?」

「はい、先祖代々聖メビーナルー教会の信者です。まぁ、私自身はそんなに熱心な信者じゃないですが、

親のおかげで結構上位のシスターの資格を取っています。おかげで侵入捜査する為に便利でしたが。」

「イレーナさんは、女神様が、神様とは全くかけ離れている、AIのような存在と言ったらどうします?」

「えっ!女神さまとは超自然的な存在とは違うのですか?教会の教えでは、女神様が人々の暮らしを

見守り時には、聖人・聖女に御神託を遣わして、疫病や災害から救った話が教典に載っていますし、

御神託を受けて執った政策が、当時の民衆を救っている事も教会関係以外の資料や記録に残っています。」

「そうですね。実際歴史を紐解くと過去の聖メビーナルー神国が受けた天災クラスの災害の後には必ずと言って

良いほど女神様からの御神託があり、それを従い実行した結果、民が救われたといった話がいくらでもあります。

しかもおとぎ話でよくあるような、抽象的な表現の御神託ではなく、具体的な指示を遣わしています。

そう言う事実もあり女神様を神と崇め、旧聖メビーナルー神国国家が民衆の支持のもと

絶大な力を誇り、聖戦として宗教をバックに銀河統一を目指したのは、この星系の歴史を

語る上において重要な事で、最終的に当時辺境の小国であった現在の帝国が、統一するまで

銀河戦国時代と言われているわね。そして、余りにも熱心な信者が多すぎたため 

聖メビーナルー教を廃教として排斥し信者を改宗に追い込むことは、帝国の荒廃に繋がるとして、

当時の皇帝陛下織田信長が、武力を持たない事を条件にして宗教としての信仰を認めた

と言われているわよね。

その時に、帝国の国教とはしない事も明記しているのよ。これは、教会が力を持ち直した時に、

政治に口出し出来ないようにしたと言われているわね。しかし、信仰の元である

女神様からの御神託が聖女様、聖人様を介しては、それ以降教会に降ることは無かった。

そのため、昔のような勢いのある発言は鳴りを潜め、穏健派といわれる上層部によって

粛々と神に向かい人々の心の安らぎを与える宗教へと変わっていったみたいね。

でも、イレーナさん、あまりにも具体的で明確な御神託って、何かおかしいと思いませんか?」

「何がですか?的確な災害への指示の御神託ですよね。ありがたい事だと思っていますが?

それが、女神様がAIという根拠ですか?」

何を聞かれているのかわからないイレーナは、ミユキに聞き直すと

「私も、この星の宗教を知らないと移民事業が上手くいかないと思って勉強したの。

するとね、面白い事に御神託が二極化しているのよ。」

とミユキは指を2本立てて話した。

「二極化?」

「そう。災害の対応策については、さっきも言ったように具体的で即効性の有るものが御神託として降ろされているわ。

これは、政ごとでも同じように的確な御神託を降ろしているのよ。

でもね、それ以外の御神託は、抽象的な表現で記録されているのよ。特に聖戦とされた

遠征軍の出兵根拠は、かなり怪しいご神託なのよね。なんかおかしくない?」

かめちゃんが

「ミユキさん、御神託って普通は、抽象的な表現で遣わせるもので、それを聖女や聖人と言われる人が解釈していくものでしょう?」

と意見を言った。

「かめちゃん、そこなのよ。私の国でも御神託は一部であるの。でも、抽象的で解釈しだいでは

吉とも取れるし凶とも取れる。それが普通。でも、災害対応時の御神託っておかしくない?

どこぞに畑に適した土地があるから開墾せよ。とか、防波堤の高さは15メートル以上にせよ、

なんて明確な数値を盛り込んでくるなんて、御神託というより設計指南だよね。」

「アッ!御神託の内容が具体的すぎる。」

「そう、災害や祭りごとに関しては即効性の有る具体的な指示が御神託として降されている。

しかしそれ以外な御神託の時には、聖女様や巫女さんが、解釈に苦労しているのよ。

何か幾何学的な絵を書いて提出した巫女もいたし、未だに解読出来ない女神様直筆と

言われる巫女の衣類に書かれた文があるのよ。」

「それは、知っています。未だに解釈が多数存在する、代表的なものですね。」

「多分ね、科学技術的な事に及んだ時、専門家ではない聖女、聖人、巫女さんでは、

理解が出来なかったんじゃなかったのかなぁ。」

「科学技術的?」

「そっ。例えば、コンピューターに詳しくない人に、いきなりマシン語で書かれたプログラムリストを見せて理解しろ。と言われたら?それか、冶金術を知らない人に金属元素を並べて、この通りに加工しろ。って言われてわかる?」

「無理です。そもそも何が書かれた物か解りません。」

「でも、それをなにかに記録して、然るべき対応を取れば」

「だよね。でも、書いた資料とかは貰わなかった、もしくは、もらえなかったら?どうやって報告する?」

「ますます無理です!やろうとしたら、一語一句完璧に覚えるしかないです。」

「唯一、巫女さんの衣類に書かれた文については、未知の言語を手掛かりなしで解読なんて

出来るわけないでしょう?だから御神託が降されても、聞いた人が理解できないから、

報告は抽象的にならざるえない。見せられた回路図は、不思議な絵画へと昇華されて、

いろいろ考察はしたんだろうけど、答えに辿り着けるとは思えない。」

「だからなのですね。御神託には、よくわからない絵画的な物があったのは。」

「それを解釈出来たら、画期的なシステムか、動力ユニットだったのかも?」

「じゃ、女神様は何なんですか!」

「超古代文明遺産だと、私は思っている。」

「超古代文明遺産?」

「そっ。調べてみないとわからないけどね?じゃ、明日行って聞いてみるわ。」

と言って、どこかに連絡をしだすミユキ。それを見てかめちゃんが

「えっ?誰にですか?」

と聞き返すと

「女神様本人に。イレーナさんは、混乱していると思うけど、明日サヨリが行きそうなカフェを調べもらえる?見つけたら、即捕獲するって事で。」

「わかりました。」

「あっ繋がった。もしもし、夜分遅くすいません。ミユキです。お仕事大丈夫でしょうか?」

と言ってミユキは、端末先の相手としばらく打合せをして、通話を切った。

「それじゃ、今日はもう遅いからここで寝ましょう。」

と言ってサヨリが聖女様と呼ばれている部屋のベットを指差して言った。イレーナは驚いて

「ここですか!」

「イレーナさんは、上のサヨリの部屋の方がいい?」

「そういうわけじゃないです。」

「ここに泊まる理由は、サヨリが帰って来るかもしれないでしょう?まッ、張り込み?みたいなものよ。」

「そうですかぁ?」


かめちゃんが、サヨリの部屋、ミユキとイレーナは、聖女の部屋で泊まる事に。


「真ん中のサーバールームは、誰もいなくて大丈夫ですか?」

「心配ないですよ。あの部屋は、外からは入れないし、サヨリだってサーバーをプラズマで破壊したくはないでしょう?

だから、間違ってもあそこには転移してこないわ。玄関から入って来るとしたら、この部屋よ。

転移してくるのはサヨリの部屋だから、かめちゃんなら事前異変を感じて確保する事が

出来るでしょうしね。さぁ、明日は忙しいから、早く寝ましょう。


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