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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第3章
122/144

帝国内戦17

サナトリア統一連邦共和国 第一艦隊は一路、帝国の帝都に向ってジャンプアウトポイントがシビアな危険な回廊を最大速度にて進んでいた。

「よくまぁ、こんな回廊を作らせたよなぁ」

タクヤが旗艦ミカサの司令所にて外部モニターを見ながら呟いた。

この回廊は、サナトリア統一連邦共和国が造った回廊とは異なり、艦隊移動がやっとの空間確保しかされておらず、他の回廊にはある補給ポイントが存在しない。

その為補給は、自前で用意してきた補給部隊しか、頼れるものはなかった。


地表の道で表現するなら、サナトリア統一連邦共和国の造った宇宙の涯からの回廊が高規格高速道路とすれば、ここは手掘りの隧道並みの整備しかされていなかった。


その補給も最後の分が終わり、次のジャンプアウトポイントは、帝国の帝都付近になっていた。


「最後のジャンプとなる。ジャンプアウトしてすぐに全天周警戒し、軍艦と思わしき艦影の発見時には、即刻拿捕、叶わぬ場合には撃破せよ。」

艦隊に高まる緊張感。

「発進!」

アケミの号令一下、艦隊は次々にジャンプしていく。

「サヨリさん。待っててくださいね。今から迎えに行きます。」

タケルヤマト第一皇太子が、決意を秘めた視線で、遠くに想いを馳せていた。


「なぁ、アケミ。あれ、大丈夫か?」

タクヤが、タケルヤマト第一皇太子の方を見ないようにして、アケミに聞いた。

「私に聞かないで。」

「気持ちはわかるけど、」

「多分大丈夫よ。アイツ(サヨリ)も嫌いじゃないから、こんな作戦を仕込んでいたぐらいだしね。」

「まぁな。しかし、ここまでするか?普通?」

「タクヤ?アイツ(サヨリ)が普通なわけ無いでしょう。」

「確かにな。」


 サヨリが、第三皇太子の手の者に連れ去られた直後に、サヨリから送られてきた企画書という名の作戦指示書。

それを読んだ関係者は、イロイロな思いにかられた。

ある者は驚愕し、又ある者は怒り、又ある者は諦め、又ある者は笑った。


それは数回改訂されていたが、サヨリが第一皇太子と出逢った頃から、具体的に計画されていたからだ。

 それは、タケルヤマト第一皇太子が、皇帝に成ることによるサナトリア統一連邦共和国へ対するメリット・デメリットのプレゼンから始まり、

複数のシチュエーション別のロードマップが書かれており、その中で今回選択した作戦行動におけるメリット・デメリットを詳細に解説

その中で、回廊を造るための費用・期間、新兵器の開発・運用・訓練期間まで描かれていた。

これを見たアケミは呆れ、ヤマト第一皇太子は驚き、コウイチは笑い、ミユキは憤慨し、サファイアとかめちゃんは納得した。

その企画書?(作戦指示書?)の最終章に書かれた最後の一文

『タケルさん。帝都で待ってます。あたしを、あなたのお嫁さんにしてね♡』

で締められていた。


現在、サヨリの企画書に描かれていたように、状況は推移している。


「アケミ殿。ここまで来ると、サヨリさんとはどういう方なのか、私では理解できないのですが、昔からのお知り合いでおられるアケミ殿は、こうなると思われておられましたか?」

クロダ宰相がたずねてきた。うんざりした口調で

「クロダ宰相。思うわけ無いでしょう。それよりあのバカサヨリに、おたくの皇太子様がなにか約束しました?

アイツ(サヨリ)が無償でここまでするとは、我々では考えられないのですが。」

アケミがそう返答すると

「タケルの愛が報酬、では納得されませんか?」

そんなことをまったく信じていない口調で、クロダ宰相が言った。

それを聞き口元だけで笑ったアケミは、

「あなたも、それは違うって思っていますね。」

「それは、そうですね。サヨリさんがこれまでに、我々にしてきた態度と行ってきた行為から推測したら、それだけはあり得ないですね。若干一名そう信じている者がいますが。」

と言って、幼馴染みで主君でもあるタケルヤマト第一皇太子の方をチラッと見た。

「まったくです。あの守銭奴が愛に目覚める?なんの冗談か。」

そんな2人の話を聞いていない、タケルヤマト第一皇太子は

「もうすぐ着くから待っててくれ。我が愛する君」

とメインスクリーンを見つめていた。



「間もなくジャンプアウトします。」

艦内は緊張感が高まっていく。

「ジャンプアウト完了。」

「全天観測!各兵装安全装置解除!航空隊、強襲部隊スクランブル待機!」

「座標確認。x43 y-53 z32 誤差内です。」

「レーダーに感あり!数、5。帝国軍所属の駆逐艦の模様!艦首をこちらに回頭しています!こちらに気づいています!」

「通信させるな!ジャミングかけろ!宙雷隊!蹴散らせ!」

アケミの号令一下、電子戦艦バレストランドが通常空間及び亜空間に、通信のジャミングを開始した。

その為 この宙域は全ての通信が不能となった。


 サナトリア統一連邦共和国軍に置いて、通常空間最加速を誇る第259駆逐艦隊の4隻が主機を唸らせ

速度を上げて帝国軍に反航戦陣形にて攻撃を開始した。


 鎧袖一触と言って良いほど、すれ違いざまに帝国軍の5隻の動力炉との連絡チューブを撃ち抜き、航行不能にさせた。


「良くやった。」

「相変わらず、259駆逐艦隊の精密砲撃は素晴らしい。」

アケミとタクヤが絶賛した。その横でタケルヤマト第一皇太子は

「動力炉だけを撃ち抜いたのですか!しかも、爆発や暴走もさせず?どうやって?」

驚いて見ていた。

「それはですね。」

タクヤが説明をした。


 この作戦【バックドア】における最大の厄介な指示が、極力戦死者を出さないという、命題があり

サナトリア統一連邦共和国軍に置いて、最大の足枷となっていた。

撃破するのは簡単、そうではなく、敵に察知されずに敵戦力を無力化して、侵攻しなくてはならなかった。

それが、サヨリより送られてきた作戦指示書だったからだ。


 その為、サヨリから送られてきた作戦指示書の中には、しっかり全帝国軍艦艇の図面が同封されていた。

(軍事機密が、仮想敵国であるサナトリア統一連邦共和国に漏れている事に、タケルヤマト第一皇太子をはじめ帝国側の関係者は、一部を除き驚愕した。)


 それを元に立てられた対艦攻撃方法は、動力炉と推進機を繋ぐチューブを破壊することだった。


 それを一撃にて破壊すれば、動力炉からエネルギーが供給されなくなり、攻撃力と行動力を奪いながら、乗員を極力失わずに達成出来る

と、説明されていたが、無茶苦茶難易度が高く、実現不可能に近いため、アケミとタクヤは無視することに決めたのだが

第一艦隊の主な艦長達が

「アケミちゃんの部下なら簡単だよねぇ~。あれぇ〜?できないのぉ~?(^◇^)最強ってウソなの?」

と一文書かれたメモをもって、アケミに直談判しに来たのであった。


「アケミ元帥閣下!ここまで言われて、腹立たしいと思いませんか!完璧に出来ることを見せつけてやりましょう!」

と怒りに燃えていたのであった。

アケミとタクヤは、頭を抱え

「完全にサヨリに煽られて、良いように操られてる」

「これは、説得出来ないなぁ」

で、第一艦隊は猛演習したのであった。


 そのかいあって、命中精度が飛躍的に上がり、その中でも第259駆逐艦隊は、以前から精密掃射を得意としており、

今回のように、高速移動中でもピンポイントにて命中させることが可能となったのであった。


「しかし、アケミの部下達は、サヨリに関してこうまで対抗意識が凄いんだ?」

コウイチが漏らすと

「なんでなんだろうねぇ?俺らは、……」

タクヤの言葉を遮ってアケミが

「サヨリよ。アイツが情報操作して私の部下達を煽っているのよ。」

と、諦め顔で言った。

「えっ!サヨリさんが?どうして?」

タケルヤマト第一皇太子が、驚いて聞き返した。

「さぁ〜。情報や噂話の出どころを探っても、きれいに痕跡が消えるのよ。だから私も確証は得られなかったのだけど、

逆に考えると、ここまで完璧だと、サヨリ以外に考えられないでしょう?」

「証拠が完璧に無い分、怪しすぎるか。」

「そういうこと。」

「そうなると、ますますサヨリの奴何を企んでいる?」

「それこそ、私が聞きたい。そもそもアイツならば、ここまでの各艦の図面が入手できたのなら、

コントロールシステムに潜り込むことぐらい簡単だろう?そうすりゃ、砲火を交えなくとも、

帝国軍艦艇を無力化出来るでしょう?なぜしない?

こんなまどろっこしい作戦指示書を送りつけて、我々にやらせなくても、カウチソファーに寝転がって、PCを弄って3日もありゃ制圧出来たでしょう?何を企んでいる?」

アケミが苛立ちを隠そうともせず、発言すると、タケルヤマト第一皇太子が

「我が国の女神に阻害されて、それが出来なかったとか?」

そう答えるが

「タケルさん。それはない。サヨリは、途中で第三皇太子にターゲットにしだした。それだけはわかる。

ただなぜ、そうなったのかがわからない。それに、サヨリが女神というか超古代テクノロジーがあると知ったのは、この指示書を書いた後の事だ。

それまでには、艦隊の行動システムの全権を、握っているはずなんだ。」

指示書に、帝国メインシステムの調教、と手書きで追加されていた。

「帝国攻略の壁のトンネルの完成を待っていた?でも、攻略に間に合わなくても、その気になれば帝国は手中に収められてたか。なんで、2ヶ月余り時間を伸ばした?」

戦艦ミカサの司令所で、今回の反攻作戦の最大の疑問点を考えている間も、先鋒部隊は、本隊の露払いをするべく、敵艦隊を次々と無力化させていった。

「でも、本当に皆様のおっしゃる通りサヨリさんに、我が帝国軍艦艇を無力化させることが可能なのでしようか?」

クロダ宰相が、かねてからの疑問点を聞いてみた。


 クロダ宰相にしてみれば、サヨリは確かにA級諜報員になれるほどの腕を持った女性ではあるが、それ以上に見えなかったからだ。

「簡単だよねぇ。アイツならば。」

「朝食の時に、ポチッとトーストを焼く感じで出来るだろうなぁ」

「1回してるしなぁ」

と、3人からの言葉で、驚いて

「1回してるって、どういうことですか?」

聞き返した

「うん?そうか、知らないか。サヨリは、サナトリア統一連邦共和国になる切っ掛けでもある戦争?

事変?まっどっちでもいいか、その時に起きた艦隊戦の最中に、未知のシステムなのも気にせず、

遠隔で敵艦隊全てのシステムを短時間で解読し、乗っ取って指揮系統を改変させ手中に収め、戦いを終わらしたんだよ。」

コウイチの言葉の後にアケミが

「そんな奴が、基幹システムの側にいて何もしないなど、考えられないでしょう?現に、貴国のご自慢の個人識別システムを改変してあったし。

それよりも艦隊運用システムの方が、簡単に改変出来ると思わない?」

「確かに、我が国の誇る個人追跡システムが、サヨリさんの都合良いシステムに改変されていました。

では、なぜ?艦隊運営システムに手を加えられてないのでしょうか?」

困惑気味にクロダ宰相が聞くと、コウイチが

「多分、仕込みは終わっていると思っていいと思う。なにかの意図があって、出来るけど敢えてやらない、と考えた方が良さそうだな。」

と、話をしていたら

「アケミ元帥閣下。帝国主星の制宙権を掌握いたしました。」

「わかった。ジャミングによる通信妨害解除。地表強襲部隊餓狼隊出撃せよ。」

アケミの指令にて、強襲揚陸艦隊から次々とRX-88が発進していく。

「アケミ元帥閣下。我々も出撃いたします。」

と言うと、近衛師団長が敬礼して司令所から出ていった。

「アケミさん。私も出ます。私が直接第三皇太子とやり合わねば、成らないですから。」

その時

「タケル。俺も行くよ。」

と、クロダ宰相が言った。

「お前は、…」

「戦いの足手まといと言うなよ。俺が行くのは、行政機関だ。俺の部下とともに行政機関を取り戻す。さすがに、そっちには、兵隊はさほど配置されてないだろう?」

「わかった、無理はするなよ。」

その二人を見て、アケミが

「仕方ない。タクヤ、ここは任す。それと、第一連合艦隊に援軍を送ってやれ。多分苦戦しているだろうし、相手の心を折るにはこちらの状況を知らしたほうがいいだろう。

タケルヤマト第一皇太子殿下。貴方にここで死なれては、意味がありませんので、私が護衛しましょう。」

「やれやれ、俺は護衛が居なきゃ、艦から出れねぇじゃないか。アケミ、ほどほどにな。あとサヨリを連れ帰れよ。」

コウイチがそう言うとアケミが

「わかってる。そう言えば、コウイチはなんでこの船に乗ってるんだったけ?」

と、聞き返してきた。それを聞きコウイチは、唖然とした顔で

「あのなぁ、サファイアの代わりに大統領代理で来ているじゃないか!」

と言うと、アッっと言った顔をしてアケミは頭を掻きながら

「すっかり忘れていたわ。ゴメンゴメン。ほんじゃ行ってくるね。」

と言って、先に出ていった近衛師団長やタケルヤマト第一皇太子達について行った。


 アケミ達が出て行き閉まった扉をしばらく見ていたコウイチは

「タクヤ、アケミの奴がサヨリの事を守銭奴って言うけど、アイツもたいがい戦闘狂だよなぁ。」

とこぼすと、

「旦那を目の前にして、人の嫁に言う言葉じゃないと思うけど?」

「すまんな。で、お前はどう思っているんだ?」

「可愛い嫁だ。希望としては、もう少し大人しくしてほしいけどな。でも、大人しい性格のアケミって想像出来るか?」

男二人がしばし考え込み、一人は大笑い、もう一人は頭を抱え、同時に

「「無理だ」」

と叫んだ。


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