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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第3章
137/144

サヨリを探せ 1

再開です

 玉座の間に戻ってきた一行、クロダ宰相が待っていて

「タケル、皇帝に成れたか?」

と聞いてきた。

「とりあえず、皇帝とは呼ばれる資格を得たよ。」

「それは良かった。で、サヨリさんは?中に居たんだろう?連れて帰って来たんだろう?」

クロダ宰相は、ホッとした顔つきになったが、サヨリの姿が見えないので、サヨリのことを聞いてきた。タケル・ヤマト皇帝は、少し辛そうに

「ここには、既にいなかった。」

と伝えると、

「うん?既にいなかった?ということは、どこへ行ったのだ。」

クロダ宰相が焦った口調で問うがタケル・ヤマトは

「わからない。」

悲壮な顔つきでこたえた。それを聞いて

「おいおい、これから国をまとめて行くのに、それはないだろう。」

クロダ宰相は、落胆した口調でタケル・ヤマト皇帝の肩を揺らした。

「すまない。必ず探し出すから。」

「探すって、どうやってだよ。『試練の間』から、他に出れる通路があったのか?」

「いや、無かった。」

「じゃ、どうやって探すンだよ!」

クロダ宰相は、コウイチ達の方を見ると

「あなた達も、サヨリ様が見つからなかった事に、心配ではないのですか!」

そう言って詰め寄って来たので

「まあ、落ち着いてください。探す当ては、僅かですけど有りますから。」

コウイチが、クロダ宰相に安心出来るように声をかけた。

「探す当て?本当ですか。どうやって探すと言うのですか!」

「そこは、私達に任せて下さい。」

とさわやかな笑顔で答えた。

「具体的に説明してほしいのですが。」

疑いの眼差しでクロダ宰相はコウイチに説明を求めてきたが

「それは、私共の企業秘密というもので、お答えは出来かねます。」

そう言い切って答えをはぐらかそうとそうとコウイチが微笑んだ。それを見たクロダ宰相は

「わかりました。サヨリ様はそちらで見つけていただけるということですね。あと、2か月後にタケル・ヤマト皇帝陛下の戴冠式を行い、その場で、タケル・ヤマト皇帝陛下とサヨリ様との婚約発表を行います。それに間に合うように、サヨリ様を連れてこれるのでしょうね。」

と詰め寄られてきた内容に

「2か月後ですか?それまでならば大丈夫だと思います。」

少しコウイチは悩んだ顔を見せると

「本当に、探し出せるのでしょうね。それまでに、サヨリ様に、皇室での振舞い方マナーの

講座を受けて頂くのと、戴冠式、婚約発表時、夜会でのドレスを作らないといけません。

それと、参加者様の選出。貴族側は我々が行いますが、サヨリ様側の選出は、我々ではできません。

特に経済界を中心に選出する方々は、我々ではどうしようにもないので、お任せするしかないのです。間に合いますよね。」

と、クロダ宰相が念を入れてきたので、一瞬コウイチの目が泳いだが

「はい。それはもちろんです。では、時間が有りませんので、私達はこれより、サヨリ捕獲…」

「捕獲?」

「アハハハ、サヨリを見つける算段をして参りますので、これにて失礼します。」

と言って、タケル・ヤマト皇帝を残し、コウイチ達は、その場から逃げるように立ち去った。


城から最寄り駅内にあるカフェに、コウイチ達は入り作戦会議を始めた。

「コウイチ、さっき言っていたサヨリを探す当てなんかあるのか?」

タクヤが、聞くが

「そんなもん、あるわけ無いだろう。あの場は、そうでも言わないと、クロダ宰相さんは

俺達を開放してくれそうになかったぞ。」

ヤケクソ気味でコウイチが訴えるように言うと

「確かになぁ。」

一同は大きくうなずいた。

「どうしてクロダ宰相さんは、サヨリの事を、あんなにも気にしてたんだ?婚約発表なら、少し遅らせてもいいんじゃないかな。」

コウイチが首をかしげると、ミユキが

「クロダ宰相さんから聞いたんだけど、」

「あれ?ミユキ、いつ話をしたの?」

アケミが聞くと

「ほら、この前、教団に行ったじゃない。その時に、話し相手になってくれたんだよ。」

「そうなんだ。で、」

「クロダ宰相さんが、言うにはねぇ、タケル・ヤマトさんはね、皇帝になった後に、今まで

実権がなくて出来なかった、大幅な行政改革を始めたいらしいのよ。

せっかく、今まで邪魔だった反対派の貴族や長老達が、この帝都から居なくなった

このチャンスを、使って一気にやってしまいたいらしいのよ。」

「それと、サヨリがなんの関係が?」

「サヨリと結婚、もしくは婚約者として社交界デビューさせれば、経済界のほとんどの重鎮や

実力者たちが、タケル・ヤマト皇帝の味方になってもらえるんだって。そうしたら、反対派

が何を言おうが、潰せるらしいよ。」

それを聞いて

「そんなにうまくいくか?」

懐疑的な言葉をタクヤが発するが、ミユキは

「タクヤさん、既にサヨリが各方面に、手を廻しているわ。」

「確定事項かよ。」

タクヤが、両手を上に挙げて降参ポーズをした。

「そりゃ、クロダ宰相も必死になるわけだ。戴冠式の日にサヨリが居ると居ないでは、今後の帝国の基盤が揺らぐ訳だからな。」

「で、これからどうする?2か月有るって言っても、招待者への招待状の到着は、1か月前迄に終わらせないとヤバいだろう?」

マサトが言うとタダシが

「確かにな。送り先はこの国の経済界のトップな訳だし、1か月前でも遅いかもしれないな。」

タクヤが

「じゃ、なる早で、招待者の選出、招待状の印刷、発送の時間を考えると、あと2週間有るか無いかってところだな。出来れば、1週間以内には終わらせたい案件だな。」

と言って考え込むと、アケミが

「クロダさん、ドレスのことも言っていたよ。最低3着、もしくはそれ以上のドレスを作るとなると、2か月はギリギリだと思うよ。」

コウイチが

「そんなにかかるの?」

驚いたように聞くと

「かかるわよ。吊るしというか、お店で売っている規格品じゃなくて、フルオーダーメイドのドレスでしょう。

それに、皇室への公式行事に参加って言うより、メインヒロイン役どころなんだから、

ドレスのデザインから始まって、使う生地の作成、ボタンの作成、装飾品に至るまで全て1から作らないと、威厳が保てないわよ。」

それを聞いてコウイチが驚いたように

「そんなことまでする?」

と声を出すが、アケミが

「コウイチ。あたりまえでしょう!国内外に向けて、ほかの追従を許さない物で示すのよ。

そうすることで、サヨリがお飾りの花嫁ではなく、正式に正室として認められた女性として、

皇室内での発言力を強化出来て、周りに睨みを利かせることができるのよ。

それを既製品や野暮ったい恰好なんかさせてみなさい、一気に発言力をなくし周りから軽んじられてしまう存在となってしまうわ。」

と力説した。それを聞いたタダシとマサトは

「結構ハードスケジュールじゃねいか?」

「型から起こしていたんじゃ、生産が間に合わないかも。職人の技法によるハンドメイドしかないなぁ」

タクヤが

「色々な手間や作業を含めると、サヨリの捕獲までの残り時間が、1週間ちょっとっていいのかな?」

と疲れたように言った。それを聞きコウイチが

「どうすんだよ。メンバー内で、一旦隠れたら見つけるのが、発見困難筆頭者だぞ。」

「確かに。」

とメンバーが考え込むなか、ミユキだけは

「そんなに悲観することはないと思うよ。」

と言って珈琲を飲んでいた。

「ミユキ、なんでそう思える?」

「アケミ、サヨリはまだ本気で、逃げてないから。というか、逃げてる感覚もないと思うよ。」

その言葉を聞いて、

「じゃ、何してると思うの?」

「いつもの如く、遊び歩いているだけ。」

「いやいや、それだと行き先が掴めなくて、よけい捕まらないぞ。」

コウイチは絶望視しているが、ミユキは

「何言ってるの?コウイチくん。サヨリが物に固執してない今だから、エサとワナを仕掛ければ簡単に捕まえれるって。」

ミユキが自信満々に言って退けた。

「簡単?」

「そっ。だけど、みんなの協力が必要なんだけど。」

「まぁ、アイツを捕まえるには協力するが………………うん?サファイアから電話だ。ちょっと、話てくる。」

コウイチは、席を外した。それを見て、アケミが驚き

「サファイアちゃんから?ウソ!ここって、サナトリアからどんだけ離れていると思っているの!気軽に電話出来る距離じゃないでしょう!」

サナトリア連邦共和国から帝国まで、4億光年以上離れている。通常ならば艦隊規模の亜空間通信設備を保有したとしても、タイムラグが有る通信になるはず。それが携帯端末によって

普通にリアルタイム通信していることに、驚いていた。

「つい最近、出来るようになったんですよ。」

その疑問に答えるようにかめちゃんが、話してくれた。

今までの恒星間通信は、亜空間通信をしていたが、最近出来た銀河系規模の量子型通信システムを使用すれば、どんなに遠くだろうが、リアルタイム通信が可能になった、と説明した。

「その銀河系規模の通信を可能にしたのが、アイツ«サヨリ»が仕込んだ仮想接続サーバーってこと?」

アケミは、呆れと驚きで、開いた口がふさがらない。

「そうなんですよ。あの仮想接続サーバー。ちゃんと設定して使えば、こんなことも出来ちゃうんですよ。ちなみに、皆さんの携帯端末は、対応済ですから。」

とかめちゃんがしみじみ言うと、アケミ、タクヤ、マサト、タダシの携帯端末が呼び出しアラームが鳴った。

応答する為に出ると、全員真剣な顔つきになり、指示をし始めた。

しばらくして、全員が通話を終え席に戻ると、全員が開口一番

「ミユキ、あとは任せる!」

「えっ?どうゆうこと?」

理由が解らないミユキがたずねると

「いやな、タケル・ヤマト皇帝が、2ヶ月後に戴冠式を行うって事が交付されてなぁ。サナトリア連邦共和国も、国賓として招待されていて、サファイアが参加することになったんだが、エスコートする為に、俺は帰らないといけなくなった。」

「私は、サナトリア連邦共和国の国軍の最高司令官だから、サファイア大統領の護衛艦隊を任されたので、ここに来ている第一艦隊とともに帰還しないといけなくなった。」

「僕は、サナトリア連邦共和国に戻って、アケミのバックアップというか、残務処理。」

「俺とタダシは、新首都プロジェクトに行かないと、結構現場がヤバいらしい。」

頷くタダシ

「それじゃ、サヨリ捕獲は、どうするの!!」

ミユキは、さっきまでの落ち着いた雰囲気が無くなり、慌てふためいた。さらに

「それと、ミユキ。クロダ宰相さんから、ドレスの手配や礼儀作法についてのレクチャーがあるから、1週間以内にはサヨリを城に連れてきてほしいと、お願いされた。よろしく。」

コウイチにダメ押しをされたミユキは、かめちゃんの肩を掴み

「かめちゃんまで、私を一人にしないよね。」

「大丈夫です。私は、本体ごとここに残りますから。2人で探しましょう。」

その言葉で、少しホッとしたミユキだったが

「エサと、罠が仕掛けられない。どうしよう。」

と頭を抱えてしまった。

「ミユキ、健闘を祈る。」

と言ってコウイチ達が席を立ち上がった。

「もう行くの?」

「あぁ、どんなに最短ルートが出来たからって、サナトリア連邦共和国からここまで最低片道15日かかる。往復30日。向こうとこちらでの準備期間を考えたら、ギリギリのラインだからな。早めに行動するに限る。」

アケミが答えると、

「わかった。やるだけやってみるけど、間に合わなかったら、ごめんね。」


 5人が去ったテーブルで、ミユキとかめちゃんがこれからの予定を考えていた。

「ミユキさん、これからどうします?」

「とりあえず、あの()の家に行ってみましょうか。」

「サヨリさんの家の住所ってわかっているのですか?」

「まぁねぇ。クロダ宰相さんから教えてもらった、サヨリに関するデータの中に有ったから。」

と言って、ミユキが自分のタブレット端末を起動させて、必要なデータを表示させて、かめちゃんに見せた。

「ここが、サヨリさんの家?」

そこには、変哲も無い集合住宅の写真が有った。

「意外?」

「まぁ、そうですね。豪邸とは言いませんが、普通に一軒家で住んでいるものかと思っていました。」

「私も。あの娘の事だから、セキュリティーをめっちゃ強化した所に住んでいるのかと思ってた。」

「住所からすると、ここからそんなに遠くじゃないですね。」

「そうね。えっと行き方はっと。そこの駅から、3つ目の駅から歩いて10分ってところかしら。」

「行ってみましょうか?」

「そうね。居ないでしょうけど、何か手がかりでも有ったらラッキーってところかしら。」


2人は、サヨリが住んでいると教えられた、団地にやって来た。


「ここですよね?」

「住所は、ここよ。」

「なんでここに住んで居るんですか?」

「それは、サヨリに聞いて。」

2人がそう思ったのは、ここが低所得者層用の国営集合住宅だったからである。

「サヨリさんって、結構お金持ちでしたよね。」

「そうね。簡単にこの団地一帯の土地を即金で買って、建物を全て建て替えても、全然懐が傷まないぐらいのお金持ちよ。」

「だったら?」

「あの()の擬態かもね。」

「擬態?」

「この資料によると、あの娘の通勤先がね、小さな歴史研究センターなの。しかも最低労働賃金の契約社員ってなっているわ。そんなところに勤めていて、高級住宅には住めないよね。」

「そうですけど、なんでそんな安月給のところに勤めているのですか?サヨリさんならば、もっと高給なところ行けるでしょう?」

「たぶん、この歴史センターの上部団体に用があったんじゃないかなぁ。ほら、ここの上部って、この国の公安調査庁よ。」

と言って、タブレット端末をかめちゃんに見せた。

「えっ!それって。」

「そう、この国の個人管理チップの情報が集まる組織。」

「通りで私がこの国のデータベースにアクセスした公安調査庁のホームページに、サヨリさんの痕跡が有ったわけですね。」

「外から難しくても、内からなら簡単にこじ開ける事が出来たんでしょうね」

2人が、住宅の前で話していると、通りがかりのお婆さんに

「聖女様に、会いに来たのかい?」

と、声をかけられた。

「いえ、ここに住んでいる友人を訪ねてきたのですが、聖女様も、ここに住んで居られるのですか?」

ミユキは、お婆さんにそう返事すると

「そうかい、だったら良かった。聖女様は、しばらく帰って来られてないからね。うかがってもダメだよっ言ってあげたかっただけだから。」

「ありがとうございます。ちなみに、聖女様は何階にお住まいなのですか?」

「ここの705号室だよ。早く戻ってきてくれると嬉しいねぇ。じゃぁね。」

と言って立ち去って行った。

「聖女様も、ここに住んでいるのか。ますます怪しいよねぇ。」

「ミユキさん。もしかして聖女様はサヨリさんって事ですか?」

「そうよ。ちなみにサヨリの部屋は、905号室。ね、何かおかしいでしょう。とりあえず、サヨリの部屋に行ってみましょう。」


2人は、団地のポストを見てみた。集合住宅らしく全戸のポストが、並んで置かれていた。

「905号室はっと。あったあった流石に名前を書いてないなぁ。郵便も届いて無いようね。それに比べて、705号室は、溢れそうな封書の数ね。」

「そうですね。あれ?805号室は、テープが貼ってあって入れられなくなってますね。これは?。」

「それは、その部屋は、リフォームか理由があって長期間誰も住まわないから、チラシとかを入れられないようにしているのよ。」

「そうなんですか。」

「それじゃ、行きましょうか。」

「はい。」


2人は。エレベーターに乗り込み9階へ。


「ミユキさん。ここですね。」

905号室の前にやって来た。かめちゃんが呼び鈴を押すが反応が無い。

「ミユキさん、いないようです。これからどうします?」

するとミユキは、カバンから一つのカギを取り出した。

「クロダ宰相さんから預かってきたの。この部屋のカギを。」

「それじゃ、入れますね。」

しかし部屋の鍵を持ってミユキは、鍵を開けようとはしない。

「どうしたのですか?入らないのですか?」

「う〜ん、ヤバいのよ。」

「デスよね。勝手に入ったりしたら。サヨリさんから怒られますよね。」

とかめちゃんが言うが、ミユキは首を振り

「違うわよ。入るのは良いけど、この中にある罠がヤバいのよ。」

と言った

「えっ?罠?」

かめちゃんは驚いて聞き返すと、ミユキはうなづいて

「あの()が何の仕掛けもなく家を空けるって思う?」

「警報装置が仕掛けられているって事ですか?」

「普通の警報装置だったらいいわね。下手するとケガで済まないかも。」

「どうするんです!」

「かめちゃん、ここから部屋の中をスキャン出来る?」

「やってみます。」

かめちゃんが、ドアを見つめる事20秒

「とりあえず、仕掛けは無いようです。」

「じゃ、開けるわね。」

ミユキがカギを解錠して、ドアを4回ノックしてドアを開けた。

「失礼します。サヨリ、いるぅ。」

ミユキが部屋へ入るのに続いてかめちゃんが部屋に入った。

玄関で靴を脱ぎキッチンへ

「入ってすぐにダイニングキッチン、奥に四畳半かな?の洋室。隣に6畳の洋室に押し入れ収納場所、玄関の横に有るのがユニットバスか。典型的な集合住宅の住宅間取りね。」

ミユキは、ざっと間取りを確認すると、キッチンに有る食器棚を確認。

「ミユキさん。サヨリさんって結構良い食器を使っていますね。これ、全て本物ですよ。」

かめちゃんが、食器を手に取りメーカーを確認してもとに戻した。

「そうね。」

ミユキは、冷蔵庫を開けると

「まったく、酒とツマミだけじゃない。冷凍庫はっと、」

ぎっしり詰まっている冷凍食品。そのメーカーを見てかめちゃんが

「結構高級ブランドの商品ばかりですね。」

「ほんとに、楽だけ覚えてからに、自炊はしてないな。」

2人は一通り部屋の中を調べて、見つけた珈琲豆を挽いてお茶にしていた。

「ほんとにサヨリさん、どこに行ったんでしょうね。」

使った食器を洗いながら、かめちゃんが言うと

「そうね。もう一部屋探しに行きましょうか。」

そう言ってミユキが立ち上がった。

「ミユキさん。もう一部屋って、どこにあるのですか?それとも階下の、聖女様の部屋を探しに?」

「違うわよ。この部屋の中で探すの。」

「この部屋?」

「そっ、たぶん、この部屋が怪しいんだけど。」

と言って、6畳の部屋に行って、ベッドの前に立った。

「ミユキさん、そのベッド周りは調べましたよ。」

サヨリが使っているであろう、収納引出しが付いたベッド。

「さっきその収納開けたら、サヨリさんの下着が入っていただけでしたよ。」

と、かめちゃんが言ってミユキの横に立った。

「怪しい過ぎるのよ。」

「何がですか?」

かめちゃんには、何が怪しいのか解らない。

「かめちゃん、見て。ベッドメイクが綺麗過ぎるのよ。」

ベッドには羽毛ふとんが掛けられていた。枕は大きめ羽毛枕が置かれていた。

ホテル並みのベッドメイクとは言えないが、散らかっているわけでもなく普通に片付けられたベッドだった。

「普通ですけど?」

「あの()がこれをするわけがない。」

「いくらサヨリさんでも、このぐらいするでしょう?」

ミユキは、羽毛枕を触って

「ほら見て、枕がマジックテープが貼ってあって、動かないようにしてあるわよ。って事は」

と言って、枕元のマットレスの下に手を入れて持ち上げた。

すると、ベッドの下に穴が開いており、梯子が掛けられていた。

「ミユキさん、これは?」

「やっぱしね。かめちゃん、行くわよ。」

「は、ハイ」

2人は梯子を下りて行った


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