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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第3章
107/144

番外編 さより放浪記8

これで、今回の番外編は終わりです(^-^)


さて、本編を書かないと(^^;


8/8

「お嬢様方は?」

クロダ宰相が周りを囲んでいる令嬢達に向かって尋ねるが、内心めんどくさい事に成ったと思っていた。

 皇太子から見て右側から、

中央貴族の令嬢達のソサエティの中心人物フォルクローラム侯爵の愛娘カトレーヌ嬢、

その隣に辺境貴族の子女達の中心人物ヨリトモ伯爵の次女シズ、

帝国内の銀行、商社の子女のサークルを束ねる大富豪リードマンの四女マーガレット、

造船、大型プラント等帝国重工業コンツェルンの子女のリーダー武川重工業社長令嬢シブサワ・メリッサ、

社交界では弱者となる子女達を守る盾となる帝国最大電機工業グループ松上電機創業者の孫娘松上真子、

帝国社交界で避けて通れない五大グループが取り巻きを従えて揃い踏みしていた。

クロダ宰相はニコニコ笑うサヨリを見て、(この娘はどこの派閥だ?)と考えていた。

口火を切ったのは、カトレーヌで

「タケルヤマト皇太子殿下、今宵は皇帝陛下喜寿のお祝いに、ご招待頂きまして、うれしくございます。」

とあいさつすると、後ろにいる麗女達も恭しく頭を垂れた。

「うむ。父も貴女達から祝辞をもらえて、うれしく思っておる。今宵は貴女達も楽しんでくれたまえ。」

タケルヤマト皇太子は、そう答え彼女たちを下がらさせようとしたが、カトレーヌは、テーブルに座っているサヨリを見つめて

「少しよろしいでしょうか?見かけぬ、そちらの女性は?」

と尋ねた。

タケルヤマト皇太子は、微笑みながら

「紹介しよう。私の友人のサヨリ・カキモト嬢だ。皆、仲良くしてくれよ。」

令嬢達に戦慄が走った。あの無表情のタケルヤマト皇太子が微笑んでいる!彼女達の取り巻きの中には、その顔を見ただけで顔を赤らめたり、気が遠く成りかけ倒れかけていた。

「おぉ!イケメンの微笑みは凄い!」

サヨリはクロダ宰相にかろうじて聞こえる声で、称賛した。それを目だけで黙れとクロダ宰相がサヨリに睨み付けた。

 しかし各派閥のリーダーたる5人は、別の戦慄が走っていた。

 常々タケルヤマト皇太子は、クロダ宰相しか友人は要らぬと。公言して憚らなかったからである。

そのタケルヤマト皇太子が一人の女性に対して、友人と言って微笑んでいる。

どうゆうことだ?と考え、あるひとつの結論に行き着く。未来の皇太子婦人、ひいては皇后陛下に!

それを雰囲気で察したサヨリは、仕方がないなぁっと席を立ち上がり、振り向き完璧な淑女の礼をしてから

「タケルヤマト皇太子殿下に、紹介されました。サヨリ・カキモトと申します。生まれは、オリオン星雲第4腕太陽系第三惑星地球で、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国国王ジョージ6世より伯爵の爵位を拝命しております」

この言葉で、貴族の令嬢達は(伯爵?しかも当主!)困惑した。親が爵位が高くともその娘と当主では比べようがない。

続けてサヨリは

「貴族とはいえ、ここ帝国での貴族じゃありませんので、無作法があるやも知れませんが、

田舎者と思ってご指導のほどよろしくお願いいたします。

 現在は国から遠く離れてしまいましたもので、経済的支援が有りませんので、貴族としてはお恥ずかしながら、生活の為にささやかながら、会社を起業することで、なんとか生活しておりまして、帝国の社交界に参加出来ずにおりました。

この度、タケルヤマト皇太子殿下のはからいにより、本日お城へと登城することがかないました。みなさま、よろしくお願いいたします。」

と言って微笑んで見せた。

サヨリの言葉を聞いて、さらに驚愕する事になった。

それは、皇太子殿下が密かに付き合っていた関係を、皇帝陛下(父親)の誕生日パーティーに呼び出し、各方面に紹介する算段していたのでは?と考えてしまった。

クロダ宰相は、チラッとサヨリを見るだけで、無言を貫いた。

まず動いたのは、松上真子

「サヨリカキモト伯爵。松上真子と申します。」

と挨拶をすると

「そんな風にかた苦しく言わないでください。爵位も帝国の爵位ではありませんから、みなさんも、あたくしのことを、サヨリ、と呼んで下さいな。」

と優雅に微笑みながら、周りを見渡した。

「では、サヨリ様。身寄りも無く起業されたとのことで、いろいろご不便もあるでしょう?

もしよければ、わたくしに出来ることならば、お力添えをいたしますので、ご相談ください。

ところで、貴女の起こされたという、会社名をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

中小の企業の支援や、社交界での弱小貴族子女を守っている松下真子ならではの言葉だったが

「ありがとうございます。本当に零細企業なもので、松上様のような大企業とは比べようが有りませんが、針の魚と書きましてサヨリと読みます。株式会社針魚と申します。」

とサヨリの言葉を聞いて、企業グループ令嬢達は焦った顔をした。

 株式会社『針魚』と言えば、今や産業界において知らぬ者はいないと言われる、飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進を続けている企業名だったからである。

創業してからまだ2年ほどだが、通信分野とアイディア便利グッズの2本柱で大躍進をしており、今年度の年商は1兆圓を越え、来年には帝都株式市場1部に上場するのでは?と言われている企業だった。

しかも松上電機は支援するどころか、株式会社針魚から、通信の最新技術の提供を受ける側だった

そこへシブサワ・メリッサが

「貴女!嘘をおっしゃってますね!そのようなはずはありません!あの企業の代表はカルロと言う、男性だったはず。」

と抗議したが、サヨリはどこ吹く風で

「あぁ、代表取締まられ役のカルロ・遠藤のこと?彼は商才が凄いんだけど、小心者でねぇ。ケンイチロウ・ケネディーを補佐に付けてやっと、本領発揮なのよねぇ。」

と思案顔をして見せた。

「貴女は役員名簿にも、名前が無いじゃない!」

「メリッサ様、よく御存じで。そりゃ、そうですよ。あたしは、オーナーですから。役員名簿に名前を載せなくてもいいでしょ?筆頭株主だもん。配当金で生活出来るだけもらえれば、いいからねぇ。」

と言ってにこやかに返すと今度は、リードマン・マーガレットが

「その口調。貴女、もしかしてニードルデビルじゃないでしょうね?」

と投げかけた。

サヨリは、小首を傾げ

「さて、そのような呼び名は聞いたことが無いのですが?」

と困った顔をしたが、

「投資や株式市場で、ここ数年荒稼ぎしている謎の女性トレーダーが居るんだけど。貴女のような話し方するのよ」

驚いたようにサヨリは

「凄い方が居られるのですね。あたしなんか皆様からすれば、ほんのお小遣い程度しか投資していませんので。」

と謙遜して見せるが

「そうですか?投資もなさいますのね。では最近は、そのお小遣いが増えるような事がありまして?」

サヨリは、少し考えるようなしぐさをしてから

「そうですねぇ。そうそう、ロゴに書かれている妖精が可愛い、ファンシーフェザー製薬株式会社様のおかげで、少しお小遣いが増えましたねぇ。」

と答えると

「あそこはつい最近、画期的な新薬の開発に成功しましたものね。で、いかほど?」

マーガレットは探るような目でサヨリを見つめ、サヨリが

「マーガレット様のご実家に比べて、ささやかなものですよ?手持ちにほんの4千万株有っただけですし。」

マーガレットが引き吊った

「4千万株ですって!あそこ発行株数の10%じゃないですか!しかも、現時点の評価額は一株当たり25000圓で4千万株ですって!」

と洩らしたが、何でもないようにサヨリは

「そうでしたか?帝国の相場に疎いもので。あたしは、ロゴが可愛いので株価が上がる前にちょっと多めに、買わさせていただいただけなんですけど?」

と言ってニヤッと笑った。

「貴女、やはりニードルデビルですわね!」

決めつけた様にマーガレットが言うが、サヨリは

「その通り名は、嫌いです。かわいいく無いじゃないですか。母国でのダーティーエンジェルの方がまだ良いですね。それに、そんなに驚く事ですか?たかが評価額一兆圓でしょう?

たいしたことはありませんよ?あたしの有価証券での資産評価額のほんの10%しかないですし」

と、つまらなそうに言うと、マーガレットは化け物を見るような顔で

「あ、貴女、自分が何を言っているのか、わかっています?」

サヨリを見つめた。サヨリはにっこり笑って

「わかっていますよぉ。でも、それを聞いて言い寄って来るようなお人とは、お友達にはなりませんから。」

声が出なくなったマーガレットに一瞥をすると、サヨリはカトレーヌの方を見て

「カトレーヌ様。かねがねフォルクローラム侯爵様から、お噂を聞いております。お父様がご心配をされておりましたよ。」

「なんのことでしょうか?」

「火遊びは、ほどほどにしませんと。」

それを見ていたシズは

「サヨリ様。カトレーヌ様は、社交好きですから。」

と言って微笑んでいた。カトレーヌは真っ青な顔をしたが気丈に

「あ、あ、貴女は。何をおしゃってるのかしら。あたくしには、覚えが有りませんが?」

「勘違いならばよろしいのですが。お父様は結構お怒りでしたよぉ?」

と言ってサヨリは心配そうな顔をした。

「だいたい、貴女がわたくしの父に会ったことなぞ無いでしょう!」

「いいえ、ございますよ。5日ほど前、金旛のクラブで席をお供しましたもの。そこそこお酔いされてましたからか、少し愚痴をこぼされてましたよ。」

カトレーヌにはその店に心当たりがあった。淑女が行くような店ではない事も。

「なぜ、貴女がそこにいるの?」

「それは、秘密です。」

サヨリはにこやかに笑って見せた。そのままシズの方に目をやったサヨリは

「そういえば思い出しましたわ。シズ様。上のお兄様お二人が大変なことになっているとか?」

それまで、微笑んでいたシズが顔を強張らせた。

「なんのことでしょうか?サヨリ様。あまりいらぬ噂を流されては困るのですけど。」

「そうですね。あたしも気を付けます。ただ、タイラ家のシキブ様は、公には言われてませんが、許婚がおりますゆえ、あまりな争いは控えた方が良いと、お伝えください。」

「わ。わかりましたわ。兄にそう伝えます」

上ずった声でシズが答えるのがやっとだった。

サヨリは、空になったワイングラスをテーブルに置き、

「クロダ宰相様。ここらでお暇致します。また、お会い出来る事をたのしみにしております。」

別れの礼をしてから、颯爽と立ち去って行った。それぞれの思いがあれど、その後ろ姿を見送るしか出来なかった。

「で、お嬢様方。これからどうなさいますか?」

タケルヤマト皇太子が、不機嫌を隠そうともしない表情で、テーブルの周りにいる令嬢達に声をかけた。その声で我に返った令嬢達は、どう言い繕うか悩むと、令嬢一同を代表するようにカトレーヌが、

「タケルヤマト皇太子殿下、クロダ宰相殿。貴重な御時間をいただき、ありがとうございました。今宵の御時間のお礼は、後程させていただきます。」

二人に向かい頭を下げた。それに見習って全ての令嬢達も、深く頭を下げ上げ潮が引くように静かにその場からいなくなった。

空になったグラスを弄びながら、立ち去って行く令嬢達を見て、タケルヤマト皇太子はニヤニヤしていた。

「なんだか楽しそうだな。」

クロダはからかうように言うと

「うん?あれだけの爆弾を投げ込まれたあの令嬢達が、これからどう行動するかが、手に取るようにわかるからな。」

「そうだな。自分たちが煽られて、情報が漏れているのを知らされたんだから、あのサヨリって女性の身辺調査から始まって、自らの配下に入れる算段するだろうな。」

クロダは、彼女らのこれからするであろう行動が読めていた。それをタケルが

「で、何も情報が入らずイライラする事になる。俺と同じようにな。」

と補足した。

「お前も、やっていたのかよ!」

とがめるようにクロダ宰相は見るが

「当たり前だろう?俺の素性を知った上で、全く態度を変えない人物だぞ?どんな人なりか、知りたくなるじゃないか。」

「で、わかったことは?」

「年齢がたぶん25歳、一年ほど前にこの帝都に引っ越してきて、今は、どこかの臨時職員をしている。給料は年相当の公務員とほぼ同じ。趣味は、食べ歩き。大酒飲み。株式会社針魚のオーナー。株式売買で大金を稼いだが、大金に振り回されない精神の持ち主。って事しかわかってない。」

「おい!住所は?連絡先は!」

「わからないんだ。教えてもらえなかったし、うわぁ!!!」

タケルヤマト皇太子は、突然背中に冷たい物が入ってきて、思わず大声を出してしまった。

周りの警護兵は、何事!と思ってテーブル周辺に集まり皇太子と宰相の身柄の安全を確保し、周囲の警戒を強め

「タケルヤマト皇太子殿下、何事でしょうか!」

周囲警護を担当していた隊長格の兵に問われ、皇太子が

「大声出してすまない。背中に冷たい水滴が入ったようで、つい大声を出してしまった。」

確かに、皇太子の背中に水らしき物が伝った後が有った。

「背中に冷たい水?」

クロダ宰相と警護兵達は、上を見上げると、満天の晴れ渡った星空が広がっていた。

ここは屋根や木立がある場所ではなく、水滴が垂れ落ちる要素が全く無かった。

「驚かしてすまなかった。大したことではない。持ち場に戻ってくれ。」

皇太子は、兵達を下がらすと自らも上を見上げ首をかしげ、

「どこから?」

「わからない。」

しばし上を見ていたが

「身辺警護は、しっかりしなさいよ。暗殺されちゃうよ?」

と声がして前を見ると、長い銀の匙で苺をふんだんに使った、苺パフェを食べているサヨリがテーブルに座っていた。

「おい!お前!」

「お前じゃなくて、さっき自己紹介したでしょ。それに、指で人を指さない!」

クロダ宰相は、思わず指を指して声をあげたが、サヨリに注意されてしまう。

「お前で十分だ!そこで何してる!」

銀の匙を口に咥えながら

「パフェを食べてます。」

「そうじゃない!」

パフェに銀の匙を突き刺して

「苺を食べましたけど?」

「誰も食べた物を聞いてない!どこから」

「欲しかったら、持って来たのに、これはあそこのデザートコーナーに置いてありますよ。」

サヨリは、手でパフェの置いてあった場所を示すが

「違う!」

「チョコレートパフェの方がよかったんですか?それも有りましたよ。」

「馬鹿にしているのか!そんな事は聞いてない!どうして、そこに居る!」

「パフェが思ったより大きくて、テーブルに置きたかったから。」

「そうじゃない!いつ、そこに、座った!」

「衛兵さん達と入れ替りで、座りましたよ?」

「えっ?」

「だいたい、お二人とも確か、武道を嗜んでおられますよね?」

「当たり前だろう?いざと言う時には、自分の身を守れなくてはいかんからな。」

「じゃ、背中に氷の欠片を入れられたり、張り紙されたりするのは、鍛錬が足りませんよ?」

と言って、銀の匙でクロダ宰相の背中を指した。タケルヤマト皇太子がクロダ宰相の背中を見ると、張り紙が張られていた。それを剥がしてテーブルに置き内容を見ると

【注意散漫、どこに目を付けている?】

と書かれていた。

「これは?」

「あたしが張りましたけど?ちなみに、皇太子の背中に氷の欠片を入れたのも、あたしですよ。」

ニコニコ笑うサヨリに、二人は戦慄を覚え、クロダ宰相が

「お前は、あん・・・」

と言いかけたが

「あたしは!イタズラ好きですが、血を見るのは嫌いなんです!

だいたい、あたしごときに後ろを取られて気付かないってどうなのかなぁ?

そもそも、あの辺の警護兵達は、あたしがここに座って居ることを、認識しているのかなぁ?」

銀の匙を口に咥えながら、周りを見渡していた。

「だいたいあたしがアサシンだなんて、呆れちゃうけどね。だいたい暗殺するには、最低限このぐらいのナイフがいるでしょう?どうやってここに持ち込むの?」

と言ってサヨリは、テーブルの上にナイフを置いた。

「お前!そのナイフをどうやって持ち込んだ!」

クロダ宰相が、サヨリに問いただすと

「えっ?ナイフ?そんな物がどこに?」

「ここにある…?どこへやった!」

テーブルの上に有ったナイフは、消えていた。

「何の事です?」

サヨリは、不思議そうにクロダ宰相の顔をながめていた。

「今、ここにナイフを置いただろう!」

「そんな危ない物、持ってませんよ?」

「タケル。お前も見たよな。」

「確かに、ナイフが有った。」

「二人とも、疲れているんじゃないですかぁ?なんなら、あたしを身体検査しますか?」

サヨリは、両手をあげてみせるが、タケルヤマト皇太子は

「やめておこう。たぶん、しても出てこないだろうから。」

「よくおわかりで」

サヨリは、ニコニコと笑顔で返した。

「それに、俺らを殺したところで、何も変わりはしない。」

「そうね。あっでも、あ~ちゃんと拓哉さん二人が本気になったら、この帝国が滅ぶなぁ。でも、あの二人は、そんなめんどくさい事するわけはないけどね!」

と言ってパフェを頬張るさより。それを見てクロダ宰相が

「オイオイ、たった二人だけが本気になったところで、この帝国が滅ぶわけないだろう。」

といったが、サヨリは、クロダ宰相を感情の欠落した空虚な目で見て、トーンが下がった声で一言

「滅ぶよ。」

その声に底知れぬ恐怖を感じたが、表情には出さず

「どうやって!?」

と問いただした。サヨリは、感情の欠落した顔のままで

「トップが全て居なくなれば、そこに座るだけでいいから。それで、帝国ではなくなり、帝国は滅亡する。国民は、自分達の生活が変わらなければ、誰が統治しても気にしないからね。」

サヨリはそこで一旦目で閉じ、目を開けたときは愛くるしい笑顔で、

「そんな怖い顔をしないの!国って乗っとるのは簡単だけど、維持がめんどくさいんだから。わざわざ、面倒事に進んでしないから。」

と、パタパタ手を振って微笑んだ。

「まるで、したことが有るような言い方だな。」

サヨリは、アッケラカンに

「うん、あるよ!ここほど大国じゃ無かったけどね。あたしが必要になって取ったんだけど、事が終わったら、維持がめんどくさくなっちゃってねぇ、その国で統治のしたい人に丸投げしちゃった。」

チョロっと可愛く舌を出し、ちょっとしたイタズラがバレた感じで、微笑むサヨリだった。

得体の知れない恐怖感に襲われたクロダ宰相。しかし、タケルヤマト皇太子は興味深くサヨリを見つめ、

「俺と組まないか?」

真剣な口調で聞くと、呆れたようにサヨリが

「はぁ?どうして?」

パフェが入っているガラス容器に、銀の匙を入れて聞き返す

「この国を再度纏めあげて、より良い国にしたいんだ。」

「あなたにとって、都合の良い国に?」

見下すような目つきでサヨリが見ると

「違う!国民にとってだ!」

見つめ合う二人。そこには男女の甘い恋愛ではなく、お互いに見定めあう冷徹な眼差しが有った。

サヨリは、ニヤッと笑うと、

「本気?」 

「もちろん。」

「あたしに頼むと、高くつくわよ?」

「国が纏まるなら、安いものだ。」

「ふぅん。言い値で受けるとはねぇ。」

緊張感が張りつめた空気を無くすように、サヨリが空になったパフェのガラス容器をテーブルに置き

「しゃぁないか。皇帝陛下を見にきた継いでたし、次期皇帝陛下を見届けるのも、一興かな?」

とつぶやくと

「これ、あたしの連絡先。その代わり、あたしの周りにもうハエを集らせないでね。じゃ、今度は本当に家に帰るね。バイバイ!」

紙片をタケルヤマト皇太子に渡し、サヨリはパーティーの雑踏に消えていった。

渡された紙片には、タケルヤマト皇太子が欲しかった、サヨリの情報がほぼ記載されていた。

追伸として、放った諜報部員の本名、部署、住所も記載されていた。

クロダ宰相は、憮然とした態度で

「諜報部員の再教育が必要だな。」


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