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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第3章
131/144

終戦処理3

 アケミを先頭に教会大聖堂に着き、シスターの案内で大司教の部屋に案内された。

その部屋には、4名の男性がいた。

「アルバロ・コラタ大司教、この度は無理な協力を依頼を受けて頂き、嬉しくおもう。」

タケル・ヤマト第一皇太子が、挨拶をすると

「人命がかかっていて、緊急事態なので、今すぐ見せろと言われましたので、この時間であれば、お見せ出来ると申したまで。」

不機嫌そうな表情を隠そうともせずそう返事を返した。その表情が気になって

「何か、大事な神事でも行う予定だったのでしょうか?」

ミユキがたずねると、アルバロ・コラタ大司教はミユキを見て

「貴女は、この国の者ではありませんね。皇室関係者ですか?」

「はい。私は帝国人ではありません。地球人です。今回の調査するこの2人に同行してきた者ですが、なぜ解るのですか?」

それを聞き、隣りにいた祭司が

「帝国国民ならば、個人識別チップを付けていますが、貴女方には感知しませんでしたので。」

「そうなんですね。」

たぶん、大聖堂に入るときに確認を取られたのだろう。

「何も知らずに来られましたか?」

「はい。ただ、私の友人が行方不明になっており、それを解く鍵がここの大聖堂に有るとだけ聞かせれています。アケミは、他に何か知っているの?」

ミユキはアケミに振るが、

「私も詳しくは聞いていない。タダシとマサトから、この場所を調べるのが最短じゃないか?としか」

2人の話を聞き、アルバロ・コラタ大司教は

「タケル・ヤマト第一皇太子殿下。経緯を、聞かせて下さいますかな。」

とタケル・ヤマト第一皇太子に向き直った。タケル・ヤマト第一皇太子は、見せてもらう事が最優先していて、事情説明をしていなかった事に、今更のように思い出した。

「アルバロ・コラタ大司教殿、申し訳ない。事情を詳しく説明をしていなかった。」

と言って、アルバロ・コラタ大司教に頭を下げた。

「謝罪を受け入れましょう。頭をお上げください。」

そう言われて、タケル・ヤマト第一皇太子は頭を上げた。

「では、事情の説明をしていただけますかな?」

「はい。」

タケル・ヤマト第一皇太子は、自分の婚約者が手違いで、女神と相対する『試練の間』に

入ってしまい、既に3週間が過ぎてしまっていることと、

『試練の間』には、食料はおろか飲料水も無い状態で、婚約者の現在の健康状態が不安で、

早急に救助に向かいたいが、『試練の間』に行く通路の扉は、堅く閉ざされて、開かない事

調査団が調べて解ったのは、『試練の間』に行く通路は、実は転移システムになっており、

城以外の場所に転移されている可能性が高く、婚約者の居場所が特定出来ない事

過去を調べていた技術者の一人が、城に『試練の間』が出来る前から、教団では女神様から

御神託を受けていた事実を知り、教団の大聖堂には女神様が降臨される部屋が存在する事から、

同様なシステムが存在するのではないか?と推測

それを調べたら、どこへ転移されたかが解るのではないか。

と、今までの経緯を、教団側の首脳陣に真剣に話した。

一通り話を聴いたアルバロ・コラタ大司教等4名の教団首脳陣は、

「約束ですから、『神託の部屋』ヘご案内いたしましょう。」

と、承諾した。話を聞いていたミユキは、

「アケミ、私は外で待っているわ。」

「ミユキ?」

「私がついて行っても、力になれそうもないし、それに大勢で行ってもご迷惑だろうしね。」

「いいの?」

「うん。終わったら連絡ちょうだい。それまでこの辺を観光してるから。」

「わかった。終わったら連絡するから、確か大聖堂の前にカフェがあったから、そこで。」

「了解。」

と言ってミユキは、部屋を出ていった。


教会側の案内に従い『神託の部屋』へと向かっていた。

教団側からは、アルバロ・コラタ大司教を筆頭に、枢機卿が2人、大司祭2人の5人。

帝国側は、タケル・ヤマト第一皇太子を筆頭に、アケミ、かめちゃんず、護衛の近衛兵2人の6人。


大聖堂の奥から下へと続く階段を3フロア分降った先にひっそりとその場所が有った。

アルバロ・コラタ大司教が、部屋の扉前で

「こちらになります。今回は、人命に関わる緊急事態と言われましたので、ご案内いたしましたが、本来ならばこちらは、我が教団にとって神聖な場所となっており、公開しておらず教団以外の方が、入れる場所ではないということを、お忘れなく。」

アケミが代表として

「つくづく、教団には無理な協力を強いていることは、重々承知しています。」

と言って、頭を下げた。

「では、どなたが入られるのですか?」

「私達、2名がうかがいます。」

かめちゃんずの2人が前に出てきてお辞儀をした。

かめちゃんずの2人は、大司祭の手による身体検査をされて、金属製の物やカメラ類が持っていないことを確認された。

「持ち込む物は?」

「こちらになります。」

と言って、かめちゃんずが差し出したのは、スケッチブックと32色の自然素材で出来たクレパス。

それも、詳しくチェックされた。

「これだけですね。それにしても、スケッチブックが多いようですが?」

確かにスケッチブックが40冊、クレパスが5箱、入室できる時間は、1時間と考えると多いと見える。

「せっかく滅多に入れない非公開の部屋なので、しっかりスケッチしたいと思いまして。いけませんか?」

幼く見える子供バージョンのかめちゃんが、上目使いでアルバロ・コラタ大司教に聞くと

「まぁ、良いでしょう。それ以外持ち込めませんが、よろしいでしょうね。」

「はい」

「では、こちらへ。」

アルバロ・コラタ大司教とかめちゃんずの3人は、『神託の部屋』へと入って行った。

部屋の中は、10メートル四方の部屋で、地下室の為窓は無く、細かな女神に関する極彩色の壁画が、壁一面だけでなく天井にまで描かれていた。

「凄い。」

壁画に圧倒されるかめちゃんずだったが、アルバロ・コラタ大司教が部屋の中心に手招きして2人を呼んだ。

部屋の中心の床には、星形模様の中に、円が描かれた場所が有った。

「お二人には、この結界の中に入って頂きます。私が声をかけるまで、絶対にこの結界からは出ないでください。」

と真剣な顔で指示をした。それに対して大人バージョンのかめちゃんが

「もし出たらどうなります?」

質問すると

「生命の保証は出来ません。」

と一言。子供バージョンのかめちゃんが、おびえる様に

「怖い」

と言って、大人バージョンのかめちゃんにしがみつくと、アルバロ・コラタ大司教が

子供バージョンのかめちゃんの視線に合わせるようにしゃがんで

「怖がらなくとも良いです。この結界から出なければいいだけですので。」

と、優しく言って、頭をなぜた。

「わかりました。」

2人は、背中合わせになり、床に書かれた模様の中心に座り込んだ。それを見て

「そうやって座って居れば、大丈夫です。それでは、私は出ますので。時間が来たら迎えに来ますので、それまでそこに居てください。」

そう言ってアルバロ・コラタ大司教は、2人を残して部屋を出て扉を閉めた。

「では、これより、1時間とさせていて頂きます。」

アルバロ・コラタ大司教は、タケル・ヤマト第一皇太子とアケミに対してそう伝えた。それに続けて

「わたしどもは、何かあれば対応せねばなりませぬので、こちらで待機いたしますが、皆様はどうなさいますか?」

アルバロ・コラタ大司教がたずねると、タケル・ヤマト第一皇太子は、

「ここで、待たせてもらう。」

タケル・ヤマト第一皇太子は、そう答え閉まった扉を凝視していた。

アケミは、

「私も、待たせてもらう。ところで、アルバロ・コラタ大司教殿。来てから気になっているのだが、大聖堂の警備がかなり厳重になっているが、何かあったのか?」

アルバロ・コラタ大司教にたずねると、アルバロ・コラタ大司教が困ったような顔付きになり

「2週間程前に、罰当たりな賊が大聖堂内に侵入いたしましてな、まだ捕まっていないのです。

幸いなことに、盗まれた物は無いのですが、どうやってこの『神託の部屋』迄たどり着いたかも

不明なので、現在、警察と警備会社の方で調査中なのです。」

と、顔を顰めた。

「この場所迄来たのですか!その賊は。」

アケミは驚いた。ここに至るまでの道筋は、無数の分岐路がある上に、監視カメラ類も大量に設置してあった。

道筋を知っていなければ、たどり着けない構造になっていた。

「そうなのです。分岐路を一度も間違わず、監視カメラの死角を掻い潜り、途中に仕掛けた

人感センサーにも引っ掛らずこの『神託の部屋』の前迄たどり着いたのです。」

忌々しいそうに口にするアルバロ・コラタ大司教だった。

「どうして、その賊が侵入したことが、わかったのですか?そこまで徹底して隠密行動していたのでしょう?」

アケミが聞くとアルバロ・コラタ大司教は

「たまたまなのですが、内戦勃発直後に人感センサーを1つ増やしていたのです。」

と言って、女神の部屋の扉の上を指さした。

そこには、真新しいセンサーが光っていた。

「どうも賊は、このことは知らなかったようで、このセンサーが感知して警報が鳴り響いて、

我々も賊の侵入を知った次第で、唯一賊の姿を写した監視カメラはそこの1台のみ。」

と言って指さした天井にある監視カメラ

「しかし写った映像は、通路の角を曲がる僅かな後姿と影で、性別どころか身長も定かでない映像しか残っておらず。その映像だけでは、個人の特定出来ない状態なので、捜査は難航しているようです。」

「他の監視カメラには、映ってないのですか?」

「はい、それは見事っと言えるぐらい映っていません。あのカメラに映ったのは偶然というか、

賊が鳴り響く警報に驚いて一瞬死角から出てしまったと考えられます。」

「そこまで用意周到な賊が、ここで何をしようとしたのでしょうか?」

「わかりません。ここは、我が教団とって聖域ですが、宝物があるわけでもなく、内装に至っては、

歴史的な壁画がある程度で金属製の物は何一つありませんので、盗める物が無いのですが。

何故、そこまで徹底調査してここまで来たのか、理解ができないのです。そこまで調査しているならば、ここには何も無い事を知っているはずなので。」

「確かにそうですね。」

「それに、ここの部屋の扉は、私以外に2名の枢機卿が持っていまして、その3本の鍵がなければ開かないのです。現に確認をしましたら鍵は掛っていました。」

「何をしに来たのだろう?」

「わかりません。警察も全力を上げて捜査をして頂けるようですが、内戦の動乱でしたから、

捕まえれるかわかりません。」

アケミが、

「ところでアルバロ・コラタ大司教殿。先ほど、神儀の予定が有ったようなことを、言いかけてやめられたようだが、もし良かったら、ここで行おうとしていた神儀と関係があるのでは?

もし良かったら、聞かせてはもらえないだろうか?」

と聞くと

「なぜ?貴女様に?」

「いや、ここに至るまで高位の方が多いように思えて。それに、『神託の部屋』迄の道が、

幾重にも厳重な扉が存在し、いくつもの分岐路が存在することも気になりまして。

最大の理由は、たまたまこの時間に『神託の部屋』が使える状態であった事ですね。

普通は、開けてはいない部屋に、使える状態になっていた事を考えると、何か重大な神儀を

行う予定だったが、出来なくなったと考えるのが、妥当と思ったのだが、違いますか?」

アケミは、アルバロ・コラタ大司教の目をみて伝えると、アルバロ・コラタ大司教は、静かに息を吐き

「よろしいでしょう。扉を開く迄時間が有りますし、お話をいたしましょう。」

アルバロ・コラタ大司教の横で控えていた、一人の司祭が、

「アルバロ・コラタ大司教。よろしいのでしょうか?」

「ベックリー司祭。かまわないでしょう。特に、タケル・ヤマト第一皇太子殿下には、聞いてほしく思います。」

「私?」

「はい、本来ならば2年前から準備を進めていた85年振りの神儀が、一度の延期を挟み今、行われていたはずなのです。」

「85年振り?」

「そうです。今日は、我が教団最高位の聖人・聖女の儀が行われる予定だったのです。

この神儀が行われ聖女が誕生した証には、約900年振りの聖女誕生となるはずでした。」

と言って残念そうな眼つきを神託の間の扉に向け

「最初に、神儀が延期に成った理由は、前皇帝が病に伏し崩御されたため、延期せざるえませんでした。

前皇帝の喪が開ける日を待ち神儀をするべく準備をしておりましたが、皇太子殿下の兄弟喧嘩による、

国内での内乱状態となり、聖女候補者に何かがあってはいけない、と主星から安全な場所へと避難させるはずが、

内戦状態の混乱で聖女候補者が行方不明になる事態となり、捜索に手を尽くしましたが、

発見に至らず、儀式開始ぎりぎり迄待ちましたが、今日の日を迎えてしまった訳です。」

タケル・ヤマト第一皇太子は、なんとも言えぬ顔付きになり

「誠にすまない。改めて謝罪をしよう。」

と、頭を下げた。

「頭をお上げください。聖女候補者は、女神の寵愛を受けた方ですので、きっとどこかで、

健やかに暮らされていると思います。」

アルバロ・コラタ大司教は、穏やかな口調でそう言った。それを受けてアケミが

「申し訳ない。もう少し我々も、早く介入する事が出来たならば、事態は変わっていたかもしれない。」

と言って頭を下げた。

「いえ、サナトリア統一連邦共和国に対しては、我々は感謝しかありません。」

と微笑みを浮かべそう言った。

「感謝?」

「そうです。貴方様が来られなければ、この国はもっと悲惨な地上戦へとなっていたでしょう。

貴方様の介入があればこそ、この内戦の早期解決に繋がったと思われます。

それと、大量の物資援助していただいた事も、信者達を通じて知っております。これぞ、女神様の導きでしょう。」

と言ってアルバロ・コラタ大司教は、『神託の部屋』に向かって祈りを捧げた。

「そう言ってもらえるのであれば、我々としてもありがたい。ところで、聖女候補者が見つかれば、儀式は行われるのだろうか?」

「いえ、神儀の時期を逃しましたので、再度神儀を行うためには、早くて7年後となるでしょう。」

「星廻りでか?」

「はい。今回のタイミングが最良だったのですが、主星の位置が現時点で神儀に適した位置ではありませんので、主星が最適位置に近づくのは、早くて7年後となります。しかし、今回程従星廻りが良くなくて、全ての星廻りが最高位の時を待つならば、328年後となるでしょう。」

「7年後に神儀が、恙無く行われる事をお祈りする。」

アケミが言うとタケル・ヤマト第一皇太子も

「私からも、力添え出来ることがあれば、協力しよう。」

と頷いた

「ありがとうございます。」

アルバロ・コラタ大司教は、静かに微笑んだ。

「それほどに選ばれた聖女候補の方って、どのような方なのですか?」

タケル・ヤマト第一皇太子がたずねると

「歳は、今年47歳になられる御婦人なのですが、そうとは思えないほど若々しい方で、

女神の教えに造詣が深く、慈愛が身体から滲み出ているお人柄で、今までそのような方が在野に

居られたとは、我が教団は、何をしていたのかと、恥じるばかりです。」

と、アルバロ・コラタ大司教がこたえた。

「ほう、アイツとは、正反対の性格だな。」

アケミがつぶやいた。タケル・ヤマト第一皇太子が

「言ってはなんですが、聖女候補方の年齢がお高いようなのですが。」

アルバロ・コラタ大司教は、苦笑しながら、

「それに至っては、先程にも申しましたが、教団としては恥じるばかりです。なんせ、彼女は、

我が教団の信者ではなかったのです。」

その言葉にタケル・ヤマト第一皇太子が

「えっ?信者ではない者が、聖女の候補に成れるものなのですか?」

驚きの声を上げるが、アルバロ・コラタ大司教は

「他の神を信仰されている者が、普通は成れません。」

と、静かに答えた。

「でしょうね。ではなぜ?」

「我が教団にとって幸いなことに、あの方は、信心はあれど信仰は無かったのです。」

それを聞いて、アケミとタケル・ヤマト第一皇太子は、怪訝な顔をした。

「あの、変ではないですか?信心するけど信仰してないなど。」

タケル・ヤマト第一皇太子が問うと

「あの御方は、神の存在を、否定しませんでした。だが宗教については拒否されました。

全ての存在に神が宿ると申されまして。」

「全ての存在に神が宿る?そんなことが?」

「そうですね。」

タケル・ヤマト第一皇太子とアケミの発した異なる感想を聞いてアルバロ・コラタ大司教は、目を細めた。

「タケル・ヤマト第一皇太子殿下の感想が、普通だと思います。アケミ様でしたか、なぜ肯定できますか?。」

とアケミが問われ、ちょっと困った顔をするが

「私は、無神論者なので詳しくないですが、私の生まれた国には、八百万の神と言って

沢山の神様が存在するのですよ。」

「ヤオロズノ神?」

「八百万柱以上の神様って言う事なんですが、ヤオロズという意味が、沢山って言う事なので、

それこそ、火の神、水の神と、様々な神様が存在していると言われているのです。」

「精霊ではなく?」

「はい。」

「あの方もそう申されてました。全てに神が宿るのに、一柱のみを敬うわけにはいけない、と。」

と言ってアルバロ・コラタ大司教は、祈りを捧げた。

「アルバロ・コラタ大司教殿。そのような稀有な方をどうやって探し出されたのですか?」

タケル・ヤマト第一皇太子が聞くと

「偶然、いや、女神様の思し召しでしょう。」

そう言ってアルバロ・コラタ大司教が語りだした。


 ある日、アルバロ・コラタ大司教が大聖堂でのお勤めを終え廊下を歩いていると、

数名の修道士から、様々な質問を受けることになった。どの質問も教団の核となり得る教えに対するものだった。

それも解釈を間違うと、教え自体が矛盾に満ちたものに成りかねない重要な教えであった。

アルバロ・コラタ大司教が思った通り、修道士達は間違った解釈を信じていたようで、一つ一つ優しく正しい解釈を教え、間違った解釈をしないように諌めた。

すると、1人の修道士が

「あの女性の言う事の方が正しい教えだったのか!なんて、我々は恥知らずだったのだろう」

と言って、懺悔をその場で始めてしまった。

それに倣い、その場にいた修道士全員が、懺悔を求めてアルバロ・コラタ大司教に許しを得ようとした。

アルバロ・コラタ大司教が、突然全員が懺悔を始めた理由を聞くと、1人の修道士が答えた。

それは、布教活動の一環で辻説法を行っていたところ、一人の女性が近づいてきて

「女神様は、そのようにおっしゃっておられませんよ。」

と言ってきたという。

修道士は、教団信者でもないその女性と女神の教えについての論争をしたが、全て女性に

論破されてしまったという。

それがその一人の修道士ではなく、各地で布教活動していた修道士達全てが論破されてしまった。

そして、別れ際に彼女に対して酷い事を言って別れたが、自分達が間違っていたのか、

それとも女性の語った方が正しかったのか?、それを確かめたくて

アルバロ・コラタ大司教直々に教えを聞きたかったと言う事だった。

結果、件の女性の正しさが証明されてしまったのだった。そのため、彼女に対して懺悔をしているのだという。

それを聞き

「ほほぉ。この教えを正しく解釈し、それ以外にしっかりとした考えを持って論じるとは、

その女性に、一度会ってみたいものですね。」

その女性に興味を持ったアルバロ・コラタ大司教は、極秘に身元調査と普段の生活を1年間調査させた、

 その結果、清廉潔白な人格者であり、宗教の垣根を超えてあらゆる貧困層の支援団体、

孤児院等に、かなりの資金や物資の支援を行っていることがわかってきた。

 それと、各宗派の若い修道士達や修行僧達から慕われ、各宗派から入信を誘わられるものの、全て断っていることもわかってきた。

修道士達の言葉では、入信してくれそうにないので、宣教師や司祭が入信してくれるように

彼女の元に赴くが断られていた。

 教団一部の信者まで巻き込み、『彼女こそ、聖女である!』といった機運が持ち上がり、

教団トップに直談判する者まで現れる状態に。

ついにアルバロ・コラタ大司教自ら彼女を入信させるべく会いに行くが、やはり断られた。

しかし、彼女の人柄に惚れたアルバロ・コラタ大司教は、時間を作っては彼女に会いに行った。

その関係が半年間にも及び、次第に彼女の心境にも変化か見られるようになった頃、

彼女の方から、『今までの通りの生活が続けられるのなら。』という条件付きではあるが、

入信するとの返事を受け取った。

それに対して教団側は、『聖人・聖女の儀』を受けてもらえれば、今までの通りの生活を

しても良いと返答。

こうして、彼女が教団に入信してきた。

それから、彼女はこの大聖堂へにも足げに通うになり、アルバロ・コラタ大司教は、その度に案内役を買って出て、よく話をした。

という話を、アケミとタケル・ヤマト第一皇太子に熱っぽく語ったアルバロ・コラタ大司教だった。

側にいる枢機卿達や祭司達も、うっとりするような目つきでアルバロ・コラタ大司教の言葉を聞き入っていた。

アケミとタケル・ヤマト第一皇太子は、只々圧倒されて聞くしかなかった。

「アルバロ・コラタ大司教殿、素晴らしい女性なようですね。もし良ければ、名前を教えて頂けませんか?私の方でも行方を探させてもらいますよ。」

タケル・ヤマト第一皇太子が、アルバロ・コラタ大司教の僅かな呼吸の息継ぎの瞬間に言葉を挟むと、アルバロ・コラタ大司教は、少し照れたような顔付きになり

「すいません。ついつい彼女の話になると、長話になってしまい申し訳ない。」

と、頭を下げた。

「いえいえ、大司教たる貴方様が夢中になってしまうような素敵な女性なのでしょうから、仕方がないでしょう。」

その時、無機質なデジタル音が鳴り響いた。それを聞いてアルバロ・コラタ大司教は、今までの中高生が憧れのアイドルを話すような熱っぽい顔から、冷静な大司教の顔付きになり

「おや、もう時間のようです。扉を開きます。」

と言って扉を開いた。中に向かって

「お二人とも、出てきてください。」

と声をかけた。

かめちゃんずの2人は、手にスケッチブックとクレパスを持って部屋から出てきた。

「アルバロ・コラタ大司教様、この度はこのような素敵な壁画の写生をさせていただき、

ありがとうございました。」

と2人してお辞儀をした。

「ほほぉ。良い絵が描けましたかな?」

アルバロ・コラタ大司教が問うと

「はい!このように!」

と言ってスケッチブックを開いてみせた。

そこには、幻想的な壁画が写真と見間違えるような精密画が描かれていた。

「こ、これは!」

そこにいた全ての司教や祭司達がどよめいた。アルバロ・コラタ大司教が、

「もう少し、よく見せてもらえるかな。」

「どうぞ。」

アルバロ・コラタ大司教がかめちゃんずから、スケッチブックを1冊受け取ると中を見分した。

どのページを捲っても、素晴らしいスケッチが写真画質で描かれていた。

「これを、あの短時間で描いたのですか?」

「はい!もう少し時間を頂ければ、もっと詳細に描けたのですけど。」

他の司教や祭司達もスケッチブックを眺めて絶句していた。中には、スケッチブックの絵と

部屋の中を見比べている者も。

アルバロ・コラタ大司教は、タケル・ヤマト第一皇太子に向かって、

「タケル・ヤマト第一皇太子殿下、この絵画を譲って頂く事は出来ないだろうか?」

かめちゃんずのスケッチブックの絵画に感動をしていた、タケル・ヤマト第一皇太子は、その言葉で

「いや、彼女等が描いた絵画なので、私には。」

すると、かめちゃんずが

「別に良いですよ。ただ調査の一貫で描かさして貰いましたので、判断は、タケル・ヤマト第一皇太子殿下様が決めてください。」

と言ったので、タケル・ヤマト第一皇太子は

「我々が教団にかけた迷惑に若干でもお詫びになるのなら、調査が終了した時でよければ、

お譲りいたします。」

と返答した。

「ありがとうございます。この部屋の内部では電装機器がうまく働かず撮影出来なかったのです。

まさか、これ程の精密絵画にて描写できるとは思いませんでした。正しく女神様のお導きです。」

と言って部屋へ、祈りを捧げると

「では、戻ります。」

と言って歩き出した。アケミとかめちゃんず、タケル・ヤマト第一皇太子は、その後に続いて行った。



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