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異きのこる  作者: 紅天狗
19/35

百五十日目

あれから何度も日が昇り、日が沈んだ。厳しい冬を超え、春の足音が聞こえて来る。雪は解け、地面からは一斉に青い草花の芽が姿を現す。あれから幾度となく人間が妖精を奪取すべく活動を行っていたが、芋蜜により冬でも余裕を持って巡回できるようになり、妖精の里へは近付く事すらできない状況となった。


また俺たちはと言うと、芋蜜の品質向上、安定した生成など技術を磨き上げていた。逐一妖精の里にも技術共有を行い、更に技術向上を志す状態だ。また人間対策は俺の菌糸網が周囲4kmに広がった事により早期発見が可能となり、イリ達への不意打ちは不可能となった。危険が迫って来た場合、俺の分身たる子実体を通して意思疎通の魔法で会話が可能だ。

もはやイリ達を探す事すらままならない状態になっている。


もちろん菌糸網はさらに拡張する予定だ。周囲10kmほどは監視下に置きたいと考えている。


俺はあれから二度目の進化を経験した。初回に比べると副作用は殆どなく、1日の休眠で復帰。

傘の直径が2mほど。高さは1mほどの巨大なキノコとなっている。一気にデカくなってしまったため、木の洞には入りきらない。なので今は地上に落ち着いている。

いずれ人間に見つかってしまうだろうが、菌糸網によるモンスターアタックを利用し撃退し続けている。

まあ見つかっても返り討ちにできるくらいの強さは得た様だ。


ステータス

─────────────

生命力:38229/45774

魔力:78837/104479

名前:マーラ・ハリガタ・マツタケ・ド・モドキ

種族:王松茸(魔)

技能:魔素吸収(参) 傘口舌食(乙) 粘性(参) 薬毒生成(参) 精母共生 剛体(参) 菌魔法(弐)


イリ曰く、魔力の威圧感がおかしいらしい。イリの10倍はあるとの事。なんでこんな急激な変化が起こったのか良くわからないが、まあ死ににくくなったから問題なかろう。

あと、魔素吸収だが周囲からも魔素を吸えるようになった。もはや壊れ性能である。休眠から覚めてから一時間ほどして周囲の雑草が枯死したのは驚いた。イリ達にも少し影響があった様で。今後の進化時も注意しなければ。


周囲から魔素を吸えると言うことは、魔法はほぼ無効と言っても過言では無いらしい。精霊が起こす現象は魔素を使って世界へと干渉している。魔素は魔法の根幹だ。その魔素を吸い取るのだから魔法は現象を維持できずに消えてしまう。

また精霊自身にとっても俺は天敵だ。精霊は魔素を根幹とした生命体。言うなれば生命力が無くて魔力のみで生きている生物だ。そんな存在が俺に近付いたらどうなるか。魔力を吸われ、お陀仏である。


なのでイリ曰く、俺の周囲で魔法を行使するのが難しい。よほど慣れた精霊しか近付いてくれないみたいだからな。

すまぬ。すまぬ。


つまり俺を倒すには純粋な物理攻撃しか効かない。もしくは魔素吸収を超える魔力を持って行う必要がる。もしその魔法に耐えきった場合、その魔力をそのまま俺が得てしまう訳で、失敗すればするほど対処できなくなるだろう。


傘口舌食は更にグロ度アップ。びっしり生えた触手すべてに舌管と同じく穴が開いている。それぞれ各触手から毒液、消化液、粘液、なんでもござれだ。俺の口腔内に囚われた場合、生きて出ることはまず出来ないとイリは言う。


また中央の舌管には歯が付いた。管の中にびっしりと生えており、しかも内向き。つまり奥へと進むよう歯で返しが付いている状態だ。伸縮性が高く、俺の今の本体を飲み込めるほどに広がる。そして飲み込まれたら戻れない。戻ろうとすれば歯でズタズタにされるだろう。


なんかもうメチャクチャだな。


あとイリとミールだが、日々デートを重ね、ついに結ばれた。まあその一部始終は俺の口腔内で行われた訳だが。なんか妖精のラフホテル化しそうな勢いである。触手回転ベッドでも作るか。まだ托卵は行っていないとの事だが、時間の問題だろう。

今は愛し合うのに夢中と言った状態だ。そう、飢えたサルである。


まあ未知の感覚であるので仕方ないかもしれない。二人は毎日のように愛し合っているさ。俺を放置プレイしてな。泣いてなんていないぞ?

見てるだけでお腹いっぱいです。物理的に。


一応、お互いに致したが、どうもミールが受けで落ち着いた模様。まあ妥当なところかね。サイズ的にもイリに軍配が上がるしな。うん。胸のサイズですよ?


現状はこんな感じ。あと街の方だが、殆ど菌糸の監視下に置いた。そこらじゅうに小さいキノコが生えている。まあ1ミリ程度の大きさなので誰も気付いていないが。一々監視していると頭がパンクしそうになるので、定期的な監視にとどめている。ビアダルマスターは毎日の様に女冒険者を呼びつけてはハッスルしている。なんか弱みでも握ってるのか?

余りにも見てられないのでお陀仏してほしいが、手を出すとどうなるか分からんしなぁ。


ビアダルのキノコの感覚が過敏になる毒でも作ってみるか?

よし、楽しそうなのでやってみよう。まずは俺の贄となった魔物から採取して保管している細菌群から再調査だな。


あ、あともう一つ山を越えた先に城壁に囲まれた都市があるらしい。そこに囚われた妖精が居ないかを調査して欲しいとイリから頼まれたので菌糸を伸ばしている最中だ。100kmは離れているのでまだまだ時間はかかるが、着実に突き進んでいる。

最近は街道沿いに菌糸を伸ばす方向で動いている。調べる必要もなく別の街へと繋がる訳だ。ふふ。


魔素吸収は分体たる小さなキノコでも発動できる。効果は薄いが、キノコの維持に困らない程度の魔力を収集できる。というか吸い過ぎないよう調整している。自然は大切に。


『ただいま~』


『戻りました、マーラ様』


考え事をしていたらイリ達が狩りから戻って来た。花妖精の里の方も、芋蜜作りが安定してきているらしい。俺のいいつけ通り、花の手入れは怠ってない。蜜を得る手段は複数あった方が良いと説いたのだ。まあ精気を得るためにまだ花が必要だしな。

芋が全滅したら終わり、と言う状態にしないよう注意しなければ。芋のほかに蜜の原料となる物がないかを調べて貰っている。


そいや果物でも良くね?


当たり前な事過ぎて気付かなかったわ。イリ曰く、盲点だったらしい。花妖精だから花に固執していた模様。なんか落ち込んでる。果物から蜜を得ればもっと生きれたかも知れない訳だしな。水分が多く甘みが足りないので対象外ともしていたことが原因か。かなり甘い蜜でないとダメみたいだな。


甘いと言えば、メープルシロップもあったな。ミールが興味深々に聞いてくるので木の樹液だと伝える。味は薄くても少しでも甘ければ煮詰めることで蜜にすることが出来ると伝えた。すぐさま調べると興奮している。注意点として取り過ぎない事。また傷つける必要があるので、木の治療法を確立するよう伝えた。


ミールの眼差しがまぶしい。先人の知恵を伝えてるだけなんだ。そんなに見ないで欲しい。


そんな相談をしていると、新薬のキノコビンビンナールの目途が立った。どうやって運べば・・・まあすでに菌糸の道は出来てるし、小さな管を作って送れるようにするか。菌魔法(弐)の力はすさまじく、菌糸操作速度は以前とは比べものにならない。まあ以前の速度が忍び足程度だしな。すでに菌糸の道は出来ているし、あとは毒を送れるように管を通すだけだ。


数時間もあれば直通経路が出来上がるだろう。ビアダルオヤジ、もう少し待つがいい!


イリとミールが奏でる愛の歌を聞きながら一日が終わる。悲しくなんかないんだからね!

最近はマッサージもご無沙汰だからって泣いてなんてないんだからっ!


『マーラ、あなたも手伝ってくれる?』


イエッサー!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


こちら毒キノコ。ビアダルのお楽しみルームの天井に居る。オーバー。


ビアダルは紅茶だろうか。これを常飲する事は把握済みだ。ヤツは茶を持ってきた秘書のケツを必ず撫でる。その時の茶は視界の外だ。その短い時間を突いてビンビンナールを注ぐことに成功した。


何事も無いようにビンビンナールを飲み干すビアダル。これよりビン・・・長いな。毒・・・じゃない、薬の効能の調査を開始する!


秘書が下がったあと、女冒険者Aが入室。ネコミミきたこれ。何事か色々と言った後、ついに行為へと移ろうとした。熱を帯びるビアダルの一部。そしてビアダルが自ら掴み出した瞬間、激痛に顔をゆがめるビアダル。ザマァ!!!


効果確認!すばらしい効き目です、大佐!


猫娘に何かを指示すると部屋から走り去る猫娘。彼女の純潔は儂が守った。

しばらくすると、魔術師らしき男が入室。怒気を交えつつ話をしているビアダル。魔術師の顔は次第に歪んでいく。あれだろ、ナニがとてつもなく痛い。調べるもしくは治してくれと言っているのだろう。


誰がビアダルのブツを見たいと言うのか。俺なら熨斗つけて叩き返すレベル。しぶしぶと言った感じで杖を局部へと当てて魔法を行使する魔術師。ほわっと光輝く杖。そして股間から光が。もしかして解毒に成功したのだろうか。注意せねば。


一応、菌魔法を使って現段階で作れるもっとも強いど・・・薬を作ったつもりだが。


そして別の女冒険者Bを呼び出すビアダル。牛娘きたわぁぁぁ!

デカい。まじでデカイ。こんな子もいるのか・・・異世界すげぇ。そいや風呂無いな・・・もっぱら水浴びに布での湿布摩擦っぽいし。なんか可哀そうだわ、この世界の人たち。


ニヤニヤしながら話をする樽。牛娘はどんどん顔が青くなっていく。きらりと落ちる涙。もうブッコロでいいんじゃないですかね?

例の如く蛇口をとり出す樽。その瞬間、苦痛に歪む樽の顔。ザマァァァ!!


信じてて良かった菌魔法。樽よ、お前のナニはもはや超感度で使い物にはならんぞ!


幾度となく治療を行うも、樽の蛇口が戻る事は無かった。樽のイライラが頂点に達した様で、秘書をぶっ飛ばす。何してんのコイツ。そして他の冒険者やらがなだれ込み、収拾が付かない状態に。


いいぞ、そこをもっと蹴るんだ牛娘さん!そして猫娘さん!


あ、誰かが踏みつけて・・・おうふ。男としては見て居られない。しかし魔術師は誰も治療をしようとはしなかった。どうやら相当信頼が無かったらしい。仕方ないね。


ビアダルは治療所らしきところへ。新しいギルドマスターが来るのも時間の問題だろう。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 【誤字】 ラフホテルだとroughなホテルで危ない気がします。裸婦ホテルなら強ち間違いでもないですけど。
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