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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第3章
130/144

終戦処理2

 サヨリが、試練の間と呼ばれる場所に潜り込んで、3週間がたった。


 その間、帝国は、内戦のさなか混乱していた行政機関が正常化し、サナトリア統一連邦共和国からの救援物資が大量に届き、止まっていた物流が動き出し、物価水準が内乱前の価格まで落ちて落ち着いてきた。


 復旧作業が急ピッチに進められ、戦闘で破壊された城の一部も修繕されていった。

外からの見た目は、ほぼ修繕が終わった城だが、玉座の間の壁の一部は取り除かれ、

数多くの科学者や技術者が、連日調査の為に入り浸っている状態になっていた。


 サヨリが入った『試練の間』と呼ばれる場所への通路と呼ばれる、床から浮いた金属製の

塊の調査のためだった。


 サヨリが入って3日目の時点で、何かあったと関係者全員が思った。

なぜなら、タケル・ヤマト第一皇太子からの話によると、過去に試練の間に入った皇帝は、

最短で5時間、最長で2日で帰還してきたということだった。


 そもそも、皇族以外の人物が入ったことがなく、書面に書かれている内容通りの神事を

行ったとしても、時間が経過し過ぎている。


 試練の間には、食料や飲料水がない事は、残されている記録簿に書かれおり、

最長2日間籠もっていた62代皇帝の時は、脱水症状と飢餓感が酷く這って出てきたと

記録されていた。


 そのような『試練の間』に、サヨリが入ってすでに5日が過ぎ音沙汰がない。

アケミは危機感を感じ、すぐにサファイア大統領に連絡して、サナトリア統一連邦共和国中から

優秀な科学者に技術者を集め、帝国へと送り込んだ。

タケル・ヤマト第一皇太子からの相談で、クロダ宰相も帝国中の科学者に技術者を集めて

ことにあたった。

 最初は、ぎこちなかったサナトリアと帝国のチームだったが、1週間もすると、酒宴で

お互いの持論を議論する仲になっていた。

 配線や配管の類が無いのに、どうやってこの塊が宙に浮くのか?エネルギー源は、

どこに有るのか?綿密に調査し調べた結果、解った事は、一種の転送装置ではないか?

ということだった。



「転送装置?」

対策本部の部屋でアケミは部下から 報告を聞いて、顔をしかめた。

「古代の超文明が作り上げた、転送装置である可能性が高いということです。」

「わかった。で、どうするのだ?」

「現在、サナトリア統一連邦共和国より、タダシ様とマサト様両名を中心のした解析チーム

を編成し、技術分析に当たる事となり、現在、第一会議室にて、サナトリア統一連邦共和国側のスタッフと帝国側のスタッフ合同会議を行っております。」

「アイツ等も来たのか。」

アケミは苦笑して

「わかった。他に報告がなければ、下がって良い。」

「はっ!失礼いたします、」

報告の済んだ部下は、踵を返し部屋を出ていった。

すると入れ替わるように、2人の男性が部屋に入ってきた。

「よっ!アケミ。お久しぶり!」

「ジャマするよ」

「お前等なぁ。ノックぐらいしろよ。」

「あぁ、悪い悪い。」

全然悪いと思っていない口調で、軽く謝罪してアケミの側まで来ると笑いながら

「いやぁ~、サヨリの奴、なかなかな事をしてくれたなぁ。」

マサトがアケミの前の椅子座るとその横の椅子にタダシが

「まったくだよねぇ。マジで女神様を調教してんのかねぇ。」

と言いながら座った。

そんな2人を見て

「で、どうするんだ?」

マサトが両手を上げて、お手上げのポーズをとって

「どうしたもんやら。」

タダシが頭をかきながら

「だよねぇ。」

と、困った顔をした。それを見てアケミが

「で、何か解ったのか?」

と問うと、マサトが

「とりあえず、あれが浮いているのは、力場で固定されているから。」

「そのエネルギー源は、何処から?」

「たぶん、向こう側から供給されているね。」

「向こう側?」

「そう。あれって転送装置というより次元トンネルかなぁ。」

と、今までの仮説を組み合わせた結果をアケミに伝えると、タダシが

「そうだね。いろいろ状況を突き合わせてみると、それがしっくりするんだよね。」

「次元トンネル?というと、別の空間と繋いでいるってことか?」

「そうだね。」

「どことだ?」

アケミは、促すがマサトが

「それに関して、もう一つ、気になる事実が出てきてね。」

「何だ?気になる事実って」

「女神様は、この国ができる前から居るんだよ。」

「国ができる前から?どういう事だ?」

アケミは少し理解が出来なくて、問いただすと、タダシが

「800年以上前だが、この国がここに首都を移す前にな、この星に聖メビーナルー神国

って宗教国家が有ったんだ。その国っていうのが、女神様の御神託によって政が決まる国

だったらしい。今の帝国が戦いの末、その国を滅ぼして、併呑してここに遷都して来たんだ。」

「それが?」

そんな古い話がどうした?と言った顔で聞くアケミだが、マサトが

「その御神託が降さった場所が、まだ有るんだよ。」

と言った言葉に驚いた

「なんだと!それはどこだ!」

「聖メビーナルー教の総本山、聖メビーナルー教グランフト教会の大神殿内にある

『神託の部屋』」

「ちょっと待て!聖メビーナルー神国って滅んだ国じゃないのか?滅んだ国の象徴が

なぜ残ってるんだ?」

アケミは、意味が解らないといった感じだったが、マサトが

「国は、滅んだけどな、宗教としては残っているんだよ。」

と言うと、タダシが

「で、その大神殿が在るのは、この城の向こう側。ほら、すげぇ教会が見えるだろう?

あれだ。」

と言って、窓から見える巨大な教会を指さした。

「じゃ、もともと教会のあった場所に、この城を建てたのか?」

アケミは『試練の間』が、『神託の部屋』と思って聞いたが

「残念。城を建てた後に、女神様の部屋を城に作ったのが、『試練の間』らしいぞ。」

「それ以降教会では、御神託が降らないらしいよ。」

意味が解らなくてアケミが

「うん?そういうことは、『神託の部屋』は、まだ教会に有るのか?」

と聞くとマサトが

「有るみたいだね。御神託を聞く以外に数年に一度、聖人もしくは聖女を選出する儀式が

あるらしい。その時にも、使用する部屋なんだと。本来は、今年に行なう予定だったらしい

んだが、内戦状態になったために、延期したらしい。」

「で、それが何なんだ?」

アケミは、2人が何が言いたいのかわからなくて問うと

「そこからなら、女神様の部屋にアクセス出来るんじゃないかなぁって思ってさ。」

「はぁ?そんな神話みたいなものに、」

「神話じゃないって。未だに稼働している超古代文明のオーパーツだよ。」

「だとしても、それが本当に動くのか?800年以上動いてないんだろう?大丈夫か?」

「まぁ期待はしていないよ。ただ、システム構造が確認できるかもしれないからね。」

「どういう事だ?」

アケミは、2人がしたいことが解ってきたが、あえて問うと2人が交互に

「今よりも技術力がない時代に、城に次元トンネルなんぞ造ったんだ。何かを模範しないと

そう上手く造れないだろう?じゃ、何から模範した?」

「1番考えられるのは、教会の『神託の部屋』じゃないかな?」

「それをベースに、アレンジをしたのが、城に有る、『試練の間』だろう。」

それを聞きアケミは

「じゃ、早速調査しに行かないと」

と言ったがマサトが

「すでに、タケル・ヤマト第一皇太子様が動いてくださっている。」

「サヨリのどこに惚れているんだ?って言うより、溺愛状態だな、あれは。」

「人の道を踏み外さなければ良いんだか。」

「それは、言えるな。」

3人は、苦笑してしまった。そのタイミングで、受付をしているアケミの部下が入ってきた。

「アケミ元帥殿。タケル・ヤマト第一皇太子殿下が面会を求められていますが、いかがいたしましょう?」

3人は顔を見合わせて、しばし無言の間があって、アケミがおもむろに、

「御通ししろ。」

と、返答。それを聞き、部下は

「了解しました。」

と言って部屋を出ていき、しばらくすると、先ほどの部下に案内されたタケル・ヤマト第一皇太子が現れた。

「突然に押し掛けて、申し訳ない。」

タケル・ヤマト第一皇太子が部屋に入室してきて、アケミ以外に2人来客らしい人物を見て

第一声が謝罪の言葉からだったが、その2人がマサトとタダシだと気づき

「お二方も、此方にいらしたのか。」

「タケル・ヤマト第一皇太子殿下、お気になさらずに、コイツラは勝手に来ただけですので。

で、ご要件は?」

アケミは、2人を立たせてタケル・ヤマト第一皇太子に席を勧めると、2人に会釈をしてから

席に座り用件を話しだした。

「そちらのお二方からもお話をお聞きしているかも知れませんが、サヨリさんが『試練の間』に

入って既に3週間が過ぎております。過去の事例から想定すると、サヨリさんの健康状態が

深刻な状態になっている可能性が高く、サヨリさんを救出するために各方面からの協力を

得て、調査の結果、次元トンネルらしきものと判明しました。」

一旦話を区切り、アケミを見る。アケミは

「それについて、この2人より報告を得ています。」

「では、同じような技術を用いた施設が存在することもお聞きしていますか?」

「聖メビーナルー教大神殿、『神託の部屋』ですね。」

「はい。私自身が教会に掛け合いまして、聖メビーナルー教大神殿、『神託の部屋』を

調査させて欲しいと交渉しましたところ、いろいろ断りの言葉を申してきたのですが、

なんとか応じてもらいました。」

タケル・ヤマト第一皇太子は、晴れ晴れとした顔でアケミに伝えた。

「本当ですか!教会側としては、神聖な場所でしょう。良く応じてくれましたね。」

アケミが驚くと、はにかみながら

「まぁ、ちょっと強く迫っただけですので。」

3人は、

『いやいや、あなた、国家権力で脅しましたね。』

と、心の中で思っていたが口には出さなかった。

タケル・ヤマト第一皇太子は少し困った顔をして

「ただ、条件付きなのです。」

と言った。アケミは

「条件と言いますと?」

「公開する時間は、明日朝、7時から1時間のみ、『神託の部屋』入れる人数は最大2名、

性別は、女性であること、持ち込めるものは、自然素材の物に限る。ということなのです。」

それを聞きタダシが

「明日の7時からって、後10時間強って、しかも女性で2名、持ち込めるものが自然素材って、

オイオイ、調査機材持ち込み不可って事か。」

と言って頭を抱えた。アケミが

「メンバーは、変えられないのですか?それに、調査機材を持ち込めないなんて。」

苦情を言ったが、タケル・ヤマト第一皇太子も

「そこは、強く交渉したのですが、神聖な場所ということで、絶対、何をされようが譲れない、と。

同じように、機材の持ち込みは、戒律で定められているので、絶対不可ということです。」

(結構脅したけど、教会側が屈しなかったのね)

「そうですか、仕方がないが、タダシ、お前のところに腕のいい女性技師いるか?」

「居ることは居るが、サナトリア国内にだぞ?10時間以内に、ここに来ることは不可能だよ。」

そこへタケル・ヤマト第一皇太子に、

「お二方、たとえ腕の良い技師であっても、調査機材が持ち込めないのですよ。」

と言われそれに気づき、タダシとマサトは、

「そうなんだよなぁ。」

「どうやって調べる?」

と、頭を抱えてしまった。その横でアケミは、どこかに連絡をしていた。

「そこに居てくれて助かった。今すぐこっちに来てくれないか?………………

かまわないが、そっちの仕事は大丈夫なのか?……………わかった。なるべく急いでくれ。」

と言って通話を切った。

「アケミ、どこに連絡していたんだ?」

タダシが聞くと

「お前等、最も適任なものが居るだろう。忘れているのか?」

アケミが呆れたように言うと

「適任者?」

「時間内になんとかなるのか?」

「アルキメデスにいるところを捕まえた。最高速で来るから、3時間程度で到着するだろう。」



3時間後


 輸送船で混み合う帝星の港に、一際目を引く1隻の大型船が入港してきた。

港湾ギルドは、事前の指示通りに旅客船用3番埠頭へと誘導。


埠頭へと着岸すると、ムービングデッキを接続し気圧調整後、到着した船より3名の客人を迎えた。

出迎えたのは、タケル・ヤマト第一皇太子、アケミ、タケル、タダシの4名

「忙しいところ、来てくれてありがとう。早速で悪いが、打ち合わせに入らせて欲しい。」

アケミが挨拶をすると

「仕方がないわよ。あの子(サヨリ)絡みなんだもん。」

ミユキが返事し

「ところで、そちらの方が?」

ミユキがアケミに聞くと

「紹介が遅れた。彼が、サヨリの婚約者のタケル・ヤマト第一皇太子殿下だ。」

少し驚いた顔をしてミユキが

「はじめまして。アケミとサヨリの友人の矢野美由紀と、いいます。」

と言って、タケル・ヤマト第一皇太子に頭を下げるミユキ。

「いや、こちらこそ。サヨリさんと親しくさせていただいています。タケル・ヤマトといいます。」

と挨拶すると、ミユキの後ろに控えていた2人が前に出てきて微笑みながら

「自立支援型高速強襲重巡洋艦タートルエクスプレス一番艦、タートルエクスプレス所属、有機コミュケーション支援型アンドロイドの亀山です。今回の調査は、私達2名が行いますので、よろしくお願いいたします。」

と、声を揃えて挨拶をした。

「こちらこそ、調査をお願い……?アンドロイド?」

タケル・ヤマト第一皇太子は戸惑った。どう見ても、可愛らしい雰囲気の微笑みを浮かべている、

姉妹としかみえない2人の少女

「アケミさん。この方たちは?」

アケミに質問してみるが、

「後で説明する。今は、時間がもったいない。宙港の会議室を押さえている。そこで打ち合わせを行う。」



宙港内の会議室で、今回の経緯と今から行う調査についてアケミは、ミユキとかめちゃんずに説明をした。

特に質問とかは無く、かめちゃんずからは調査方法についての説明が行われた。

調査方法は、4つの方法、

1,可視光線による撮影 

2,電磁波による透過撮影 

3,磁力波による透過撮影 

4,重力波による透過撮影 

を同時に行い、可視光線による撮影以外は半径300メートルの範囲を精査する。

これらに対し、タケル・ヤマト第一皇太子から質問がされた。

「それほどの撮影調査をしようとすれば、かなりの機材搬入しなければならないか、機材の持ち込みは禁止されているのだが、その点はどうするのですか?」

その質問に対して、大人バージョンのかめちゃんが

「それは、私達が全て対応してますので。まぁ、あと2体あればもっと精細な物が出来るのですが、今回は仕方がないですね。」

その返事に戸惑いながらタケル・ヤマト第一皇太子は、

「そう言うことではなく、失礼ながらあなた達は、本当に人間ではないのですね?まだ信じられないのですけど。」

「はい。私達は限りなく人に似せて造られておりますが、人ではございません。いま示しました全ての測定器は、この身体に標準装備として内蔵されております。」

と、言って自分の胸元に指差すかめちゃん

「尚且つ、出力的にはタケル・ヤマト第一皇太子殿下もご存知のサナトリア統一連邦共和国軍が使用しておりますRX−88より有りますよ。」

と言って微笑んだ。タダシがタケル・ヤマト第一皇太子の肩をたたきながら

「皇太子殿下。まっ、心配する必要は無いよ。かめちゃんずに任せておけば、しっかり調査してくれるさ。」

タケル・ヤマト第一皇太子は、先の城攻略に投入された、大型戦闘ロボよりも目の前の少女達の方が強いと聞かせれて、驚くしかなかった。

「そろそろ時間だ。行くか。」

と言って、アケミが会議室を後にした。



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