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異きのこる  作者: 紅天狗
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十五日目

あれから五日が経った。木の根元から数十センチ離れた事により、栄養の吸収量が減ってしまったようだ。言うなればハラヘリ状態。倍のスピードで空腹感が増えて行く。なんとか芋虫を手に入れているが、明らかに数が減っている。木の枝を観察するに、どうも餌場となる木の縄張り争いの様な事をしているらしく、どんどん数が減っている。


互いに競う事により、より強い個体を残すための本能なのだろう。しかし俺にとっては死活問題だ。あと十日ほどすれば争いは収まるのではないかと戦々恐々としている。


新たに食べ物を得る方法が必要だ。俺はここ数日、ずっとその方法を考えていた。いや、もはや死を目前に控える死刑囚のような心境で、いうなれば賢者モードとなっていたように思える。

妙に落ち着いていた。周りに生い茂る木々。地面いっぱいに広がる草花。時折流れる風に揺られる風景を眺めていた。


少し離れたところに紫色の花が咲いている。明らかに前世の世界と違うのは、花弁の内側、雌花に当たる所が空洞になっている事だ。風も無いのに花弁が動いている事から、魔物の一種なのだろう。

食虫植物。この世界では珍しい物では無いんだろうな。しばらく観察していると一匹の羽虫が彼の花の近くを通った。次の瞬間、カリ首をしならせ、羽虫へと食らいつく花。


アクティブすぎるわ!


そして次の瞬間、ティンと言う音と共に、引継ぎし記憶が映像を見せる。花に群がるミツバチ。蟻を誘い込み、消化液のつまった袋へと落とすウツボカズラ。そうだよ、誘引だ。花は匂い、そして蜜と言う餌。光の反射を調整する事とで自分の位置を知らせ、虫を呼び寄せて受粉を促す。



それからは早かった。俺は毒薬生成の技能を使って蜜を作り出す。あとフローラルな香りも作れるかやってみた。甘味も香油の類も薬品の一種として判断された様で、生成できる様だ。しかしながら殺虫剤の様なものは依然として作れない。

どうも毒薬生成(零)は強い効果のある物は作れないらしい。


香りを放つ事30分。俺は思い通りになった事に歓喜している。蜜を吸うために虫が寄って来るようになったからだ。

おおっぴらに来る虫すべてを食べてしまうと寄ってこなくなる可能性が高い。餌と鞭を使い分ける必要がある。なので腹が減ったらある程度頂く事にした。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



俺は1時間前の俺を殴り飛ばしたいと思っている。まあ自業自得なんだが、匂いに釣られて森の王者、KUMAがやって来た。

どうも甘い匂いを出した事が災いしたらしい。藪が揺れて何事かと思ったら緑色の熊が出てきた。グリーンベアーである。微妙にキモイ。なにかと言うと、頭がデカくて足がヒョロい。そう、某掲示板に出てきた熊のアスキーアートをリアルにした感じだ。


即座に蜜を舌で回収。不味い液を染み出させる事でなんとかやり過ごす事に。


熊は俺の匂いを嗅いだあと、イノシシ同様ひと舐め。グルルと唸る。どうやら思っていた味では無かった事に怒りを覚えたらしい。手を振りかぶって俺をつぶそうとしてきた。いつぞやの思考加速。生き残るために記憶を総動員し対応策をはじき出す。


体を傾け、傘口を熊へと向け、強力な臭みを醸す液を熊へ噴射。

熊が固まったかと思えば鼻を両手で押さえ、転げまわる。どうやら鼻が良い事が災いした模様。


更にとどめとばかりに臭み、辛み、苦味を混ぜた消化液に技能の粘液を使って粘度を上げる。熊の体へと噴射。主に顔を狙って行く。ベトベトに汚れ、緑から茶色へと変色して行く熊。消化液が効いているのか、しきりに体を地面に擦り付け始める。

どうやら消化する事は叶わないが、炎症を起こす事は出来るみたいだ。技能を使うと生命力と魔力を消費するようで、魔力が枯渇し打ち止めとなった。熊の様子を見るが、涙目で逃げて行く。


なんとか助かったららしい。


とりあえず甘い香りは危ない。ラフレシアよろしく臭い匂いを出すかと思案するが、ハエや黒い悪魔、Gと言った害虫を呼び寄せても食べる気になれない。なのでほんのりと香る程度で抑え様子を見る事にした。

ヤバい奴が来たら、今回と同様に辛臭苦消化粘液をブッカケする方向で行く事にする。


とりあえず消費した魔力そして生命力を補うために、周りの草(不味い)や再び寄って来た虫をつまみ食いする事にした。

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