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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第3章
119/144

帝国内戦14

ちょっと息切れしました(^^;


少し休憩します


なんとか、ゴールデンウィーク明けまでに、あと1つはあげたい



出来るかな?

サヨリは、昼下りの街角のオープンカフェで1人お茶を楽しんでいると、向かいの席に1人のスーツ姿の男が座り

「サヨリ・カキモトだな。大人しく来てもらおうか。」

男が、周りからは見えない角度から拳銃をサヨリに突き付けて、同行を促した。

「思ったよりも遅かったわねぇ。で、イヤだって言ったら?」

「少々痛い目に合うが?」

「それは、イヤだなぁ」

サヨリは周りを見渡して見ると、カフェの内と外に数名の男が要所要所に配置されていて。

「プロだねぇ。逃げるスキマも無いのかぁ。しかたないなぁ。帝都までエスコートしてね。」

サヨリは優雅に立ち上がって、男に手を差し出した。男は少し驚いた顔をしたが

「では、こちらへ。」

と、差し出された手を取り、近くに停めてあった車へとエスコートして行った。


 サヨリが惑星トレーダーから連れ出された2時間後、クスモトマサツグ司令官は焦っていた。

サヨリの捜索にトレーダー圏内にいる戦闘艦総出で、探させたほどだった。

運行情報システムを見れば、サヨリを連れ去った船は、精肉200トンの冷凍コンテナを

300個積み込んだ、帝都星系行きのアストロ運輸の高速貨物船の1隻に絞られたが、

すでに追い付く距離ではなく、為す術もない状態だった。

 マサツグ司令官は責任を取ると言って、切腹騒ぎを起こし、タケルヤマト皇太子は、

単身帝都へ向かおうとして側近達に止められていた。


 この事は、サナトリア統一連邦共和国にも伝えられ、首脳陣の顔色が悪く変わった。

「あのバカ!!この最終極面に何してんだ!!」

明美が軍司令本部の自分の部屋で叫んだ。

「明美、落ち着け。さよりが大人しく従う奴か?」

拓哉が、明美を落ち着かせるように声をかけるが

「あいつが大人しく従う訳ないだろ!なのに、大人しく相手について行ったんだぞ!

どんな事を企んでいるか、解らないから焦っているんじゃないか!」

「そっちか。」

「当たり前だろうが!ここからじゃ、最大船速でも2週間のタイムラグが出来てしまう。

かめちゃんならば、もっと早く着くけど、それでは意味が無い。まったく!あいつは何がしたい!」

「ほんと、何がしたいんだろうねぇ?わざわざ自分の居場所を、相手にわかるように情報を流して、

まるで、ここに居ますから捕まえてください、って感じだもんなぁ」

「拓哉、どういう事だ?」

「さよりの奴、今までスナップ写真であれ、1枚もの顔がわかる写真を、相手に渡さないほどの、

自分の姿に情報管制をしていたんだよ。だから、第三皇太子側はさよりに関する情報がまったく無く、

どこの誰がわからなかったんだけど、ここ最近、さよりの姿写真や行動範囲にスケジュールが、それとなく流出していたんだよ。」

拓哉は、数枚の書類を机に投げた。それを見て明美は

「そのわずかな情報の裏付けをして、相手が動いたって事か?」

と、考えるがそこに

「と言うか、動かしたって事じゃないか?」

と言って執務室に入ってきた人物がいた。

「幸一、どういう事だ?」

幸一が2人の側に来て、困った顔をして

「さよりが帝都へ行くためだろうなぁ。この状況で手っ取り早く帝都へ行くには、相手から

エスコートされた方が間違いなく行けるからな。」

と言うと、拓哉が

「幸一、エスコートって言うより、拉致の方が言葉的に合ってるって思うけど。」

呆れたように言うと、明美が幸一を見て

「で、そこからアイツは何をする?」

幸一は肩を竦めて

「んなもん、わかるわけ無いだろう。単身帝都に乗り込んで、帝国の全てを支配出来る女神様というか

超古代遺産とご対面するつもりなのか、ただ単に忘れ物を取りに家へ帰ったのか?俺はさよりじゃないからね。」

「確かに。」

「どっちでも、さよりならやりかねない。」

頭を抱える3人だった。



 サヨリが連れ去られて20日後、帝都回廊入口には、帝国第一連合艦隊と第七辺境艦隊が、

総勢5千余隻集結し、今や遅しと言わんばかりに戦意を高めていた。

「いよいよですな。」

マサツグ司令官がスクリーン越しに声をかけると

「まったくだ。今まで実戦に参加出来なかったからな。ここでは、暴れさせてもらう。」

第一連合艦隊司令官が、前方を睨んで発した言葉は、艦隊の意思と言わんばかりにだった。

「情報によると、防衛要塞衛星は3基とも資材不足しており、満足に稼働することができない様子。

叩いて本土決戦に持ち込めれば我々の勝利です。」

第一連合艦隊の作戦参謀が伝えると

「まさか、我々が守護要塞衛星と対峙するとは、思わなかったよ」

第一連合艦隊司令長官がと苦笑いでこぼした

「まずは、我々が血路を開く。遅れずに来ていただきたい。」

第七辺境艦隊司令長官の、クスモトマサツグ司令官がそう伝えると

「了解した。貴君も無理なさらず。」

「ふん。サヨリ様を救出するまでは、死にはしない事だけは誓おう。」

「我々も、アケミ元帥に恥をかける事はしない!」

頷き合うとどちらかともなく通信が切れた。


第一連合艦隊から第七辺境艦隊が、前に出て第一守護要塞衛星スジヤークと対時した。


 守護要塞衛星

スジヤークは、160基ある70センチ重加粒子2連装要塞砲のうち、第七辺境艦隊と対時している40基にエネルギー充填を完了させ、迎撃準備が整っていた。

対する第七辺境艦隊の最大主砲は、戦艦70が搭載している36.5センチメガ粒子連装砲、その数560基

数で勝が威力も射程距離も雲泥の差だった。

このまま距離を詰めれば先にスジヤークの射程距離に入り、滅多打ちにされてしまう。

ギリギリのラインを躱してスジヤークの死角に回り込めば、第二守護要塞惑星ビヤツコーの射程距離に入り込む。

それらを躱しても、第三守護要塞惑星セイリユーが待ち構えている。

難攻不落の回廊と呼ばれる所以である。


 マサツグ司令官は、マイクを握り全艦隊へ

「全兵に告げる!我等のサヨリ様を略奪して行った、愚かな者共へ鉄槌を下す時が来た!

3基の守護要塞惑星が何するものぞ!我等にはサヨリ様の守護が有る!

総員生きてサヨリ様を迎えようではないか!サヨリ様を悲しませぬよう、間違っても死ぬな!

要塞攻略機全機発進!」

そう号令をした

その号令に応えるように、正規空母、軽空母、特設艦より発進した無人要塞攻略機ツルギ約1000機

散開して、守護要塞スジヤークへと接近して行く。

守護要塞スジヤークでは、防空体制が敷かれる。

頑強な装甲に守られた守護要塞の唯一の弱点は、要塞砲を直接攻撃されることだった。

そこだけは、外周装甲に比べ装甲が薄かった。とは言え撃ち抜くには、20センチ対艦レーザー砲以上の

火力が必要なのだが、艦載砲については、何も脅威に感じていなかった。

戦艦の主砲の有効射程距離圏外の距離から撃てる要塞砲にとって脅威なのは、肉薄して来る艦載機によるミサイル攻撃だった。

よって、大型ミサイルによる攻撃から守るため、高さ6メートル幅12メートルのスリットから砲身だけを出し砲台を保護、尚且ミサイル迎撃用に12.7ミリパルスレーザー連装対空砲を、4基全てのスリット周りに配備していた。


要塞攻略機ツルギは、3機を1チームとして1基の要塞砲に正面か突入して行った。

「敵機襲来!!各員持ち場につけ!」

「敵攻撃機、軸線に乗ります!」

「防空射撃用意。撃て!」

濃密な弾幕を交わしきれず次々機体が火だるまになっていく。

「ふん。ミサイルを発射する間も無かっただろう。……うわぁ〜」

砲台管制室が火だるまに。

 確かに通常の攻撃機ならば、ミサイルもろとも火だるまに成ったであろうが、

突入して行った要塞攻略機ツルギの主兵器は、60センチ単装宙雷2基だった。

 機体が火だるまに成る刹那の瞬間に、3機とも宙雷を全基射出に成功していた。


 宙雷は、エネルギー弾の為、対空砲の影響をほぼ受けず、6条の軌跡を描きながら砲台に到達した。

宙雷は砲台を撃ち抜き、瞬く間にエネルギーの奔流に曝され充填していたエネルギーを

巻き込み砲台は爆発。砲台が沈黙した。

同様な事が守護要塞表面で数多く行われていた。


 結果、要塞衛星スジヤークの砲台82基、使用不可もしくは大破、17基中破の戦果をあげた。

皮肉なことに、過去に攻められたこともなく、強力な火力に堅牢な装甲に守られていた為、

ダメージコントロールの訓練等は行われておらず、多発火災時における防火隔壁すら無かった。

その為、宙雷の攻撃によって多数の砲台が爆発した為に、内部防御隔壁が破損し、衛星内部数カ所で火災が発生。

主要通路には、延焼を食い止める隔壁が無く、しかも空気を抜く事による消火活動も、

オートリペアシステムの誤作動により宇宙空間への、空気流出を完璧に阻止されていた。

瞬く間に延焼し、炎は要塞衛星内部の酸素を奪っていき、酸素マスクや宇宙服が用意されていない住居部では、

酸素欠乏症により満足に消火活動が出来ないどころか、バタバタと倒れる人が続出した。

炎は、高温の熱源となり衛星内部の動力炉へと広がって行った。


 第一次攻撃隊の生還率は、48%

修復なしで二次攻撃隊へ編入出来る機体は、26%ほどしかなかった。

第七辺境艦隊の旗艦コクジョーの司令室にて、クスモトマサツグ司令官が作戦指揮状況確認していた。副官が

「まだ、砲台は半数近く無傷て残っておりますなぁ。二次攻撃隊はどちらに使いますか?」

「予定通り、ビヤツコーへ突撃させる。」

「スジヤークはどうします?」

時折閃光を迸らせ、随所で黒煙が漏れている守護要塞衛星スジヤークを見て、

「放っておけ。あぁなるとなにも出来はせん。我が艦隊は、二次攻撃隊を発艦させた後、

一次攻撃隊によって無力化したスジヤークの側面を盾に侵攻する。帰還した一次攻撃隊は、

補給及び整備修理終了後、編隊を再編成しセイリユーへ突撃させろ。」

「それでは、セイリユーを無力化させるには火力が足りません。」

「セイリユーを無力化させる必要は無い。我々がビヤツコーの死角に潜り込むまでの時間稼ぎが出来れば十分。」

「わかりました。二次攻撃隊を発艦させます。」

「攻撃パターンは、Bパターンに変更せよ。」

「了解。攻撃隊の攻撃パターンをBに変更。」

攻撃隊の攻撃パターンが全機変更完了のシグナル点灯

「二次攻撃隊、発進!」

その号令に応えるように、正規空母、軽空母、特設艦より再び発進した無人要塞攻略機ツルギ約1000機

散開して守護要塞ビヤツコーへと接近して行く。


 守護要塞ビヤツコーでは、スジヤークからの戦況データーを共有しており、更に濃密な防空体制が敷かれる。

その為、スジヤークでの戦訓を取り入れたビヤツコー守護要塞側は、要塞砲正面からスリットを狙わせないように濃密な弾幕で、ツルギの接近を阻止していた。

「同じ手口が、何度も使えると思うな!」

その瞬間、何処からともなく突入して来た高エネルギーによって、砲台の側壁が撃ち抜かれた。

「何処から撃たれた!」

側壁を撃ち抜いた宙雷は砲台区域を突き抜け、脆弱な住居空間を破壊した。

スジヤークの時とは違い、ビヤツコーでは砲台に直接攻撃されるのでは無く、次々と砲台を囲っている内壁に着弾して、守護要塞惑星の内部を破壊していった。

「正面から迫る敵機は無いのに、何処から攻撃されている?」

ビヤツコーの司令室で、司令官が混乱していた。

要塞攻撃機ツルギの攻撃パターンBは、スリットの斜め横から装甲に当たらないように宙雷を内部に命中させるため、あえて浅い角度にて射出する攻撃方法だった。

その為命中率はガタ落ちで、30%を切っていた。機体損失はさらに上昇、生還率20%を切ってしまっていた。

その為、十分な損害を与えることが出来ず、スジヤークを盾にするために移動し始めていた第七辺境艦隊へ砲撃が開始された。


 さらに第七辺境艦隊に襲いかかって来たのは、牽制のために一次攻撃隊の残りを送り込んだセイリユーからの攻撃だった。

守護要塞惑星セイリユーも、スジヤークからの戦訓を得ており、向かって来る攻撃隊に対して、対空砲による弾幕ではなく、要塞砲による長距離攻撃を仕掛けてきたのであった。

命中率は下がるものの、攻撃隊を宙雷の射程距離に近付けないようにするには効果的だった。

しかも攻撃隊を狙った流れ弾が、第七辺境艦隊に襲いかかって来たのであった。

ビヤツコーの要塞砲の攻略が予想以上に進まない上に、セイリユーからのまさかのスジヤークへの砲撃

自らの70センチ重加粒子砲でも撃ち抜けない、守護要塞惑星の外装装甲頼りでの発砲だった。

スジヤークを盾にして、ビヤツコーからの攻撃を交わして、ビヤツコーの要塞砲が無力化した

宙域に移動して、セイリユーからの攻撃を防ぐ予定だったのだが、スジヤークへ移動中を

狙われた第七辺境艦隊は、無防備な側面を晒していた。

「艦載機相手に、なに大人気ない攻撃してんだよ!」

艦隊は、ここでセイリユーに艦首を向けるわけにはいかなかった。向ければ、ビヤツコーからの

砲撃を受けてしまう上に、乱れた艦隊は各個攻撃の餌食になってしまう。

第七辺境艦隊が生き残る為には、早急にスジヤークの影に隠れセイリユーからの攻撃を交わすしかなかった。

 その為には出来るだけ高速でスジヤークに向かいながら、セイリユーからの砲撃に対し

回避行動も行わないといけなかった。

しかし、スジヤークの影に逃げ込む前にビヤツコーの攻略が遅れており、ビヤツコーからも砲撃を受けてしまう状態に。

「司令!我々が被害担当艦となり、艦隊の盾となります。その間に安全地帯へ!」

数十隻の重巡洋艦と装甲艦がセイリユー側に集まり、旗艦コクジョーの盾となり、セイリユーに向けてフルオートにて水平射撃を開始

もちろん有効射程距離外である。

「すまん!彼等の意志を無駄にするな!」

僚艦を盾に、安全地帯であるスジヤークの影へと急ぐ第七辺境艦隊

もう少しでたどり着くと言うときに、正面のスジヤーク全砲台より、高エネルギー反応を感知。

「まさか!もう復旧したと言うのか!」

クスモトマサツグ司令官は、真っ青になった。

「ここまで来て何も出来ず終わるのか!サヨリ様、申し訳ございません!」

クスモトマサツグ司令官は、やって来るであろう衝撃に身構えた。

しかし、衝撃は来なかった。

そのかわり、守護要塞衛星スジヤークが動き出していた。

しかし、守護要塞衛星に自力移動する動力は所持していない。

「何が起きた?」

守護要塞衛星スジヤークは、ゆっくりとではあるが徐々に加速して、第七辺境艦隊から離れて行く。

守護要塞衛星スジヤークの移動による、潮汐力の影響を受けたのか、守護要塞衛星セイリューの

砲台より放たれたエネルギー弾は、僅かにずれて第七辺境艦隊の艦艇に直弾することなく、

艦体をかすめていくにとどめた。


この事に慌てたのは、守護要塞衛星セイリューと、ビャッコーの指揮官だった。

特にビャッコーの指揮官は、スジヤークの未来針路上に有り、このままでは激突は免れなかった。

「何が起きた!スジヤークとは連絡がつかんのか!」

「つきません!」

「指揮官!このままでは10時間後には、こちらと激突してしまいます。」

「総員退避にかかる時間は!」

「最短9時間です!」

「仕方がない!民間人及び軍属職員を先行して避難させろ。続けて、砲台関係者以外の者から退避。砲台関係者は、時間ギリギリ迄スジヤークの左舷に向けて集中発砲せよ。少しでも激突コースを逸したい。」

「了解しました。」

「全職員に告ぐ!現在、敵艦隊と交戦中なれど、緊急事態が発生した。

要塞衛星スジヤークが我々に向かって移動中である。よって総員退避を命じる。

 民間人及び軍属職員から退避を始めて欲しい。時間はまだ十分あるので焦らずに避難して欲しい。

全砲門に告ぐ、少しでも激突コースを回避するために、スジヤークの左舷側を集中砲撃せよ。

各自、準備が整い次第撃ち方始め!」


 なぜ、守護要塞衛星スジヤークが動き出したのか?


それは、内部火災で高温になった内部構造体が次々に溶けてしまい、衛星の動力源である

反応炉の外壁までも溶解させてしまって、反応炉が熱暴走し爆発してしまったからである。

反応炉の爆発エネルギーをもっても外殻装甲を破る事が出来なく、守護要塞衛星の装甲強度が証明されたが、

行き場を求めたエネルギーは、第七辺境艦隊によって破損した砲台から噴出したのである。

莫大なエネルギーの噴射時間は数十秒だったが、守護要塞衛星を動かすには十分だった。

守護要塞衛星は科学燃料ロケットのように進み出したのである。


それを見ていたクスモトマサツグ司令官は、

「総員、退避。」

と一言告げた

それを聞いた作戦参謀官の1人は

「クスモトマサツグ司令官、ここは相手の混乱に乗じて、攻め込むことを具申します。」

その参謀官に向かいクスモトマサツグ司令官は

「今は危険だ。守護要塞衛星スジャークが迷走を始めた。あれは衛星は動力炉が暴走して、

内部爆発したエネルギーがこちら側に噴き出した為だろう。

いつ、大爆発を起こしてしまうかわかりはしない。ここは、距離を置いて静観すべきだ。」

「わかりました。距離を取ります。」

迷走を始めた守護衛星から距離を取る旨は、第一連合艦隊にも届けられ、進攻を一時停止。

しばらく様子を見ることになった。



 ビャッコーが行った衝突回避のために左舷に集中させた砲撃は、コースを変更させる試みとしては、

ある意味成功であり失敗だった。


 左舷側に集中砲撃を受けたスジヤークは、衝突まで9時間前の時に軌道が少しズレた

そこで砲撃を止めれば違った未来が有ったかもしれないが、ビャッコーはさらに砲撃を続けた結果、スジヤークが回転する事態になった。

しかも、噴出するエネルギーによって、進攻コースが更に最短のコースへとなってしまっていた。

徐々に守護衛星ビャッコーに、近づいていく守護衛星スジャーク。

すると、ビャッコーとセイリューにありえないことが起きた。

それはスジャークの接近により、スジャークの引力圏にまずはビャッコーが、続いてセイリューが

入ってしまった為、2つの衛星は引き寄せられるように動き出したのである。


 両守護衛星は、脱出艦による脱出を行っているが、守護要塞衛星スジヤークの潮汐力の影響を受けて、脱出艦の速度が上がらない。

それでも民間人を乗せた250隻以上の船が守護衛星から離れることが出来た。

脱出艦から安堵して守護衛星を見た人達は、悲鳴を上げることになった


 近づきすぎた守護衛星スジャークとビャッコーがまず、変形を始めた。

近づきすぎたため、お互いの引力によるロッシュ限界を迎えたためだった。

その両守護衛星の引力圏から逃げれなかった艦艇は、引きずられるように巻き込まれていった

その影響は、セイリューにも及び、真空で音が聞こえるはずのない宇宙空間に金属のキシミ音が大音響で鳴り響いた感覚になった。


 第七辺境艦隊が、守護衛星スジャークに攻撃をして6時間後、3基あった守護衛星は、一塊となり爆発を繰り返していた。

3基の守護衛星にいた人員、兵、軍属、民間人合わせて約2億人

そのうち脱出が出来た約2500万人のほとんどが民間人であった

衝突までは10時間あったが、守護衛星同士がロッシュ限界に至る時間を考えていなかったため、被害が莫大な物に成った。

後のシミレーションによると、普通は動かない衛星で、防御効率を考え鉄壁の防御配置であったのだが、

動いてしまった為に引力干渉のギリギリに配置されていたために、起こった悲劇とわかる。

全員が逃げるには、動き出した守護衛星スジャークを確認した時点で、総員退避しなければならなかった。


 もし、守護衛星スジャークが第七辺境艦隊の方角に動き出していれば引力の干渉が起きず、

第七辺境艦隊は盾を失い、残ったビャッコーとセイリューからの集中砲火を浴びて、

全滅していたことだろう。もちろん後に続く第一連合艦隊も。


第七辺境艦隊と第一連合艦隊は、脱出して来た避難民の保護にしばらくその場に留まった。




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