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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第3章
113/144

帝国内戦8

珍しく2日連投です。前日も上げてますので、よろしくお願いいたしますm(__)m

 タケルヤマト第一皇太子とミツシサキシリア第三皇太子との覇権争いの内乱が始まり、3か月が過ぎようとしていた。

首都圏と称される4つの星系は、ミツシサキシリア第三皇太子の完全支配下にあり、軍の統制下に置かれていた。

タケルヤマト第一皇太子の支配下に有るのはタケルヤマト第一皇太子の領地だけで、それ以外の星系は、タケルヤマト第一皇太子の支配下では無いと言う立場を貫いていた。

これは、タケルヤマト第一皇太子の支配下に有ると宣言ずれば、ミツシサキシリア第三皇太子の艦隊が攻め入って来るからである。

 すでにタケルヤマト第一皇太子に賛同すると宣言した首都圏からほど近い1つの星系が、ミツシサキシリア第三皇太子が指揮する艦隊に強襲され、住民に多数の犠牲者を出し、食料をはじめとする物資を全て奪われ、都市機能を破綻させられていた。

 タケルヤマト第一皇太子に従えばどうなるか?と言う脅しとも取れる行動を示された為に、周りの星系都市は表立って、タケルヤマト第一皇太子陣営に賛同出来なくなってしまっていた。

しかしミツシサキシリア第三皇太子に従えば、物資の提供を強要され、住民の生活が苦しくなってしまう。

 タケルヤマト第一皇太子陣営は、苦しんでいる星系都市を支援する為に、ミツシサキシリア第三皇太子に搾取された星系には、商社を介してどこからか集めた物資を、輸送船団を組んで供給していた。

そうして首都圏近郊の星系は、表向きにはミツシサキシリア第三皇太子側に従うふりをして、密かにタケルヤマト第一皇太子陣営に協力体制を構築していった。


 首都圏のミツシサキシリア第三皇太子支配下に有る星系都市も、不満が渦巻いていた。

ほぼ軍事政権下になり、報道管制が施かれ言論の自由が無くなり、生活必需品も不足気味で高騰していた。


 この住民の不満を解消すべく、ミツシサキシリア第三皇太子が任命した政治将校達が、各官庁に大臣として派遣され改革に乗り出していた。

 真っ先に行ったのが、タケルヤマト第一皇太子側に関与する官僚を追い出す事だった。業務内容の引き継ぎもさせず、いきなり現れクビ切りして、残っていた資料も廃棄させた。

後任には、自分達の言う事しか聞かない人物を据置き、政治や行政に不慣れな政治将校達は、全てその者に丸投げしていった。

その為、各分野にて予算の奪い合いによる軋轢が生まれ、賄賂が平然と行われる政治腐敗が進行していった。

 国内の政治が荒れ放題になっているのにも関わらず、ミツシサキシリア第三皇太子は、タケルヤマト第一皇太子を探し求めていた。

 この3か月間で徹底的に調べあげて、首都近郊の小惑星帯からの、潜伏する敵艦隊を駆逐する事ができ首都圏近郊には潜伏していない事に確証を得た。

すると、次はどこに居るか?各方面から収集した情報を処理した結果、二択まで絞れたのだが、次の一手に欠けていた。

それは、領地に居るのか?姿を消したタケルヤマト第一連合艦隊と共にしているのか?

現在、タケルヤマト第一皇太子の領地に艦隊を派遣して、全ての輸送船を排除する事による兵糧攻めを仕掛けていた。


 すると、領地より駆逐艦隊や軽巡洋艦を旗艦とした高速雷撃艦隊が、ミツシサキシリア第三皇太子軍が派遣した艦隊を強行突破して食料品調達のためか、軍艦による物資輸送を行いだした。

これは、領地内の食料事情が悪化したため苦肉の策と考えられた。

それを阻止する為に、妨害の艦隊戦に持ち込むが、被害をさほど与えられずにいつも逃げられてしまう。

時には、返り討ちにあう艦艇もあった。


 しかも、その事は、タケルヤマト第一皇太子がカメラの前で演説し、国民に鼓舞するように訴えかけていた。

この事から、領地内に居る可能性は十分高く、さらなる監視強化と締め付けを続行し、領民ごと干上らせて領地内での立場を失くし降伏させる計画は続行する。

 問題は、第一連合艦隊の行き先の判明が遅々として進まない事だった。

それなのに、周辺パトロールをしていた部隊が、重巡洋艦以上の砲撃を受ける案件が出てきていた。

しかもレーダーには全く反応せず、光学観測機器にも捕らえられない。見えない戦艦の噂が広まっていた。

ミツシサキシリア第三皇太子とアシヤをはじめ作戦本部に召集された者は、新型の光学迷彩ができるステルス戦艦が来ているとして、警戒態勢が最高レベルにまで上げられていた。

新型戦艦は、逆探を警戒してか自らの火器管制レーダーを使用せず、その代わり目となる海防艦、もしくは駆逐艦がその役目を請け負っているようで、どこまでも秘匿しようとしている様子がうかがえた。


 もし、第一連合艦隊がそのような新型戦艦を多数抱えた場合、どこから反攻してくるかわからない。

最後に寄港した場所で、補給を受けた事は判明したのだが、そこからの足取りが掴めず、現在に至るまでどこへ行ったかは、わからなかった。


 一時は、サナトリア統一連邦共和国への亡命説が流れたが、運輸会社に擬態した諜報員を

1ヶ月前からサナトリア統一連邦共和国に送り込んだが、彼の国ではそのような話は、噂さえ無かった。

そんな事よりも、国家挙げての一大プロジェクトが進行しているらしく、国内は好景気に見舞われ、全ての産業が活発になっていた。

どのような一大プロジェクトかは、全貌が解らなかったが、国内インフラ整備で巨額の投資がされており、どの星系都市に行っても活気が満ちていた。

国内の鉱物資源需要増大による、措置なのであろう、最果ての地と言ってもいい鉱物採掘場所に、2基目の大型転送リングを建造している事から、国内交通インフラ整備に力を入れている事がわかる。

ミツシサキシリア第三皇太子は、サナトリア統一連邦共和国の情報が集まれば集まるほど、当初考えられた辺境の星系小国ではなく、我が帝国に匹敵する星雲国家であると認識を改めた。

そこで気になったことが、どうしてこのような情報が広がっていないのかと調べた結果

各情報セクションにおいて、皇帝による箝口令が施行されていたことが判明した。

今となっては、前皇帝がなぜそのよな箝口令が施行されたのか不明だが、政権を完全掌握した折には、

サナトリア統一連邦共和国に攻め入って、支配下に置きたいものではあるが、攻め込むタイミングを見誤ると、莫大な被害を被る事になりそうだな。

ミツシサキシリア第三皇太子は、新たに拡がった星図を眺めて、帝国を掌握した後の事を考えていた。


 ミツシサキシリア第三皇太子は、タケルヤマト第一皇太子に関しては神経質なまでに注意深くしていたが、カキモトサヨリに関しては、『覇者の勾玉』を所持している可能性がある女性と言ったぐらいの関心しかなかった。

 報告書を見ると優秀な女かも知れないが、所詮女。自分の口座が凍結され資金も使えなくなっていると知れば、今はタケルヤマト第一皇太子に引っ付いてはいるが、立場が危うくなればこちらに寝返るものだ。『覇者の勾玉』を所持しておれば、その時は可愛がってやっても良いかな?としか考えて無かった。

 すでに、カキモトサヨリが所持していた有価証券については、なぜかすでに凍結されており、手出しができなかったが、莫大な資金の銀行口座を凍結。口座にあった資金は、全て徴収してミツシサキシリア第三皇太子の物とし、艦隊維持の資金に回された。



惑星トレーダー


サヨリは、トレーダーに有る自宅のリビングルームで、静かに怒っていた。

その様子を見た執事が

「サヨリ様。ご機嫌が麗しくないようですが、いかがなされましたか?」

「あれ?顔に出てた?」

「はい。」

「う〜ん。あたしもまだまだねぇ。ちょっと勝手にあたしの貯金を使われたぐらいで、顔に出るなんて。精進が足りないわ。」

と言ってサヨリは、両手で自分の頬を挟み揉みほぐすようにして、恥ずかしそうにした。

「一言言ってくれたら、貸してあげたのになぁ。」

「サヨリさん。貯金が使われたって?もしかしてミツシサキシリア第三皇太子の奴が?」

同じリビングルームで、クスノマサツグとこれからの作戦展開を相談していた、タケルヤマト第一皇太子が驚いたように聞いてきた。

「そっ。やっとなんだか、あたしの銀行口座の1つを差し押さえたみたいで、速攻に凍結して資金を差し押さえて、全額艦隊維持の資金に回されちゃった。」

その言葉に

「けしからん!サヨリ様のお金を盗むとは!ミツシサキシリア第三皇太子も、地に落ちたものですな。それはともかく、いかほどのお金が使われたのでしょうか?」

クスノマサツグが憤慨して聞いてきた。

「たいした金額じゃないんだ。気にしないで。」

と言って、手をパタパタ振りにへらと笑うサヨリだったが、

「いや、サヨリさん。この内乱に巻き込んでしまった、私の責任です。私が弁済いたしますので、ミツシサキシリア第三皇太子に盗られた金額を教えてください。」

タケルヤマト第一皇太子が、責任を感じて申し出るが、サヨリは、

「いいって。ほんの現金80億圓ほどだから、気にしないで。」

それを聞き固まる男2人

「サヨリさん?それって気にしない金額じゃないんだけど?」

「サヨリ様。気を確かにお持ちくだされ。」

そんな2人からの言葉に

「あれ?あたしがお金使われたのがショックで、変な事を言ってるって思われてる?」

「違うのかい?」

心配そうにサヨリを見つめるヤマトだったが

「当たり前じゃないの。しょせん、80億圓でしょう?奴等が手を出せない、評価額3兆圓超えのあたしの手持ち株に比べて大した事無いじゃない。それに、別の口座にはまだまだお金が有るからね。気にしない気にしない。」

あっけらかんと笑いながら、答えるサヨリに

「サヨリさん。貴女の資金力は無限ですか!」

驚きを隠せない。それを見てサヨリは

「そんなことないじゃない。使えば減るわよ。」

「でしょうね。」

「ただ、すぐに補充されちゃうんだけどね。」

「えっ?」

「でも、今回はおもいっきり使っているから、なかなか元に戻らないんだけどね。」

とつぶやくと、タケルヤマト第一皇太子が

「確かに、我々の艦隊の維持費をはじめ、各星系都市への支援を行っておりますからなぁ。」

申し訳ないような顔をしているが、それには気を留めずサヨリは

「それだけじゃないんだけど、まだ、こっちとは関係無いもんね。」

と言って、オレンジジュースで喉を湿らせた。




ミツカ・イディドォ星系沖


 5隻の中型高速貨物船でなる逓信郵送船団が、ミツカ・イディドォ星系の主星イワイに向けて、最後の亜空間航行を終え通常空間にて航行中だった。

突然、航行前方に大型戦闘艦3隻が現れ

「こちらは、帝国軍首都圏防衛隊である。密輸物資の臨検を行う。ただちに停船せよ!命令に背く場合は、発砲する!」

警告してきた。

「ブライト船団長。奴らが来ましたよ。どうします?」

「もうチョイで港なのに、ハイエナが嗅ぎつけたか?メインは軽巡3隻か。ミフネ艦長、例の物、準備をしておいてください。その間、私が通信に出よう。」

ブライト船団長は、通信システムを立ち上げ、

「こちらは、逓信郵政省所属、第31輸送船団チェリーブロッサムシダレ、船団長のブライトである。

帝国通信郵政法により、令状無き臨検は応じかねる。貴殿は令状をお持ちか?無き場合、そちらの要求を飲む必要性を感じない。航行の邪魔である!即刻航路から退去せよ!」

強い口調で、臨検の命令を拒否した。

軽巡洋艦から輸送船団に向けて、主砲が威嚇射撃をしてきた。

「次は当てる。大人しく臨検を受けろ。」

ブライト船団長は、マイクを一旦切って、ミフネ艦長に

「おいおい、あいつら海賊か?」

「だったら、容赦はいりませんね。」

「だな、私の合図で撃て。」

「了解しました。」

ブライト船団長は、再びマイクのスイッチを入れ

「栄光ある帝国軍がそのような行為をするとは思えない。よって海賊と認定。逓信郵政法第69条海賊との交戦、第3項先制攻撃を受けた場合に対する正当防衛が成立。本船団は反撃する。撃て!」

「ふん!輸送船ごときの防衛機銃で、なにができ・・・・」

確かに、護衛艦隊もない国内航路の輸送船団に搭載されている武装(単装20ミリパルスレーザー機銃 4基)では、普通ならば帝国軍の軽巡に歯が立つわけがない。

だが、この船団は武装改変を行われていた逓信郵政省所属、第31武装輸送船団チェリーブロッサムシダレだった。

各艦にサナトリア統一連邦共和国より提供された、40センチ単装小型宙雷発射管が2門増設してあり、5隻計全10門の宙雷が3隻の軽巡に向かって行った。

宙雷は3隻の軽巡洋艦に吸い込まれるように行き、全弾命中。

宙雷を喰らった軽巡洋艦は中破もしくは大破炎上した。

それを見て、ブライト船団長は、ミフネ艦長に

「あいかわらず、宙雷ってやつはすごい威力だな。」

「まったくです。おかげで助かっていますが、次の港で次弾装填を考えると、ひと手間ですけどね。」

「確かにな、人力で装填しなきゃならんからなぁ」

「人命救助を、行いますか?」

近くにいたらしい駆逐艦があわただしく救助作業をしているのを見て、ブライト船団長は

「海賊認定した我々に救助されれば、良くて終身刑、悪ければ死刑になる。彼等に任せよう。」

輸送船団は一路、主星イワイへと舵を切った。



サナトリア統一連邦共和国   宇宙の涯ステーション


「ヤマサカ班長!削岩現場行きの反物質弾120発が届きました。どこへ置いておきますか?」

「第二危険物倉庫へ頼むわ。」

「了解しました。」

「第20現場行きの対消滅弾500発、第四危険物倉庫へ搬入が終わりました。」

「了解。第23現場行きの核融合弾の搬出はどうなった?」

「残り300発です。あと2時間ほどで終わります。」

国家を挙げてのプロジェクトで、賑わう宇宙の涯エリア。

大型の転移リングは、急ピッチに建築が進み8割方完成していた。

そんな場所には無縁な破壊兵器が大量に集められ、そして送りだされていた。

サナトリア統一連邦共和国内の全ての兵器庫、弾薬庫からかき集めた大型殺戮兵器は、万が一の事故を考えて、破壊兵器を積んだ専用貨物船は無人のロボット船で運用していた。

一旦、宇宙の涯採掘現場に集められた大型殺戮兵器は、当初、恒星間ミサイルに搭載され、宇宙の壁と言われている星間物質の高密度帯に向けて、爆破廃棄処分していると言われていた。

ところが一定期間経過すると、観測衛星が放たれ爆破処分現場の状況を事細かく調査すると恒星間エンジンを組み込んだ一万人規模の小型スペースコロニーが用意され、無人の状態で爆破処分現場に送り込まれた。

無事にくり貫かれた空間にジャンプアウトしたスペースコロニーは、自動シーケンスによって、居住可能状態にすると、展開座標を全方位に送信して簡易灯台代わりに成り、後続の貨物船の航海安全に寄与すると共に作業者達を受け入れた

そして、ここでの作業は、国中から集められた大量破壊兵器を、恒星間ミサイルに搭載しさらに奥へと射出することだった

それをすでに12回繰り返しており、総延長30万光年を越えていた。

「しかし、ヤマサカ班長。私達は何をしているんすかねぇ。」

「どうした?急に。」

「いえね。当初は帝国でしたか、そことの国交樹立して、敵意の無いことを証明する為に大型殺戮兵器の破棄をするって事でしたけど、実際は違いますよね。」

「だろうなぁ。帝国相手にこんなことするのはおかしいからな。」

「だったら何してんでしょうねぇ?」

「そりゃお前。トンネル造りだろう。」

「トンネル?」

「あれ?お前気付かなかったのか?この宇宙の壁をくりぬいて、向う側に抜けるんだとよ。」

「ヤマサカ班長!この宇宙の壁、抜けれらるんですか!」

「上の方では、そう言っていたがな。」 

「抜けたらどこに出るんすか!」

「そんなもん、俺が知るかよ。俺はしがない爆薬受入れ担当だぞ?」

「最先端の奴らなら知っているんすかねぇ?」

「どうだろうねぇ?」

電子タバコを燻らせて、ヤマサカ班長は、

「案外、誰も知らないかもな。」



サナトリア統一連邦共和国首都  第一議場


「避難してきた帝国の艦隊は、どうしています?」

サファイア大統領が午後の会議の席で、客人扱いの帝国第一連合艦隊が何をしているかを、小声で国防大臣に問いかけた。

国防大臣が

「我が国の艦隊と週一演習しているようです。あと、机上演習や整備に休息」

「そうですか。で帝国の実力のほどは?」

「拓哉副元帥の采配の元、ほぼ互角になってきているとの報告がありました。」

「明美さんではなく、拓哉さん?」

「そのようです。」

「そうですか。」

しばらく考えてサファイア大統領は

「だとしたら、我が艦隊は、帝国の艦隊に負けませんね。安心しました。」

と頷いて、本議会に意識を戻し、これからの議題に注力した。


「次に最果てトンネルの進捗状態については?」

国家プロジェクト担当大臣が

「現在、計画の日程30%を消化し、トンネルの総延長距離は43万光年を越えました。これは、工期予定に対し22%前倒しになっております。後、副産物ではありますが、優秀な鉱脈が多数発見され、トンネル内の拡張工事も順調で、当初の必要工費予算に対し鉱物資源の売り上げによって、13.2%改善すると思われます。」

報告書を読み上げた。


「質問、よろしいか?」

ソーカシユウ党党首のタカガワ・リュウイが挙手をして意見を求めた

「タカガワ君、どうぞ。」

議長に促され起立してサファイア大統領に対し、

「大統領。この度のプロジェクト、国民がなんと言っているか、ご存知でしょうか?国庫の浪費プロジェクトと言われているのですよ。いつまで、この無駄なプロジェクトをするおつもりか、お答え願いたい。」

真剣な表情で言葉を発した。サファイア大統領は、少し困った顔をするものの

「完成するまでです。」

と、キッパリ言い切った。

「何をもって完成なのですか?」

「帝国首都圏までの、最短ルートの確保です。」

議会が少しざわめくが、半数以上の与党議員は、内容を知らされていたため、落ち着いていた。

内容を知らせれていない野党党首のタカガワ・リュウイは、呆れた口調で

「本当にそのような事ができるとお思いか?国民の中には、プロジェクト工費を経済弱者にまわすべきだと言う意見も多くありますが、それについてはどうお思いか?」

サファイア大統領はため息をつきつつ

「このプロジェクトにかかる工費は、国家予算よりは1銭も出てはおりません。よって、国費の浪費ではあり得ません。それに、国内の失業率は低下傾向にありますし、有効求人倍率は上がってきており、今や売り手相場に成りつつあるのではないのですか?」

と反論。それを聞き

「えっ?国庫から出て無いですと?では、あれほどの工費はどこから捻出し調達されたのですか?」

と詰め寄ると

「それについては、私から述べのとしよう。」

ドルメン大蔵財政大臣が挙手をして、質問に答える発言の許可を議長に求めた。

「ドルメン大蔵財政大臣、どうぞ。」

ドルメン大蔵財政大臣が立ち上がり

「この宇宙の壁トンネルプロジェクト関連の全ての工費は、個人の寄付によるものです。」

それを聞き、疑わしそうな顔で

「はぁ?個人の寄付ですと?おかしいのではありませんか?総額いくらに成るかわからないほどの天文学的金額ですぞ。」

「それを見越しての金額の寄付です。信じられないとは思いますが、事実です。」

これには、知らされていた議員も含め会議場にどよめきが走った。

「そんな馬鹿な。あり得ない。そのような金額を個人が寄付できるなどと」

「そう思われますが、これは事実です。」

と言うと、席に戻り着席した。クライス経済財政大臣が挙手をして発言を求めた。

「クライス経済財政担当大臣、どうぞ。」

クライス経済財政大臣が立ち上がり

「現在国家全体の経済成長率は14%を維持しております。ただ、経済の伸び率を調べてみますと、辺境に近いほど伸び率が高く、タカガワ・リュウイ殿の地元である、辺境より最も遠い旧プロシレン共和国のあたりが停滞気味になっております。これにつきましては、現在対策を考えておりますので。専門家委員会を経て、公開したいと思います。

 それと、質問をされる前にお答えしますが、環境保護団体からの陳情もありましたが、このプロジェクトは中止することは無いでしょう。

そもそも、探査衛星がジャンプアウトできないほどの、星間物質の濃度の濃い空間に、生命体が発見されたことが有りません。

これは、現在トンネル内で稼働中のコロニー内で、いくつもの調査班を設けて調査させておりますが、既知のバクテリヤ、ウィルス等の微生物は発見されておりますが、それ以外の生命体の痕跡は、どの現場からも発見されておりません。」

「現場が隠しているだけじゃないのか!」

議席からのヤジが飛ぶが

「現場の生命生態学調査班の調査が細かくて、ありがたい事に有効な鉱物資源の鉱脈が、次々に発見されております。地質調査班の実績を上廻るほどです。その調査班が、隠すということをするでしょうか?

躍起になって生命体の痕跡を探しておられるので、宇宙工学や宇宙考古学の調査班からは、

この宇宙の成り立ちや、宇宙の壁が出来た経緯の仮説に役立つ情報をもたらしてくれたと言った、感謝の声が届いているぐらいなのですから。」

それを聞きソーカシユウ党党首のタカガワ・リュウイが

「先ほど、工費が13.2%改善ともうされましたが、それを他へは回されないのでしょうか?」

「回す予定はありません。」

「なぜでしょうか?」

「このプロジェクトは、国家挙げてのプロジェクトであり、早期完成が待ち望まれているからです。それに、個人寄付にて行われているプロジェクトの工費が改善されたからと言って、その浮いた費用を他に廻すということは、いかがなものかと。」

「かの帝国は、現在二人の皇太子が対立して内乱状態に成っているとか。そのような所に早期にトンネルを繋いで、我が国に攻め入られてはどうされます。一旦工事を中断し、帝国の内乱状態が治まったら再開してはいかがですか?」

ソーカシユウ党党首のタカガワ・リュウイがそう訴えるが、サファイヤ大統領は

「それでは、遅いのです。我が国が帝国に恩を売るには。」

と言い切った。

「恩を売るにはとは、どういう事でしょうか?すでに、我が国の武器を供給しているではないですか!そのお陰で、タケルヤマト第一皇太子側の戦力が増してきていると言ったもあります。これ以上の支援をする必要性が有るのでしょうか?」

ソーカシユウ党党首のタカガワ・リュウイが言うと、それを支持するように民政主権党グラマロッキー議員が

「大統領。これ以上タケルヤマト第一皇太子側に支援されても、無駄ではないでしょうか?」

と意見を述べた。

「それはどういう事でしょうか?」

サファイヤ大統領が聞き返すと、民政主権党グラマロッキー議員が得意そうに

「情報によりますと、タケルヤマト第一皇太子側は、敗走に次ぐ敗走をしており、帝国領土の支配権はミツシサキシリア第三皇太子側に有ると聞きおよんでいます。これ以上国庫からのタケルヤマト第一皇太子側への支援を行っても、意味のあるものとは思われません。今後、支援する相手は、ミツシサキシリア第三皇太子側に変更するべきだと思われます。」

と言い切った。サファイア大統領は、ため息をつきつつ

「どこから仕入れた情報かは、問いません。しかしあなたの情報の薄さには、呆れ返りました。誰からの入れ知恵ですか?」

「なんですと!信頼の置ける情報筋からの情報ですぞ!」

「そもそも、この武器の支援に関して、我が国の予算から出て無い事が解ってない。」

「えっ!」

驚く民政主権党グラマロッキー議員。それを見て呆れた顔をしてサファイヤ大統領が

「この武器の関して、すでにタケルヤマト第一皇太子側から入金済みなのですよ。無償で供給しているとでも、思っていたのですか?その武器をミツシサキシリア第三皇太子側に供給すれば、契約違反になります。我が国が莫大な違約金をタケルヤマト第一皇太子側に払わなければいけなくなります。まさかとは思いますが、武器に関して何らかの情報をミツシサキシリア第三皇太子側に漏らしてはいませんでしょうね。もしそのような事があれば、国家反逆罪を適用せねばなりません。」

と迫ると、民政主権党グラマロッキー議員はたじろぎながら

「いやいや、私は何も」

逃げの弁明をしようとするが

「あなたのおっしゃった、確かな情報筋と言うのは、どういう筋の事でしょうか?答えてもらわなければ、あなたを拘束する事になるでしょう。」

更に攻め入るサファイヤ大統領。顔を真っ赤にして

「私は何も知らん。秘書が調べて」

と叫ぶが、

「議長!緊急案件の為、大統領特権を行使します!衛兵!グラマロッキー議員及びその秘書を拘束しなさい!すぐさま、家宅調査を行い、情報の流出を最小限におさめなさい!」

グラマロッキー議員に屈強な衛兵が4人で囲み、連行していった。

ざわつく議場に、1人の党首の名をサファイア大統領の声が通った

「ミキヤマ議員。」

民政主権党首ミキヤマ議員が

「なんでしょう。サファイア大統領。」

「グラマロッキー議員は、あなたの党の議員ですよね。」

「確かに、そうですが。あのような行いは、抗議させていただきます。」

それには答えずサファイア大統領は

「あなたの元にも、ミツシサキシリア第三皇太子側の工作員が接触してますよね。」

「なんの事でしょうか?」

「とぼけられてもかまいません。こちらも、確たる証拠が有るわけではありませんし。

一つだけ、昨日帝国船籍の輸送船が国外持ち出し許可のいる商品を、無許可で持ち出ししようとして、密輸で摘発されました。」

「それが何か?」

「いえ、我が国の保安体制は素晴らしいって、お伝えしたかっただけですので。」

ミキヤマ議員は、舌打ちするような顔をして

「我が国にもたらすであろう脅威を、未然に防ぐ事が出来て、私も嬉しく思います。」

サファイア大統領は鷹揚に頷いて

「議長、議会がざわつきましたので、本議会は一旦休会にして、明日の午前より再開といたしませんか?」

「左様ですな。」

「会期の延長を求める!」

「では、会期を2日延長するといたしましょう。一旦休会とし明日午前より再開いたします。」


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