表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第3章
114/144

帝国内戦9

遅くなりましたm(__)m

「しっかし、皆さん。やりたい放題やってますねぇ。人ん家の揉め事に首を突っ込んで。

まぁ、さよりさんが絡んでいるから仕方ないのかなぁ?」

かめちゃんが艦内のリビングルームで、頼まれていた資料を纏めながら呟いていた。

「かめちゃん、今暇?」

そこへ、政史が声をかけてきた。

「政史さん。こう見えても、私は忙しいんですよ。」

政史に口を尖らせてかめちゃんが文句を言ったが、政史は呆れる様に

「う〜ん。その格好で言わられても、説得力ないよ」

 かめちゃんは、人をダメにすると言われる、マイクロビーズが詰められた大型マットにうつ伏せに寝転がり、

左手には山盛りのポテトチップス(のり塩)が置かれ、右手には保冷剤を詰めたボックスに入ったコーラのペットボトル(1ガロン入り)からストローが、かめちゃんの口元まで伸びていた。

目の前には、100インチ超高精度超高解像度空間モニターが据えられ、画面を4分割して、バラエティー番組、クイズ番組、アニメ番組、ゲーム画面が表示されていた。

かめちゃんの手には、ゲームコントローラが握られ、着ている物はヨレた紺色のスウェットの上下。ロングヘアーは寝癖でぐしゃぐしゃ。

どっから見えても、ダメ人間の見本のようだった。政史が周りを見渡して

「これで、ゴミが散乱してたら、完璧だね。」

ため息混じりに言うと、かめちゃんはマットの上に座りなおして

「流石に、そこまでしませんよ。で、なんですかぁ?先週の加速式動力炉の炉内歪みのデーターは送信しましたよ。それと、ガルマッゾ合金の応力分布の解析結果も、グラフ付で送信しましたけど?」

「今抱えているのは?」

「政史さんの物は、動力炉系で3つ、鋼材系が4つですね。あと半日あれば全て終わりますよ。」

「他のメンバーのは?」

「明美さんの、演習解析が7つ。拓哉さんの、演習問題が16。サファイアちゃんの経済効果及び経済波及効果のシミレーション問題が8つ。ってところですか?それがなにか?」

「余力は有るね。」

「ありますけど?」

「このデータ解析も追加で、お願いするね。」

と言って、かめちゃんにデータチップを投げて渡した。

「なんのデータ解析ですか?」

データーチップを目の前でかざして、政史に聞いた

「高速戦艦用に開発していた、新型動力炉。ベガサス型の発展型だって。シミレーションして問題が無かったので、試作制作の承認を求められてさぁ」

「問題が無かったんでしょう?どうして私が再度解析するんですかぁ?何か政史さんが問題でも見つけたんですか?」

政史は首を振り

「図面も見たし、提出されたデータも確認した。問題は見つからなかった。」

「じゃ、なんでなんですか?」

「何かな、変に引っかかるんだよ。勘というかなんと言うか。だから念の為にかめちゃんに解析して貰おうって思ってな。」

「ふうん。あっ、これ簡単なんで、もう終わりましたよ。」

「もう終わった?何時もながら、異常に早いなぁ。その解析。開発部のスパコンで4日かかったんだが。」

「政史の勘の方がスゴイですよ。」

と言ってかめちゃんは、モニターに図面とエネルギー流量図のシミレーション動画を表示させて

「ここなんですけど、通常使用に関しては問題はないんですけど、最大出力にすると、わずかですけど、エネルギー流体が乱れるんですよ。」

と言って、シミレーション画像の一部を拡大表示した。

そこには、わずかながら整流ではない箇所があり、時間の経過とともに温度の異常上昇が認められた。

「これを放置しておくと、ここの場所が異常加熱を引き起こして、この部分だけがピンポイントで、熱蓄積疲労によるクラックが発生して、最悪エンジンブローしちゃいますね。

 普通は気付かずに、このまま作製して量産してからしばらくして発覚する案件ですよ。

この段階で判明したら、設計で改修するだけで済みますが、量産してからだとリコールになるのかな?改修費用が大変だったですよ。」

「良かった。俺の思い違いじゃなくて。かめちゃん、そこの形状、こんな風に変更したらどうかな?」

政史が、モニターに映し出されている図面を、フリーハンドで修正していく。それをもう一度シミレーション。

「今度は大丈夫そうですよ。念の為に出力150%まで負荷をかけて、6倍速にて稼働させてみましたが、壊れませんでしたから。」

「かめちゃんも、無茶するねぇ。シミレーションだからって。」

「まぁ。なにかあっても、実害は出ませんから。」

政史は、かめちゃんのシミレーション動画を見て

「本当。かめちゃんの演算能力は、チートだよね。この数分で行ったシミレーションだって、開発部のスパコンにさせたら1週間はかかる案件だよ。それを、ゲームコントローラ片手に、ゲーム攻略のついでにやっちゃたって。うちの開発部の連中が見たら泣くぞ」

政史が呆れて言うと、かめちゃんが

「私に言わせたら、政史さんはじめ皆さんチートですよ。」

それを聞き政史は驚いたように

「俺がチート?明美やさよりは、チートだけどさぁ。この俺が?」

意味が分からないといった顔で政史が聞き返すと、かめちゃんがため息をつきそうな顔をして

「そうですよ。だいたい、クラックの発生原因がわかったらと言って、いきなり図面をフリーハンドで修整しませんよ。しかも、それが最適解だなんて、チート以外の何物なんですか?

普通は、筐体の強度計算とか素材強度を吟味して、流体力学計算とかして何度も形状を変更して、繰り返しシミレーションをして、試作品を作ってみて最適解を見つけるものでしょう?」

「え〜ぇ、そんなことしてたら、時間が掛かって仕方ないよ。おかしなところが見つかったら、その場で修正してしまうのが普通じゃないの?みんなも何も言わなかったし。俺、何時もそうやってきたけど?」

「それは、皆さんがチートだからか、慣れちゃったからじゃないですか?」

かめちゃんが呆れかえったように言うと

「しかし、この俺がチートねぇ。チートって明美やさよりのような奴の事だと思ってたんだが。」

「なに言ってんですか?明美さんとさよりさんは、チートじゃないですよ。あの領域の二人はすでに、バグですからね。」

「バグ?」

「そうですよ。人類有史以前からの戦術戦略を記録し、非生命体NLEからどのような状況下に置いても情報を持ち帰る為に、何が有っても生き残るように開発された戦略AIたる私が、明美さん相手にどんだけ有利な立場に置かれても、最後には捻じり伏せられて、一度たりとも逃げ切った事がないんですけど。」

「明美は、昔から中途半端な勝負を嫌う奴だったからなぁ。」

「そういう問題じゃないと思いますけど?もっとひどいのが、さよりさんの場合で、こちらがどんだけ優勢で、あと1手で勝利目前だったとしても、一瞬で形勢が逆転して、気が付いたらもう負けているって、戦略とか戦術とかをまったく無視して、予想の右斜め上からこちらの勝利を壊しに来ますしね。」

少し怒ったようかめちゃんが言うと、政史は

「あいつは、勝利を確信して自信満々の相手が、目の前で唖然とする顔を見るために、ギリギリまで負けているんだよ。

最後の切り札を切った瞬間に、相手が足元から崩れ落ちるように、崩れていくのが楽しいらしいよ。」

「すごく悪趣味ですよ!」

「じゃ、明美とさより。どちらかと絶対に闘わないとしたら、どちらと闘いたい?」

とかめちゃんに質問したら、間髪入れず

「そりゃ、明美さんで。」

と返答してきた。

「迷いが無かったね。何故?」

「だって、明美さんの場合、これでもかぁ!ってぐらい叩きのめされますけど、まだ、慈悲の心があります。

負けてもですね、悔しさとか敗北感が突き抜けて、なんか負けて清々しい気持ちになっちゃうんですね。

 だからか、尊敬できて、この人の為に尽力を尽くそうって思えるのですが、」

かめちゃんは、一旦言葉を切り怯えた顔付きになると

「さよりさんは、無理です。恐怖しか残りません。」

と言って、顔色を悪くしていった。それを見た政史は驚いて

「オイオイ。かめちゃんって、AIだよね。恐怖って感じるの?」

「私は、あらゆる感情が表現出来ますけど、恐怖だけは基本的に感じないように作られてました。

感じていたら、敵陣に突入する戦略AIなんか務まりませんよ。でも、さよりさんだけは別です!あんな感情を持ったのは初めてです。

あれを、絶望って言う感情なんだって思いました。もう二度と味わいたく無いです。」

と言って自分の肩を抱きしめた。

「そんなに?」

「私は、人間じゃないのでわかりませんが、人間はあれを耐えられるのでしょうか?」

かめちゃんは、政史に訊ねるとあっさりと

「無理なんじゃないかな。あいつを怒らした連中は、軒並み人格崩壊しているからなぁ。」

と答えた。納得した顔でかめちゃんが

「やはり。あれじゃ、明美さんのように慕ってくる人なんか… うん?あれ?でも、さよりさんも明美さんと同じような取り巻きと言うか、慕っている人がいますね。どうしてですか?」

かめちゃんは混乱したような顔をして、政史に聞いた。

「かめちゃん、言ってたじゃん。明美は尊敬出来て付いて行こうと思えるって。さよりの奴も同じように、この人には勝てない、従おうってなっているだけ。心酔してるか畏怖してるかの違いだよ。

 言うなら、明美は勇者タイプ、さよりは魔王タイプ。どちらもカリスマに強さは、折り紙つきでしょう?いざっていう時は、手段は違えど頼りになるでしょ。」

「じゃ、政史さん。明美さんとさよりさんが闘ったらどちらが勝つと思いますか?」

かめちゃんは好奇心で聞いてきたが、それを聞いた政史は遠い目をして小声で

「昔、あの二人、一度だけお互いの持てる全てを注ぎ込んで大喧嘩をしてさぁ。大変だったんだよ。」

今にも蹲りそうな顔色になった。

「どうしたんですか!政史さん!しっかりしてください!大丈夫ですか!」

かめちゃんは、政史の肩を掴んで揺さぶりながら大きな声で、声をかけた。

「大丈夫だよ。ちょっとフラッシュバックしただけだから。」

過去を思い出すだけで、この落ち込むことを知らなそうな政史さんを精神的に追い詰めたようにするなんって、何が有った?っとかめちゃんは思ったが政史は軽く手をあげて大丈夫と意思表示してから、

「俺達、男性陣総出で止めに入ったんだが、まったく手が付けられなくて、あわやコロニー崩壊か?って所までいったんだよ。」

と呟いた。かめちゃんは驚いたように

「いったい何が有ったんですか!そんな事態になるって!」

引き攣ったような笑いを浮かべながら

「どうも些細な事だったみたいだよ。最初はね。2人とも教えてくれないから、何が原因かはいまだに不明なんだけど。

 最初は口論だったのが、お互いがヒートアップしていき、学校内だったんだけど、校舎の壁に穴が開くし、校庭にクレーターが出来るはで、最後の方なんか市街戦みたいになって、

全生徒は学園から総避難して、教師はもちろん騒ぎで駆けつけた警察もお手上げで、軍隊を出動させるか?ってところまで発展したんだよ。」

「その後、どうなったですか?」

「勝者は、美由紀だった。」

「えっ?話が見えないんですが?どういう事ですか?」

政史は、だろうなっといった顔をして、

「あまりにもな2人の暴れ方に、ついにブチ切れた美由紀が、校内のどこからか2人を見つけて、右手に明美、左手にさよりの首を掴んで、暴れる2人を引きずって校庭まで連れて来て、そのまま2人を校庭に正座させて、こんこんと説教始めてさぁ、人だかりができても止めないで、3時間以上してたかなぁ?最後は2人が泣きながら、美由紀に許しを乞うてきたなぁ。」

「えっ!何が起きたんですか?そもそも、あの明美さんとさよりさんが泣くって!」

「凄いだろう?なぜかあいつら2人は、怒った美由紀には頭が上がらないんだよ。あの2人が暴走した時は、幸一の話術や拓哉の防御力以上に有効なんだよ。」

「幸一さんの話術が効かない?拓哉さんの防御力が効かない?そもそも、あの穏やかな美由紀さんがブチ切れた姿が想像出来ません。」

「明美とさよりには、幸一の話術は無効だよ。2人共話を聞かないからね。拓哉の防御力を力技で押し切る明美に、掻い潜るさより。

 さすがの鉄壁の守りを誇る拓哉をもってしても、2人同時攻撃には全く通用しなかったよ。

拓哉が構築した最終防衛ラインが、2人が同時に発した『邪魔!』って一言で、一瞬のうちに瓦礫崩壊するシーンって、あの時始めて見たよ。

いやぁ〜あの時ほど、美由紀が活躍したことは無いだろうなぁ。それ以降、2人は美由紀には、正直に報告を上げるようになったんだよ。」

「しかし、そこまで暴れたのなら、警察に捕まったのでしょうか?」

「未成年だし、学校校内の事だし、怪我人もいなかったし、壊れた場所を修理して、物損の賠償金を即金で支払って、無罪釈放。」

その説明にかめちゃんは、大きく首を振って

「いやいや、おかしいでしょ?」

その姿を見て政史は

「おかしくないよ。幸一が言葉巧みに周りを丸め込んで、問題を不問にしたし、壊れた物は、俺と正が責任を持って修理したし。それでも、言ってくる人は、明美と拓哉が強制退場させて、それらにかかった費用と賠償金は、さよりが全額支払ったしね。」

かめちゃんは、天井を見上げて

「そうだ、この人たち。そういうことのスペシャリストだった。」

「そういうこと」

当時の事を思い出したのか、ちょっと得意そうになった政史。

その顔を見て、この人達なら全てを揉み消したんじゃないかな?っと思ったかめちゃんだが

「政史さん、頼まれていたデーター。解析が終わったんで、メールで送っておきますね。」

頼まれていた物がまとめられたので、そう伝えると

「どれが終わったの?」

「全てです。」

「ありがとう。かめちゃんに頼むと早く済むから助かる。と言うことは、しばらく暇だよね?」

と政史が聞いてきたが

「いいえ。たった今、さよりさんから仕事の依頼が来ました。ってさよりさんいつの間に、量子通信をこの仮想サーバに組み込んだんですか!」

「量子通信?」

「最近実用化された、通信方法です。知りません?」

「知ってるよ。この間までそれに関わってたから。それがどうしたの?」

「さよりさんが、帝国に有った浮遊型仮想サーバーってものを見つけてきて、その機能の拡張に、量子通信を組み込んだんですよ。」

「それって、そんなに難しい事じゃないんじゃ?」

政史が、別に大したことがないのに、かめちゃんが慌ててることに不思議そうにしていると

「今から20年以上も前の言語で書かれた、体系のまったく異なるプログラムで動いている仮想サーバーですよ。

それに最新のプロトコルで開発された量子通信を組込んでまともに動くわけが、………

えっ?なんでこんなに親和性が高いの!これって、完璧に動きます!

嘘でしょう!さよりさん!どこでこんなものを見つけて来るんですか!!」

かめちゃんが慌てふためいて、さよりが送って来た仮想サーバーの検証作業に入ったらしく、

100インチ超高精度超高解像度空間モニターにが今まで表示していた、ゲーム表示各種の番組表示を消し、信じられないといった感じで、スペックの確認を始めた。

「そんなに驚くこと?かめちゃん。そのサーバーがその通信機能を持って困る事ってあるの?」

「政史さん。この仮想サーバー、固定したハードシステムが、全くいらないんですよ。どこかのハードに寄生さえできれば、ネットワークを使って稼働できるっていうとんでもない仮想サーバーなんですよ。

それが量子通信機能を持ったってことは、通信速度の障害が全くなくなって、既知銀河中のネットワークがタイムラグなしで繋がるってことです。」

「それは良い事じゃないか。俺もそれを目指して、開発に協力してたんだし、なにも困ることは無いんじゃないの?」

「この仮想サーバーの怖いのは、ネットワークが繋がれば繋がるほど、並列処理システムの処理速度が上がって行くんです。今まではタイムラグが有ったので、せいぜい1惑星内だけでおさまっていたネットワーク処理が、タイムラグの発生しない量子通信システム上で稼働したらどうなりますか?」

「星系内のシステム全てがリンクされて、高速処理されるってこと?」

「星系内じゃありません。既知銀河系内のシステムが1つのサーバーになるってことです!

しかも、サーバーを介しての高速通信ですよ。銀河中のサーバー内の情報が丸見えじゃないですか!」

「あ!そうか!でも量子暗号を使用すれば、防げるんじゃ。」

「そんな抜け道、さよりさんが許すと思います?」

「無理だな。でも、その仮想サーバに接続しなけりゃ大丈夫だろう?」

「そうなんですけど、どうやって接続を防ぎます?」

「どういうこと?こちらから、繋げなきゃ良い事だろう?」

「相手は実体のないサーバーですよ。演算用のCPU迄も仮想空間にて構築します。

現実には、寄生したサーバー全てのCPUを纏めて、統合並列利用することによる高速化なんですけど

このサーバーに必要なのは、データーを保存バックアップしておくためだけの、記録媒体だけです。

それすら、暗号化の上クラスター化されて、どこに何が保存されているわからないって言ったものなのに、

全ての通信接続手段を持つ仮想サーバーで、ネットワークに入りさえできれば、どんどん勝手に同ドメインサーバー、クライアントだけでなく、繋がりのあるサーバー同士を接続してしまうウイルスみたいな接続サーバーでもあるんですよ!これは!」

「うわ~。厄介な物を持ってきやがって。でも待てよ。うまく使えば恒星間通信よりも早く通信が出来るってことか?」

「そうなりますけど、」

「帝国の第三皇太子は、この事を知らないよな。」

「そうでしょう。量子通信は最近サナトリアで、つい先日実用化したばかりですから。」

「よし!この通信プロトコルを、さっさと艦艇に広めちゃおう。」

「どうしてですか?被害が広がりますよ!」

「グローバル戦略ってことかな?情報を制す者は全てを制す。そういや、正の奴が帝国に行って、帝国の物流の流通に手を加えたんだろう?」

「そうですね。さよりさんの依頼だから、めっちゃ嫌がってましたが、言い値で了承されたから、行かなきゃいけないって嘆いてました。」

「正の奴、さよりに料金をめっちゃ吹っかけても、さよりには無駄ってことを忘れてたのか?

それより、このサーバーがくっついて、量子通信まで稼働させると、一瞬でこの銀河の果てまで情報が届くし、手に入るよな。」

「そうです。」

「かめちゃん、さよりのお得意技はなんだった?」

「え?あっ!情報収集にお金儲け。これを使えば、両方に優位になれます。」

「正解。しかも内戦中の帝国で、敵情が瞬時に得れるようになると、どうなる?」

「情報が得れない第三皇太子の陣営が、窮地になりますね。」

「それだけじゃない。全てサーバーが連結されるのだろう?中のデータも簡単に見られるよな?

そうすると、敵さんのサーバー内のデーターも丸見えになるので、全ての機密情報がわかるようになる訳だから、相手の作戦の裏をとれるわけだから、作戦が成功するわけないじゃないか。発信する前に見てるわけだから、暗号化通信の意味が無いよな?

そこに正の奴が、輸送船の物流管理だけじゃなくきっと、倉庫在庫管理、地域価格等のデーターをも見れるようにしているはずだ。

それを指示したさよりの奴は、このサーバーを使って帝国内の物流どころか、各星系での農産物の生産量に価格、

各工業製品の在庫量に卸値、それはもちろんの事、弾薬在庫、推進剤の量まで把握して、

下手すると輸送船だけでなく、敵艦隊の哨戒艇の1隻に至るまでの存在位置に未来航路まで、

手に取るように解るようになっているだろう?」

「たぶんそうでしょうね。そうじゃないとわざわざ正さんを、帝国に召喚するわけありません。」

「おかしいと思ったんだ。あいつなら、内戦が始まるまでに、事を片付けることだってできたはずだし、例え内戦が始まっても、数日で鎮圧することができたはずだ。

それをしないで、わざわざ手の込んだ仕掛けを施したことをしている。

これは、帝国を手に入れた時に、全て自分の思いのまま動かす布石だな。

 かめちゃん、さよりの反攻作戦が始まったぞ。ここからは、明美が行う戦い方とまったく違う戦争が始まるぞ。

相手にとって、何と戦っているのかわからない、戦う相手がわからない戦争が。」

「なんですか、それは。」

「言っただろう、明美は勇者型、さよりは魔王型って。」

「確かに聞きましたけど。」

「勇者は、どんなに分が悪い戦いでも、正々堂々と真正面から敵に立ち向かって、勝利するんだ。

だから、相手にとってはわかりやすい対戦相手で、対応策もある程度立てやすい。

だけど魔王は、そもそも相手に対して、正々堂々と戦わなきゃいけない理由が存在しない。

つまり、どんな卑怯な手を使おうが、勝てばいいのだから、戦い方なんか気にしないってことだ。

たぶんさよりは、味方の損失を嫌うはずだから、基本的には直接対決はしないはず。」

「なんですか!その戦い方!」

「だってそうだろう?第一皇太子の最大戦力でもある第一連合艦隊が、そっくりそのまま、サナトリアに来てるんだぜ?

本来ならば、帝国国内で艦隊同士の戦いを繰り広げるはずが、まったく行われていない。これはどういうこと?

さよりならいうだろうなぁ。第一連合艦隊は、運営に経費がかかり過ぎるって。」

「おかしいですよ!戦争でしょう?費用を惜しんで戦力を出し惜しみするのは、敗戦に繋がります!」

「そう言うかめちゃんは、さよりに勝てないよ。実際負け続けているでしょう?」

「はい、そうなんですけどね。でも戦いのセオリーってあるじゃないですか!」

「それを覆すのがさよりクオリティー。かなりえげつない戦い方になるだろうなぁ。下手すりゃ、さよりが直接手を下さないで、

第三皇太子陣営の内部分裂で、自滅させてしまうかもしれないぞ。さよりの奴が仁王立ちして

『武人のプライド?なにそれ美味しいの?卑怯者?あなた達が間抜けなだけでしょう?』

って言い放つ姿しか思い浮かばない。

しかし、第三皇太子はさよりに何したんだ?あいつがここまでやるってことは、さよりの奴、めっちゃ怒ってることなんだが?」

「何をしたのでしょうね?」

「とりあえず、ご愁傷様と言っておこうかな?」

「それよりも、さよりさんがこんなことをしたおかげで、私に頼まれていた皆さんの解析データーが、一からやり直しになりました。どうしたらいいんですか!ほぼできてたのに!

まだ、明美さんの、演習解析はまだいいとして、拓哉さんの演習問題なんか、この情報速度に合わせての艦隊の展開及び索敵のタイミングに…… 嗚呼!根本的に変わるじゃないですか!

週末の演習に使えますよって言っていたのに!今から再解析して、間に合うかなぁ?

サファイアちゃんの経済効果及び経済波及効果なんか、設定自体を変えないと、『これ?古典ですか?』と言われかねません。

誰が、4億光年離れた情報を、瞬時に入手できるって思い描けるんでしょうねぇ?

確かに亜空間通信も高速ですよ。でも量子通信に比べたら速度なんか比べようがないし、データー量なんか糸電話と光ファイバー以上違うじゃないですか!

救いは、まだ完全に量子通信ネットワークが構築されていない事ですけど、この仮想サーバーの親和性を考えて、こちらのシステムに組み込む速度を考えて、そうかぁ、船の通信もこれになると?

まだ、船載量子通信機が全艦艇に整備されてないから……いやこのサーバーが艦内サーバーと接続したら

ゲッ!通常通信ではリアルタイム通信が出来ないけど、データーだけならリアルタイム送受信可能じゃない!それに、動画データーとしてなら、リアルタイム通信は可能になるじゃないですか!

今はまだ、艦内サーバーが最適化できていないけど、時間の問題ですね。

ましてや、今月開通する覇道回廊と、来月初旬までに開通する凱旋回廊を使って、帝国首都を結ぶ航路における経済効果。えっ!商用回廊もあと1ヶ月以内に完成させるって!さよりさん!ペースが速い!

そんな財力と物量がどこに!って、あのひとに言うだけ無駄ですね。

うわぁ~!パラメーターがどんだけ増えた?週末には難しいかなぁ?でもサファイヤちゃん、

週明けには、国内の経済議会があるって言ってたし。

間に合わせなきゃいけないのかぁ~」

かめちゃんは今、自分自身の持てる最大能力にてすべての課題に挑みだして、政史が来た時とは違って、目の前の100インチ超高精度超高解像度空間モニターが2面になり、全て細かなテキストデーターが流れ、真剣な表情で悩みだしていた。

それを見た政史は

「ここに居ても邪魔だな、俺は。事務所に帰って、量子通信のネットワークの最適化でも構築して来るか。」

と言って、かめちゃんをリビングに残して出て行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ