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異きのこる  作者: 紅天狗
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二百三日目

さて、花妖精5名を奪取してから幾日か経過した。近隣の街では大規模な妖精狩り部隊が結成され、いま正に出撃しようとしていた。人数は100名ほど。馬車など数十台が追従する。おれはその間に菌糸網の拡張を続け、いまや25kmほどの領域を手中に収めた。

迎撃対策は万全だ。キノコの恐ろしさを知るが良い。


この世界に来て半周期が経った訳だが、まあ色々あったな。イリと出合い、ミールを助け、また妖精たちを助け。妖精しか助けてないな。まあ可愛いから仕方ないね!


あ、あれからも相変わらずイリとミールは愛し合ってます。もうね。見てられないよ。そっちに関する知識を伝えたのは俺だが、後悔はしていない。子作りは人間達の進行を退けた際に行うと明言していた。ミールが大粒の涙を流していたことが印象に残っている。

嬉しいらしい。まあ憧れのお姉さまだったらしいからなぁ。


以前考えていた、妖精の軟骨の弛緩の話だが、予想は当たっていた模様。飲んでも効果があるらしい。

これで更に産卵が安全になるはずだ。たぶん。


俺は相手が居ないのかって?


キノコにどないしろと。イリ達とは確実に子供なんて作れないしな。他のキノコとくんずほぐれつな事なんてする気にもならん。俺は他種族の人型のメスを屠るエロキノコになってやんよ!


さて、そんな事を考えていると、侵攻部隊が行軍を開始。部隊を率いるのは新しいギルドマスター。なんと女性である。しかしその思考は残虐であり嗜虐的だ。毎夜の様に男性冒険者に涙を流させている。なんと言うか、権力者でマトモなのは居ないのかね。


ちなみに近隣の街は約50kmほど離れている。俺の掌握範囲は半径25kmの円形。つまり行程の半分は俺の攻撃範囲内だと言う事だ。今までは魔物をけしかけることで撃退していたが、今回は魔物は使わない。

用意していた防衛陣を活用する。


さて、2時間ほどして菌糸網の先端へ差し掛かった侵攻部隊。まずは幻惑キノコ陣がお目見えだ。俺の菌魔法により一気に傘を広げたキノコたち。範囲は部隊を中心として1km。さあ、幻につつまれて迷うがいい。


ちなみに幻惑物質は揮発性の高い油の一種だ。つまりマスクなどでは防げない。おや、早速人間たちの動きがおかしくなって来ましたよ。ホッホホ。あ、魔物さんたちには退避してもらってます。赤い色のキノコを見せると逃げるように教育した。擦り込みとも言う。赤いキノコは痛い気体を出すのでね。最近は見た瞬間に逃げる様になった。


さて侵攻部隊の方だが、まずは隊員の一部が仲間を魔物として誤認した様子。内部分裂、戦闘開始。一時間ほどした後、四分の一が処理され部隊は大打撃を受ける。効果は抜群だ!

部隊のリーダー格が集合し、なにやら話し合っている。最近は単語の意味が分かるようになって来たので、なんとなく話してる内容がわかるんだが。


リーダーたちはかなり困惑している様だ。何故こんなことになったのか、原因を調べるべき。または仲間に造反者が居る云々。疑心暗鬼になってる様子。しかしドSマスターは男どもに強い視線を向けて、撤退は無いと明言。侵攻を再開する模様。


時間をかけて更に1kmほど進んだところで、第二陣。シビレタケによる牛歩作戦だ!

動けないまま飢えて死ぬがよい。


と言うことで、約半数が動けなくなった。なかなか高レベル冒険者を多く集めた様で、半分も残るとは意外だ。シビレタケの毒胞子を食らっても動けるとは。ちなみに奥に行くと更に強力なキノコたちがお出迎えします。維持費が高いのよね。

今は生えてない、菌糸だけの状態なんで消費量は抑えれてるけども。


なんとか麻痺を解除しようと毒消しやら解毒魔法やらで部隊の復旧に努めるも、在庫が尽きた模様。治療した魔術師もガス欠のご様子。リーダーたちが集まり、再度協議。すみません、作戦は筒抜けです。


どうやら直線に中心地へ向かうのは危険と判断した様で、迂回するらしい。

痺れた人員はここで放置するとの事だ。ヒデェ・・・。


まあ動けない部隊のリーダーはこの会議には出席できていない。痺れて動けない訳だが。そんな人々が会議の結果を知る由も無く放置される模様。半分となった部隊は45度ほど曲がり進むことに。


向かう先にはネムリタケによるパトラ○シュお陀仏作戦をお見舞いする。ぐーすか眠る人々が多発。さあ目覚めの時は遠いぞ。リーダー格数名とドSマスターが青い顔をして話し合っている。そりゃそうだわな。戻るとまた同じような状態異常を受ける事になる。

まあ、自分たちの欲深さが招いた悲劇だ。あきらめて欲しい。


この先には更に凶悪なクサレタケによる腐海陣地、トリモチタケによるゴキブリホイホイ地獄など嫌がらせのオンパレード。さあ、もっと奥へ来るんだ!


あ、侵攻の続行を指示した。ドS姉さん流石です。その人をゴミとしか思わない思考。たまりません!

眠りこける部隊員を放置すると言い放っている。ブチ切れたリーダー達がドSを放置して仲間の力を合わせて撤退を開始。まあそうなるわな。


ドSは撤退部隊には入れて貰えず、一人で帰ることになった。これから日も落ちて暗くなる。魔物を退ける警戒色キノコは既に色を変えている。赤が危険、黄が注意、青が安全となっております。


それを見た魔物たちは元の生活圏へと移動を開始。撤退部隊も魔物の気配を感じ取ったご様子。かなり慌てている。ドS姉さまは魔物と追いかけっこを開始。とても楽しそうで何より。しかも森の奥へと逃げるとか、その運の悪さが最高です。


あ、自生してたトリモチタケにかかった。粘液に絡め取られて溶かされ始めてる。うむ、自然を舐めるからそうなる。南無南無。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


しばらくしてイリ達が俺の口腔内へと戻って来た。二人には上空から監視してもらってた訳だ。


『あなた・・・あれは流石にちょっと・・・。』


『ですです!流石に酷いと思います!』


どうやらご不満な様で。出来るだけ人にも被害は出してない。痺れて心臓ごと止まったのが数名。眠って息が止まったのも数名。幻覚を見て暴れたのは多数居たが、人間が同士討ちしただけ。俺はなにもしていない。うむ。


まあ防衛陣地の力は分かったようなので安心して暮らせると言っていた。

祝勝会が行われ、新作の蜜、アルコールっぽいモノを含んだものを提供。蜂蜜酒もとい茸蜜酒だな。また精気酵母も改造し、より高品質な精気を生産するようにした。その名も妖精殺し。取扱いが難しいので俺の口腔内でしか扱えないが、精蜜の光り具合が一段アップしている。キラッキラである。


茸蜜酒を浴びるように飲む二人。治療中の5名は妖精殺しをご堪能していただく。妖精殺しは生産量が少ない。もう少し環境適応力を上げて使いやすい酵母を改造しないと。出来上がった二人はくんずほぐれつを開始。うむ、ミールは酔うと攻めに回るんだな。


最後は地面に這いつくばったカエルのようにうつ伏せで眠る妖精二名を眺める。うむ。良きかな良きかな。


人間による領域侵攻はこうして防がれたのである。

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