五十二日目
ついにこの時が来た。体が歓喜に震えている。どうも、キノコです。あれから毎日の様にイリが糧となる魔物を貢いでくれたおかげで、ついに進化の兆しが見えたのだ。どの様に進化するのか楽しみである。一応その旨をイリに伝えたところ、一時的に休眠状態になるらしい。
短いと1日、長いと5日といった所。そして休眠中は例の如く無防備となる。妖精は里の奥にある大木の洞で進化を迎えるとの事だ。進化する固体はかなり少ないらしく、また大幅に力を増す。強い力をもった個体は里でも重要なポジションに着くことが出来るらしい。あとモテモテだそうだ。
ぶっちゃけて俺って動けないし、普通はキノコが進化なんてしないわな。
『あなたが休眠している間は私がしっかりと守ってあげるわ!』
ありがたい。持つべきものは妖精だね。
『だから5日分の精気を今すぐに渡しなさい!』
前言撤回。ただの物乞いだった。まあこればかりは仕方ない。入れ物・・・硬い木の実の殻を利用して作られてる。ちゃんとフタもあって可愛らしい。これに精気蜜を入れて行く。魔物も大目に取って来てもらってしっかりと生命力を回復。
5個の入れ物に蜜を満たす。俺がもともと生えていた広葉樹にイリが魔法で作った洞。そこに保存しておくらしい。
ちなみにイリは大概その洞で過ごしている。妖精の里には定期的に帰っているが、強い魔力ゆえ更に村八分状態だそうだ。まあ今まで疎んでいた存在が強力な力を得て帰ってくればそうなるわな。
なので近々里から抜けて流れになるつもりらしい。流れとは妖精の里を出て別の里を作る固体。一定の割合で発生するとの事。そうやって生活圏を広げているんだろう。
ちなみに妖精はどうやって増えるのか聞いてみたが、答えてくれなかった。まあデリケートな質問だし仕方ないが、妖精って女性しか居ない様子。うーむ、謎である。
蜜を作りつつそんな事を考えていると、チラチラと洞に視線を向けるイリ。俺が休眠に入ったら耐えれずに一日ですべて食べ尽くすんだろうな。
俺の作った蜜を得られなくなって発狂する姿が目に浮かぶな。俺の存在を噛み締めるがいい!
で準備が終わって一段落したところで、イリからアレの提供する旨の言葉を頂いた。なんか最近は俺に提供しないと落ち着かないらしい。あれだな、ウ○シュレットを知ってそれ以降、それじゃないとイヤになるアレだ。それってヤバいんじゃね?
休眠中はどうするのか確認したら、どうにかするとの事。
そんなこんなで時間を過ごしていると眠る必要などないキノコの体に強い眠気が。イリに伝えると休眠の前兆らしい。その流れに身を任せるべきとの事なので、あとは頼むと伝える。危なかったら逃げる様にも伝えておく。イリが何度も頷いている姿を見つつ俺は意識を失った。