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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第1章
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航海中のお話3

かめちゃんは、一瞬目を宙に泳がしてから

「そうですよ!! さよりさん達の基準とは違うかもしれないですけど、コンピューターの仲間ですよ。私の生まれた国では、重巡洋艦以上のクラスの船には、私のようなアンドロイドが副官の仕事をしているのですよ!感情も表現できるのは、普通なんです!だから、怖がらないでください。おねがいですから。」

少し目が潤んだ感じで、さよりを見つめるかめちゃん。


「どうしたのぉ?急に大きな声を出して、びっくりしたぁ。」

「ごめんなさい。」

「別に、あやまることじゃないよ?大きな声に、びっくりしただけだから」

さよりは、紅茶をゆっくり香りを楽しむように飲み干した。

上目づかいで、かめちゃんが

「あの~さよりさん。本当のこと言ってください。」

「なんのこと?」

「私のようなアンドロイドを見て、怖いですか?不気味ですか?気味悪いですか?」

かめちゃんは、テーブル越しにさよりに詰め寄って、今にも顔が引っ付きそうになるまで近づいてきた。

「近い、近い!あたしはそんな趣味は無いから!」

さよりは、顔を真っ赤にして、両手を伸ばしてかめちゃんを押し戻した。

「えっ!私だってそんな趣味は・・・・・」

もじもじとして、かめちゃんも椅子に座りなおした

「そうだね、かめちゃんは」

と言ってさよりは、食べ終わったケーキ皿とティポットを持って立ち上がって

「ちょっと待っててね。」

返却口にそれらを入れて、新たになにかを持って帰ってきた。

「さよりさん?それ、4つ目ですよ。」

「気にしない、気にしない。」

にこにこ顔でイチゴのショートケーキと、紅茶を持って椅子に座った。

「で、かめちゃんは、かわいいよ。」

と言ってショートケーキを食べ出した。

「はい?」

「そもそもなんで、私がかめちゃんを怖がったり、不気味に思ったり、気味悪って思わないといけないの?」

少し困った顔をしてさよりが、かめちゃんを見つめると、かめちゃんの目が潤みだして顔を伏せて嗚咽しだした。

さよりは、急なかめちゃんの行動に慌てて立ち上がって、かめちゃんに寄り添い、背中を擦りながら

「ど、どうしたの!なんか私、悪いこと言った?」

涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げて、

「すいません。ただ、うれしくて」

さよりを見つめるかめちゃん。

「なにが嬉しかったのか、私には全くわからないんだけど?」

「さよりさんのバイタルデータの、血圧、心電、脳波等から、ウソを付いてなくて、心の底から私のことを思ってくれてる、って感じたら、自然に涙が出て来て、」

「えっ、あんまり人のデータを見ないでね。もう、嘘発見器にかけられている気分になるよ。」

「ごめんなさい」

「でも、未来のコンピューターは、人間のような感情を表現できるって聞いたことがあるから、

かめちゃん程の性能のコンピューターなら、感情を表現できて当たり前って思っていたけど、違うの?」

「少し違います。」

涙を拭いて、少し落ち着いたかめちゃんが、

「ある程度の感情表現はすることが出来ますが、私ほどの感情表現は、普通出来ません。

現に私の同型艦である、2番艦以降に搭載されている補佐アンドロイドは、有機アンドロイドではありません。」

「へ~、そうなんだ。」

「2番艦以降搭載されているアンドロイドのボディは、骨格は軽量樹脂で出来ていて、特殊柔軟性シリコン製の表皮で造られたアンドロイドで、表情も乏しくほぼ無表情です。と言うか、アンドロイドに感情の表情回路が基本搭載していないのです。」

「どうして?」

「説明によると、私のような感情表現が出来る、有機アンドロイドは製造及び維持コストが、樹脂製アンドロイドに比べて15倍以上かかるので、豪華客船ではともかく戦時下では、軍艦に搭載するにはコストがかかり、維持運用が難しい為にコスト削減で2番艦以降は採用を見送ったそうです。」

「なんか、その話わかる。そもそもこの船、無駄にお金をかけているよね。」

「1番艦かもしれないけど、確かに設備に金がかかりすぎている気がするんだけど。」

明美と政史が、飲み物の入ったグラスを片手に近づいてきた。

「二人とも、シミュレーション訓練は、終わったのぉ?」

「ちょっと休憩よ。」

「あとの二人は?」

「あっちで、飲み物のメニューで悩んでいるよ」

食堂のメニューの前で何を飲むか悩んでいる、拓哉と美由紀の姿があった。

「幸一と正は?」

「幸ちゃんはなんか、資料を調べるって。たぁさんは操船の練習だって」

「そうか」

「で、なに、話していたの?」

「かめちゃんが感情豊かで、昔困っていたらしいの。」

「感情表現?かめちゃんみたいなAIって普通じゃないの?」

「感情表現過多の面はあると思うけど、それで困る事ってポーカーが出来ないことぐらいじゃないのか?」

飲み物を選び終わった、拓哉と美由紀が同じテーブルに着いて、

「かめちゃんの感情がどうしたって?」

「さよりが、また何か困らしたん?」

「ちがうよぉ。私は何もしてないから」

さよりは、美由紀に抗議の声をあげたが、美由紀は笑って

「いつも私達を困らしているのは、さよりだからさ。ついそう思っちゃっただけだから、気にしない気にしない」

さらにそこへ、飲み物を持って正と幸一が

「さよりの天然ボケで、かめちゃんを困らしたって?」

「もう遅いのに、みんな元気だね」

と、現れた。

「なんか、ひどい言われようなんですけど。」

頬を膨らまして、拗ねて見せるさより

「大丈夫ですよ、さよりさん。あなたは素晴らしい人ですから。それと私はみなさんのおかげで、ここに居られる、幸せを感じているんですから。」


かめちゃんは、にっこりと微笑むと、立ち上がって全員に深々とお辞儀をした。


「そんな、お辞儀されるようなことしたっけ、私達?」

顔を見渡す、美由紀

「まぁ、かめちゃん座って、座って。」

幸一が着席をするように勧め

「かめちゃんが、幸せを感じるって、過去にどんな事が有ったの?言うのが辛かったら、言いたくなければ言わなくてもいいわよ。」

明美は、かめちゃんを気遣った。そして全員の目がかめちゃんに集中していた。

かめちゃんは、全員のバイタルデータを見て、本気で心配してくれている事に、感謝してまた涙が出そうになった。

(本当に私は幸せ者ですね。この人達となら、素の自分でいられます)

「大丈夫です。お話いたします。」

かめちゃんは姿勢を正して、語りだした


次は、かめちゃんが生まれた背景です

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