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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第3章
117/144

帝国内戦12

3回アップ(^^)

 帝都 総合省庁第三ビルにある小会議室で、帝都に有るギルドマスターが、一堂に会する会議が開かれていた。

「なんか最近おかしくないか?」

「確かに、おかしい」

商業ギルドマスターと運輸ギルドマスターが首をかしげていた。

「何がおかしいんだよ。内戦状態初期に、輸送船が大量に沈められたから、今日の輸送困難になったんだろう。違うか?」

苛ついた口調で、農業ギルドマスターが発言すると

「全くだな。そのおかげで、原材料費が値上がりするだけでなく、入手出来ないな原材料が出てきて、稼働停止した工場が出てきてしまったぞ。どうするつもりだ!」

工業ギルドマスターからも不満の声があがった。

「なんとか、船を廻す事が出来ないのか?このままじゃ、この星系だけじゃなく、周りの地域までも、破綻する企業が大量に発生してしまうぞ。」

港湾ギルドマスターが運輸ギルドマスターを睨む。服飾ギルドマスターからは

「新たに輸送船を、造船できないなのか?」

と質問が出たが、造船ギルドマスターが

「今は無理だな。軍艦の造船で予定が詰まっている。せめて、駆逐艦の造船を待ってもらえたなら、1ヶ月あれば、中型の輸送船3隻はなんとかなるが、今でも催促してくるぐらいだから、無理だろうなァ。」

と嘆いた。

「ちょっとすまんが、ソウガ港湾ギルドマスター。他の港の様子は入ってきていないか?」

「あぁ?この辺は、どこも一緒だよ。」

「この辺のことじゃなくて、トレーダー付近の様子は入ってきていないか?いや、コルトレーン星系でもヴァージルア星系でもいい。最近の情報を持っている奴は居ないか?」

商業ギルドマスターのクラリモンドが、集まっている全ギルドマスターに問いかけた。

しばし静寂の後、畜産ギルドマスターのカールが

「そう言えば、内戦前ほど情報が来ないかな?ここからかなり遠くの星系だから、あまり気にしなかったが、それがどうした?」

その言葉に頷くギルドマスター達

「確かにシーホース暗黒雲宙域の向う側だから遠い星系だな。しかし、今の商品不足に材料不足の原因の大半は、それらの星系から来るはずの材料が来てないと知っているか?」

運輸ギルドマスターがそう言うと港湾ギルドマスターが

「そう言えば、その辺りの輸送船が最近見かけないな。」

顔を強張らせて工業ギルドマスターが

「おい!今、コルトレーン星系と言ったな。」

「そうだが」

「そこは、推進剤の素材の一大生産拠点だぞ。それに、ヴァージルア星系はカニバニゥームの生産拠点だ。他にも連絡の取れない素材生産拠点があるのか?」

「どうした?」

「どうしたも、こうしたもあるかい!その2か所からの物資が止まるだけで、この辺の推進剤と対消滅炉への燃料棒の供給が無くなるぞ!」

農業ギルドマスターが、よくわからない顔をして

「どう言う事だ?推進剤の原材料にカニバニゥームの採掘量は、この帝国星系が帝国1位と聞いていたのだが?」

その言葉に対して素材ギルドマスターが

「あぁ採掘量はな。ここから壁が近いからな。だかそれらを精錬して加工するのは、ここじゃない。別の星系に輸出して製品化してもらっている。」

「おいおい、ここじゃ生産してないのか?」

「生産はしている。でも帝国星系内での使用量の2%弱程度だ。それの殆どが軍使用品として使われるので、民生用には殆ど出回らない。」

「なんてことだ。」

「食糧生産は、大丈夫か?」

港湾ギルドマスターが農業ギルドマスターに質問すると農業ギルドマスターが

「普段の食事をする分には、さほど困ることは無いはず。ただ……」

と口籠った。

「ただなんだ?」

と港湾ギルドマスターが問うと、商業ギルドマスターが代わりに

「嗜好品等は、入荷予定が無い。高級食材も入荷予定が無い。って事だろう。一部の調味料も欠品の恐れがあるしな。扱っているからよくわかる。」

「それは困る。なんとかならないか?」

飲食ギルドマスターが、抗議するが

「船が来ないからな。」

「何を他人事のように言っているんだ!運輸ギルドの責任ではないのか!」

「苦情なら上に言ってくれよ。内戦状態にして、海賊が跋扈する宙域を作った奴らにな。」

うんざりした顔で運輸ギルドマスターが、言い放った。

「みなさん、ちょっと落ち着きましょう。運輸ギルドマスターを責めても、仕方ない事じゃないですか。」

港湾ギルドマスターが、騒然としてきた会議を落ち着かせようとして、

「お聞きしますが、通信連絡はどこまで繋がるのですか?」

と話題をふった。商業ギルドマスターが

「この会議前に調べたら、オーイタイガ星系までだ。そこから先は、時空震が頻発していて通信が切れてしまう。」

「ちょっとまて、時空震?そんな話、聞いていないぞ。」

通信データギルドマスターが異議を唱えたが、商業ギルドマスターが

「いや、本当に時空震が頻発しているらしいぞ。現に、オーイタイガ星系からベニサカイポートにも、まともに連絡がつかないらしい。どこで船が足止めにされているかわからないんだ。」

「ちょっと待て、今調べさせる。」

と言って会議室から出ていった。

「通信データギルドマスターが、席を外されたので、しばし休憩いたしましょうか。1時間後再開いたしますので、それまでに皆様の方で、調べて見てください。それでは、一旦解散と致します」

ギルドマスター会議は、一旦中断した。


3時間後

通信データギルドマスターが壇上に立ち、会議が再開された。

「通信データギルドから、まず初めに皆様方に報告することがあります。

調査した結果、約1ヶ月以上前よりシーホース暗黒雲宙域全般に、弱いながら時空震が群発的に発生していることが判明しました。

亜空間航法については、この時空震による影響はないですが、音声を含む亜空間データ通信は、シーホース暗黒雲宙域以遠に対して通信不能に成っております。

現在、現地調査チームにて、時空震の発生原因を調査中ですが、回復の目処は立っておりません。」

その報告を聞いて、会場は騒然となった。

「なんで今まで解らなかったんだ!」

「この件につきまして、軍による公開禁止が出ていたらしく、こちらへの情報共有がなされなかったようです。」

「何やってやがんだ!」

「おかしいですね。あの辺りには、新星に成るような恒星(ほし)は無かったはず。その時空震って、人為的に起こしているのでは?」

「多分それが一番濃厚です。軍いわく、海賊が隠れる為に行っている、とのことです。」

「シーホース暗黒雲宙域といや、海賊被害が多発している宙域だよな。ベニサカイポートの状況はわからないのか?」

「連絡を取ろうとしていますが…」

「なんてことだ。早急に対応策を考察し関係各所に協力の要請を行う。」

「動いてくれますかね。」

「第三皇太子だって、動かざるえんさ。このままじゃ、この星系が干上がってしまう。」

各ギルドは、配下に連絡を行い情報収集と対応策を追われた。


 シーホース暗黒雲宙域と言われる宙域は、帝国星系を含むアルペスキー星雲とトレーダー星系を含むクヴァルファ星雲との間にある宙域で、

恒星が少なく惑星より見上げると黒雲が星々を隠しているように見えることから名付けられた宙域で

アルペスキー星雲とクヴァルファ星雲の距離は、もっとも近いところで300万光年、遠いところで2000万光年の幅を持つ宙域だった。



 ベニサカイポートは、シーホース暗黒宙域のほぼ中央に存在する人工岩盤上に造られた、人口3億人が暮らす交易都市国家である。

 亜空間航法での中継基地として発展してきて、交易と娯楽施設で成り立っており、在庫があれば価格次第で全てが購入出来ると言われる。

男女差別、人種差別がまったく無く、有るのは貧富の差のみ。

己の才覚のみでのし上がれ、どこの陣営にも所属せず、帝国領土内に有って、帝国からも独立した都市国家である。


 そのベニサカイポートで、建国以来初めての出来事に対応に追われていた。


 交易都市であるベニサカイポートの全ての桟橋には、馴染みのある貨物船や客船の姿はなく、

代わりに傷付いた軍艦の姿が有った。修理ドックにも軍艦が修理を受けていた。

しかも、帝国星系を含むアルペスキー星雲方面への通信不能で、まったく繋がらず途方に暮れていた。


「評議委員長。奴等はいつまでここに居座る気ですかねぇ?」

全ての桟橋にドックが見渡せる、ベニサカイポート評議委員長室で窓の外を見ながら

秘書のラ・ンマールがヨ・シヒデ評議委員長に憎々しく言うと、評議委員長席に座りながら

「もうすぐ、出ていかざる得ないさ。」

と、手元の書類を見ながらヨ・シヒデ評議委員長が答えた。不思議そうに

「と、申しますと?」

「奴等には、もう停泊料を支払える金が無いって事だ。」

何でもない事のように、書類の決裁をしていく。

「まさか?相手は仮にも帝国軍ですよ。」

ヨ・シヒデ評議委員長は、決裁書類から目を上げ、戸惑っている秘書に

「確かに、見た目は帝国軍だが、ここに停泊中の軍艦の所属は、第三皇太子側の船ばかりだろ?」

「それが何か?」

「帝国主星は、通信封鎖をされているんだ。それに、当方を経由して主星へと向う輸送船団が、いなくなったと思わないか?

主星では、かなりの物資が不足しているに違いない。現に先日トレーダー星系から来た、救援物資を満載した輸送船団を見ただろう?

かなりひっ迫していると見える。」

「それは、通信の封鎖をされてますから、詳しくはわかりませんが、あれだけの船団で向かったってことは、緊急を要するのでと思いますが。」

「君は、あの救援物資の中身はなんだと思う。」

「食料とかじゃないんですか?」

「違うな。ほとんどは船を動かすための、推進剤に燃料棒だよ。」

「じゃ、帝国国内では船がまともに動かない状態になっているってことですか?」

「いや、正確には軍艦が動かせない状態だろうな。民間の輸送船類は、初期の頃に脱出か沈められているだろうから、帝国星系にな中型以上の輸送船は残っていないだろう。」

「確かにそうですが、それと、帝国軍が停泊料を払えないということと何の関係があるのですか?」

「間違ってはいけないよ。帝国軍が払えないのではなくて、それを指揮している第三皇太子に払える権限が無いってことだ。」

目を白黒しながら秘書が

「どういうことですか?帝国軍は払えるけど、それを許可することが第三皇太子ではできないって言うことですか?意味がよくわからないのですが。」

「そのままの意味だよ。第三皇太子は、皇帝ではないのだよ。即位して居なければ、あくまで皇太子なのだから、国庫の資金を軍費に全て回せる権限が無いのだよ。」

「そんなことがあるのですか?現にドックの使用料に停泊料は払ってもらっていますし。」

「それは、中破以上の船だけだろう?それ以下の船は沖合で停泊中だ。しかも一番安い艀でな。」

「しかし、・・・」

「それにだ、金があるのならなぜその小破した船の修理を行わない?ほれ、あそこに一つ空いているドックがあるのだぞ?それと、奴らはここに来て一度でも補給をしたか?」

「いえ、しておりません。」

「修理代を払ったら、補給費が無いんだろうな。」

「しかし、第三皇太子が次期皇帝になるという見方が大半でしたが?」

「私も最初はそう思ったよ。」

「今は違うのですね。」

「あぁ。」

「どうしてです?」

「最近の資本の流れを見れば一目瞭然だ。帝国主星からは資本の流出が止まらない。それに比べて、トレーダー星系へに資本も物資も集中していると思わないかい?」

「確かにそうですが・・・・・・・・・・」

「これは、帝国星系が経済から切り離されたと思ってもいいだろう。」

「いや、評議委員長!帝国星系は、帝国随一の資源産出星系ですよ!そんなことをしたら、どこから資源の調達が出来るのですか?」

困った学生を見るような目をしたヨ・シヒデ評議委員長は

「トレーダ星系は、どこからその君が言う、足りない資源を調達しているんだ?」

「え!?そういえば、」

秘書は手持ちの端末から調べ出した。

「サナトリア統一連邦共和国?」

「そうだ、帝国に匹敵する星雲国家だよ。そこが、帝国星系並みの値段で資源を卸しているらしい。資源と言うか物資が不足しているのは、帝国星系のみだってことだ。」

「それじゃ、帝国星系を切り離して、第一皇太子が即位して、新生帝国を立ち上げるとでも?」

「その可能性も低い。どうも、帝国本星に何らかの理由があるらしくてな。」

「その理由とは?」

「それが判れば、我が都市国家は存分に生きながらえれるだろうな。帝国星系が落ちぶれては、我々の存在価値が無いのでね。しかし、敵は増やしたくはない。」

「わかりました。A級エージェントを数名派遣いたします。あの方には、何かわかれば報告するということでよろしいでしょうか?」

「そうしてくれ。あの方とは敵対するのは悪手だ。共闘する構えの方がいいだろう。」

「では、手配してまいります」

と言って、秘書は部屋から出て行った。

「まったく困ったものだ。あの方の逆鱗に触れないようにせねば。」

ヨ・シヒデ評議委員長は、1人になった部屋でつぶやいた。



帝国主星 株式会社細魚 社内


「ほぉ~い。みんな元気?」

画面から流れる陽気な声に、げんなりとなりながら代表のカルロ・遠藤は

「サヨリさん!早く帰って来てくださいよぉ。帝国は大変なんですよ!」

その言葉に、周りにいる社員一同が頷くが

「大丈夫、大丈夫。あたしは元気だから!」

と言って笑いかけた

「何が大丈夫なんですか!物価は上がるし、治安も悪くなってくるし。そもそも、今どこに居るんですか!」

「うん?この通信、タイムラグは無いよね?そういうとこ。」

「ってことは、この星系内にいるんですよね!だったら早く帰って来てください!」

「そうじゃないんだ。でも、あたしからの荷物を付けてくれたんだよね。」

「そうですよ。いきなりあんな大きいものを送りつけてきて、設置に時間がかかりましたけど、このシステムはなんなんですか?暗号化やセキュリィティに関する物じゃないハードだけは解りますが。」

カルロ・遠藤は、通信システムと社内システムの間に設置された更衣ロッカー大の装置を見ながら答えると

「まぁ、暗号化やセキュリィティに関する物だけどねぇ。まぁ、そこでちゃんと稼働していることが解ったし、こっちでデーターリンクも取れたんで、もうちょっとしたら帰ると思うので、それまで留守番をよろしくね!。」

と言って通信を切ろうとしたので

「ちょっと待ってください!!今どこに居るかだけ、聞かせてください!!」

と食い下がった。サヨリはため息をつきながら

「仕方がないなぁ。今ね、トレーダーに居るよ。」

と、答えたがカルロ・遠藤は

「嘘でしょ!トレーダーから亜空間通信を使っても、こんなリアル送信できるわけないじゃないですか!もっとタイムラグが生じますよ!本当のことを言ってください!どこに居るんですか!」

サヨリは頭をかきながら

「本当に、トレーダーだよ。カルロ、あたしが送ったのは、量子通信機なんだよ。」

「量子通信機?ちょっと待って下さい。そんな夢の通信機を作ったんですか?」

サヨリは手を振って

「あたしは作れないよ。だから買って送ってあげたの。だから、ここからでもリアル通信できるでしょ?」

しばらく、呆然としたカルロ・遠藤だが、すぐに事の重大さに気づき

「サヨリさん!あなた、さっきデーターリンクって言いましたね。それって・・」

「この量子通信機、あなたの浮遊型仮想サーバーと相性良くて、現在フル稼働中♡」

一瞬天を仰いだカルロ・遠藤は

「サヨリさん。前から思っていましたが、貴女は怖い人だ。」

画面の中でサヨリは微笑んで

「ありがとう。」

と言ってウィンクをした。少し首を傾げながら

「こっちのごたごたを片づけたら、そっちに戻るから。そうぉねぇ。1ヶ月以内に戻れると思うよ」

それを聞いてカルロ・遠藤は

「わかりました。せめてもの私ら社員一同の思いとしまして、その時は、今時点で手に入る酒をサヨリさんに差し上げますよ。」

と言うとサヨリは苦笑いをして

「楽しみにしているわ。じゃぁねぇ~。」

と言って通信は切れた。

「社長、あんなことサヨリさんに言ってももいいんですか?」

1人の女性社員がカルロ・遠藤に声をかけるが

「かまいやしないさ。サヨリさんもわかっているだろうしな。さて、みんな。しばらくは苦しいと思うが、1か月後には好転するぞ!それまでに準備しておけ。なんせあのサヨリさんが帰って来るんだからな!」

「はい!」



トレーダー主星 サヨリ別宅


「さて、通信の状態も良好だし、こっちの用意は出来たっと。で、聞きたいのは、あなた方がどうして即位するのに、帝都の主星にこだわる理由なんだけど、なに?」

サヨリが、タケル・ヤマト第一皇太子と 宰相を前に座らせて、2人に帝国主星にこだわる理由を問いただしていた

「なんで、主星じゃないと即位できないの?ここで、即位を表明して、凱旋で主星に乗り込めばいいんじゃないの?今となっては、帝国主星は死に体も同じよ。通信もまともに通じ無くしたし、物資も行かないように手配したし、経済的にも切り離したし。」

2人は、目配せして諦めた様に話した

「サヨリさんの力で、ここまでしていただいたのはありがたいです。こちらの人的被害も極力少なくて済んでいます。しかし、ここでは即位の宣言は出来ないのです。」

タケル・ヤマト第一皇太子は、真剣な顔をして言葉を発した。

「その理由は、なぁに?」

サヨリは頬杖をつきながら、次の言葉を待った。

「それは、女神の許しがいるのです。」

「はい??」

「信じられないかもしれませんが、帝国主星の城奥深くに、王に至る道が有りまして、それを通って行くと『女神の間』が存在します。そこで、女神に次期皇帝であることを名乗り、認証されなければ、帝国内の全ての決裁事項を承認されないばかりか、全システムを把握できないのです。」

タケル・ヤマト第一皇太子が告げた。

「女神?システム承認って、帝国のマザーシステムって事?」

「そうです。過去からの口頭口承によると、継承者が王へ至る道を通り、女神が降臨し許可を得れれば、帝国の全ての力を移譲される、と伝わっているのです。」

「口頭口承で伝わっていることかぁ。それじゃ、あたしが調べてもわかんないはずだぁ。こりゃやられたなぁ。で、聞くけど継承者じゃない者が、王へ至る道を通ることは?」

「出来ません。そもそも継承者でなければ、王へ至る道に通ずる扉が開きません。」

「歴史的に見て、継承者は血族だけ、ってことは無いよね?」

「そうですね。直系の血族以外からも選出されていますから。」

「何をもって継承者なのかなぁ?」

「当時の皇帝が認めた者、と口頭口承されています。」

「それをなにで、女神さんは識別してるのかなぁ?」

「えっ?」

「だって、継承者の証明って、なんだろうねぇ?」

「考えたことがなかったです。あの道は、継承者でないと開かれませんでしたから。」

「歩いたことがあるの?」

「はい。元服の儀のあと、父である皇帝に連れられて。これで後継者の一人と認められたな、って言われましたから。」

「そうなんだ。アッそうだ!女神さんが降臨しなければ?」

「即位は認められません。」

「歩けても、駄目なんだ。じゃ、第三皇太子が未だに皇帝を名乗れないのは?」

「たぶんなのですが、継承者順位が関わっていて、私が生きているからだと思う。」

「タケルが生きているとダメって?あっ!そうか!継承者順位の上の者が居るから、女神が認めていないってこと?」

「そうだと思います。だからこそ、あいつは私を探し出し、無き者にしようとすると思います。」

サヨリは腕を組み

「困ったなぁ。それじゃ、帝国主星に乗り込む以外方法はないってことだよねぇ。どうしようかなぁ。」

考え込むと、タケル・ヤマト第一皇太子がサヨリの手を取り、

「サヨリさん。ここまでしていただきありがとうございます。あとは、我ら皇族の宿命。私が乗り込み、奴との最終決着をつけて、愛するサヨリさんを王妃として迎えに来ます。」

その言葉を聞いてサヨリは困った顔をして

「う~ん。そんなフラグを立てられても困るんだよねぇ。」

「フラグ?」

しばし悩んでいたが、サヨリは

「ちょっと待ってて。試したいことがあるから。その結果が出るまで待ってもらえる?」

「しかし、・・・」

「とりあえず、10日間待って!それ以降なら、あなたの思い通りに動いていいから。」

「わかりました。その10日間の間に進攻の準備をしておきます。」

「これは、なんとかしなくちゃねぇ。」


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