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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第3章
109/144

帝国内戦4

惑星 トレーダー

帝国第一連合艦隊と第七辺境艦隊との睨み合いが4日間続いたのち、突然第一連合艦隊がトレーダ宙域より姿を消した。

それと入れ違いで、アスランカ運送の運輸船がトレーダーの第4桟橋に入港してきた。


クスノマサツグ司令官に、ミツシサキリシア第三皇太子からの連絡が入った

「クスノ、連絡が途絶えていたが、どうした?」

「はっ。申し訳ありません。第一連合艦隊がトレーダにて、補給を申し出てきましたので、断っておりました。」

「と言うことは、そこで第一連合艦隊は、トレーダーでは補給を受けておらぬのだな?」

「はっ、()()()()はレーション1パックたりとも、渡しておりませぬ。」

「それにしては、追い返すにしても、時間がかかったように思えるが?」

「それにつきましたは、ご報告が有ります。」

「なんだ?」

「商都トレーダとしては、かなりのダメージを受けまして、現在復旧作業で時間がとられております。」

ミツシサキリシア第三皇太子は驚いて

「なにか攻撃でも、受けたのか!」

と聞いてきたので、クスノマサツグは、深刻な顔をして

「物理的な攻撃ではありません。戦火が降りかかると思った投資家達が、手持ち株を売りに走った為に、株価が暴落いたしました。そのため、経済的にダメージが大きく」

と報告すると、ミツシサキリシア第三皇太子は呆れた顔をして

「そんなもの、放っておけばよい。物理的な被害は無かったのだろう。守銭奴どもが騒いで居るだけだろうが。それより、タケルヤマト第一皇太子は、第一連合艦隊に居たのか?」

「タケルヤマト第一皇太子は、()()()()()()()()()()()()()()()()。」

「調べたのか?間違い無いか?」

「はい。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

「そうか。では、第一連合艦隊は、どこへ行った?」

「ジャンプしてすぐに、チェイサーをかけたところ、一旦、ブロメグカッジ方面へ、飛んだ所まではわかっております。それ以降の足取りは掴めて居りませぬ。」

「そうか。その航跡追跡データ資料を、こちらに転送してくれ。」

「手配させて、いただきます。」

クスノマサツグがそう答えると、通信は向こうから切られた。

その様子を、オペレーターのふりをして見ていたさよりは、

「やっぱり。思った通りだわ。あ~ちゃんと同じ思考回路。これでほぼ勝ちが決まったね。」

とほくそ笑んだ。


帝国首都

「クスノマサツグは、嘘はついてはおらぬな。しかし、ブロメグカッジ方面へか?どこへ行く気だ?」

腹心と言えども、裏切りを恐れているミツシサキリシア第三皇太子は、虚偽判定システム(嘘発見器)を通信中に仕掛けて、クスノマサツグの言動をチェックしていた。クスノマサツグから送られてきた、航跡データの真偽解析も済まして、第一連合艦隊の行き先の特定を急いでいた。

「第一連合艦隊は、また妙な所に行きましたなぁ。」

アシヤも、第一連合艦隊が飛んだ先を考えていた。

ブロメグカッジ方面宙域は、帝国首都圏からも第一皇太子の領地からも遠く、特にこれと言った産業も無い田舎の宙域だった。

「普通に考えれるのは、ここで補給をしておくのだろう。第一連合艦隊は、十分な補給を2度も失敗していますしな。それと、ブロメグカッジ方面宙まで辺境に行かれてしまうと、我々の監視網からも抜け出せるし、我々が補給物資の受け渡しを、妨害する事が出来きませんですしな。」

アシヤが、第一連合艦隊の行動は、決戦前の補給に有ると想定した。第一皇太子がいないと言う情報を加味した結果だった。

「第一皇太子と合流されると厄介ですな。近くにいる、諜報員に至急向かわせましょう。」


しかし、ここで第一連合艦隊の足取りが消えてしまった。





第一皇太子の領地 ハーヤマ星系

近衛師団艦隊が、防衛衛星トーレデンを中心に鉄壁の防衛体制を完成させていた。


守備体制が完成したと同時に、内乱以後行方不明だったタケルヤマト第一皇太子が、姿を見せ帝国全土に向けて声明が発信された。


タケルヤマト第一皇太子邸宅内らしき建物より配信された映像に、

「全国民に告ぐ。

今流されている私に関する情報は、意図的に私を陥れる為の捏造報道であり、全てにおいて確たる証拠は無く冤罪である。

それに対し、第三皇太子の行った犯罪行為は、私が物証を含め証人の保護をしており、正義は我に有る!

我々は、ここより帝国の正義を示すため、逆賊ミツシサキリシアを討つ!」


その堂々たる姿は、力強く、勇ましく見る者全てを、惹きつける演説だった。

この演説は、またたく間に広がりを見せ、国民に支持された。


帝国首都

タケルヤマト第一皇太子の演説を、城の玉座で見ていたミツシサキリシア第三皇太子は、詰んだな、と考えていた。

第一連合艦隊の行方は気になるが、タケルヤマト第一皇太子が領地にいるならば、何も恐れる事はなかった。

当初は、兵糧攻めにあうのを避けるように、領地外部に拠点を造るものと思ったが、結局領地内でこちらが、攻めてくるのを待つ方針になるとは。

優秀な作戦参謀が居るのかと警戒したが、期待はずれだったか。


 ミツシサキリシア第三皇太子は、惑星フランシスに向けて食糧の輸出をしないように命令し、貴下の艦隊から、軽巡洋艦を中心とした商船封鎖艦隊を編成し、タケルヤマト第一皇太子の領地、惑星ベルトナンデを干上がらす為に派遣した。


「ミツシサキリシア第三皇太子殿下、勝利は目の前ですな。」

アシヤ作戦参謀長官が、笑みを浮かべながら、ワインの入ったグラスをミツシサキリシア第三皇太子に差し出した。それを受け取り

「確かにな。」

ワインを一口飲むと

「マザーの所に行って、皇帝宣言をしてくる。留守を頼む。」

「御意」


ミツシサキリシア第三皇太子は、立上がり王室の奥に有る扉を開け、皇帝と成るものだけが許される通路を歩き、絶対権力の証である、マザーの制御システムの書き換えに挑んだ。


いくつもの防御壁を越え、たどり着いた制御卓の前に立ち、ミツシサキリシア第三皇太子は、マザーに対して

「帝国の次期皇帝に成る、ミツシサキリシアだ。我に力を!」

と叫んだ。

目の前の空間が煌めき、目を閉じた美しい女性が現れた。女性は、うっすらと目を開け

「ミツシサキリシア第三皇太子。血統による皇帝継承候補者と認識。覇者の勾玉を、ここへ。」

と無機質ながら、美しい声を発しながら右手を出してきた。それに対しミツシサキリシアは、

「覇者の勾玉は、無い。」

と返答。女性は、半眼のまま

「それでは、皇帝承認は出来ぬ。よって、我が機能の委譲はできぬ。」

「なせだ?初代皇帝は、『覇者の勾玉』が無くとも出来たではないか。」

「然り。あの時は、我を引き継ぐ者の存在が、皆無なうえに戦乱による、支配層が代わった事による特別措置であった。」

「我は、帝国を掌握している。」

「しばし待たれよ。」

と女性が言って、まばたきを二回して出した答えが

「否。血族による皇帝継承候補者上位は、存命。皇帝継承候補者最高位も存命。よってミツシサキリシア第三皇太子継承順位第三位の宣言は、却下とする。」

少なからずショックを受けたミツシサキリシア第三皇太子は、

「わかった。タケルの首を持参すれば、良いのだな。それで俺は最高位に成るわけだ。」

「否。それでもミツシサキリシア第三皇太子、汝は継承順位は二位」

「どういう事だ!血族による皇帝継承者は、この俺とタケルしか残っていないはずだ!タケルを殺せば俺が壱位ではないのか!では、継承順位壱位の奴は誰だ!」

と叫んだ。女性は感情の無い声で、

「覇者の勾玉保持者。」

と答えた。

「なんだと!覇者の勾玉を持っている奴が居るのか?」

「然り」

「誰が持っている!答えろ!」

「否。盟約に基づき、答えることは出来ぬ。」

ミツシサキリシア第三皇太子は、悔しそうに歯ぎしりをするが、女性の顔に変化はない。

ミツシサキリシア第三皇太子は、大きく深呼吸をするがごとく息をして、心を落ち着かせると、

「質問していいか?」

「然り」

「お前は、覇者の勾玉の場所は、解るのか?」

「否。我に座標検索機能は、無い。」

「では、どうして、覇者の勾玉を所持している者が、居ると解るのか?」

「覇者の勾玉は、知的生命体が身に付ける事により、その者の生命波動に共鳴し、我にシグナルを送信している。よってシグナルを受信する限り、所持する者が居ると認識する。」

「では、所持する者が居ないと、判断する条件は、何か?」

「最後に受信したシグナルから、350時間以上時が経過したとき。」

「そのシグナルの受信範囲は、この星対象か?」

「否。シグナルに、時空の壁は存在しない。よってシグナル座標の特定は不可能。」

「時空の制限が無いだと!」

「然り。」

「では、最後にシグナルが途絶え、所持者が居なかったのは、いつだ?」

「帝国暦で925年4ヶ月と10日前」

「なんだと!それでは、皇帝《親父》は在任中、絶えず所持していたのか?」

「然り。歴代皇帝は、覇者の勾玉を引き継ぎ、常に所持している。よって現所持者のみ、我の全権行使者の書き換えが可能。」

「と言うことは、『覇者の勾玉』は、今まで宝物庫に入れられた事がない、と言うことか!」

「然り。」

ミツシサキリシア第三皇太子は、踵を返すと来た通路を戻りだした。それを見ていた女性は、

「質問の終了と認め、通常モードに移行。」

と静か言葉を吐き消えた。



「お戻りになられましたか。で、首尾は?」

ミツシサキリシア第三皇太子が玉座の間に帰ると、アシヤが恭しく待っていた。

ミツシサキリシア第三皇太子は、王座にドカッと座ると、不機嫌な声で

「失敗した。」

アシヤは、驚き

「どうしてです?」

「タケルを殺しても、今は意味がない。」

「なぜ?」

「『覇者の勾玉』保持者が居る。忌々しい!血族の順位よりも保持者が上だ。」

「宝物殿からなくなっていた『覇者の勾玉』の保持者ですと!誰ですか?」

忌々しそうに

「盟約により答えられない、だとよ。そうだ!親父《皇帝》が生前身に付けていた物で、紛失している物は無いか確認させろ。それが『覇者の勾玉』の可能性が高い。それと皇帝がいた寝室に、出入り出来た者を全て集めろ。親父がもしかしたら、誰かに下賜しているやもしれない。そうだったらそのうちの誰かに、手渡しているはずだ。ただ、下賜された者は『覇者の勾玉』とは思って無いはず。そこは、上手く誤魔化せ。」

「御意。早速手配いたします。」




2日後

城の広間には、元皇帝陛下付きの執事、侍女達総勢15名が集められた。

皇帝陛下付きが15名と、少なく感じられるが、全てを集めると350名を越える人数になり、調べるのに時間がかかるので、これは亡くなるまでの、半月間身の回りの世話をした者に限ったからである。

誰もが長年皇帝に仕えており、中には皇太子達の面倒を見ていた者もおり、年配者ばかりだった。

「さて、集まってもらったのは、少し確認したいことが有ったからだ。お前達に、生前陛下から、何か下賜された者は居るか?」

あれから、皇帝陛下が身に付けていた衣類から装飾品に至るまで、紛失している物を隈無く調べたが、そのようなものは見当たらなかった。

そのため、集まった者に対して苛立ちを隠せず、ミツシサキリシア第三皇太子は、少し高圧的にたずねた。

ミツシサキリシア第三皇太子は、短気で粗暴な性格が知られており、全員が顔色を真っ青にし、竦み上がってしまっていた。

名簿を見ていたアシヤが

「おや?もう一人いるはずですね。その者はどうしました?」

名簿には、16名の名前が書かれていた。集められたメンバーはお互いに顔を見渡し、1人の名前にたどり着いた

「サヨリさんが居ない。」

「そうだ。サヨリさんは、陛下の葬式の指揮をしていたサマンサ筆頭侍女長に呼ばれて、式場の裏方を任されていたはずですね。」

「あっ!ニュースで」

この一言で、ざわめきかけた

「サヨリ・カキモトか?」

ミツシサキリシア第三皇太子が、問いかけると

「左様です。」

筆頭執事が恭しく答えた。

「この場に、サヨリさんがおりませぬ。連絡を入れられたのでしょうか?」

アシヤが

「してはおらぬが、サヨリと言う侍女は、上級侍女であろ?どうして皇帝陛下付きになれる?」

その言葉を聞き、初老の筆頭執事は

「いえ、サヨリさんは、特級侍女です。やはり、ニュースで発表されたサヨリさんは、別人だったようですな。安心しました。」

と、安堵した顔色を浮かべながら微笑んだ。それに対しアシヤが

「特級侍女?そんな馬鹿な。あの年齢で?」

「お言葉ですが、サヨリさんは、あの超難関特級侍女の試験を、史上最年少で合格した優秀な方です。」

「史上最年少合格?」

「左様です。あの3日間におよぶ実地試験で、過去最高点を出された、稀有な人材です。次期筆頭侍女とまで言われておりました。サマンサ筆頭侍女長の秘蔵っ子です。」

誇らしげに初老の執事が答えた。

「と言うことは、サヨリとやらは、葬儀式場へ出掛けてから、城には戻っておらないということか?」

「左様です。もし、生前皇帝陛下から何らかの物を下賜されたとすれば、サヨリさん以外に存在せぬでしょう。」

「それは、真か?」

「はい。陛下は、サヨリさんとお話されておられる時は、それはそれはお楽しそうにされておられました。まるで、愛娘を可愛がるように。」

「では、サヨリとやらは、今何をしておる?葬儀はすでに終わっており、城へと戻って居ないのは、なぜだ?」

「すでに、雇用契約期間が終わっております。その為、城には居りませぬ。」

「はぁ?何を言っている?侍女の最低雇用期間は、10年以上だろう?」

「いえ彼女は、皇帝陛下付きの侍女の1人が高齢にて引退したため、特級侍女資格の所持者から選ばれた臨時雇用侍女でして、雇用期間が半年とされていました。通常は臨時雇用期間が過ぎた後、審査会議を経て正規雇用と成るのですが、この度の臨時雇用期間中に皇帝がお亡くなりになられ、雇用主が居なくなることで、雇用契約が終了してしまいました。

 ただ彼女がけじめとして、皇帝陛下が荼毘に臥すまでと言って、葬儀が終るまで侍女を勤め挙げ、葬儀後は城には来ておりませぬ。」

「なんだと!」

「審査会議も満場一致で採用だったのですが、サマンサ筆頭侍女長も、強く引き留めたのですが、これ以上城勤めをしていたら、前に働いていた所に迷惑がかかると言って、契約期間満了をもって退職いたしました。」

「本当か?」

「はい。ですから、テレビのニュースでサヨリと言う名の侍女が殺されていた、と聞きまして凄く驚いたのです。でも、彼女は特級侍女ですから、殺されていたのは上級侍女だったようですので、言ってはなんですが、ほっとしました。」

「サヨリと言う侍女の、連絡先は?」

「控えてありますが、行っても無駄でしょう。」

「なせだ?」

「しばらく旅行をするから、家を引き払ったと言っていましたから、すでに、この星を離れていることでしょう。」

その言葉に違和感を感じたアシヤは

「それは、おかしいのではないか?前に働いていた所に迷惑がかかると言って、期間延長をしなかったのだろう?なぜ旅行に行く?しかも住居を引き払ってまで。」

と、筆頭執事に質問した。筆頭執事は、しばし考え

「そうですな。今まで何の疑いも持たずに、信じておりました。お前達は、どうだった?」

筆頭執事が、集められた他の侍女達に聞くと、一様に、何の疑いも持たずに信じていたことが判明した。

「アシヤ。そのサヨリと言う侍女。もう一度探し出せ。そいつが、何かを掴んでるやも知れん。」

「御意。ところで、お前達に聞くが、そのサヨリと言う侍女の写真とかを持って無いか?探し出すにも手掛かりが無いのだ。」

帰ってきた返事は、誰も持って居ないってことだった。サマンサ筆頭侍女長ならば、持っているのでは?と、思われたが連絡したところ、持って無いとのこと。

そのサマンサ筆頭侍女長が、採用に立ち会った面接官のうち、コンドイサム公安局局長ならば、知っているのでは?と言う情報で、コンドイサム公安局局長に聞くが、

「サヨリと言う侍女が、犯罪者であると言うならば、公安局も協力いたしましょう。

ただし、その為には犯罪者と言う物理的証拠を提示して下さい。前回行ったあなた方のシステムの使用は、明らかに違法な越権行為でした。

我々公安当局は、犯罪者でもない一般人の個人情報を皇族の命令とは言えども、我々が勝手に公開する事は法律によって出来ませぬ。もし、それでも公開を迫るのならば、あなた様の権限では出来ませんので、皇帝陛下の勅命を頂いてください。」

と、強い口調で拒否を示した。その言葉に

「まともに、動かない個人検索システムではないか。少し確認するだけで、勅命など要らぬわ!」

アシヤは、前回、ダミー信号による撹乱させられた事を暗に言うと

「まともに動かないシステムですので、あなた様の期待に応える事は出来ません。他を当たって下さい。」

と、拒絶されてしまった。

 これは公安局として、前回のアシヤが、タケルヤマト第一皇太子とサヨリを、犯罪者として強引に個人検索システムを使った事による対抗処置だった。

怒りながら、通信を切ったアシヤに対しコンドウイサム公安局長は

「俺がしてやれるのはこれぐらいか。サヨリ、後はお前次第だぞ。」

と呟いた


 筆頭執事から教えられた住所に兵を行かせると、長年人が住んだ形跡がない廃屋が有るだけで、周辺一帯で聞き込みをしても、サヨリらしき女性がいたと言う情報は無かった。


「どうなっておる?城に配属される者の、身辺調査をしないのか?サヨリと言う女が、何かを企んで侵入してきたかも知れん。」

と、アシヤが憤慨したが、調べてみるとサヨリが公開しているこの住所は、国の重要部署に勤める者の身の安全と個人情報を守る為に、政府が保護対象者に与えるセフティーハウスの住所だった。


 ここへ送られる荷物や郵便物は、秘密裏に検閲が行われ、本人の手に渡って問題が無い物だけが、実際に本人が住んでる所に届く仕組みになっていた。

その為、ゲッペル情報大尉やアシヤが、侍女としてのサヨリの素性調査を行ったが、まったく解らなかった。

 それは、調査がある程度の所にまで行くと、皇太子権限では見ることの出来ない、皇帝陛下の閲覧許可がいる項目に引っ掛かり、それ以上調査する事が出来なくなってしまっていた。


 その事でアシヤは、サヨリが高貴な出の姫もしくは、それらに準じる女性と言う認識をしてしまった。だから、タケルヤマト第一皇太子と仲慎ましき姿を見せているのは、婚約者として確立していたからではないか?と、推測した。そう考えると全てに辻褄が合う。

 皇帝陛下自ら娘のように可愛がり、王妃教育をする事で家臣達に認識をさせ、緊急時に居場所を特定させないように、あらかじめシステムに組んでおけば、追っ手を撹乱して逃げ仰せる。まさしく今回のように、追っ手を撒ける。


 どういう形状の物か解らないが、『覇者の勾玉』とは知らせないで、サヨリに預けておけば、身から放さず所持し続けると思われる。そうすることで、皇帝在任者不在期間を無くし、システムの権限書き換えを防ぐ事も出来る。

 時が来れば、『覇者の勾玉』を第一皇太子に渡す事により、名実共に第一皇太子が、皇帝に就任する事が出来る。

「皇帝陛下に、してやられましたな。」

アシヤは、前皇帝陛下が若かりし頃、知将と呼ばれていた事を思い出していた。

「まったくだ。最後にこんな仕込みがあるとは。サヨリの捜索は、難航しそうだな。」

ミツシサキリシア第三皇太子も、報告を聞き考え込んでいた。

「普通の侍女だと思っておったら、とんでもない女性になりましたな。」

ミツシサキリシア第三皇太子とアシヤが考え込んでいるとき、ゲッペル情報大尉は、情報の海に身を委ねて、サヨリを探していた。


読んでいただき、ありがとうございます。m(__)m



作者(σ(^_^;ワタシ)が喜びますので、


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