帝国内戦7
ちょっと遅れました(^^;
惑星トレーダー
運輸ギルド集中管理室
正は最後の仕上げとして、コマンドを入力した。
「これで、サーバーが再起動する。」
運航状況を標示していた画面が消え、サーバーが再起動。
各シーケンスを経て通常画面に戻った。
「ほんで、これを、ポチっとな。」
新たなコマンドを入力。すると、輸送船や貨物船の運航状況を標示していた画面が、一瞬点滅した後、標示する情報量が跳ね上がった。
今までは、航海中の船名と行き先、補助的に積み荷の名称が標示されるだけだったが、船名と行き先、積荷の種類、積荷の量、設定航路、各港に停泊中の空荷の船、港内の倉庫の使用量、倉庫内の物資の内容が一目でわかり、さらに別画面では、地域毎の工場での製品生産量、在庫数、農業倉庫の品種別備蓄量等も表示されていた。
さらに精査モードにすると、惑星毎の生鮮食品の単価相場、鉱物資源相場まで表示出来るようになっていた。
「こんなもんかな?」
一通りのシステムのチェックを終えると、運行状況モードに表示替えて、正はのんびりと、マイ湯飲み茶碗に入れた日本茶を口にした。
そこへ、各地の運輸ギルドマスター、港湾ギルドマスター、商業ギルドマスターの面々が秘書達を連れて訪れた。
「タダシ様。サーバーの再起動をされたようですが、システム構築は出来ましたか?」
と、マッサーオ・コクラトレーダー運輸ギルドマスターが、タダシに声をかけた。
正は、湯呑み茶碗をテーブルに置き、
「出来ましたよ。すでに稼働させてます。見ますか?」
と言って、管理室の全てのモニターに、運行状況モードにて表示させた。
そこには、全帝国国内の航路が表示しており、運輸ギルドに登録済みの輸送船、貨物船ならば、法人、個人の区別なくひと目で状況が把握出来た。
これには、運輸ギルドだけでなく、港湾ギルドに商業ギルドからも驚きと称賛の声が。
早速、運輸ギルドのスタッフは受注貨物の効率の良い航路選択を開始、港湾ギルドのスタッフは、湾内誘導の最適化の検討を始めた。商業ギルドスタッフは、空荷の貨物船の効率の良い運行の検証を始めた。
「皆さん、何も今ここで全員が作業をしなくとも、各事務所で確認できますよ。」
と正は、騒がしくなってきた周りに声をかけた。
「タダシ様。本当ですか?」
「一部機能とかでは無く?」
「全機能使えます。そう言うオーダーだったので。全てのサーバーを接続サーバーを介して繋いでいます。もちろん、各サーバーへのアクセスは出来なくしていますよ。今回の運輸に関するデーターのみ共有させる為だけの接続サーバーですから、お互いの機密情報は知られないようにアクセス権限を限定させています。」
「接続サーバーからなら、全サーバーにアクセス出来るのでは?」
商業ギルドのギルド長ゴダイがたずねると
「可能性はありますね。」
正の一言で一同震撼するが
「接続サーバーの場所がわかればね。」
と、正が笑った。
「どういう事ですか?」
「今回の接続サーバーは、浮遊型仮想サーバーなのですよ。」
「浮遊型仮想サーバー?」
「そっ。」
正の説明によると、あまりにも莫大な運輸関するデーター処理の為に、通常のサーバーでは対応出来ない為に、処理分散型仮想サーバーにして星系中のサーバーに散りばめた為に、どこにどのようなデーターが保存されているかわからないようにして、演算装置もどこがメインかわからないようにしてしまったと言う。
「それでは、その接続サーバーのメンテナンスはどうするのですか?」
「基本メンテナンスフリーですね。全てのデーターは暗号化されて、最低4つのバックアップデータを分散保存されていますし、仮想サーバーなので実機は無いので、ハード破損等によるトラブルには見舞われないですね。」
「でも、ここのサーバーに仮想サーバーを立ち上げたのではないのですか?」
「いいえ。ここからアクセスをしているだけですよ。」
「どういう事ですか?」
「ネットワーク内に浮遊するように存在しているサーバーなのですよ。アクセス権のある者だけが存在を感じられるサーバーなのですよ。」
「そのアクセス権は、我々には公開してくれないのですか?」
「しません。」
「どうしてですか?」
「迂闊に触られると、メンテナンスに困るのと、そもそも空きライセンスが無いのですよ。」
「空きライセンスが無い?」
「そうなんですよ。余裕が有れば皆様にもお渡し出来たのですけど、私も1ライセンスしか持ち合わせてなくて、お渡し出来ないのですよ。」
「その仮想サーバーを開発したメーカーに頼めば、ライセンスを販売してくれるのでは?」
正は、苦笑いをして、
「そのメーカーが、20年前に倒産したそうで、もうライセンス契約は出来ないんですよ。」
「なんですって!」
「じゃ、タダシ様はどうやってこのライセンスを?」
「さよりが渡してきたんですよね。面白いサーバーが使われずに漂っているって。最初は、何言ってんだろうって思ったんですよね。で、性能チェックしてみたら、いい掘り出し物で今回の接続サーバーに最適だったのですよ。お陰さまで、当初の予定より前倒しに出来たのと、性能アップになりましたよ。」
「しかし、20年前の仮想サーバーが今のスペックのサーバーに対応出来るのですか?」
「十二分に発揮してますよ。私の方でも試験検証してみましたが、なんなら、皆さんで高負荷アクセスをしてみてください。もし、対応しきれなければ、当初私が考えていた物理サーバーに切替えますので。」
「切替えには、どの位かかりますか?」
「2日ですね。念の為に物理サーバー基地は、すでに構築して有るので、火を入れて稼働状態にして、接続を変更するだけですからね。」
「わかりました。では関係者各位、各ギルドに戻り次第考えられる限りの高負荷条件にて、1週間稼働させて下さい。それをクリア出来たならば本稼働とさせて頂きます。皆さん、それでよろしいでしょうか?。」
集まっていた関係者各位は、異議なしと表明してから、各ギルドへと戻って行った。
後片付けをしていた正に、商業ギルドのゴダイギルドマスターが声をかけた。
「タダシ様。お疲れ様でした。このプロジェクトは大変だったでしょう。」
正は、笑って
「いえいえ、思ったより楽しかったですよ。まぁ、さよりからの依頼案件だったんで、最初は全力で断ろうって、思ったんですよ。」
「サヨリ様からの案件なのに?なぜ?普通喜んでお受けしますよね?」
「いやぁ〜。さより案件ですよ。無茶ぶり確定案件ですよ。普通断りますよ。」
しばらく2人は、黙ったまま見つめあった。
「サヨリ様から依頼されると言うのは、名誉な事でしょう。」
「さより案件を受けたら、デスマーチですよね。」
しばし間を開け2人揃って
「「なんだろう?話が噛み合わない」」
ゴダイギルドマスターがコホン、と咳をしてして
「そういえば、今回使用する仮想サーバーを作ったメーカーは、ご存じですか?」
「倒産した会社の事ですか?よく知りませんね。私は、この国の人間じゃないので、さよりから言われただけですから。ただ、社名は覚えていますけど?」
「ほう、なんと言う会社でしたか?」
「確か、帝都仮想電脳通信社?だったような」
ゴダイギルドマスターは、首を傾げ
「聞いた事がありませんね。これ程の仮想サーバーを構築出来るような会社ならば、何かしら覚えていると思うのですが」
「小さな会社だったようですよ。ギルドマスタークラスの方がそんな中小企業の名前まで、覚えておられるのですか?」
「普通は覚えませんよ。」
「でしょうね。」
「ただ、この仮想サーバー。今回もそうですが、20年前でも使い方次第で、金を生む鶏になり得たはずです。それに気付けないとは。もっと商才を磨かないといけませんね。サヨリ様にはまだまだ追いつく事が出来ませんね。」
と言って、ゴダイギルドマスターは、自傷気味に笑った。
「まぁ、さよりは、その辺の嗅覚と言うか感性は、ピカイチですからね。どこで見つけてくるのか、いつの間にか人材と資材を確保してますからねぇ。」
「確かに、そうですな。ところで、タダシ様。この後、正式な打ち上げではなく、軽く食事でもご一緒しませんか?」
ゴダイギルドマスターが、正を食事に誘うが
「今日は、やめておきましょう。全ギルドマスターと行くのならばいいですけど、商業ギルドマスターだけと行ったら、いろいろ噂話が拡がりますから、また、日を改めてお会いしたときにでも、お声掛けください。」
と断ると、ゴダイギルドマスターは肩を竦めて
「抜け駆けは、できませんか。仕方がないですね。」
と笑った。正もその言葉に笑顔で返し、自分の荷物を纏めた鞄を担ぎ、
「それでは、私は失礼しますね。」
部屋を出て行こうとしたら、扉の所でひとりの美しい女性が
「もうお帰りですか?」
と、呼び止めた。
「あなたは?」
「失礼しました。私、シブサワ・コウの娘メリッサと申します。」
と優雅なお辞儀をして、微笑んでいた。
「シブサワ・メリッサさんですか。で、私になにか?」
「メリッサ、とお呼び下さい。」
「はぁ、では、メリッサさん。私になにか御用ですか?」
「少しお話しがしたくて、」
「メリッサ嬢様。タダシ様は、プロジェクトが終わったばかりで、お疲れなのですから。」
ゴダイギルドマスターが、嗜めるが
「私は、タダシ様に聞いているのです。」
正は、面倒くさそうに、
「ゴダイさん。この娘«こ»の知り合いですか?」
ゴダイギルドマスターは、困ったように
「まぁ。このメリッサ嬢様は、帝国最大級の重工業メーカーである武川工業の社長令嬢で、商業ギルドにも登録している優秀なトレーダーでもあるので、知らぬ仲ではありませんが。」
それを聞き、正はメリッサに向いて
「そうなんだ。その令嬢様が、なぜ私に?」
「貴方に、すごく興味を覚えたからですわ。まだお若いのにこれ程のシステム構築が出来るなんて、素晴らしい。ぜひ、お近付きになりたくて。」
そう言って、笑顔で右手を差し出してきた。正は、差し出された手を握り握手をして、
「まぁ、若く見られますからね。ちなみにさよりと同級生ですよ。」
と、最近使うようになったさよりの名前を口にした。
その瞬間メリッサの笑顔が一瞬だが、引き攣ったのを正は見逃さなかった。
(はぁこの娘«こ»もさよりの関係者か。信者ではなく被害者側な感じだな)
「サヨリと言いますと、カキモトサヨリさんの事でしょうか?」
メリッサが、探るような口調になったので、正は軽く
「おや?ご存じでしたか?仲間内では、さよりって呼んでいますが。なにか、あいつがメリッサさんに、ご迷惑かけましたでしょうか?」
メリッサは慌てたように、手を振って
「いいえ。迷惑だなんて、いつも良くして頂いています。」
その仕草を見て正は
「だと良いのですが、あいつすぐ暴走しますからね。気を付けてくださいね。」
と言って微笑んでみせた。
「お気遣いありがとうございます。」
「それでは、これで。」
正は、会釈をして立ち去ろうとしたら、メリッサが再び
「あの、もうお帰りですか?」
とたずねられたので
「まぁ、ここでの調整は終わりましたので、ホテルに戻ろうかと。」
「この後のご予定をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
正は、少し考えて
「システムの試験検証が終わるまでは、待機ですね。期間は、1週間ぐらいですね。その間、何事も無ければ帰国します。」
「もし良ければ、今日とは言いませんが、一度私と食事にお付き合いしていただけないでしょうか?」
メリッサは、少し上目使い気味に正を見た。
(自分が可愛く見える角度、熟知してるなぁ。このタイプは、普通に断っても来るよなぁ)
「メリッサさんのような、美しくて可愛らしい女性からのお誘い、大変嬉しく思いますが、大企業の令嬢様と2人だけでお会いすると、そちらに要らぬ噂話が立つでしょうから、他のメンバーが同席出来るのならば、良いですよ。」
メリッサは微笑んで
「お心遣いありがとうございます。わかりましたわ。こちらで数名お声がけさせて頂きます。日程調整いたしますのでお食事会にお誘いいたしますね。タダシ様の連絡先を、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「かまいませんよ。」
正は、自分の携帯端末のダイヤルコードをメモに書いてメリッサに渡した。
受け取ったメリッサは、自分の携帯端末にそのダイヤルコードを入力すると、正の携帯端末から呼び出し音が鳴った。
「そこに表示しているコードが、私の携帯端末ダイヤルコードです。本日は、貴重なお時間を頂きましてありがとうございます。また、ご連絡いたしますので、本日は、これで失礼させて頂きます。」
と言って会釈をして、部屋から出て行った。
自分の携帯端末の表示画面を見て正は、
「ゴダイさん。この番号どうしましょうか?」
「知りませんよ。でも、良かったのですか?コードを教えても。」
「かまいませんよ。この星だけでしか使えないレンタルコードですから。国に帰れば使えないコードを教えても私には、実害はありませんしね。」
「しかし、タダシ様は見かけによらず、女性への対応が慣れておられますね。」
正は、苦笑交じりに
「うちの女性陣とやり合っていれば、身体に叩き込まれますよ。拒否権無しでね。」
と呟いて、小さくため息を一つつくと、
「じゃ、これで失礼しますね。連絡は付くようにしておきますから、なにかあれば御一報ください。では。」
そう言って正は、2週間籠っていたシステム管理室から引揚た。
その後姿を見送りながら、ゴダイギルドマスターは
「サヨリ様の人材の厚さには、毎回驚かされますが、如何程の報酬をタダシ様に支払われたのでしょ?」
正は、トレーダーでの仕事の報酬は、全てサヨリから十分支払われていると言って、全てのギルドから金品の受け取りを断っていた。
その為、各ギルドができる事は、食事に誘うぐらいしかなかった。それでさえ、仕事の進行状況次第ではキャンセルされる事も多く、なかなかタダシと親交を深める事ができなかった。
タダシは、ギルドからの誘いは、自分を通じてサヨリとの繋がりが欲しい為に、良い印象を示す行為と割り切って付き合っていたので、ある意味塩対応をしていた。
「さて、このお嬢さんは、何がしたいのかな?」
滞在しているホテルの部屋で、シャワーを浴びてソファーで寛ぎながら、先程会って食事の誘いをして来たメリッサ嬢のダイヤルコードを見ていた。
「まぁ、考えられる事はだいたいわかるけどなぁ。あの打算的な、眼差しを目にしちゃうとなぁ、唯一違うと言えるのは、俺への恋心だよな。それなら、あいつに声かけておくか。」
そう言って、上着のポケットから別の携帯端末を取り出して、画面も見ずにかけると、2コールで聞き慣れた声が聞こえた。
「よっ。こっちの仕事は終わったぞ。この仮想サーバーいいなぁ。サナトリアでも使えないか?」
「お仕事、ご苦労様でした!報酬は振込んでおいたよ。そのサーバー?あっちでも使えるよ。って、もう繋がっているから、帰ったら使って見て。」
「サンキュ。しかし、お前いくら持ってんだ?報酬の即金払いって。それと、その情報網。」
「アハハハ!それは、乙女の秘密。」
「そう言うって思ってた。そうそう、メリッサって言う社長令嬢から食事を招待されたぞ。お前の知り合いか?」
「武川工業のシブサワ・メリッサちゃん?」
「そう言っていたな。お前の信者ではなくて、被害者側の雰囲気だったが。」
「う〜ん。メリッサちゃんには、なんにもしてないけどなぁ。」
「だったら、一緒に行くか?」
「え〜、いいのかなぁ」
「いいんじゃないか?2人きりでの食事会は行かないけど、他のメンバーが同席出来るのならば行くって言っておいたから、別にあっちのメンバーだけって言ってないしね。」
「お主も悪じゃのうぉ。」
「いえいえお代官様ほどでは。」
「かっかかか!って誰が代官様じゃ!」
「で、行くのか?」
「日程が決まったら教えて。万全を期し行くから!」
「了解。決まったら連絡するわ。ほんじゃ、またな。」
「バイバイ!」
「バイバイ!」
サヨリが通話を終了すると、ちょうど打ち合わせが終わって私室に帰ってきた、タケルヤマトが
「サヨリさんが通話って、珍しいですね。誰ですか?」
「友達だよ。今回の事で、少し手伝ってもらったの。それが、無事に終わったって連絡と、武川工業のお嬢さんから食事のお誘いがあったから、一緒に行かない?って言うお誘いの連絡だよ。」
「武川工業って、あの大企業のか?それは、サヨリさんにとって、気分転換になるだろうね。行っておいでよ。」
「タケルさんも来ない?あたしより、気分転換が必要なのは、タケルさんよ?」
「相手先に迷惑だろう?いきなりメンバーが増えたら。」
「大丈夫なんじゃないかなぁ。あの大企業だもん。参加者が一人や二人、数十名増えたって大丈夫でしょう?」
「誘われたのは、サヨリさんでしょう?だったら…」
「あたしも誘われてないわよ。ホストからは。」
「はぁ?どういう事ですか?」
「友達が、ねじ込んでくれるの。だったら、一人も二人も同じでしょ?」
と言って、タケルの手を握りサヨリが笑った。
「ね!行きましょ。」
タケルは、サヨリの笑顔を見てうなずいてしまった。
メリッサ主催の食事会は、惑星トレーダーで1・2を競う高級レストランの個室にて開かれた。
メリッサが用意したメンバーは、武川工業社内から男女2名づつ。それで十分と思っていたが、タダシ側から男女1名づつ計2名増えも構わないか?との打診があったため、断る理由も無いため許可をしたが、タダシが連れてきた二人を見て、メリッサは断れば良かったと後悔した。
「メリッサさん。お久しぶり〜。元気にしてた?」
サヨリが清楚なドレスを身に纏い、手を振って現れ、そのあとにタケルヤマトが現れた。
これには、メリッサは驚きを隠せなかった。引き攣った笑顔をタダシに向けて
「タダシ様。この人選は?」
タダシは、惚けた感じで
「あれ?メリッサさんの知り合いでしたか?この二人は、俺の友達とその彼氏なんだ。サヨリは知っているよね。彼氏の方は、ニイタカ興産の総務本部長のタケルヤマトさん。」
「本日はお招きにあずかりまして、ありがとうございます。突然、押しかけるような参加になってしまいすいません。」
と、タケルがメリッサに頭を下げると、メリッサは、慌てて
「大丈夫ですよ。お気になさらずとも。さ、こ、こちらへ」
メリッサは、奥の4人テーブル席に3人を誘った
メリッサの右手にサヨリ。左手にタダシ。正面にヤマト。という席順。
軽く乾杯したあと食事会が始まった。
メリッサは、ホステスとして話題を提供しつつテーブルを盛り上げていた。サヨリとヤマトは恋人同士として、さり気なく仲が良い雰囲気を出していた。それを見たメリッサは
「お二人は、仲がよろしいようですが、お付き合いをされているのでしょうか?」
「サヨリさんは、時期が時期なので公の場での発表は控えておりますが、私の婚約者になります。」
ヤマトが、少し照れながら話すと、タダシが笑いながら
「まったく、どうやってこんないい奴を捕まえたんだか?」
というとサヨリは、口元に人差し指を立てて
「それは、乙女の秘密です。」
微笑みながら応えた。
「婚約者ですか!それはおめでとうございます。私からお祝いの品を贈らさせください。」
メリッサは、そう言って微笑んでみせた。
「まだ、公の場で発表したわけではありませんから、お気にな…」
「じゃ、武川工業のKCAL569恒星間エンジンを、ジン・クール造船所に100基売って下さいな。」
ヤマトの言葉を遮るように、サヨリが笑いながら応えた。
「さより!」
「サヨリさん?」
タダシとヤマトが咎めるように、声を出すが
「いやぁ〜。こんな所じゃないと、発注しにくくて。ダメかなぁ?」
サヨリが、メリッサに対し上目使いでおねだりするように、見つめた。
二人はしばし見つめたまま動かなかったが、メリッサがはぁっと一息つくと
「サヨリさん。貴女は何を考えておりますの?」
サヨリは少し首を傾げて微笑みながら
「楽することかな?」