サヨリを探せ 3
ミユキとかめちゃんの2人は、サヨリの部屋を出てサヨリがオーナーになっている会社へやって来た。
「ここですね。」
「結構良い物件じゃない。」
場所的にオフィス街ではなく、落ち着いた住宅街に近い、真新しい5階建てマンションの、4、5階ワンフロアを事務所としてぶち抜きで使用していた。
2人は、会社の受付で
「サヨリ・カキモトさんに、お会いしたいのですが、いらっしゃいますでしょうか?」
とたずねると
「サヨリ・カキモトですか?少々お待ちください。」
受付の女性は、しばらく社員名簿を検索していたが
「当社の社員として在籍して居ませんが?どなたかとお間違えか、なにかの、お間違いではないでしょうか?」
社員として存在していないと、断られた。
「そんなはずはないんですけど。」
「と言われましても、当社には…。」
そこに、外回りから帰社してきたらしき男性が
「どうしたんだ?」
と受付女性に声をかけた。
「あっ、副社長。こちらの方々が、サヨリ・カキモトと言う方を、たずねて来られたのですが、当社には在席していないと、申しあげたのですが。」
「サヨリ・カキモト。どちら様でしょうか?どのようなご要件でこちらに?」
副社長と受付女性に言われた男性は、サヨリの名前を聞くと、ミユキとかめちゃんに向き直ってたずねてきた。
「申し訳ありません。私、サナトリア連邦共和国移民センターに勤めているおります、ヤノミユキと申します。」
と言って、ミユキは名刺入れから名刺を抜き出すと、目の前の男性に差し出した。名刺を見て
「サナトリア連邦共和国移民センターの所長さん?うん?サナトリア連邦共和国移民センターと言えば、最近かなりの帝国民を移民させたと有名なセンターですね。それと……。」
一瞬言い淀んで明らかに何かを思い出したように
「サヨリさんを通して、我が社のシステムを購入していただいた。企業様!」
と言って受付女性に向かって
「君!!この方々を第一応接室へ案内して。」
と指示を出し、ミユキ達に向き直って
「すぐにお伺いしますので、お部屋にて少しお待ち下さい。」
と言い残して慌ただしく社内へ入って行った。受付女性は、理由がわからないながら
2人を応接室へ案内した。
「なんか、あの人、誤解しているような気がするのですけど。」
かめちゃんがミユキに聞くと
「そうね。あの慌て方からすると、システム関係でクレームを直談判しに来たって思ったかもね。」
違うのにと、ため息混じりでこたえた。
しばらくして、応接室の扉がノックされ2人の男性が入ってきた。ミユキとかめちゃんが立ち上がると、前に立ち名刺を差し出し
「当社の社長をしております、カルロ・遠藤と言います。」
先程会った男性も名刺を差し出し
「同じく副社長のケンイチロウ・ケネディーと申します。」
と挨拶をしてきたので、名刺を受け取りながら
「サナトリア連邦共和国移民センターで、所長をしております、ヤノミユキと申します。」
「秘書のカメタと申します」
と自己紹介を済ませ席につくと、開口一番
「誠に申し訳ありませんでした。」
と2人揃って頭を下げて謝罪しだした。その姿を見てミユキは、やはりねぇと思って
「頭を上げて下さい。別にクレームを言いにお伺いしたわけではありませんので。」
と、言ってみるが
「そんなことはないでしょ!帝国のシステムとサナトリア連邦共和国のシステムでは、
根本的に設計思考が違いますので、重トラブルが起きて不思議じゃありません!
そもそもプログラム言語体系自体が違う為に、こちらでは全く検証出来てないのに、
サヨリさんが本場一発勝負でいけるって言って我々の忠告を聞かずに強引に繋いだから、
きっと重大トラブルが発生したんだ。
だから言ったのに、異種言語接続サーバーは、無理が有るって。」
と、社長が頭を抱えブツブツ小声で何かつぶやき出しました。
「おい、落ち着け。クレームじゃないって言ってくれてるぞ。」
副社長が社長の肩をゆすり話すが
「そんな訳ないだろう。サナトリア連邦共和国移民センターの局長自ら来ているんだぞ。」
2人で言いあっているなか、ミユキが
「ほんとに、クレームじゃないですから。と言うか、帝国のシステムとサナトリアのシステムを繋ぐ接続サーバーってなんですか?私も知らなかったんですよ。
接続サーバーのことは、後で詳しくお伺いしますので。」
それを聞いてカルロ社長が驚いたように
「えっ!サヨリさんから、接続サーバーのことをお聞きになっていませんか?」
「初耳ですが。」
困惑気味にミユキがこたえると、ケネディ副社長が
「いやいや、ちゃんと承諾を取ったって言っていましたが?」
「かめちゃん、聞いてた?」
ミユキが確認するが、かめちゃんは、
「私は聞いていません。」
ミユキは首をかしげながら
「変ねぇ。その辺の報告は嘘をつくような事はしないはずなんだけど……うん?そう言えば、
相互互換するために使い勝手よくレイアウトしたと言ってたわ。」
「ミユキさん、もしかしてサヨリさんが自分にとって便利だから、勝手に繋いだんじゃないですか?正直に話すと、怒られると思って。」
それに思い当たる事柄を思い出し
「その可能性は、高いわね。そうでなかったらあぁも簡単にデータ検索出来ないかも。」
この言葉で応接室にいた4人はそれぞれ思い当たるのか、頭を抱えしばし重い沈黙が支配した。
ミユキは、空気を変えるように
「とにかく、今は問題ありませんから、この話題はしばらく忘れましょう、ね。」
と苦笑しながら見渡した。
「そ、そうですね!」
社長が同意すると副社長が、
「では、本日は、どのようなご用件で?」
ミユキは座りなおして、姿勢を正し話だした。
「ただ今、緊急要件で私達は今、サヨリを探しています。問題児のサヨリが、最近こちらに顔を出しましたか?」
「何か事件に関する事でしょうか?」
「いえ、事件でないですが、6日以内に見つけないと、いろいろ不具合が起こりますので。急いでいるのですが、何か知りませんか?」
しばし考えてから、
「そう言えば、4日前だったか、お菓子の差し入れを持ってきてくれましたよ。」
「そうですか!それはどこのお菓子ですか!」
ミユキは身を乗り出す感じで聞くと
「ちょっと待ってください。」
と言って、ケネディ副社長は応接室から出て行き、手に包装紙を持ってすぐに戻ってきた。
「ここのお菓子ですね。」
応接室のテーブルの上に包装紙を広げた。
「ミユキさん。ここは、サヨリさんの部屋にあったメモに書かれていたお店です。」
「じゃ、ここは外していいね。これ以外に、どこかに行くとか話していませんでしたか?」
ミユキが促すと
「しばらく、ぶらぶらして暮らすって言っていましたが、それは、いつものことでは?って言うと、
笑って『そうね!でも今回は、ポイントをつくらないとね!』って言っていましたが。」
「ポイントつくり?」
「はい。何のポイントですか?ってきいたら、神出鬼没ポイントって笑っていました。」
それを聞いてミユキが
「あの娘自身が、既に神出鬼没だって言うの。」
とつぶやくと
「確かにそうですね。」
とカルロ社長が苦笑してこたえた。それからしばらく接続サーバーの事を打合せをしてから
「ご協力ありがとうございます、サヨリがまたここに顔を出しましたら、私、ミユキに至急連絡よこせ!って伝えてください。」
「わかりました。しっかりと伝えます。」
ミユキとかめちゃんの2人は、会社を出ると城の有る方角へ歩き出した。
「ミユキさん。これからどこへ?」
「サヨリのもう一つの職場へ行こうと思うの。」
「でも、そっちの方はアポイントが必要じゃないですか?」
「だからね、取ってもらった。」
と言って通信端末の画面には、クロダ宰相からのメールが表示されていた。
「宰相様を使えば、たいがいのアポイントが取れますねぇ。」
かめちゃんがそう呟き、ミユキを見ると
「時間が無いからね。効率良く動かなきゃ。」
と言って返した。かめちゃんは、
(ミユキさんは、このグループで唯一常識人だと思っていましたが。)
口に出さず思っていると、ミユキに肩を叩かれ
「うちは、使えるものはフルに使え、って言うのがモットーなグループだからね。」
と笑ってきた。
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