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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第3章
115/144

帝国内戦10

遅くなってすいませんm(__)m

艦これのイベントとオミクロンと、プーチンが悪いんだぁ~


しばらくがんばります!!

1日置きにアップしますので、どこまで続くか(^_^;)

帝国 帝都


 ミツシサキシリア第三皇太子は、執務室にてイライラとしながら、ペンを手に取り執務をしていた。

それと言うのも、事務仕事に追われてここ1ヶ月間、宇宙(そら)に上がれなく、艦隊の指揮をしていなかったからだある。


 ここ3年は、ミツシサキシリア第三皇太子が連続して軍艦から離れたことは、1週間も無かった。


 帝王学を学ぶに置いて、ほぼ座学から逃げていたミツシサキシリア第三皇太にとって、執務室や会議室での仕事は、苦手分野の上、何をしたら良いかよくわからないものであった。

同じ座学でも、用兵術、戦略論ならば、飽きもせず優秀な成績を残したであろう。


その為、かなりのストレスが溜まってきてはいたが、

『皇帝となる者が執務を疎かにして、国を治める事が出来るのですか?』

と、皇帝府の役人たちに言われ、貴様等に任すと言えば、

『艦隊を指揮するには、一介の軍人で務まります。しかし国家を導くのは、皇帝でなければできませぬ。その為の情報を執務を通じて、国内の状況を把握出来るのにも関わらず、それを拒否されるのであれば、我々は貴方様を今後、皇帝と認めることは出来ませぬ!』

とまで言われては、やらざるを得ないので、慣れぬ書類との格闘を1ヶ月間続けてきたのであった。


 それでも事務方に言わせれば、決済の為に皇太子のサインの必要な書類以外は、全て事務方で処理をするようにしている為、ミツシサキシリア第三皇太子が処理している書類の量は

皇帝が御存命中の処理量の10分の1程度しか回していない。


しかも、それすら滞っているので、仕事が減らないのであった。


皇太子が決裁する書類が滞って居るために、行政の停滞が起こり始めていた。

 それを解決するために、政治将校を各省庁に送り込み、改善させようとした試みは、

もうすでに破綻の兆しが出てきてはいるのだが、派遣された政治将校達は、持ち前のプライドの高さと己の名誉の為に、失敗の報告をあげる者が居らず、上層部には粉飾したデーターを提出して、少し遅れ気味ながら、順調に推移しているように見せていた。


 それでも最初のうちは、タケルヤマト第一皇太子の配下である元帝都防衛隊の駆除の為、戦闘が各地で行われたために、戦闘を理由«言い訳»にして行政の遅れはさほど目立つことは無かったので、国民はまだ不満が溜まることが無かった。


 しかし、帝都周辺宙域からは、タケルヤマト第一皇太子の配下である帝都防衛隊を、ほぼ一掃することが出来、ミツシサキシリア第三皇太子が占拠している帝都を中心に配下の艦隊が、近隣の4つの星系都市を完全掌握し、12に及ぶ星系を含む宙域の制宙権を獲得。

これにて、ミツシサキシリア第三皇太子が見かけ上、帝国全体の3分の1を掌握することに成功した。

 それ以外にも、帝都から離れているが、腹心のクスノマサツグ司令官が指揮する、第7辺境艦隊が支配している商都トレーダー星系を中心に、周辺星系都市実効支配を強めていた。

 それにより、一時的にではあるが内乱の戦闘が収まってきた地域の国民が、行政関係に対し不満を訴え、最初は陳情から始まり、街頭デモに発展、それを押さえようとした軍隊との衝突にて暴動が始まった。

 その為、ミツシサキシリア第三皇太子は、各星系の警察及び駐留軍を用いて、デモの鎮圧を始めた。

 それに伴い、暴動の起きた星系に対しては、報道管制を敷きネットの通信にも規制をかけた。

 これを不服としたジャーナリストや知識人等が中心に、反ミツシサキシリア第三皇太子運動を展開。各星系の都市部で軍隊との小競り合いが始まった。

ミツシサキシリア第三皇太子は、火器使用許可する事により、速やかにこの暴動を鎮圧することに舵を切るが

それが更なる反感を呼び、静観していた国民も反ミツシサキシリア第三皇太子となっていった。


 その為、毎日のように各星系からの暴徒弾圧の報告書、消耗物資の補充請求、活動資金補填の陳情書、破損インフラに対する緊急修理予算請求等が、山のようにミツシサキシリア第三皇太子へと届くようになった。


初期の頃は、采配を配下の者にさせていたミツシサキシリア第三皇太子だが、年間軍費予算を使い切った為に、艦艇の修理、備品購入等の支払いに緊急資金の最終決済者のサインと承認の為に、書類と更に向き合わざる得なくなった。


その頃、帝都から離れた地方星系都市に配置されたある部隊は、推進剤をはじめ、食料品に艦内使用の消耗品の不足分の補充を行いたいが、購入予算を使い切り、資金が無いため購入することができず、作戦行動はおろか訓練行動も出来ないため湾内に停泊していた。


 その部隊に周辺域偵察任務による出撃命令が下った。


 しかし出撃する為に必要な消耗品が足りないので、補給部隊による補給の要請を主計部長がしたところ、本部からの返答は、現地にて調達する事とのだった。

これは補給部隊本部の資材庫に、地方へ送る予備品が無かった為に行った指示だった。

仕方なく主計部長は、会計局に調達費用を打診するが、来期以降の支払い以外受け付けないと断られる。

主計部長が商社に、支払いは来期で物資の納入を依頼するが、状況不安定な昨今では、契約しかねると断られ、

困り果てた主計部長は、一計を案じ食料品を主に消耗品の購入決済時の支払いを、貨幣ではなく駐留艦隊が発行する軍票にて支払い決済をし、そのまま出撃していってしまった。


 紙幣で支払われなかったことで、行政府に苦情を申し出てきた商社に対して、その星系都市の管理を任されていた政治将校が、

この問題が表面化する事により、己の評価低下による更迭を恐れ、

『四半期に一度、補正予算を使って同一星系内で発行された軍票のみ、額面通り貨幣と交換する』

と、星系行政府として軍票の価値を保証した。


すると、他の地方星系都市でもそのような軍票決済をする艦隊が続出

当たり前だが軍票は、駐留艦隊とそこの星系都市間の補助貨幣であり、星系都市間では使用が出来ない。


 その為、軍票が使われた星系内では、他の星系との交易に使う準備金不足に陥り、星系都市間の交易船が減少傾向になり、他星系からの品目が急騰。それに伴い星系内での生産品も価格が上昇。

もともと信用が無い軍票決済においては、貨幣決済時に比べて2.5倍の請求金額になった。


するとどうしたわけか、星系都市周辺の航路にて、守備艦隊による輸送船団への臨検が、頻発に行われるようになった。

名目上は、レジスタンス運動への資金や武器等不当物資供給防止なのだが、酒、煙草等の嗜好品が主に押収された。

押収理由は、換金する事が容易な品であるため、レジスタンス運動の資金源になり得るため、だった。

酷い時には、食料品全てが押収された。

その理由が、食事にてレジスタンスが活力を得ない為、という途方も無い理由だった。


 これには、荷主が軍に対し猛抗議するが、翌日陸戦隊が抗議した荷主の店舗に、レジスタンス協力者容疑で押し入り、荷主を逮捕。店舗、倉庫から全ての物を証拠品として押収。

3日間に及ぶ厳しい取調べが行われ、荷主は全身打撲で意識不明の状態になり、証拠不十分にて釈放される。

そうした事案が数件発生して、良識派の将校が上層部へ報告書を上げたために、市民に対する軍の強権発動は減ったが、無くなりはしなかった。


しばらくすると、今まで現れなかった海賊が現れ、単艦航行することの多い個人運送会社の貨物船を中心に襲われ、

積荷を奪われる事件が多発しだした。中には積荷だけでなく、船を沈められる事も。


 運輸ギルドは、貨物船の安全確保のために、護衛の依頼を軍に依頼するが、取り合ってくれなかった。

その為運輸ギルドは、特に非武装輸送船の単艦航行は危険なため禁止、同一方面に行く船と船団を組込んで輸送するように通達。


 この事が、同一方面に行く船が見つかるまで港に停泊する事から、さらに物流の停滞を引き起こしてしまう。

物資不足の星系への航路が海賊被害の急増していき、ますますその方面に行く貨物船船団が減り、星系の物資不足が深刻になっていく、負のスパイアルにハマってしまっていた。

それは、帝都近郊星系にも当て嵌まる事だった。


 内戦も4か月が過ぎる頃、海賊による輸送船や貨物船の被害報告が、ミツシサキシリア第三皇太子へとあがる量が増えてきていた。

ミツシサキシリア第三皇太子は、これをタケルヤマト第一皇太子における、通商破壊作戦と認識して、

各分隊に被害報告があった宙域に、海賊討伐を命じて艦隊を派遣するものの、被害は減らず逆に討伐隊に被害が出る有り様だった。


被害を受けた分隊からの被害報告調書に書かれている損傷箇所の規模から推測すると、共通していることは、攻撃して来た艦艇は、重巡洋艦以上の火力を所有している艦からの攻撃を受けている事、何処から攻撃されたのかが不明瞭な点だった。

その為、海賊討伐隊に調査官を搭乗させたが、搭乗させた時に限って海賊は現れず、別の星系に現れていた。


 海賊についての詳しい情報が得られ無い中、逓信郵政省所属の貨物船団が、ミツカイデォー星系近郊にて、海賊を撃退させたと言う情報が飛び込んで来た。

情報将校が直接船団長のブライト氏に、詳しい情報を得るために面会を求めた。すると、次の寄港地であるトレーダーであれば、と言う返事がもらえたので、会うことに。

トレーダー商工会議所の応接間で、情報将校がブライト氏から得た情報として


海賊は、帝国首都防衛隊と名乗って臨検名目で物資の略奪を目論んでいた。

逓信郵政省所属の船団には、民間輸送船団と違い、正式な捜査令状が必要な事を知らなかった模様で、令状提示を求めたら、いきなり発砲してきた為応戦。

たまたま、防衛火器を海賊対策のために、12ミリパルスレーザー対空砲から15センチ対艦レーザー砲に改変していたおかげで、撃退させることが出来た

と事件当時の、()()()()()()()()を添えて説明を受けた。

ブライト氏の証言と映像により、海賊の使用している艦艇は、帝国国内では旧式となり廃艦処理された、ハタカゼ型軽巡洋艦を武装強化したクラハ型強襲艦と酷似していた。

帝国首都から来た情報将校達は、海賊を撃退した輸送船団を見ることも無く、それらの資料を持ち帰って行った。


それを見送ったブライトは、

「1週間以上たっているあんな資料だけで良いのでしょうかねぇ。船を見たら一発でバレる報告書なのですが。」

と呆れていると

「いいじゃん、それで納得して帰るんだから。」

商工会議所の事務服を着た小柄な女性が、笑いながらブライトの横に立っていた。

「サヨリさん。もし見つかったらどうするつもりだったのですか?」

ブライトと情報将校達との会談中、側にいてお茶や資料等の配膳や取りまとめを、サヨリがしていたのであった。

「大丈夫よ。あたしの写真は出回ってないから。解りっこないって。もし、あたしを見てすぐに拘束してくるような人達だったら、ブライトさんの説明に違和感を感じて、船の検査するって。」

「確かにそうでしょうが。」

「それより、今回はこんな茶番に付き合わせて、ごめんね。」

「いえいえ。船と大事な郵便物を守る為の装備をして頂いたお礼にしては、私共が出来るささやかな事ですので。」

「ありがとう。」

「しかし、私が戦った相手は、存在しないクラハ型強襲艦じゃなくて、現行艦バリバリのバッフェル型軽巡洋艦なんですがねぇ。そんな存在しない艦を探すなんてことを、」

「じゃ、クラハ型強襲艦を存在させればいいんじゃないの。」

「え?」

「と言っても、昔の船じゃないし、出番はまだだけどね。」

「サヨリさん。それは軍機に抵触しませんか?」

「そうかなぁ?別に帝国軍が建造している訳じゃないし、大丈夫でしょう。」

「軍が関与していない軍艦?民間の警備艦ですか?」

「そういった感じかなぁ?」

とサヨリは微笑むだけだった。



ヒヨンシュン星系 首都ニカワ


 帝都と商都トレーダーとの中間地点に位置し、複数の航路が交差して帝国の内乱状態になる前は、四季の移ろいを感じる穏やかな、風光明媚な自然を有する高級リゾート地として、有名な星系都市であった。


 しかし今は、帝国首都方面から来た、数多くの避難民収容星系になっていた。

 理由は、内乱が切っ掛けで行政府が第三皇太子によって一新させられ、その時に反抗した大臣や高官達は、投獄や追放の憂き目に会い、中には殺害された者も。

身の危険性を感じた官公庁の職員達は長期休暇を取り、まずは家族から避難させ後から合流する為に、疑われにくい近場のリゾート地を選んだ。


 同じように街中では、首都圏にて内乱状態で持ち船が戦闘に巻き込まれないように、各運送会社が首都圏向けの便数を大幅に削減したため物流が減り、その煽りを喰らい軍の兵站が不足する事態に。

その為物資の強制供出を強いられた、商社に商店が抗議をするものの、軍による武力行使によって封じられ

抗議をした商社や商店に対して軍は、治安維持法と国内騒乱罪を適用して倉庫内の物資を没収した上に、社長取締役、重役以上の役職者からは全財産没収と言った処置がされた。

それを見た他の商社は、一斉に社員に対して長期休暇を指示したり、保養所が有る会社は社員旅行と称して、社員家族共々首都圏から避難をした。

その為、避難民の多くは、帝都で働いていた公務員とその家族、それに大手商社関係者とその家族となっていた。


 多くの避難民たちは、内戦が落ち着き次第帝都へと戻るつもりをしていたが、彼等の中には、トレーダー経由にて別の星系、もしくはアレクサンドリア星系へ脱出を試みている者もいた。


ただ問題があった。

通常は、複数の観光ルートの定期客船航路があるヒヨンシュン星系だが、内戦勃発後定期観光航路は全て運休になり、現在運航しているのは、アレクサンドリア星系行きの定期航路とトレーダー星系行の貨客船航路の2系統だけだった。


確かにアレクサンドリアは、学園都市星系なのでもともと駐留軍が居らず、第三皇太子も攻め入る事はせず艦隊の寄港も無かった。

その為、第三皇太子の艦隊に対しては、学園都市アレクサンドリア星系ヘ行けば、安泰ではあるのだが、仕事を探すとなれば求人が少なく、生活が苦しくなるのは見えている。

それと、アレクサンドリア星系から別の星系へ移動したくとも、トレーダーという巨大ターミナル港が近くに有ったために、

アレクサンドリアからの定期航路は、観光保養地のここヒヨンシュンとトレーダーへ出るか帝都へ戻るかの3航路しかなく、ここに居るのとあまり変わらない。


 トレーダー星系に向かえば、そこから更に遠くへ向かう定期航路は何十とあるのだが、トレーダー星系に駐留している、第七辺境艦隊を指揮するクスモトマサツグ司令官は、第三皇太子の片腕とも言われる腹心であり、見つかれば逮捕の上送り返されてしまう可能性が高かった。


 すでに数百名が、帝都へ移送されたと伝え及んでいる。


 では、チャーター便での脱出を試みるが、ヒヨンシュン星系内に居た客船全ては、内乱勃発した直後から、被害を恐れて他の星系へと出港してしまっていて、戻って来てくれる船が見つからない。

 しかも悪いことに、定期便を運航している船会社が、推進剤の供給不足を理由に定期便の運休もしくは、本数を大幅に減らす意向を発表した。

よって、帝都に戻るにも新天地へと移動するにも、避難民にとって難しい選択となっていった。


 その情勢の最中、避難民達の関心を集めているのが『サナトリア統一連邦共和国移民募集』のポスターだった。

 厳しい審査に受からなければ移民することが出来ないが、受かればサナトリア連邦共和国内での当面の生活費の保障、サナトリア連邦共和国国籍、国民権利の保証、職業斡旋、教育支援等充実した内容だった。

言語に関しては、物の名前の違いとか多少の表現の違いぐらいで、方言と思えばほぼ問題が無かった。

 しかも、サナトリア連邦共和国までは費用は要らず、サナトリア連邦共和国所属の客船で外交特権を使い、帝国の司法に縛られない上に、帝国領内は無寄港にて向うので、よほどの事がなければ安全に帝国領を脱出する事が出来るのだった。

応募は随時受け付けしており、提出書類審査の上面接となっていた。


その移民募集センターに、美由紀の姿があった。肩書きは移民センター長であった。

美由紀は、通信機の先にいる相手に対して小言を言っていた。

「さより。確かに、手伝ってあげるって言ったけどね。これってどういう事?私は、聞いていなかったんだけど?」

その言葉に、さよりは

「あれ?言っていなかったっけ?」

と、とぼけてみせるが、目の座った美由紀の

「ほぉ~惚けた事を。さよりのお願い事を、この私が詳細確認しなかったとでも?」

言葉に冷や汗を流しながら

「そ、そういう訳じゃないけど…」

反論を試みようとしたが

「ここの最高責任者って、どういう事ですか!!」

と、言われ

「それに関しては、あたしのせいじゃない!月野さんがみゅう(美由紀)に任したんだから!」

と弁明した。美由紀は呆れた顔をして

「こうなる事は予想していたでしょう。月野さんは、あなたの崇拝者なんだから、さよりが一言言ったらどうなるか。」

「いやいや。いくらあたしでも、全ての行政権限を全て渡してくるって思わなかったよぉ。せいぜい港湾施設を自由に使わしてもらえたらいいなぁ、ってぐらいしか考えていなかったもん。」

と、ちょっと拗ねて見せるが

「あのね、明美もさよりも、あなた達の取り巻きを過小価値しすぎ。あなた達二人が一緒に頭を下げてお願い事をしたら、世界が変わるわよ。」

と、諭すように美由紀が言ったが、さよりは

「ほんとにぃ〜?今度やってみようかな?あっ、でもあ〜ちゃん(明美)と一緒に頭を下げるのは嫌だなぁ。」

美由紀は疲れたように

「明美もそう思っているから。」

と言葉を切り、真剣な目つきをして

「それに、誰がその後始末するか、わかっているんでしょうね!。」

と言い切ると、さよりは

「申し訳ございませんでした。」

平謝りするのだった。


美由紀は、サファイアに頼まれて領地拡大に伴い経済圏が拡大したため、慢性的な人材不足に陥っているサナトリア統一連邦共和国へ、帝国首都圏から避難して来た避難民の中から、優秀な人材確保して移民させる為に派遣されたのだが、

こんな火事場泥棒のような事を思い付くのは、さよりの提案だと言うことはわかっていたので、赴任前にさよりが根城にしているトレーダーに寄って、さよりの身柄を拘そ……いろいろ吐か…質問して事前情報を仕入れて来たのだが、

予想外だったのは赴任早々行政府の長、月野ヒロフミ最高行政総監が、美由紀に対してヒヨンシユウ星系における、最高行政総監の地位を明け渡して来たのであった。


慌てて美由紀は月野を説得して、取りあえず表向きは今まで通りになってはいたが、美由紀にはヒヨンシユウ星系における全ての行政権限と、不逮捕特権は残ったままなのであった。

 これ以上の説得を諦めた美由紀は、連れてきたスタッフと共に一等地に用意されていた建物に、移民センターを立ち上げ、人材確保に努めた。


 さよりとの通信を切り上げ、業務作業に戻った美由紀は、

「まぁ、一番厄介な役所の許認可等が、私のサイン一つで申請が通るのは楽なんだけど、さよりが構築したネットワークで集まる情報が多すぎだよ。」

本日、面接予定の移民希望者の、詳細な個人情報が表示している画面を眺めながら、スケジュールを確認して、スタッフに指示をしていく。



帝国首都


 内乱状態とは言え、地上戦が行われなかったので一般庶民は、通常通りの日常を送っていたが、物価上昇が顕著になりはじめていた。

最初に、酒煙草等の嗜好品が値上がりを始め、今では全ての生活消耗品から食料品に至るまで内乱前の37%以上価格が上昇していた。

その為、生活が少しづつ苦しくなってきていた。

それは、第一皇太子からの反抗にそなえて、数万隻の艦隊を展開している第三皇太子にとっても、見過ごす事の出来ない問題であった。


 4か月経った現在、帝国首都圏を中心に国土の3分の1を実効支配下に置いている第三皇太子派の勢力は初期の頃のように、血気盛んに第一皇太子を追い詰めるのでは無く、攻め入られないように守りに転じていた。


お互いの偵察部隊が鉢合わせにならない限り、戦闘行為は無くなりつつあった。

その為、ここ半月以上は、主立った戦闘行動は行なわれていなかった。

人々は、このまま内乱が終息してくれれば、と思っていた。一部では、和平交渉への準備が始まっていると言った情報が流れていた。


しかし、第三皇太子が守りを固めたのは、和平交渉する準備に入ったのでは無く、占領地の物資不足の為に十分な兵站が確保出来なくなり、

補給路が伸び切ってしまい、これ以上の侵攻は、前線の維持が出来ない為であった。



帝都 城内


 現在の停滞している状態を打破するために、会議が行われていた。

「俺が、決起する前に比べ、この星系に入ってくる物資が63%減っている。なぜだ?

その為、前線に送る兵站が不足して前線維持に努めるだけがやっと、と言うこの状況はどういう事だ?

確かに、初期の頃のように艦隊戦が行われているならば理解するが、帝国内での戦闘行為が無く、納得がいかんのだが?」

ミツシサキシリア第三皇太子が、会議開始早々に現状の問題点について、怒りを滲ませながら質問した。

「殿下、それに関しては、海賊の跋扈による貨物船の定期入港の減少傾向の為に、帝国国内の物資が滞りがちになっているだけでありまして、それが解消されれは以前のように戻ると考えられます。」

「それは、いつだ?」

「現在、海賊狩を行っております。それと全ての貨物船、輸送船団には、護衛艦隊を付けようにいたしました。

これにより、海賊からの攻撃を防ぎ物資搬送を確実に行えると考えられます。」

「それにしてもこの報告書だと、以前よりも貨物船が小型化、輸送船団の艦数減少しているのではないか?

これでは、一回あたりの搬送量は、以前よりも64%少なくなる。これについては、どう言う事だ?」

「調べましたところ、それは、この戦いが始まってから、我が国の輸送船の大型艦の総数が少なくなった為だそうです。」

「大型輸送船の数が減った?各地で物資搬送の重要度が高まって、物資を運ぶ為に増えても、減る事はないだろう。それなのに、肝心の貨物船が減るとはどういう事だ?」

「それが、原因は、我々にありまして。」

報告書を見ていた、官僚が言いにくそうにしていた。

「なんだ。言ってみろ。」

「初期の戦闘において、タケルヤマト第一皇太子側の艦隊を、我々の艦隊が叩きのめしましたが、報告書によれば、ほぼ輸送船団だったと。」

「確かに、物資を集めていたタケルの奴の輸送船団を壊滅させて、あやつに十分な物資を渡さないようにしたが?

それがあるから、奴の主力艦隊である、第一連合艦隊が機能不全を起こして、一度も戦闘に関われないどころか、航海すら満足に出来ないようになっているのではないか?」

この内戦が始まって以来、帝国最大の第一連合艦隊が一度も姿を現さないのは、補給物資が無く動けない状態だと認識されていた。

「そうなのでありますが、我々が治めております宙域において、我が艦隊の補給部隊の輸送船団よりも大きな輸送船団が、民間には有りませぬ。その為、物流が減り物資不足が起こり始めております。」

物流の手配を担当する官僚が、スクリーンに資料を投影させて説明していた。

「他の宙域にいる輸送船団を招喚すれば、いいのではないか?」

別の官僚がつぶやくが、

「すでに、十数社に打診をしましたが、通常業務が忙しく逆に、こちらへ船をもっと回してくれと依頼されるしまつですから」

「新造すればいいだけでは?」

「何を言っておられるのですか?現在、我が艦隊の消耗した小型艦艇の補充の為、影響化のある星系のほぼ全てのドックでは、軽巡洋艦と駆逐艦の修理と造船を急がさせています。輸送船を造船出来るドックの空きが無いのです。たとえ有ったとして、大型輸送船が2、3日で出来るわけではありません。ましてや、船団規模の船数を揃えようと思えば、今の状況では年単位かかります。」

横に控えていた別の官僚が

「では、中古市場から旧式の輸送船を……」

発言していた官僚は、そちらを睨み

「それすら、現在は在庫は有りませぬ。初期の攻防戦において、タケルヤマト第一皇太子側が、金に物を言わせて、全てと言って良いほど根こそぎ、市場に有る輸送船に貨物船を買い漁ったようで、中古市場に残っておるのは、恒星間移動出来ない船か、修理するより溶かして再度部品にした方が、早く出港出来ると言ったものばかりです。」

「トレーダー星系からの船団は?」

「マサツグ司令官からの情報によりますと、海賊が跋扈する宙域に好んで赴く船会社はいないそうで、

現在、護衛艦隊を付けてこちらへ向うことで、契約を承諾した民間の船団を仕立てるそうです。」

「それは、助ける。していつ届く?」

「1ヶ月後の予定です。」

「遅い!もっと早くはならんのか!」

「なんでも物資不足で、こちらが要求した物資の必要量全てを集めるには、その位かかるそうで。」

「ゲッペル!お前の配下の船は使えないのか?」

「申し訳ございません。足の早い船は、第一連合艦隊の足取りに、大型艦は、補給部隊に同行しており、回せる船が有りません。」

「マサツグ司令官に、問い合わせろ。現状でどの位の物資を送れるか!全艦隊の1ヶ月分の行動量が確保できる量が有れば、それでかまわないから、即行送るように伝えろ!」

「了解しました。」



惑星トレーダー 軍司令部


「わかりました。そのように手配いたします。」

そう言うと、相手から通信が切られた。

マサツグ司令官は、秘書官を呼び、指示と伝言を頼むと食事と気分転換を兼ねて、官庁街にある行きつけのレストランに入った。

いつもの席に座り、いつものB定食を頼めば、これまたいつものようにeペーパー(電子新聞)を広げ、政治経済のサイトを表示させて、記事に目を通していく。

しばらくして、運ばれてきた定食を食べつつ記事を読み終えると、食後の珈琲の香りを楽しみつつ、午後からの仕事の段取りを考える。


 と、ここまではいつもの日常だったが、いつの間にか、テーブルの向かい側に座りプリンアラモードパフェを美味しそうに食べている女性に気づき慌てて

「サ、サヨリ様。こちらで何をされているのですか!」

「うん?パフェを食べているんだけど?」

見てわからない?と言った風の顔をしていたが

「それは、見れば判ります。何か御指示でしょうか?あの皇太子(タケルヤマト)ならば速暗殺いたしますが?」

真剣に答えるがサヨリが

「アハハハ、冗談が過ぎるよ、グッすん。」

と、冷ややかな目つきで一瞥すると

「申し訳ございませんでした。」

と頭を下げる。サヨリが

「第三皇太子に送る物資の方は、順調?」

と話を振ると

「はっ、本日、催促の連絡が有りまして、要求量の3分の1を明後日に送り出します。

でも、ほんとによろしいのでしょうか?物資が届けば、今後の作戦の進行に影響を与えるのでは?」

マサツグが()()の行動を妨げるものにならないかを心配するが

「うん。だってお金貰っちゃったんでしょう?だったらかまわないよ。これが、軍票とかだったら断るけどね。でも、残りの3分の2はそんなに急いで手配しなくても良いよ。」

サヨリは、あまり気にしてないように答えた。それが気になり

「どうしてですか?」

たずねたが、サヨリは笑いながら

「多分、それどころじゃなくなるからねぇ。情報ありがとう。ここはあたしが持つわ。ンじゃ、お仕事がんばってネ!」

と言って伝票を掴んで店から出て行った。その後ろ姿を見ながら

「あの方は、何をこれから仕掛けられるのか?」

つぶやいた。



帝国 帝都


 惑星トレーダーより、護衛艦21隻、大型輸送船278隻、先導艦1隻もの大輸送艦隊が、当たり前だが1隻も欠けることなく帝都の貿易港に入港した。

燃料棒や推進剤を始めとする消耗品が大量に届けられて、まずは第三皇太子の主力艦隊に配分され、一息つけることができた。


 残りの物資は、主に最前線の部隊へと送られた。


 それでもさらなる侵攻するには、十全な物量とは言えず、今回の物資の量は前線維持をする為に、最低限必要な量であると同時に、過剰な軍票の発行を止めさすためでもあった。


 送られてきた物資を前に、ミツシサキシリア第三皇太子と参謀官達は

「とりあえず、クスモトマサツグ司令から送られてきた、物資のおかげで助かりましたな。」

「しかしこの状況で、良くぞまぁ集めてくれたものだ。これだけの物資を掻き集めてくれたあやつには、苦労をかけたようだな。」

「通常よりは高価になっていますが、流石は商都トレーダーと言うべきでしょうか、我々が手配しても、なかなか入手出来なかった物資まで揃えてくれるとは。」

「あやつに伝手が有ったらしい、現金一括払いならば用意出来ると言われた時は、意味がわからなかったが、商人の町では有効な方法らしいな。」

「残りの物資は、いつ頃手配出来るのですか?」

「それについては、未定らしい。今回無理して掻き集めたので手元に無いらしく、時間が欲しいそうだ。」

「仕方ありませんな。首都圏ですらこのような物資不足が起こっているのですから、地方星系では、自星系内で生産出来るものでやり繰りしているのでしょう。」

「あと、第一皇太子タケルヤマトの婚約者サヨリの足取りですが、掴めたみたいです。」

「そうか。それでタケルの居場所は?」

「そちらは、まだ掴めてませんが、女のを拘束して居場所を聞き出せるのではないかと。」

「そうだな。そちらは、任す。あと、軍票の方はどうなった?」

「現在、新規の発行は原則禁止の通達を出しました。市場にあるものにつきましては、回収作業を行っております。」

「まったく、軍票のおかげで、市場価格が急騰していたとは。」

「だからなのでしょうな、クスモトマサツグ司令が現金に拘ったのは。」

「信用度が無かったってことだろう。軍票には。」

「確かに。そもそも少ない物資なので価格が高騰している上に、後で金を渡すからと言っても、いつ約束が反故されるか判らない軍票では、保険の意味的に価格をつり上げて取引するようになりますからな。

相乗効果で更に価格が高騰するようになりますしな。」

「まったくだ。おかげで、予想以上の支払いを強いられた。しかしこれで、帝国国内の物価上昇は抑えられるだろう。」

一息ついたように話す第三皇太子とアシヤだったが、一人浮かない顔をしたゲッペルが

「そうでしょうか?私には、この物価上昇がこれで抑えれるとは思えないのですが。」

「どういう事だ?」

「まだ、国内が混乱状態とは言え、生産に必要な素材が、必要量を確保出来ていないのですが。」

「素材の確保?」

「はい。顕著なのは、推進剤に必要なアイスの流通量が通常の流通量に比べ10分の1以下に激減しております。このままですと、支配地域において半月しないうちに、我が艦隊どころか、星系内の船全てが、まともに稼働する事が困難になると思われます。」

「各地での生産量が減ったのか?」

「はい、原料を運ぶ船が無いらしくて。それ以外にも、制御弁等に使用するレアメタル類の在庫切れがおこっているらしく、このままですと近々艦の点検整備にも、差し当たりが出てくるようです。」

「それも、貨物船不足からか?」

「左様です」

「貴様の配下で手配出来ぬのか?」

「手を尽くしてはいるのですが、1社がフル操業したところで、焼け石に水にもなりません。需要に供給が間に合っておりません。今挙げたもの以外にも、二次商品が生産出来ず、止まってしまった工場が出始めました。」

「民生品の生産を制限して、軍需品を生産するように通達を出せ。」

「すでに通達はしております。しかしながら、運ぶ船が手配出来ません。」

「どうしたものか」

すると、港湾官僚の1人が

「1つだけ方法があります。」

と発言した

「どうするのだ?」

「トレーダーから来た輸送船団を、その業務にあてれば良いと思います。海賊対応に護衛艦隊もついていますし、彼らとて空荷で引き返すよりも、仕事して帰る方が稼ぎになって、喜ぶでしょう。」

「確かにな。それはいける。」

その意見にゲッペルは、

「その意見には、賛同出来ません。彼等は、空荷でトレーダー星系に帰るはずが無いでしょうから。」

と言ったが

「この帝都迄物資を来た輸送船団が、帝都から何を運ぶと言うのだ?ここには、他へと運ぶ物資や資材に商品は無いのだぞ?ましてや、トレーダーからのチャーター便。定期便とは違い行きだけの契約であろう?帰りの契約があるわけ無いだろう。」

「確かにそうではありますが、物流業界ではそんな無駄な船の使い方はしません。たとえチャーター便であったとしても、無駄に船を遊ばせる事などしません。特に今は船が足りない状況です。船団をバラして個別契約して帰るか、トレーダーとは別の星系へと移動する船もいるでしょう。」

「フン!その時は、船団ごと戦時徴収して任務に当たらせれば良いではないか!」

名案とばかり、トレーダーからの輸送船団に指示を出すが、すでに次の契約が有ると言われ断られた。

強権を発動すると脅すと、各船主から違約金を請求される騒ぎとなり、武力による脅しには、トレーダーからの護衛艦隊が輸送船団側に付き、 帝都守備隊と一触即発状態になった。


 これを重く見た第三皇太子は、自らトレーダーよりの護衛艦隊に、帝都守備隊に従えと命令するが

「たとえ皇太子殿下からの命令であろうが、従う訳にはなりませぬ。我が艦隊は、いかなる事があろうとも、輸送船団を1隻も欠けることなく、トレーダーへと帰還させるために派遣されたのですから、輸送船団を守るために、我が生命尽きるとも戦い抜く所存であります!」

護衛艦隊の司令官の鬼気迫る口調に気圧され、説得は無理と判断し輸送船団を徴収する事は断念する。


 トレーダー星系より来た船団は、4日後帝都星系から数百個のコンテナを積み込むと、護衛艦隊を引連れて帰って行った


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