サナトリア事変1
長いようで短い亜空間航行での2日間、まもなく通常空間にジャンプアウトする
全員受け持ちの座席に着いて、準備していた。
「どんな、世界が広がっているんでしょうねぇ。」
美由紀がうっとりとした表情で、モニタを見つめていた。
「無限に広がる大宇宙、 な星空なのは間違いないなぁ。」
幸一がとぼけた感じで答えた
「なにそれ?ロマンが有るのか、無いのか判断しにくい」
明美はしかめっ面をした。
「まもなく、ジャンプアウトします。各員衝撃に備えてください。」
かめちゃんの注意喚起で、少し緊張感が艦橋に走る
ジャンプアウトと同時にモニタに映し出された光景は、数十隻の艦艇のグループに別れての、艦対戦の模様だった。
「なに!あれ!」
「どこかの星系軍が、交戦しているようですね。」
かめちゃんが、観測データからそう判断した。
「交戦を避けるために、回避行動に入ります」
その時、さよりが
「かめちゃん、通信が入ったけど、どうする?」
「どちらからですか?」
「両方から。」
「とりあえず、両方とコンタクト取ってみよう。」
幸一がそう言って
「じゃ、繋ぐね。」
と、さよりが通信を艦内スピーカーに流した
スピーカーから聞こえてきたのは、どちらも男性の声で
「ЩФХРТеджХИΠΥΘΛΟ$#”㏍〝!!≡∽√⇒≪≡∃∩∩∠⊥⇒∃!!」
「δββΝΘΓБйпрлёаЯдЭЮЮеЪЩЩШОЩкжжЪИ」
意味不明な声。ただ声の感じから、片方は威張り散らす高圧的な感じで、
もう片方は困惑した感じがした。
「かめちゃん、何を言っているか、わかんない?」
さよりが、かめちゃんを見た
「自動翻訳機を作動させます。」
かめちゃんが、自動翻訳機を作動させたところ、スピーカーからの声が
「дβБδпЯайちらは、サナトリア革命軍、ワーク将軍である!
そこの大型輸送艦、速やかに停船せよ!5分以内に停船せぬ場合、敵対行動とし砲撃を開始する!」
「こちらは、サナトリア王国近衛兵団、私は、ノーマカ少尉という。
そこの大型輸送艦、早くこの空域から離脱しろ!時間をかせいでやる!」
「なにを言っているかが解ったけど、どっちの言葉を信じる?」
明美は幸一に尋ねた
「戦局は、見るからにサナトリア王国って名乗った方が不利なんだけど、私達を民間人だと思ってくれて、ここにいたら危険だから、時間を稼ぐから、逃げろって言ってくれているんだけど」
幸一が腕を組んで考え込んだ
「信じるというか、片方は高圧的で、砲撃すると言っているんだから、逃げろって言っている方が、正解と思うけど?」
と明美
「王国の圧政に反抗した反乱軍なのか?王国の乗っ取りを謀る反乱軍なのか?」
拓哉がスクリーンを見てつぶやく
「とりあえずどうします?革命軍と私の間に入る進路に、王国軍の2隻が取って、私の盾になってくれようとしていますけど。」
かめちゃんが、回避運動をせず、減速だけして様子を見ていた。
スピーカーから、
「返事がないようだな。無人の補給艦か。王国に肩を持つ奴らが用意した物だな。
王国の奴らに物資の補給をさせる訳にはいかない。叩き落とせ!!」
「救援物資なのか!」
「両艦隊の戦力、解析終了しました。旗艦と思われるのは、200m級軽巡洋艦でお互いに1隻、残りは100m級護衛艦か、駆逐艦で革命軍18隻 内3隻中破 4隻小破 王国軍は12隻 内5隻小破です。」
「大きい方の戦艦で、かめちゃんの半分の大きさなんだ」
さよりが、モニタを見ながら頷いた。
その時、美由紀が焦った声で
「革命軍側の駆逐艦3隻、エネルギー反応増大。敵弾!来ます!」
敵艦艇3隻から放たれた、1艦当たり4発の合計12発のビーム弾は、全てタートルエクスプレスに命中
船外を映し出しているモニタが一瞬光った。
「敵艦より、全ビーム直弾。被害……無し。」
戸惑ったように、美由紀が被害報告をした
「ふん!私相手にあのビーム弾?ナメられたものね。その程度のビーム弾が束になって来ても、私のシールドを貫くことはできないわ。」
かめちゃんは、腰に手をやりふんぞり返った。
「反撃をする?」
政史が聞くと
「軽く、お返しをさせてもらいます。」
「主砲にエネルギー……」
政史の言葉をさえぎり
「いえ、エネルギーがもったいないので主砲は使いません。対空機銃3基で十分です。」
「なんか、かめちゃん機嫌悪いんだけど?」
「そんなこと、ある訳ないですよ。私が撃ちたいんですけど、撃たせてくださいね。撃ちます!」
艦首にある20ミリパルスレーザー4連装砲 3基が、砲撃してきた1隻のサナトリア革命軍の船に向け、10秒間全力斉射
攻撃してきた艦の側面がまるで、紙を撃ち抜いたように、たちまち穴だらけになって、煙を噴き出した。
艦隊に明らかに動揺があったようで、艦隊運用が乱れ体勢を保とうと指示が飛び交っている。
「思った通り、たいした装甲がないようですねぇ~。少しは気分がスッキリしました。主砲を使うのはもったいないことです。」
ふふんと、鼻で笑って機嫌がよくなった、かめちゃん。
「確かに、10秒間で大破させられたら、どうしようもないなぁ。」
「かめちゃんは、機嫌がやっぱり悪かったんだ。」
「そりゃ悪くもなります。私のこと鈍重な輸送艦って何回も言ったんですよ!」
「ビビったかな?」
何も攻撃してこないと、思っていた船から、強烈な反撃をくらい驚いたのか、砲撃が止んだ。
幸一がスクリーンを見ながら
「とりあえず、停戦を呼びかけてみようか?」
「そうだね。無駄な戦いは避けたいからね。ほんじや、幸一が呼びかけて。」
明美がそう言うと幸一が、自分を指さして
「オレ?」
「そう、一応艦長役でしょ?」
やれやれと肩をすくめて
「しゃあないなぁ。さより、あちらさん達に通信を繋いでくれる?」
「いいですよぉ。強制割り込みモードで発信しますね。はい、ぽちっとな、どうぞ。」
さより は、通信装着をいじってマイクを幸一に手渡した。
「サナトリアの方々、こちらは、地球連邦国所属タートルエクスプレス、私は艦長津田幸一です。敵意は在りませんので、攻撃はしないでください。」
「地球連邦国だと!」
「地球連邦国?」
「敵意がないだと!我々の重巡洋艦を大破させておきながら!」
「我等の援軍ではないのか。」
「地球連邦国って、どこの国よ。」
呆れて、明美がこぼす
「いいじゃないの、どうせこの辺でどう名乗ったところで、同じだよ。」
笑いながら、幸一が応えた
「というか、あの船、重巡洋艦だったらしいぞ」
「嘘でしょう!私の基準だと、どう見ても駆逐艦レベルですよ」
かめちゃんは少し驚いていた。
100mクラスの重巡洋艦て、考えられなかったからである
「向こうから、画像データ付きの返事がきました。上部スクリーンに出します。」
スクリーンには、二人の人物が映し出された。
ひとりは、金髪でエリート青年将校といった感じの人物
もうひとりは、中年を少し過ぎた感じの、銀髪で口髭を蓄えた厳つい顔をした人物
美由紀が、スクリーンに映った二人を見て
「あのイケメンのエリート青年将校って感じの人が、ノーマカ少尉で、お姫様を守って逃亡中で、それを追うワーク将軍って言うのは、あの厳ついおっさんじゃない?政権を乗っ取って、お姫様を妾にしようとしてるのよ、だって悪人顔しているもん」
「そう言われれば、そうかも?少尉と姫様は、身分の差を超えて愛の・・・・」
って、さよりが妄想をしようとした時、金髪でエリート青年将校が
「こちらは戦艦ゴールドビクトリー 私はサナトリア革命軍総指令、艦長ワーク将軍である。地球連邦国とは、どこの軍勢だ。」
銀髪で口髭を蓄えた厳つい顔をしたおっさんが
「こちらは、戦艦ビクトリーロード、私はサナトリア王国近衛兵団、艦長代理ノーマカ
少尉と申します。地球連邦国の方々、ご迷惑をおかけして申し訳ない。」
爽やかな青年将校がワーク将軍。
悪人顔の厳ついおっさんがノーマカ少尉と、言うらしい
「なんか、イメージ的には逆の方が、しっくりするのに。」
明美が、モニタを見ながらぼやいた。
巻き込まれが始まりました( ;^^)ヘ..