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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第3章
111/144

帝国内戦6

帝国領 サボネアニ沖

 機関全開状態にして、通常空間を最大船速にて疾走というより、逃走を謀っている1隻の護衛艦スノーウィンドウ

その後ろ1天文単位離れて追走している、軽巡洋艦グラフサンレッドを旗艦とした第三遊撃艦隊所属第二分隊の8隻


「ジャンプインされては、面倒だ。この宙域でトドメをさせ!」

軽巡洋艦グラフサンレッドの艦長、ロバートヤナギダが命令を下す。

護衛艦スノーウィンドウは、一部に被弾しており速度も若干劣る為に、間もなく第三遊撃艦隊第二分隊の有効射程距離圏内に入りつつあった。

「全艦隊、掃射準備完了。撃て!」

8隻からの射線を一身に浴びた護衛艦スノーウィンドウだったが、艦体に着弾寸前に強引ともいえる、慣性制御システムによる推力反転する事により、急停止からの後進したことで、かろうじて被弾することを回避。

しかし、第三遊撃艦隊第二分隊との距離がつまる。

「バカか?撃ってくださいとばかりに、近付いて来たぞ。標準補正!第二掃射準備!撃て!」

すると、護衛艦スノーウィンドウは、急激に艦首を上げ、バク転するかごとき機動により、第三遊撃艦隊第二分隊の射線を避け、第三遊撃艦隊第二分隊の頭上を越えて、艦体後方に抜け、艦首をいつのまにか180度回頭させて全力にて逃走。

「なんて機動しやがる!急速回頭!逃がすな!」

すると左右にいた僚艦が、突然爆発し炎に包まれたした。

「何が起きた!」

軽巡洋艦グラフサンレッドの艦長、ロバートヤナギダが叫ぶが、直後激しい衝撃に襲われ艦長席から床に叩き付けられた。

「被害状況!」

床から立ち上がり、額から一筋の血が流れているが、気にせず状況報告を求めた。

艦長席から見えるのは、ブラックアウトしたスクリーン群、負傷した艦橋スタッフ、各種アラート

「やってくれたな!」

「報告します。当艦は、敵艦が敷設した機雷に接触したもようです。現在、ダメージコントロールにて、被害拡大を防いでおります。」

「艦隊の被害は。」

「僚艦の軽巡洋艦グラフルナブルー、グラフマルスグリーンが同じく機雷にて大破。幸いなことに、残りの駆逐艦隊には被害はありません。」

「敵艦は?」

「我が艦隊の上部をすり抜け、後方へ回り込み、そのまま逃走しました。」

「当艦は、航行可能か?」

「はい。前面火器が全て使用不能ですが、動力炉は異常ありません。しかし、」

「追跡は、これまでか。要救助者を収容した後、帰投する。」


 護衛艦スノーウィンドウ 艦橋

「異空間ジャンプ完了。」

「野郎共、生きてるか?」

「総員、なんと生きています。」

「艦長!もう、あんな無茶な機動をさせないで下さい」

「すまん!しかし、あれ以外全員助かる方法が思い浮かばなかった。」

護衛艦スノーウィンドウの艦長島代護が、逃げ切れた安心感から砕けた口調で艦橋スタッフに声をかけしていた。

「しかし艦長。よくもまぁ、あのような機動を思い付いたものですね。」

作戦参謀の沖森雫が、呆れ交じりの声で聞いてきた。

「あ、あれな。この前送られてきたうちの第一連合艦隊と、サナトリア統一連邦共和国の軍事演習の映像に有ったんだ。」

「はぁ?あちらさん、そんな内容の映像を我々に渡して大丈夫なんですか?十分軍機情報でしょ?」

「ある意味、自信の現れなんだろう。映像では、今の機動を戦艦級がやってのけていたからなぁ。しかも、そのまま反撃して、戦艦単艦でうちの第一連合艦隊を蹴散らしていた。」

「はぁ?その戦艦の艦長。イカれてますよ。船体にどれだけ負担をかけるか。」

「俺もそう思うが、その指揮をしたのが、あちらさんの最高指揮者の総合元帥様だそうだ。本人自ら乗船の戦艦で、我が第一連合艦隊相手にやってのけていたらしい。しかも、慣性制御しているんだから、船体に負担がかかる訳無いって言いのけたらしいぞ。」

「確かに、慣性制御してますから、そんな機動しても大丈夫でしょうけど、普通しませんよ?」

「だよなぁ。しかも、宇宙空間において、上下左右は主観であって客観じゃない、とも言ったそうだ。」

「艦長。そんな相手に、第一連合艦隊の連中は演習しているのですか?」

「そうらしい。」

「大丈夫なんですか?うちの艦隊は?」

「まったくだ。こっちは、時限式機雷を目眩まし代わりに、放つのがやっとって言うのにな。そういや、戦果確認しなかったが、あちらさん、引っ掛けたと思うか?」

「目眩まし用に、タイマーを最低の5分にしてましたから、どうでしょう?当たる前に爆発してそうですが。そうですね、良くて、先頭にいた軽巡洋艦1隻を中破、ってとこでしょうか?」

「だろうなぁ。ま、作戦本部の作戦通り、俺たちは生きて帰投するのだから、この勝負、俺たちの勝ちってことでいいよな。」




帝国領  ラーテローイ岩礁宙域


「敵艦、発見。軽巡洋艦2隻、掃海艇5隻」

パッシブレーダーにて周辺警戒をしていた、帝国第三首都圏防衛艦隊所属 海防艦メイプルシロップ艦内に緊張感が走る。

「新兵器の試し打ちには、手頃な相手だな。」

敵艦に感知されないように、動力炉を停止させ、必要最小限まで絞った消費エネルギーで、岩礁の影に息をひそめていた乗組員達。

ようやく実戦にて、サナトリア統一連邦共和国より供給された、新兵器を試すタイミングがきた。

海防艦メイプルシロップの武装は通常、単装12センチ対艦ビーム砲4門、9ミリ連装対空レーザー機銃8基なのだが、9ミリ連装対空レーザー機銃全てを撤去し、サナトリア統一連邦共和国より供給された新兵器、次弾換装ユニット付き単装60センチ宙雷発射筒4基に変更されていた。

「敵艦識別完了。第二打撃艦隊所属軽巡洋艦ナウラとヤムナです。掃海艇は第三機動艦隊所有のAI船です。」

「新兵器がカタログ値通りの性能か、試させてもらおうか。1番及び3番は、ナウラに。2番、4番はヤムナに目標設定。」

火器管制レーダーによる照準は、逆探されて反撃を食らう可能性があるため、パッシブレーダーと光学測定照準器にてターゲットにロックオンしていく。

1番発射筒をターゲットに、少しずらして3番を照準。同じように2番4番も照準を合していく。

その時、敵艦の掃海艇5隻があわただしく動き出した。それと共に、敵からのアクティブレーダーが交差する

「敵掃海艇に、我々が隠れている事が感知された(バレた)模様。敵艦散開します。」

「チッ。炉に火を入れろ!逃げるぞ。照準が合ったなら、全弾発射シュートせよ!」

「まだ、有効射程距離ではありません。」

「かまわん!目眩ましにはなるだろう。射出後全力で逃げるぞ!」

「動力炉稼働!臨界まで二分!」

「敵、軽巡洋艦より、火器管制レーダー。捕まりました!敵、発砲!来ます!」

「照準まだか!」

「1番、3番照準完了!撃ちます!」

「2番4番も照準完了!射出!」

軽巡洋艦ヤムナが放った主砲12センチ連装ギガ粒子砲は、海防艦メイプルシロップが隠れている岩礁に命中。

着弾寸前に、全宙雷4基を射出に成功したが、砕け散る岩礁。その煽りを喰らって激しく揺れ、砕けた岩礁が海防艦メイプルシロップの外装を激しく打ち立てる。

そのせいで、2番4番の宙雷発射筒が破損。使用不可能になった。

「動力炉、臨界!行けます!」

「全力全開!逃げろ!3番4番主砲にエネルギー充填!目標、敵掃海艇、撃て!」

追ってくる、敵掃海艇5隻に対して牽制の攻撃を開始。

「宙雷、全弾命中しました。えっ!」

観測隊員が絶句した。

「どうした!」

「敵、軽巡洋艦2隻、爆沈」 

「なんだと!」

最大望遠にて、軽巡洋艦がいた宙域を写し出して見ると、船体が大きく二つに割れた軽巡洋艦2隻が、写し出された。

「どうします?救助活動しますか?」

「あの掃海艇が、邪魔しなけりゃ要救助者の救助に向かう。」

「了解です。」

「しかし、この新兵器は、有効射程距離がもう少し長ければ、恐ろしい兵器になるだろう。」



宙雷

通常メガ粒子砲を艦に備えようとすれば、メガ粒子の加速器を砲数毎に備えなければならない。

大口径になればなるほど、加速器は高出力の大型化する。

威力はあるが駆逐艦以下の小型艦艇には、スペースの問題から積みにくい砲だった。

その問題を解消すべく開発されたのが宙雷であった。


宙雷は、口径に合ったメガ粒子の加速パックを、砲内で暴走させることにより、メガ粒子砲のように

撃てるようにしたものだった。

加速器の代わりに、使い捨てにする加速パックを利用することにより、駆逐艦以下の小型艦にも搭載することが出来るようにした、画期的なメガ粒子砲だった。


欠点として、同じ口径のメガ粒子砲と比べて、有効射程距離と威力が6割ほどしかないということ

加速パックを使い切れば、当たり前だが撃てない

加速パックの価格が、対艦ミサイルと比べてかなり高価と言うことだった。




海防艦メイプルシロップは、この日救助した人数は、1000名を越えた。



 戦艦級の一撃で、軽巡洋艦2隻が沈められた事により、第三皇太子側はラーテローイ岩礁宙域に第一連合艦隊が潜んでいると確信し、偵察部隊の強化を開始した。




惑星アレキサンドリア


「アレックス。どうした?うかない顔をして。財布でも落としたか?」

「キヨシか。はぁ。」

「ため息なんかついて、どうした?」

「イやなぁ、実家からの仕送りが遅れる上に、減らされるんだよ。バイトのシフトを増やそうかなって思ってさ。」

「お前の実家って、部品商社だったよな。この前までは、景気の良い話をしていたじゃないか。お前、実家から怒られるような事をしたんだろう?」

「してないわい!実家の商売が上手くいってないらしいんだ。と言うか、相手が金を払ってくれないらしい。」

「はぁ?料金の踏み倒しかよ!どこだ?そんな事をするような会社は!」

「お前が熱くなってどうする?相手は、軍らしいんだ。」

「えっ!軍かよ。なんで払ってくれないんだ?」

「払わないとは言ってないらしい。ただ入金が3ヶ月以上遅れるらしいんだ。」

「はぁ?その間、お前とこの会社の資金繰りはどうするんだよ?」

「それで、実家は困っているらしいんだ。それにな、更に商品を納めろと言ってきているらしいんだ。仕入れの資金繰りが心許ないって母親が嘆いていたよ。そういや、お前とこの実家も軍に商品を納めていたんじゃないのか?」

「あぁ。納めていたけど、今は別の商社が間に入って取引しているらしい。」

「別の商社?」

「なんでも、軍に直接納品するよりは単価を買い叩かれるらしいけど、注文の量は五割増しで、即日現金払いしてくれて、軍との交渉も請け負ってくれて、商売的には助かっているってさ。」

「なんだよ、その商社。めっちゃいいじゃないか。紹介してくれないか?」

「別にいいけど、お前とこの会社首都圏だったよな。」

「そうだが。それがなにか?」

「親がな、別の商社から頼まれて、その商社に仲介したらしいんだが、首都圏には支店が無いらしくて、首都圏の商社には対応できないんだと。」

「そう上手くいかないか。」

「せめて、リッチレイスフェルド星系までなら対応できるらしいんだが。」

「なんて言う名前の会社なんだ?」

「たしか、変な会社名だったんだよな、なんだっけ?」

「覚えてないのか?」

「ちょっと待て、怪しい会社かどうか調べるのに確か登録してたはず。」

と言って、キヨシは自分の携帯端末を検索した。

「あった、これだ。株式会社半喙(バンフイ)。半年ぐらい前に出来た会社で、親会社はあの、株式会社細魚(サヨリ)だ。」

キヨシがアレックスに携帯端末の画面を見せた。

ネットの会社情報が紹介されているページには、株式会社細魚の営業部門が独立した会社と説明されていた。

「ふうん、研究開発部門と営業部門を分けて、それぞれ独立した会社にしたわけか。」

「そのおかげで、総合商社として活動している会社になったみたいだけどね。でもよう。首都圏の商社が軒並み不況って、おかしくないか?」

「どうした?急に?」

「イやな、経済学部のスミレン教授がこの前の講義で言っていたんだが、今、帝国国内の景気が片寄っているらしいんだ。」

「片寄っている?」

「国内の景気をマクロで見れば、例年通りの推移を示すグラフになるらしいんだけど、ミクロで見たら、すごい格差があって好景気と不景気の差がメチャクチャらしいんだ。特に首都圏の景気は軒並みダウンしていて、倒産廃業する企業が増えるか、首都圏から地方への移転が活発化するだろうってさ。」

「なんだ?そりゃ。」

「首都圏の景気を地方が吸い取っているらしい。辺境に向かえば向かうほど景気が良くなるらしい。」

「どういう事だ?」

「理由は研究対象らしいぞ。内乱がはじまっているだけでは、説明がつかない事例らしくてな、それが解明出来れば良い研究論文が書けるそうだ。」

「今の俺には、研究論文のテーマより、明日の食費だ。バイト増やすか。」

「いいバイト有ったら、俺にも教えてくれよ。」




惑星トレーダー


ここには、大型船が直に横付けできる波止場が3ヶ所あり、第一波止場は主に高級旅客船の着岸する場所で、今は空いていた。

しかし第二波止場と第三波止場には、大型輸送船が順番待ちの状態で、荷揚げ作業や積込作業を行っていた。

波止場に泊める繋留費がもったいない中型クラス以下の輸送船は沖止めして、艀にて荷揚げ作業や積込作業を行っていた。

そのためトレーダー港湾巡視隊は、交通量が肥大した港湾内の接触事故を防ぐ為に、航路の誘導、整理に追われていた。

それでも事故は起こるもので、その対応にも追われていた。

「航路66号にて、接触事故発生。付近には積荷のコンテナーが散乱しているもよう。航路66号を閉鎖します。付近を航行中の艦艇は、航路76、86号に迂回してください。」

「そこの小型船どこへ行く!11号は大型船専用航路だ。即刻113号へ、航路変更しろ!」

「竹山運輸の大型船。即刻その場所から移動しろ!そこは、レジャーボート繋留地区だ!」


「まったく!普通国内が内乱していたら、物流は減るんじゃないのか?」

運輸ギルドが管轄している港湾管制室でぼやく管制員

「そう言うなって。ここは、商都なんだから仕方ねぇじゃないか。」 

「それにしても、船の数多くないか?」

「首都圏航路から、ここへ変えて来ている奴らが増えたからなぁ。」

「首都圏航路って、そんなにヤバイのか?」

「ドンパチは無いらしいが。」

顔を曇らせて

「臨検と称しての、物資の差し押さえが酷いらしい。」

「どういう事だ?」

「聞いた話なんだけど、港に着く前に軍が来て、物資を調査すると言って1割からひどい時は5割の積荷のコンテナーを持って行くらしい。」

「持っていった物資の代金支払は?」

「知らぬの一点張りで、払ってくれないらしい。」

「オイオイ、それって海賊行為だろう!」

「運輸ギルドと商業ギルドが連名で、政府に苦情を申し立てているんだか、政府官庁関係も手を焼いているらしくてな。」

「その話なんだけど」

休憩から帰ってきた別の管制員が、コーヒー片手に話に入ってきた。

「俺の同期が首都圏管制センターにいるんだが、結構ひどいらしいぞ。」

「ひどいって?」

「首都圏航路の通行量が激減してな、物資不足がちになってきているらしい。」

「例えば?」

「軍規格品のストックは、そろそろ尽きるんじゃないか?っていう話だ。それと、嗜好品が高騰しているらしい。同期の奴が、金を払うから酒と紅茶にお菓子を送ってくれないかって、連絡が有ったんだ。」

「そんな物が、入手できない状態なのか!」

「金を出せば買えるけど、通常の倍以上するらしい。それで送るには、郵便小包にしてほしいらしい。」

「なんでだ?」

「ひどい臨検にかかると、個人宛の荷物まで持って行くらしい。」

「オイオイ、そりゃ犯罪だろう!」

「軍の言い分は、反社会的勢力への供給物資の没収だそうだ。ただ、郵便小包に関しては、逓信郵政省がチャーターした船が、通信の秘密を楯に、臨検を一切拒否して突破しているらしい。」

「やるねぇ。すこしは、お役所を見直したぞ。」 

「今じゃ、首都圏航路は、軍艦と郵便チャーター便、一部の運送社しか、航行してないらしい」

「完全に戦時下のようになっているんだなぁ。」




惑星マタガエ


帝国主星へ続く、小惑星回廊の出入口でターミナルとして発達してきた惑星マタガエ。

静止衛星軌道上に設けられた大型船専用波止場が2基あり、3基1群を基本としたコロニーが18群存在し、全てのコロニーには中型クラス以下輸送船が横付けできる桟橋を備えており、

一時は惑星トレーダーをしのぐ規模の貿易量を誇っていた。

内乱が始まった頃は、港湾機能をフル回転させても追い付かない状態で、賑やかで華やいでいた場所だが、

内乱が4ヶ月が過ぎた現在は、沖合いに第二打撃艦隊が陣取り、マタガエを通り主星に行く全ての船の臨検を行っていた。

港湾内に、第八哨戒船団が巡回警邏を行っていた。そのため、マタガエに寄って別の星系に行く船が補給の為に近づくだけで臨検を行い、積荷のコンテナーを勝手に徴収してしまい、苦情相談が絶えない。

そのため、マタガエに寄って来る輸送船が激減して、貿易港としての賑わいが無くなってしまっていた。

そんな港の管理室の休憩室

「また、苦情だよ。」

「今度はなんだ?」

「惑星ボンドレーから来た、主星行きのチャーター便の酒類と乳製品、加工肉製品の半分が差し押さえられたらしい。」

「惑星ボンドレーと言えば、ワインにチーズか。被害額は?」

「八千万圓以上するらしい。」

「報告書をあげてもらえ。保険会社に連絡する。」

「はぁ。俺達は、保険会社の代行社員じゃないぞ。」

「まったくだ。ここで物資を横取りするから、首都への供給物資が減って市民の困っているんだが。」

「なんで、軍はこんな海賊行為に走るようになったんだ?」

「なんでも、予算が無くなって必要経費しか、使えなくなったかららしいぞ。」

「必要経費って?」

「最低限の推進材と、生命維持に最低限必要な食費とエネルギー費だけだとよ。」

「なんじゃそりゃ?」

「第一皇太子側の反攻を警戒して、暴れまくった結果、軍の年間予算枠を食い潰したらしい。そのため大蔵財政省が、国民の福祉政策にインフラの予算枠を守るために、軍に金を回さなくなったんだとよ。」

「金がないから、略奪行為に走るようになったってわけか?第三皇太子は、バカか?」

そこへ別の職員が

「お前いつの話をしているんだ?今なぁ、官僚達は全て首を切られたらしい。」

「えっ!」

「全ての官庁に軍から派遣された将校達が、仕切っているらしいんだ。」

「大丈夫か?」

「大丈夫な訳あるか!行政のド素人が采配しているんだぞ。主星の行政はメチャクチャらしいぞ。金が無いから、適当に作った軍票で精算処理をしているらしいぞ。そのうち、この辺りにも政治将校達が来るかもしれん。そうなったら、この国も終わりかもな。」

「でもよう、第一皇太子が反攻しても、負け続けているらしいじゃないか?」

「それがな、おかしな話があるんだ。」

「なんだ?」

「第三皇太子側の軍艦は、修理のために、ドック待ちになっているんだが、第一皇太子側の軍艦が、修理に入っている艦が無いらしくて、第三皇太子側の軍艦が、各地のドックを虱潰しに探しているらしい。」

「どういう事だ?戦闘すれば、お互い傷つけ合うものだろ?勝ったと言っている第三皇太子側は、艦隊が傷付いて、負けたと言っている第一皇太子側は、無傷?おかしいだろう?」

「そう思うよなぁ。」

「おい、もしかして、逆じゃないのか?」

「逆?」

「本当は、第一皇太子の方が勝ってて、第三皇太子の方が負けているんじゃないか?」

「そりゃないだろう。だってよう、公開されている映像を見る限り、第一皇太子陣営の方が敗走しているぞ。」

「確かになぁ。報道も第一皇太子陣営の方が、勝っているって言う感じはしないわなぁ。」

打ち合わせから帰ってきたこの管制室の主任が

「何話してんだ?」

「いやねぇ。この内乱どっちが勝っているかわからねぇって話ですよ。」

「そりゃお前、第一皇太子陣営だろう。」

「なんでそう思うので?」

「中古船の販売している友人ダチから聞いた話なんだけどよ。第一皇太子側の破損艦隊のほとんどは、中古の輸送船だってよ。それもスクラップ目前の。おかげで、中古市場から格安輸送船が無くなったってダチが言ってた。」

「はぁ?そんな船でどう戦うって?」

「突っ込んで自爆するらしい。もちろん無人艦でだぞ。それで、第三皇太子陣営のかなりの戦闘艦が消失したらしい」

「なんか、えげつないやり方だな。」

「それとは別に、第一皇太子側の戦艦が出張ってきているらしいんだが、どこのレーザーサイトにも反応しないらしくて、新型のステルス戦艦が居るってもっぱらの噂だ。」

「戦艦?」

「あぁ、なんでも光学迷彩を装備していて姿の確認が出来てはいないが、強力な主砲の精密砲撃で、巡洋艦クラスなら一撃で沈むらしい。」

「それじゃ、反抗戦がそろそろ始まるのか?」

「かもしれんな。」







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