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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第3章
123/144

帝国内戦18

アシヤは、焦っていた。

過去のデーターを解析しても、今の状態を予想出来なかった。次々に入る情報は、悪い物ばかり。

自慢の航空隊は、ほぼ壊滅状態になってしまっていた。

それでも、生き残り者から得られた、敵の新型兵器に関する情報は有り難かった。

それらの映像データーを、すぐさま解析していった。


「最初の艦載機からの高出力エネルギー弾は、機載型の単発の粒子砲のような物だと?

口径は大きいが収束力が弱い為、長距離射撃は困難と思われる、か。

爆撃機につけていたのは、写真からするとタッペル型ミサイルランチャーを強引に6基も

搭載させているな。これで、引き付けれるだけ引き連れて、濃密な弾幕を張ったか。

とんでもない迎撃戦闘機の対策を考えたものだ。

最後のこれは、我が軍の艦艇ではない新型艦艇?いやいや、これほどの船を造船する時間など無かった。

それに、よく訓練された動きをしている。ということは、これはサナトリア統一連邦共和国軍が参加しているとしか考えられないか。」


短時間ではあるが、映像と証言等の情報を元に、威力を的確に解析していく。

解析された情報は、速やかに共有され対策が施されていく。

この情報分析力及び対応の速さが、第三連合艦隊の強さの秘密とも言える。


「近付いてくる攻撃隊にも、新兵器が搭載させていると考えてよろしいですね。」

作戦参謀の1人が、近づいてくる大型攻撃機について意見を言うと、

「まったく厄介な兵器を仕入れてきたものだ。こちらの対空砲火の有効範囲と、どちらが長いか勝負だな。防空部隊に通達。有効範囲に入る前から砲撃を開始せよ。」

アシヤは、防空巡洋艦部隊に指令を飛ばした。

その瞬間、防空巡洋艦部隊から困惑気味の通信が入ってきた。

『現在、敵兵?約300人と交戦中。敵兵の使用武器不明なれど、強力な破壊力を所持しています。被害甚大。至急!救援こう』

この通信に、司令所が一瞬固まった。300人の敵兵?コマンダーか特殊部隊が生身の身体で、巡洋艦へ攻撃を仕掛けてきただと?

現場では、極度の混乱状態になってしまったらしく、指示をする内容が支離滅裂になっていた。


「落ち着いて、状況を知らせろ!どういう攻撃を受けている!』

その返信が来る前に、次々に防空巡洋艦が沈められていく。その混乱状態が前衛部隊から広がりだしていた。

スクランブル発進した戦闘機隊にて、やっと原因が判明した。その映像が司令所に送られてきて、司令所全体が震撼させられた。

「な、何なんだ?この人型ロボットは?」

映像を見たアシヤでさえ、言葉が出なかった。

「この人型ロボットは、どこから現れた!」

ゲッペルが問うと、巡洋艦を護衛していた駆逐艦の1隻より、戦闘中のライブ映像と共に通信が繋がった。

駆逐艦の艦長からの現状報告が伝えられた。

最初は、敵の特殊部隊がゲリラ戦を仕掛けてきたと思ったが、それは、宇宙空間における、対象物がないことに依る遠近感喪失による錯覚で、大きさの比較を間違えていた。とのこと。

その為、当初は、白兵戦対応のため陸戦隊を組織したが、敵兵が接近するにしたがい、損害の増加とともに敵兵の大きさが判明。

その為、対応が遅れてしまい、慌てて対空砲火と主砲にて弾幕を形成しようとしたが、

敵兵は、無反動砲のような物で武装しており、直弾を喰らうと最悪2発で巡洋艦が大破する場合があり、防空巡洋艦隊は壊滅状態になってしまった。

 迎撃戦闘機隊を差し向けるが、小回りの効く機体でこちらの攻撃は全て回避されてしまい、思うように迎撃が出来ない。

この報告の間も、ライブ映像が届けられていて、駆逐艦からは人型ロボットに向けて、対空砲火や主砲が忙しなく動いて、反撃しているのがよくわかる。

周りの宙域には、炎上している装甲空母に、船体が折れ曲がった巡洋艦が見える。

すると、それらを映していたカメラに、人型ロボットがはっきりと映し出された。

艶消しの宙域迷彩塗装のその身体の肩部分に、くっきりと帝国旗が描かれていた。

「何だと!帝国軍の機体だというのか!サナトリアではなく!」

その映像を見てアシヤは、驚愕した。

ゲッペルも驚きを隠せなかったが、意識して人型ロボットの性能分析を始め、データー取りに指示を飛ばした。

「次から次と、わけがわからないものを出してきて!対応が間に合わない!」

「初見殺しですね。」

ゲッペルが悔しそうに言葉をこぼした。

アシヤとゲッペルのコンビによる作戦指揮は、無敵と言われていた。

それは、事前の情報収集に分析に長けており、戦いが始まるまでに、勝利する道筋が出来ている、とまで言われていた。

たとえ初見の新兵器であっても、優れたスタッフによりすぐさま解析し対応する柔軟な思考と、絶対的な技倆に裏付けされた兵士によって、苦境をものともしなかった。

それが今崩れ去っていく

「初見殺しか、確かにな。だがゲッペルよ。わかったことがあるぞ。後続の攻撃機には、あのエネルギー兵器は、搭載されてはおらんってことがな。

そもそも、先程の爆撃機にも積んではおらんかったのだろう。ワシとしたことが、まんまと敵の作戦に嵌ったようだわい。」

「どうして、そう思われます?」

「守護衛星を攻略するのに、ド派手に新兵器たる機載型主砲というものを見せつけ、それが、対艦兵器としても有効ということを、我々に認識させた。

その上で爆撃機隊を差し向けてきた。我々は、その機載主砲が搭載されていると思い、全力で対応する。

すると敵機は、対空砲火を浴びると1発も撃たずに撤退していった。なぜだ?」

「それは、有効距離に達していなかったのではないですか?」

「いや、違うな。奴らはもともとそんな兵器を、機載などしていなかったから撃てなかった、

と考えてみるとじゃ、ガンシップ化までして突入してきて、目的を果たさず撤退するのはおかしい。

 ではなにを機体に抱えていた?機載していたのは、あの人型ロボットだろう。

牽引ロープか何かで運び込み、ロープを切断して帰還。

人型ロボットには、迷彩塗装にステルス加工を施して、動力駆動させずに慣性の法則で移動するため、

我々の索敵から逃れ、そのまま艦艇に接近し必殺の距離にて攻撃する。なかなかなもんだ。」

アシヤは、第一連合艦隊の作戦を手放しで褒めてみせた。

「しかし、これからどう攻めてくる気だ?そろそろ、人型ロボットの飛び道具は弾切れだろう。各艦に通達。最大戦速にて、第一連合艦隊との距離を縮めよ!あと、対空砲にて弾幕を脹れ!」

アシヤは、指令室のメインスクリーンを睨みつけ、指示を飛ばした。

「各部隊へ通達。17体系へ変更。今までの分、お返ししようではないか!行け!」

第三連合艦隊は、まるで生き物のように蠢いたと思えば、陣形を守りの隊形から一遍して、襲いかかる隊形へと変貌していった。


それを見ていた、第一連合艦隊の司令官は

「おいでなさったぞ。第三連合艦隊のお得意芸、包囲殲滅陣形だ。だが、まだ完成してはいない。強襲部隊。頼んだぞ。」


イナバ・カイラ中将率いるRX-87無頼隊は、すでに60センチ携帯砲の弾を、予備弾倉を含め全て使い切っていた。

「ヤバいなぁ。あの陣形が完成すると、袋叩きになるんだよな。」

イナバ・カイラ中将は、編成を変えていく第三連合艦隊を見て、つぶやいた。それを聞いた一人が

「隊長。コイツのバズーカ砲の弾を使い切りましたぜ。どうしやすか?」

と少しおどけた感じて聞いてきた。

「そうだなぁ。」

「弾も無くなったことですし、このまま、帰還しますか?」

「戦力的に、向こうが圧倒的ですよ。」

「ここは一先ず逃げの一手で。」

と、隊員からの返信が入ってくる。

「そうしたいのは、やまやまなんだが、オマエ等、アケミ姐さんならなんて言うと思う?」

一瞬の間が空いたが

「ですよね。行きますか?」

「だよな。行くか。」

諦めとは違う少し、嬉しそうな感情に包まれた返信が来た。

「ヨッシャー!各員白兵戦用意!左舷の敵艦隊を潰す!装備着装!」

指示が飛ぶと、携帯砲を捨て、背中に付けていた白兵戦装備品のシャベルを手にした。

「野郎ども!サナトリア統一連邦共和国軍、餓狼部隊直伝の白兵戦を見せてやれ!」

「「「「オォォー!!!」」」」

300機のRX-87 無頼が、シャベルを手にして艦隊へと突撃していく。

対空砲火が濃密になっていくが、被弾する機体は無かった。

「第三連合艦隊の、弾幕とは、たったこれ程か!ぬるい、ぬるい。」

濃密な対空砲火を物ともせず、全て回避仕切っていた。


第三連合艦隊 戦艦ヴァネッサディス

「弾幕が薄いぞ!何なんだ!あれは!弾幕を回避しているだと?バケモノか!」

「弾幕が薄い?そんなわけ無いだろ?Maxの出力で最高速の射出速度だぞ!」

「じゃ、なぜ当たらないんだ?」

「知るか!ヤバい!最終防衛ラインを突破される!」

「取りつかれた!」

10機のRX-87 無頼が戦艦ヴァネッサディスの甲板に立った。

シャベルを振り回すと、当たった所がスパッと切れた。それはこのシャベルの素材のせいだった。

シャベルの柄は、高靱性のガルデン合金で作られ、その先にあるパーツは、単結晶で薄く造られた部品だった。

シャベルと言うより槍の様に振り回していた。

「なんなんだ!」

瞬く間に艤装が斬り刻まれて使用不可になっていく。

「おい!そこの駆逐艦!お前の砲で、取り付いている奴らを排除しろ!」

艦長が、併走していた護衛駆逐艦プラムに指示を出した。

「危険です。」

「かまわん!今なら狙えるだろう!早く撃破しろ!こちら戦艦だ。駆逐艦の主砲程度では、装甲を抜くことはできない。」

「了解!戦艦ヴァネッサディス上の敵機を撃破する。各砲、目視による精密射撃開始!撃て!」

主に対空砲を戦艦ヴァネッサディスに向けて発砲。直弾を受けた5機が爆散。至近弾を受けた3機は行動不能になった。

「退避!味方に向けて発砲するか!」

遠くから見れば、まるで同士討ちのような戦闘が繰り広げられていた。

「総員退避!目的は、果たした。戦域から撤退せよ!」

撤退命令の信号弾が打ち上げられ、高速回避行動をしながら強襲部隊が戦域から撤退していく。

何隻かの駆逐艦が後を追うが、追い付かず逃してしまう。

 この帝国初モービル兵器と艦隊との闘いは、第一皇太子側モービル隊が300機中54機消失という犠牲を払ったが、

第三皇太子側艦隊側は、戦艦5隻中破、空母52隻大破、重巡洋艦38隻轟沈、64隻大破におよび、

圧倒的に第一皇太子側の勝利だった。

それだけでなく戦闘を行ったために、第一連合艦隊を包囲する陣形に穴ができてしまっていた。

「好機!強襲部隊がやってくれたぞ!このチャンスを逃すな!右舷側へ攻撃を強化せよ!」

包囲網の綻びに向け、全力攻撃を加える第一連合艦隊。


「なんて事だ。迅速に陣形を17から47に移行せよ!間に合うか?」

アシヤは、綻びが生じた陣形を、すぐさま最適な陣形へと変更させていくために指示を飛ばすが、

第一連合艦隊の侵攻が若干速く、完全な包囲網ができない。

それでも、有効射程距離に入った艦から砲撃が始まり、帝国宙域戦の火蓋が切られた。

陣形の不完全な所を突かれた第三連合艦隊だが、アシヤの的確な采配と艦隊の練度が、次第に前線を立て直し、次第に第一連合艦隊を押し返すようになってきた。

「やはり、新兵器は打ち止めらしいな。」

「そのようです。使われているような形跡は、現在のところ見られません。」

「よし!このまま演習のように叩きのめせ!」


「まだ連絡はないか!」

「ありません!」

「左舷!弾幕が薄い!敵駆逐艦の侵入を許すな!」

「重巡洋艦トキサ、戦線離脱します!」

「第八駆逐艦隊、連絡が途絶えました!」

最初は有利な展開で戦局を進めれると思えた第一連合艦隊は、ここに来て足止めされ苦戦を強いられていた。

「まだ無いのか!」

第一連合艦隊を預かる総司令長官カワサキ-ヤブロクは、猛攻撃にひたすら耐えながら、一報の連絡を待っていた。

入ってくる連絡は、悲報が増えていく。参謀の一人が

「司令長官殿、まさか失敗したのでは?」

「そんなこんなありえない。あの方が乗り込んできているんだ。もうしばらく耐えてみせろ!」



「記録だな。」

「何がですか?」

「いやなに、第一連合艦隊が我々の攻撃に耐えた時間だよ。演習の時の最高時間を超えたよ。」

アシヤは、司令室にある時計を見ながら答えた。

「確かに、しかし、もう時間の問題では?」

「確かにな。」

アシヤは余裕の笑みで、戦局の流れを見ていた。

その時、

「本国守備隊より緊急伝!敵艦隊、帝都来襲により救援コウ!最終防衛ラインを突破された!至急、救援請う!」

この通信は、全艦隊を震撼させた。

「なんだと!どこから現れた!その敵艦隊は!」

返信がなかった。

「どうした!状況を教えろ!守護隊はどうして返信せん!」

「わかりません!」

すると本国の陸戦隊より

「敵の強襲部隊と交戦中!敵は、大型人型ロボットによる都内の制圧を敢行!最終防衛ラインを突破された!至急救援請う!繰り返す、至急救援請う!……あんなものとどう戦えばいいんだよ!」

で、通信が切れた。

「おい!現状報告しろ!おい!」

通信機からはノイズが聞こえてくるばかりだった。アシヤは、通信観測兵に

「帝都に行くには、この回廊を通る以外方法はない!ジャンプした形跡は?」

「ありません!」

アシヤは、困惑を隠せず

「じゃ、何処から現れたんだ?」

そこへ追い打ちするように

「艦隊クラスのジャンプアウトを検知!」

「どこだ!」

「我が艦隊後方!」



「帝都強襲部隊より入電。帝都制圧完了。繰り返します。帝都制圧完了です!」

「本当に!」

「サナトリア統一連邦共和国軍総合参謀長官タクヤ様から通信が入っています。」

「繋げ!」

メインスクリーンに、タクヤの顔が映し出された。

「すまん。少し遅れた。こちらから援軍を派遣した。もう少し耐えてくれ。」

開口一番に謝罪と援軍派遣の報告が戦艦 ミズホの司令室に響いた。

「ありがとうございます。ヤマト皇太子様は?」

「本丸に乗り込んだよ。地表軍はすでに無力化した。一部で散発的に戦闘が行われている程度だ。」

「これで、作戦は成功ですね!」

「まだだ。貴君等を帝都に迎えてこそ、作戦成功となる。気を引き締めて、死物狂いに生き残れ!」

「了解です。」

後方にいた、第七辺境艦隊が速度を上げ矢面に立つように、第一連合艦隊の前に出た。

「マサツグ司令官!無茶は!」

「無茶などせん。ただ少し先を急ぎたいのでな。」

と言って艦隊の陣形を錘方形に整えると、機関全開にして突進攻撃を開始した。

「自殺行為だ。」

敵の包囲網に向けて突進して行く事は、正しく自殺行為だが、

「その行為、潔し!」

第三連合艦隊の後方にジャンプアウトして来た、サナトリア統一連邦共和国軍第二遊撃隊の指揮官マサダ、マサナリが褒めていた。

サナトリア統一連邦共和国軍第二遊撃隊も錘方形の陣形にて、後方より一撃を加えようとしていた。

運の悪いことに、両艦隊に挟み撃ちになるようになった第三連合艦隊の第5戦艦打撃艦隊は、

善戦むなしく壊滅。サナトリア統一連邦共和国軍第二遊撃隊と第七辺境艦隊はそのまま擦れ違い、

第七辺境艦隊は、速度を上げ一路帝都へと。

それを見送ったサナトリア統一連邦共和国軍第二遊撃隊は、第七辺境艦隊の船殻に書かれたマークを見て、本隊ヘ緊急通報した。

「サヨリ嬢親衛艦隊がそちらに向かいました。対応をお願いします。」

通信を終えたサナトリア統一連邦共和国軍第二遊撃隊は、第三連合艦隊の包囲網を食い千切るかのように、陣形を破壊していく。


陣形を乱されたアシヤは、この時点で負けを確信していた。

「してやられたのぉ。まさか、第一連合艦隊を囮につかうとは。それと、帝星の裏からは何人も侵入出来ないと、思っていたことが、敗因だな。いかにして侵入したのかは知らんが、何重もの仕掛けを密やかに用意してからの侵攻か。」

メインスクリーンを見つめながら、考察していた。そこには、なにか達観した表情をしていた。

「アシヤ殿。いかがしましょう?」

ゲッペルも艦隊の維持がそう長くは持たないと考えていた。

「癪だが、負けを認めよう。これ以上同国人同士で争う意味がない。」

その言葉に頷いて

「了解しました。通信開け!こちらは第三連合艦隊副参謀官のゲッペル中将である。全艦隊にオープンモードにて通達。あらゆる戦闘行為を中止せよ!我々は負けた。即時に戦闘行為を停止しろ。

第一連合艦隊ヘ、我が艦隊は敗北を認め、投降する。これ以上の戦闘行為を慎んでほしい。」

ゲッペルが敗北宣言をすると、全ての艦艇から砲撃が止んだ。


戦闘が終わった宙域で、第一連合艦隊旗艦ミズホが、第三連合艦隊旗艦アスカに近付き連絡橋を接続した。

連絡橋を渡って来た第一連合艦隊総司令長官カワサキ-ヤブロクと第三連合艦隊司令官アシヤが邂逅した。

「やっと、あなたに勝てました。」

と言ってカワサキ-ヤブロクが右手を差し出すと、アシヤはその手をとり握手をすると

「負けたな。しかしこれは、お前達の作戦ではないな。だが、勝ちは勝ちだ。」

カワサキ-ヤブロクは苦笑いをしながら

「確かに。実力では、まだまだあなたには勝てないでしょう。」

「サナトリア統一連邦共和国には、手強い相手が居そうだな。」

「そうですね。底が知れません。特に、今回の首都奪還作戦を考案した女性は、軍人じゃないですからね。アケミ元帥閣下が最初から作戦を考案したら、また違った決幕だったでしょう。」

それを聞いてアシヤは

「この計画を考案したのが、民間人だと?まさか、そんなはずはないだろう?」

驚きを隠せなかった。

「そのまさか、ですよ。今回サナトリア統一連邦共和国軍の指揮をされておられるアケミ元帥閣下が、すごく嫌そうでしたから。」

「では、誰が?」

「アシヤ殿もご存知の方だと思いますよ。サヨリ・カキモトって女性に心当りはないですか?」

信じられぬといった顔をして

「そんな馬鹿な!その女なら既に捕まえておる。どうやって作戦指示を?」

カワサキ-ヤブロクは、理解できないだろうなと思いつつ

「あなた方が内乱を起こす前から、筋書きが書かれていたようです。」

「馬鹿な!」

「彼女は、最初からタケルヤマト第一皇太子様を皇帝にするためのプランを作製していて、あなた方が内乱を起こすことも織り込み済で、今回の帝都奪還作戦が出来てました。

これには、我々も戦慄を覚えましたよ。サナトリア統一連邦共和国軍でさえ、『我々も駒にされている』と怒っておりましたから。」

「では、我々はその女の掌で踊らされていた、のか?」

アシヤは足元が虚空に吸い込まれた感覚になり、跪いてしまった。

その気持ちが少し理解できると思いながら、アシヤの肩に手を置き

「国ヘ帰りましょう。幸いなことに、国民は被害がほぼ無かったのですから、我々は、国を守ったのですよ。」


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